123:恥じる恥じれば恥ずかしい
「色々と聞きたいこともあるでしょうけどぉ、とりあえず移動しなぁい? アリシアちゃんの手当てもしないといけないからねぇ」
「そうだね、そうしよう。何処に運べばいいかな?」
「んー、私の部屋にしましょお。すぐそこよぉ」
リリスはちょっと離れたところ、とは言ってもここから見える範囲の扉を指してから歩き出した。
僕と狐々乃月も後ろを付いていく形で歩き出した。
「御主人様、やはり自分で歩きます」
するとか細い声で僕の服を掴みながらアリシアが囁いてきた。
その頬は相変わらず上気して赤く染まっており、しかも体勢的に自然と上目遣いになっているので、殺人的な可愛さを醸している。
ただ、この照れはさっきのとちょっと違って、他人に見られてる事からの気恥ずかしさっぽい。
チラチラとリリスや狐々乃月の方を窺ってるし。
まぁ確かに人前で抱き上げられるのはそれなりの年齢に達してしまった後だと恥ずかしいのは分かる。
分かるけれど。
「ダメだよ。酷い怪我をしてるんだから。そもそも立てないでしょ?」
「いえ、なんと言いますか、確かに今はもう違う意味で腰が抜けて立てないと言いますか、ある意味勃ちっぱなしと言いますか……」
あ、これいつもの駄目な方のアリシアだ。
なんだろう、急に放り投げたくなってきた。
いや、怪我人だからそんな事はしないけどさ。
にしてもこれツッコミ入れたら負けだよね。
「ロクでもないこと言ってんと、はよ行くで」
そんなやり取りを間近で見せられていた狐々乃月が苛立たしげに僕の尻を蹴ってきた。
ゴメン、と謝りながら止まっていた歩を進める。
リリスの部屋までは距離があったわけじゃないからすぐに着いた。
室内は荒れ放題で、壁には大穴が空いていた。
ここでリリスの戦いがあったんだな――というか、こんな近くで壁に穴が空くほどの戦いがあったのに、全然気が付かなかったな。
まぁそれは置いといて、僕は綺麗な状態のベッドにアリシアをそっと寝かせた。
改めてその姿を見ると、ふんわり美少女な顔と破れた服から覗く可愛らしいおへそに対して、鳥感満載の腕と足はもの凄いギャップがある。
ただ不思議と嫌悪感はなかった。
それは僕自身が異形の生物だからか、元々そういうことを気にしない性質なのか、あるいは――アリシアに対する好感度がこれをささいな事と思うほど高いのか。
そんな事を考えながら身体を凝視していると、アリシアが視線から逃れるように身を捩った。
そういえば、さっきは状況が状況だけに何も思わなかったけど、いまのアリシアって大事なところ――胸と下腹部はなんとかメイド服の残骸が残っていて隠れているけど、お約束のように見えない仕様になっているけれど、それを除けばほとんど裸に近いんだよな。
なんて事が頭を過ぎると、少し遅れて急に気恥ずかしさが込み上げてきた。
「ご、ごごごごゴメン! 裸を凝視してたつもりじゃなかったんだ!」
僕は床が摩擦で発火するくらいの勢いで後ろを向いた。
「い、いえ、そうじゃないんです。私の身体は醜いですから、御主人様のご気分が害されないかな、と思っただけなんです」
ん? なんか僕とアリシアの考え方に齟齬が生じてないか?
「えっと、醜いって、アリシアの身体に醜いところなんてなかったよ。気分が害されてなんてないし」
なんなら見難い所(隠れたおっぱいとか)はあったけど。
「しかし、この腕と足は人間のそれとは大きくかけ離れていますから。気持ち悪いでしょう?」
何を言っているのか。
さっき嫌悪感はないって言ったじゃないか――って、思っただけで口にはしてないか。
うーん、改めて口に出すのはちょっと恥ずかしいけど、アリシアはもの凄く気にしてるみたいだし、そんな事は言ってられないよね。
「いや、アリシアの翼も足も気持ち悪いなんて少しも思わないよ。なんならさっき抱っこしてたときは羽毛が柔らかくて気持ちよかったし。それに……」
あー! 恥ずかしい!
「それに?」
「それに、アリシアの、その、ほとんど裸みたいな状態の姿見て、えっと、ど、ドキドキしたし……」
俺の恥ずかしさが天を突破した。
天元突破した。
幸い俺のドリルは天元突破してないけど。
恥ずかしさのあまりわけの分からないこと考えてんな。
対してアリシアは、え? え? と戸惑いながらも、
「その……嬉しいです」
なんて言ってくれちゃった。
うわー、なにこれ? なんなのこのむず痒い気持ち。
「はいはぁい、ラブコメはそこまでよぉ」
そこでリリスが呆れた声色で割って入ってきた。
「ら、ラブコメなんてしてない!」
「はいはい。準備できたから治療するわよぉ。男の子は出て行ってねぇ」
僕の抗議は認められず、部屋を追い出されてしまった。
アリシアの身体は顔と上半身が人間で、肩口から先とへそのすぐ下からが鳥です。




