122:にやにや再来
なんとかネーレイを撃退した僕は、見た感じあっさり倒したようではあるけれど、内心ドキドキしながらも彼女を倒した僕は、すぐさまアリシアの元へと駆け寄った。
ネーレイが起き上がってくる心配をしろと言われるかもしれないけれど、僕の拳に残った感触は、それは有り得ないと告げていた。
格闘技をしている人なら経験があるかもしれない。
見事に入った攻撃の際の「これは決まった」という感覚。
野球でのクリーンヒットやテニスのサービスエースでもいい。
とにかく決まったという感触が僕の拳に残っていた。
「アリシア、もう大丈夫だよ」
「はい、見事な一撃でした」
いつの間にか拭いたのか、涙と鼻水のあとは綺麗に拭い去られた後だった。
僕としてはそれを汚いものだとは思えないのだけれど、女の子からしたらやっぱりいつまでも放っておきたいものではないのだろう。
「さて、じゃあ行こうか」
僕はアリシアを抱き上げる。
いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「って、ひゃあっ。ごっごっ、御主人様!?」
「あぁ、あんまり暴れないで。落としちゃうよ」
「し、しかしこれはっ」
アリシアは真っ赤になってわたわたしている。
なんだこれ、めちゃくちゃ可愛い。
「ほら、ジッとしてて。ね?」
「うぅ、分かりました」
赤い顔のままアリシアがこくんと頷いた。
そして、おそるおそる聞いてきた。
「えっと、重くないですか?」
「ううん、軽いよ。羽根みたい」
羽根が生えてるだけに。
あ、ゴメンいまのなし。
「そうですか……」
軽いという言葉に安心したのか、アリシアはホッとした表情を浮かべている。
「よし、改めて行こうか」
「何処へですか?」
「決まってるじゃないか。リリスのところだよ。君は大怪我をしているんだよ?」
「あ、そうですね……って、ダメです! 私は置いて行って下さい」
「え? 何を言ってるのさ、怪我人を置いていくなんて出来ないよ」
ましてや僕は彼女を助けるために戦ったのに、その戦いの原因を置いていくなんて本末転倒じゃなかろうか。
「ネーレイはエリザの名前を口にしていました。そして私たちが戦っていても誰も助けに来なかった事を踏まえると、おそらくリリスとココノツの所にも敵が行ってる筈です。私を連れて行くと足手まといになるおそれがありますので、先に行って助力を――」
「その必要はないわよぉ」
アリシアの言葉を遮って、聞き慣れた声が後ろから投げかけられた。
その声は、
「リリス」
「ウチもいんでー」
振り向いてみると、リリスと共に狐々乃月も一緒にいた。
いつの間にかすぐ近くにいたみたいで、こちらへと歩いてきている。
「私たちのほうは大丈夫よぉ。エリザもヴォルフも無力化しておいたからぁ」
「ヴォルフも――!?」
ヴォルフという名にアリシアが驚きの表情を見せた。
「ヴォルフって?」
「ウチの足止めに来てたヤツや。銀毛の狼男でな、あらゆる妖術・魔術を無効化するけったいなヤツや。ま、ウチの敵ちゃうかったけどな」
余裕気に笑う狐々乃月の身体には傷1つ見当たらないから、本当に楽勝だったんだろう。
対するリリスは傷は服がボロボロだった。
「私の所はエリザが来たんだけどねぇ。大変だったのよぉ」
「エリザって?」
「ビッチ吸血鬼です」
アリシアがもの凄く不機嫌な顔をして吐き捨てた。
「ビッチって……」
僕が乾いた笑いを漏らすと、
「まぁ、的を射てるわな」
「そうねぇ」
リリスと狐々乃月も同意していた。
え、それでいいの?
「まぁともかくぅ、もう敵対勢力は全部無効化したから大丈夫よぉ」
リリスが指を鳴らすと、向こうのほうで倒れていたネーレイが突然現れた穴に落ちていった。
その穴は、僕が迷路に落とされたときと同じものな気がした。
お姫様抱っこは背中が地面に向くので、されるほうは意外と怖いものです




