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Hollow cathedral  作者: 林檎亭
第2章 能力
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2:エリザという存在

 僕と狐々乃月が互いに朝食を終えて――いつも通りアリシアは控えているだけだったし、エリザは、というか吸血鬼は食事がいらないらしい。


「食べられないわけじゃないし、味も感じるし、消化もされるんだけどね。でも消化したらトイレに行かないといけないから、面倒くさいんだよね。だから食事は極力取らないんだ」


 食事と取らない理由をそう語り、続いて、


「吸血鬼は魔力で生きている。その魔力自体は体内で生成されるし、消費量より生成量のほうが多いくらいだからね。完全な自給自足が可能なのさ」


 ということも教えてくれた。


 外部からの栄養やエネルギーの摂取が必要ないなんて物凄い事なんじゃないだろうか。

 犠牲が必要ないとかエコ過ぎてヤバイ。

 自家発電万歳。

 ……なんかこういう言い方すると語弊が出てくるな。

 これが分からない君はぜひそのままの君でいて欲しい。

 間違っても大人に聞いてはいけませんよ?


「御主人様、どこ向いてるんですか」


「え? あぁうん、ちょっと世界の意志と」


「そうですか。三次元との会話メタフィクションもほどほどにしてくださいね」


「はい、すいません」


 怒られてしまった。

 でも地の文が一人称な小説って、それだけでかなりメタいと思うんだけど。

 他人に聞かせる自分語りなのだから。

 まぁそれは言うまい。

 そんなことを言い出したら話が進まないし、描写も面倒くさいことこの上ない事になる。

 あんまりやり過ぎるとしつこいし。

 気を取り直して、僕は気になっていた事を――前にアリシアについても同じような質問をした覚えがある――エリザに聞いてみることにした。


「そういえば、こないだエリザは僕に血を飲ませて絶対服従を誓ったって言ってたけど、どうしてそんな事をしたの? 知っての通り僕は記憶喪失で君のことはもちろん、自分のことさえ覚えてないんだよ? 性格だってかなり違うって聞いたし」


 ハッキリと誰かが教えてくれたわけではないけれど、なんとなく雰囲気から察するに、以前の僕は大人しいとは言い難い性格をしていたらしい。

 少なくとも気を遣った発言はあんまりしなかったと思う。

 だって、気を遣った言動をするとアリシアは感動するし、リリスや狐々乃月は怪訝な顔つきに(かなり僅かだけど)なることがちょくちょくあるから。

 エリザは僕の言葉に対し、言ってもおそらく感覚的に理解し難いと思うんだけど、と前置いて説明を始めた。


「ボクら吸血鬼は――もとい多くの霊体存在は、その人の造形や性格にではなく、その魂の在り方に惹かれるんだ」

「魂の在り方」

「そう、生命力でも精神力でもはたまたオーラでもなんでもいい。つまりは、目に見えない内的エネルギーの事さ」


「ボクたちはその魂の力強さに惹かれるんだ。だから正直な所、外見や性格は二の次なのさ。いっそ三の次、四の次だ。こんな言葉はないけどね」

「え? あぁ、もちろんボクたちにも個性はあるからね。好ましい性格や、逆に嫌な性格もある。だけどさっき行った通り、それは二の次だけどね」

「外見はもうほんとうにどうでもいい。もちろん、気にする人――もとい吸血鬼もいる。ただ、ボクはその内の1人なんだけどね」

「ボクはいわゆる美形を侍らすのが好きなタイプのダメな吸血鬼だからね」

「美女でも美男でもなく美形。男女問わずさ。だからビッチとか売女とか呼ばれてしまうのさ。否定のしようがないから困ったもんだよ」

「でも吸血鬼っていうのは多くの霊的存在の中でも外見を気にする傾向が強い。種族としての特性みたいなものさ」

「さて、吸血鬼の嗜好についての説明はこのあたりにして君が聞きたかった事を話そう」

「ボクは君の魂に惹かれているから、記憶の有無は関係ないのさ。君が君というだけでボクは君を愛そう。さらに、外見は比較的ボク好みだ。そして、性格に関してはボクはさほど気にしないタイプだ。嫌いなタイプでなければどうでもいい。今の君も過去の君も嫌いなタイプではない。つまり、ボクは君に惹かれているし、惚れているし、愛している」


 エリザは一気に、立て板に水を流すように、はたまたベッドで睦言を紡ぐ恋人のように、その思いの丈をぶちまけた。

 僕はというと、愛してるとか言われたことに対しての照れは感じているものの、やっぱり感覚として彼女の言う魂の在り方については共感も納得も出来そうになかった。

 ただ、そういうものなんだな、と理解しただけだ。


「それで十分だよ。結局は他人、さらに他種族、さらに他存在だ。理解してくれただけでもボクからすれば僥倖だよ。それにボクの気持ちに答える必要もない」


「え、そうなの?」


 愛する人から愛されたいと思わないのだろうか?


「いらない。他人の感情なんて重い。ボクはボクのしたいようにするから、そこに他人の感情が介入するなんてむしろお断りだね」


 うーむ、その当たりは徹底した個人主義というべきなのだろうか、さすがに理解の範疇外過ぎる。


「理解は出来ないだろうから、理解できないっていうことを理解してくれたらいい」


 なるほど。

 なるほどと言っていいのか分からないけど、なるほど。

 この時ほど、なるほど分からん!

 という言葉がしっくり来るときはなかった。

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