127:ヒーローもの
「それで、どうやったら戻るの?」
素朴な疑問を口にしてみたら、何故か呆れた視線が僕に突き刺さった。
え、変なコト聞いたかな?
「変なことっちゅーか……まぁ変なコトやな」
「え、なんで?」
「いや、変身してる本人が分からん事を他人が知るわけないやん。そもそもどうやって変身したん?」
どうやって……どうやってと聞かれると困るな。
あの時はいつの間にか変身してて――って、変身って言うとなんかヒーローみたいだな。
仮面○イダーとかウル○ラマンとか。
アリシアや狐々乃月も含めたら戦隊物も出来てしまうんじゃないだろうか。
人外戦隊モンスターレンジャーみたいな。
オーガレッド、バードピンク、フォックスホワイト、ウィッチブラック、メイドグリーン。
最後の妖魔じゃないな。それに僕のコレただの赤鬼だし。
というか、これだとむしろ敵側だよね。
妖魔とか鬼とか完全にやられる側じゃん。
仮面ライ○ーブラックRXとかなら妖魔大隊の枠で怪人として出ちゃうよ。
今週の最強(笑)とか言われちゃうよ。
「妄想たくましいわねぇ」
「今どきの子はRX知らんやろ」
「dumm」
僕の妄想についての感想は以上だ。
というか、いまイデアの台詞、意味はわからなかったけど絶対に悪口だったろ。
「nein。気ノセイデス」
普段から棒読みなのに、さらに棒読みだったぞ今の。
「まぁ話は戻すんだけどねぇ。鬼化したり人間に戻ったりは本能で知っているものだから、説明しようがないのよねぇ」
「そうなの?」
「例えばねぇ、呼吸の仕方を説明しろって言われても出来ないでしょう? 呼吸を知らない人にうまく説明できるぅ?」
呼吸の仕方……息を吸って吐く。
「うん、確かにそれはちょっと――いや、絶対に僕には出来そうにないかな」
「だからぁ、貴方のその変身も説明出来ないのよねぇ。そもそも私はそういった能力ないからぁ」
「ウチは変わるんちゃうくて、化けるやから感覚的には全然ちゃうな」
「私ニモ変身機能ハ付イテオリマセン」
どうやら自分で見つけ出さないといけないみたいだ。
「うーん、とりあえず人間に戻れー! って念じてみたら?」
他に方法が思いつかないし、妥当だと思えたから狐々乃月の案で試してみる。
「戻れ―戻れ―」
「口に出してどうすんねん」
狐々乃月にツッコまれつつもひたすら念じてみるけど、戻りそうな気配は全然感じられない。
いまも角は頭の上に屹立したままだ。もちろん目も金のままなんだろう。
「じゃあ、あえて何も考えすにしてみたらぁ? りらーっくすしてぇ、気持ちを戦闘状態から平常状態のテンションに戻すの。はい、深呼吸ぅ」
今度はリリスに言われるがままに深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着ける。
が、またも効果はなかった。
その後も出てくるアイデアを試し続けたけど、どれも効果がなかった。
そして場の空気が白けてきた時――他人とはいえ大事なことなのでダレたりせずに頑張って欲しい――イデアが初めての提案をした。
「モシカシテ、戻ロウトスルカラ駄目ナノデハナイデスカ?」
「どういうこと?」
聞き返す僕。リリスと狐々乃月はなにかピンと来たようで、そっかー、みたいな顔をしている。
置いてけぼり感ハンパない。
「人間ニ戻ル戻ルト言ッテイマスガ、元々貴方ハ人間デハ無ク鬼デス。ツマリ、鬼コソガ貴方ノ戻ルベキ姿。ツマリ人間ノ姿ニ戻ルノデハナク、人間ノ姿ニ変身スルト思エバヨイノデハナイデショウカ」
た、確かに!
棒は目覚めてここまでずっと人間フォームのままだったから人間が基準だと思っていたけど、鬼族なら鬼の姿が平時のものだというのはその通りかもしれない。
「試しにやってみーや。人間に戻るんちゃうくて、為るんや」
「分かった。やってみるよ」
僕は頷くと、頭の中を切り替えて、人間に変身しようと試みた。
すると、今度は拍子抜けするくらい簡単に人間になれたのであった。




