24:生姜紅茶
涙を飲みながら着替えを済ませ、2人を部屋へと招きいれた。
2人は面倒なのか大して気にしてないのか、さっきのはなかったかのように平然としている。
あと、着替え中に作っていたのか、アリシアが紅茶を載せたトレーを片手に持っていた。
「どうぞ御主人様。院内は暖かく保たれてるとはいえ、水をかぶって少しお冷えになったでしょう。こちらお身体が温まるよう、ジンジャーティーを選ばせていただきました。しかし、苦手なようであればお取替えいたしますので、遠慮なく仰って下さい」
アリシアがメイドみたいなことをいって紅茶を勧めてきた。
いや、メイドだった。
さっきから言動がアレなせいでコスプレメイド疑惑が個人的に持ち上がっていたのだけど、いまの佇まいはどこをどう見てもメイドだ。
「ありがとう、いただきます」
カップを受け取り、そのまま口に運ぶ。
顔に近づけた時、ジンジャーの他になにか柔らかい香りが鼻を通っていく。気にせず一口含んでみると、優しい感触が舌を滑り、喉を通って胃に落ちると、じんわりとした温かさが身体に広がっていった。
「おいしい」
自然と感想が漏れた。
その言葉を聞いたアリシアが安堵した笑みを浮かべた。
さっき見て少しドキドキした笑みと違い、こっちまで優しい気持ちになるような柔らかい笑みだった。
「御主人様にそう言っていただけて、とても嬉しいです」
「うん、本当においしいよこれ。それに、ジンジャーだけじゃなくて、他にも入ってたりしない?」
「さすが御主人様、お分かりになるのですね。このジンジャーティーにはハチミツも混ぜているのです。お疲れになったお心にいいかと思いまして」
「紅茶にハチミツって入れたりするんだ? 意外だったけど、でも凄く合うんだね」
「はい、それに……」
そこでそれまで上機嫌だったアリシアの表情に影が差す。
「いえ、なんでもありません」
そして慌てたように手を振って否定した。
横ではリリスも寂しげな表情をして紅茶を見つめていた。
「なんにせよ、凄く温まったしほっとしたよ。ありがとう、アリシア」
多分、過去の記憶に関することなんだろうけど、ここでこれ以上暗い空気になるのが耐えられなくて、話題を強引に逸らした。
ただ、温まったのと安心したのは本当だ。
「はい、有難う御座います」
アリシアも再び笑ってくれた。
紅茶をもう一口飲んで間を取ったところで、リリスが話を切り出した。
「それじゃあ落ち着いたところでぇ、本題入りましょうかぁ」
そうだ、本題。
もう何度話が逸れただろう?
何か話そうとする度に邪魔が入り、もう全然話が進んでない。
わざとやってるんじゃないかとさえ思う。
いや、そんなことはないんだろうけど、あまりにもの話の進まなさにそんな疑いまで持ってしまう。
あるいはもっと大きな力でも働いているのだろうか?
って、そんな力だよ。
とまぁ、そんな内心でのツッコミはどうでもいい。
こんなことを考えても、また話が始まるのが遅れるだけだ。
というか、現在進行形で遅れてる気がする。
なんなの? 尺稼ぎなの?
いやいや、こんなことをツッコんでは思う壺だ(誰のだよ)
いまは落ち着いて、リリスから話を聞くことに集中しよう。
顔を上げると、リリスとアリシアがこちらの様子をジッと伺っていた。
「話を聞く準備、出来たかしらぁ?」
「ああ、なんかどたばたしたけど、大丈夫だ。話してくれ」
なにか大事のように言ってるけど、ようはただの治療計画だ。
自分にとってはかなり大事だけど、絵的には地味だし盛り上がりようがない。
そもそも盛り上がりなどいらないのだけど。
誰だ、盛り上げようとかしてるやつ。
大人しく話を聞かせてくれる気はないのか?
いや、誰がなんと言おうと、面白くなかろうと話を聞かせてもらう。
そう、断固たる決意を今したのだ。




