15:彼女がブーツを履く理由
「これは特に深い意味はないんです。単純に私が大きい靴が好きなだけで」
ちょろシア、もといアリシアはそう答えた。
その理由は驚くようなことのない、至極平凡な答えだったけれど、しかし疑問を差し込むほどのないほどに納得のいくものだった。
「そっか、てっきり背が低いのを気にしたりしてのことかと思ったよ」
実際そう思ってたわけではないけれど、そうか、とだけ返すのは素っ気ないと思い、少し余計な言葉を継ぎ足した。
「背、ですか? 確かに私は高いほうではないですけど、それに対してどうこう思ったことはありませんね」
男が思っている以上に、低い身長をコンプレックスに感じている女の子は多い。
けれど、アリシアはそういった悩みとは無縁のようだ。
「それとも、ご主人様は身長が高いほうがお好みでしょうか?」
身長についての話題がこちらから出たせいか、アリシアは見当違いの疑問を持ってしまった。
「いいや、特に身長の高低についてどうとかはないよ」
これは本当だ。むしろ、身長の高い低いで他人を判断するもんじゃない。
「本当ですか?」
アリシアは念を押すように問いかけてくるが、
「本当だよ」
こちらとしては本当にそうなので、こう答えるしかない。
「無駄に背の高い女がいいとか、幼女と見紛うほど低いのがいいとか、そういうことはありませんか?」
極端な分けかた過ぎるだろ。
前者は、なんとなく表情をみるにリリスのことだろう。さっきも見た嫌そうな表情をしている。
リリスの身長は女性にしては高いほうだ。目算で175cm以上は確実にある。
ヒールの高い靴を履いていたから、実際はもうちょっと低いだろうけど、それでも170cmはありそうだ。
さっきは気に留めなかったけど、身長が高く胸もやたらデカイ女性に前に立たれたら結構な威圧感を感じそうだ。
立体的な意味で。
あと、背の低いの、か。なんとなくアリシアは具体的イメージを持って発言したように感じたけれど、目覚めてからここまでそんなナリの子に出会った覚えがない。
まだ目覚めてから1時間も経ってないだろう間に出会ったのは、リリスとアリシアだけだ。
もしかしてまだ見ぬ他の病室にその幼女(仮)はいるのだろうか?
ふむ、幼女。
先程、女性の身長の高低は気にしないといったけれど、それは裏を返せばどの身長でもいいということだ。
なので、正直低い身長の子でも全然おーけーだ。
まぁそれを迂闊にいってしまうと面倒くさいことになるのは明らかなので、口には出さないけど。
「ないよ、ないない」
そんな心のうちを秘めたまま、アリシアからの問いに答える。
「そう、ですか。分かりました、有難う御座います。何度も同じ問いをしてしまい申し訳御座いませんでした」
と、座ったままの姿勢で頭を下げるアリシア。
「いやいやいや、気にしてないから、アリシアも気にしないで」
しかし、それを声をかけながら押しとどめる。
なんだか、人に頭を下げられるというのは妙にくすぐったくて落ち着かない。
もしかして、あんまり人に頭を下げられることがない立場の人間だったのかな?




