1:目覚め
目を開けると、そこは白い部屋だった。
天井も壁も床も、自分の寝ているベッドも。
全てが白だった。
窓は一つもなく、この部屋の外に繋がってそうなのは白い扉が一つ。
形状からするとおそらく引き戸だろう。
その扉にも覗き窓などは付いておらず、金具もノブも含めて白かった。
あまりに白が過ぎて、現実感がまるでない。
「えーと?」
色んな疑問が頭に浮かんだ。
ここは何処なのか。
何故こんなところにいるのか。
何でこの部屋は白一色なのか。
窓がないのはなんでなのか。
どうして寝てたのか。
とりあえず、1番近い記憶を引っ張り出そうと試みる。
「うーーーーーん?」
しかし、それは無駄に終わった。
「思い出せない?」
ここに至る理由が思い出せない。
1番近い記憶を思い出そうにも、思い出せる記憶がなにもない。
過去が何処にも見当たらない。
「あれ?」
さらには、
「名前は? いや、そもそも誰だ? 何だ?」
名前すらも、なにもかもが思い出せない。
「いや、待て」
なにもかもはちょっと言い過ぎた。
自分の名前や過去は思い出せないけど、
さっき窓や扉やベッドは知っていた。
つまり、常識的なことはしっかり記憶されている、ということ。
「でも、それが分かってもなぁ」
正直、なにも解決しそうにない。
んー、とりあえず人に話を聞くのが1番か。
でも誰に?
この部屋には少なくとも人はいない。
というか、ベッド以外のものがなにもない。
「なら、会いに行くしかないか」
ここに誰もいないなら、自分から行くしかない。
幸い、出入り口らしき扉はある。
鍵らしきものはついていないから、多分開くはずだ。
外からしか鍵を操作できない仕組みならどうしようもないけど。
「ま、考えても仕方ない」
開いてるか開いてないかは、実際に扉を開けようとしてみれば分かることだ。
そう思ってベッドから出ようとした瞬間、
コンコンコン
とノックの音が聞こえた。
「へ?」
予想してなかった事に戸惑っていると、こちらの返事も待たず扉はゆっくりと開き始めた。