23:生着替え
「そ、それはそれで恥ずかしい!」
結局は裸を見られたことに変わりはないわけで。
しかも多分こっちが意識のないまま為すすべなく見られたわけで。
あんなところやこんなところもリリスとアリシアは余すことろなく見たわけで。
なんだか興奮する!
って、ダメだ!
道を踏み外しそうになった思考を強引に引っ張って戻す。
とりあえず、彼女たちは医療行為の一環として、介護してくれたんだ、うん。
「大丈夫です、御主人様!」
アリシアがちょっと顔を赤くして拳を握っている。
あ、なんか嫌な予感がする。
「たくましかったです!」
と、ちょっと視線を落として言った。
具体的には股間の辺り。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
恥ずかしさが臨界を越えてしまい、悲鳴を上げてうずくまる。
「だ、ダメだ……もうお嫁にいけない」
「ご安心下さい、いざとなれば私が責任を取りますから!」
「いや、お嫁はないわよ」
収拾がつきそうにない事態にリリスが冷淡にツッコミを入れる。
「はぁ。羞恥に悶える貴方も見てて楽しいんだけどぉ、話が進まないからそろそろいいかしらぁ?」
「いや、でも!」
「いいからぁ、私たちはちょっと席を外してるから、その間に身体拭いちゃいなさい。着替えも持ってくるからぁ」
リリスはそう言うと、この場に残りたがるアリシアを引っ張って、部屋を出て行った。
「うぅ、どうしてこんなことに」
涙を飲みながら服を脱ぎ、タオルで身体を拭いていく。
いや、身体を拭いてくれたのは医療行為、そう介護なんだから気にしちゃ駄目だ、うん。
気を取り直したところで、全裸になったことで改めて自分の身体を眺めてみる。
ふーむ、長い寝たきり生活で痩せ細ってるかと思ったけど、意外と肉がついてる。
ムキムキとまでは言わないけど、それなりに見れるくらいは筋肉がついている。
これもリリスの仕業、もといお陰なのかな?
どうやったんだろう?
まぁ、考えても仕方ないか。なんなら聞けばいいし。
あと鏡なんてないから、背中とか顔とかは見えないな。
って、そういえば顔!
よく考えたら自分の顔すら知らないじゃないか!
え、自分の顔知らないとかありなのか?
そんなことにすら思い至らなかったなんて、そのあまりにも抜けている自分に愕然としてしまう。
筋肉とかよりこれをなんとかしないと。
リリスが戻ってきたら早速鏡かなにかを見せてもらおう。
にしても、どんな顔をしてるんだろうか。
ペタペタと自分の顔を触ってみる。
うーん、デキモノとかはないみたいだけど、やっぱり触るだけじゃ分からないな。
などと考えつつ鼻の高さや耳の位置、口の大きさを手で確認していると、ノックが聞こえた。
おっと、顔を気にしすぎて身体を拭くのを忘れてた。
とりあえずノックがあったからには返事をしないと。
「ま」
ガラッ
「だ開けな……」
思うんだけど、ノックしたら返事を待つべきだよね。
扉を開けたらしいリリスと目が合う。
そして後ろに立っているアリシアも見える。
2人は目を合わせたあと、ゆっくりと視線を下げていく。
「なぁに、まだ身体拭いてなかったのぉ? それとも、やっぱり拭いて欲しいから待ってたのかしらぁ」
着替えを片手に持ち、やれやれといった風に肩をすくめるリリス。
そして、
「じゅるり」
何故かよだれをすするアリシア。
「い」
「い?」
「ゴクリ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絹を裂くような男の悲鳴が院内に響き渡ったのだった。
誰得だよ、これ。




