10:散歩の目的は経過か結果か
とりとめのない会話を続けながら廊下を進んで行く。
進行方向は以前とは逆だ。
けどと言うかやっぱりと言うか、行けども行けども白い壁ばかり。
「同じ景色ばっかで、どれくらい進んだのか分からなくなってくるね」
「今で5kmくらいやから、多分まだまだ続くで」
そういえば先ほどイデアに片道30kmほど走らされたんだった。
イデアが言うには少しずつ目印がズレてたから30kmもなかったみたいだけど。
「ウチもちゃんと聞いたことはないけど、この施設自体の広さは少なくとも100km四方はあるって誰かが言うてたような」
「100km!?」
それってとんでもない広さじゃなんだろうか。
「しかも、この建物ってリリスが創りだしたものなんだよね?」
「そや。常にこの規模の建物を存在させ続けながらも普通に生活してるとかホンマありえへんわ。けど、だからこそこないだはエリザに遅れをとったみたいやったけどな。普段からこの建物の維持にリソース割きすぎて、本来の実力出せんようなってるから」
うーん、なんか凄すぎて、むしろどう凄いのか分からなくなってきたぞ。
「でも、なんでそこまでしてるんだろ? どうせならいくらかは実在の建物を使えばいいのに」
それに100kmもの規模の施設って必要なんだろうか?
「まぁそこは色々あるんやろ。それに広さの理由の1つはアンタをネーレイみたいな危険人物から物理的に遠ざけるっていうのもあるし」
「あ、そうなんだ」
確かに100km四方の建物、しかも多重層で端から端までとかだとかなりの距離あるよね。
「ん? でもそういうことなら、もしかして端っこに向かって歩けば結構すぐに行き止まりにつくんじゃない?」
「まぁ……そやな。でもそれがどっちなんかはウチも知らんしなぁ。もしかしたら逆方向かもしれんし」
「確かめることって出来ないかな?」
「無理ちゃうかな。それこそリリスに聞かんと」
「それで答えてくれるかな?」
「まぁ、答えへんやろな」
「だよねー」
つまりはお手上げということである。
「とりあえず歩いて行けば何かしらあるやろ」
「あるといいんだけど」
「いや、アンタから誘ったんやから、そこでネガティブなこと言うのやめよーや」
「そうだね、ごめん」
確かに配慮不足だったな。
「折角なんだし、楽しく行こう!」
「いや、そこまではせんでもええけど」
「いやいやいや、いっそ狐々乃月とデートだって考えるくらいの勢いで行くよ!」
「でっでででで、デートぉ!?」
狐々乃月がかなり素っ頓狂な声を上げて驚いていた。
ただでさえ高い幼女のソプラノボイスが裏返って、むしろ低音になっていた。
心なしか、最後の「デートぉ」のところも「デーつぉほ」みたいになってた。
どうやって発音してんのさ、それ。
「ほら、男と女の子が2人で一緒に出かけたらデートでしょ? 確かにここじゃ景色は殺風景だし、楽しくはないかもしれないけどさ。むしろ、デートって考えればまだこの真っ白な景色にも色味が増す感じしない?」
「かふっ」
何故か血を吐くようなリアクションを取られてしまった。
それは一体何を表現しようとしたんだ?
「ああああアンタ、よぉそんなくっさい事さらっと言えんな!」
「くさいって、酷いな」
「酷ないわ! むしろ、そんなんいきなり言われたウチの方が被害者やわ!」
「そこまで言う!?」
さすがにちょっと傷つくなぁ。
「う、うっさい! 戯言ほざいてんと、さっさと行くで」
「えー、結構いいアイデアだと思ったんだけどなぁ」
「知らん!」
そう叫ぶと、狐々乃月は肩をいからせながらズンズンと先へ歩いて行ってしまった。
「ちょっと待ってよー」
その後を僕は小走りで追いかけていく。
狐々乃月が、デートという提案に対して拒否の台詞など1度も言ってないことに気が付かないまま、追いかけていった。
実際、成年男性と幼女が2人きりで歩いてたらデートどころか、連れ去りですよね。お巡りさんアイツです




