129:某波紋漫画的なアレ
狐々乃月の部屋でテーブルと椅子を出して食事の準備をする。
「今日のおかずは何かな?」
「里芋の煮付けやな」
毎度のことながら朝から手が込んでるなぁ。
「あと漬物と玉子焼きやな。玉子焼きはさすがに冷めてもうてるけど」
「それは仕方ないよね」
おかずを確認しながら配膳を進めていく。
とは言ってもそんなに量はない。
アリシアはどっちかと言うと朝食は控えめにして、昼食を多めに出してくるタイプだ。ちなみに夕食は少ない。
いわく、満腹で寝ると体に悪いから、との事。
多少の物足りなさを感じるものの、ご飯を作ってもらっている立場としては何も言えないし、言うつもりもないのでおそらくこの先もきっとこのままだろう。
なんて考えてるうちに配膳も終了し、
「「いただきます」」
いまここに参加していないコック――アリシアに特別の感謝を込めて手を合わせた。
狐々乃月はいつも通り漬物から食べ始めている。いや、漬物って普通最初に食べないよね、という考えを当初は思っていたんだけれど、毎日続けられるともうさすがにどうでもよくなってくる。
僕はだうしようかな、と迷ったあげく汁物……はないので里芋の煮付けに手を伸ばす。
直前まで温められていたから湯気が立ち上っている。
「はぐ――あつっ!」
なにこれ熱い!
狐々乃月さん加熱しすぎじゃないですか!
と、その時急に力が湧いてきた。
ゴゴゴゴゴと効果音がつきそうな感じで。
「なに鬼化してんねんな自分」 ゴ
ゴ
「え、うそ――って、ホントだ。角生えてる」 ゴ
ゴ
右前頭部にちゃっかり角が現れていた。 ゴ
ゴ
「どういうこと?」 ゴ
ゴ
いま鬼化しようとか全然考えてなかったんだけど。 ゴ
ゴ
「あー、多分里芋のせいやな」 ゴ
ゴ
「里芋の!?」 ゴ
ゴ
まさか里芋が新たな僕の敵? ゴ
って、なんでやねん。 ゴ
ゴ
「人間状態から鬼化するのには確か、自分の意志で変化するんと、身の危険を感じた時に自動的に変化するんとあったはずや」 ゴ
ゴ
「なるほど。でも、それでなんで里芋?」 ゴ
ゴ
いま自動的に変わったということは何か見の危険を感じたからだろうけど、別に危ないことなんてないような? ゴ
ゴ
「はっ! まさか狐々乃月が実は刺客とか!」 ゴ
ゴ
「なんでやねん」 ゴ
ゴ
あ、ちゃんとした「なんでやねん」だ。 ゴ
ゴ
「里芋、熱かったやろ?」 ゴ
ゴ
「え? うん、舌が火傷するんじゃないかってくらい熱かった」 ゴ
ゴ
「それや」 ゴ
ゴ
「へ?」 ゴ
ゴ
どれや。 ゴ
ゴ
「その熱かったっていうのに、アンタの中の鬼が反応したんやろ」 ゴ
ゴ
「いやいやいや、里芋だよ!? ちょっと熱かっただけだよ!?」 ゴ
ゴ
「そやな。でも、アンタはその熱さに驚いた。だから鬼化した。ほら、熱いヤカンとかに触ると反射的に手を引っ込めてまうやろ? それと一緒や」
ゴ
「えぇ、鬼化ってそんなのでもなるの?」 ゴ
ゴ
なんか物凄くダサいというか……しょっぱい。 ゴ
ゴ
「ま、普通はならんけどな。要はアンタがちゃんと鬼化を制御できてないって話や」
ゴ
「そ、そうなんだ。じゃあ、もしかして慣れるまでこんな程度のことで変身しちゃうわけ?」 ゴ
ゴ
「そーゆうことやな」 ゴ
ゴ
うわぁ、それは嫌だ。 ゴ
里芋に脅威を感じて鬼になっちゃうとか。 ゴ
そんな鬼じゃ昔話に出ても怖がってもらえないよ。 ゴ
ゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
とりあえず鬼化はすぐに解除した。
これから対策考えなきゃなぁ……。




