112:蹂躙
「貴女っ」
私はエリザの言葉を聞くやいなや、躊躇無く数本の柱を彼女へと突き刺した。
比喩ではなく、先の尖った円錐状の柱で文字通り貫いた。
そして串刺しになったエリザに目もくれず、壁に扉を出現させてそこへと駆け込んだ。
「酷いことするなぁ」
しかし私は耳元で囁かれた声を聴いた瞬間、横へと殴り飛ばされた。
弧を描かず直線状に吹っ飛んだ身体は壁へと激突し、勢いそのままに突き破った。
飛んで行く様に床を転がり、何十mか過ぎたところでようやく止まった。
壁を突き破った先は、イデアの部屋に隣接しているものと同様の何もない広い空間だ。
「あ……ぐっ……」
とんでもない衝撃に晒された私の身体は既にボロボロだった。
複数の箇所が粉砕骨折しており、内臓もいくつか破裂していた。
骨が折れて皮膚を突き破っているせいで体外への出血も相当なものだ。
「おや、ちょっと力を込め過ぎたみたいだね」
ちょっと申し訳ない程度の態度のまま、エリザは音も立てずに私の横へと現れた。
「くっ……バカ……ぢか……ね」
エリザは身体能力の優れてる吸血種の中でも、さらに頭抜けて身体能力が高い。
対する私は、普通の人間よりは良い程度のものだ。
「何て言ったんだい? あ、馬鹿力かい? 馬鹿は酷いな。せめて怪力くらいに表現を留めてくれないかい」
明らかに場違いな感想を真剣に発する。
とりあえず逃げないと。
身体は動きそうに無いから、地面に穴を開けて落下することにした。
目論見どおり重力によって私の身体は落ちていく――ことはなかった。
私の身体が完全に床下に落ちるまでに、エリザがしっかりと手を掴んでいたからだ。
「全く、油断も隙もないな。動けないからって、落ちて逃げようとするなん――て!」
そして最後の言葉と同時に引っ張り上げて、床へと叩き付けた。
「がっ――」
さっきの吹っ飛ばされたのがダンプカーに轢かれたレベルものならば、今度は高層ビルから落とされたレベルの衝撃だ。
これにより無事だった骨と内臓が尽く破壊された。
「ほら、大人しくしていてくれればこれ以上はしないから」
エリザは真面目に私の身体の心配をしながらそう言った。
「よく勘違いされるけど、ボクは別に人の身体を破壊したり殺したりする事が楽しいわけじゃないんだ。特に君のように知り合いを痛めつけるのは心が痛む」
その台詞を聞いて私は思わず鼻で笑ってしまった。
「それでも……目的の為なら……殺人なん……て、なんとも……思わ……ない……でしょう?」
「うーん、君は本当に痛いところを付いてくるな。確かにその通りだけど」
困った表所で腕を組むエリザは隙だらけに見えた
今だ!
「おっ?」
反応する間も与えずエリザを石の棺に閉じ込めた。
蟻1匹通る隙間も無いほどの密閉空間だ。
そして間髪いれず、石の針が棺内を埋め尽くす。
それはあたかも石造りの鉄の処女の様だった。
「はぁっはぁっ」
私は何とかは上体を起こすと、石の棺から距離を取るため這いずって進む。
ついでに少し離れるたびに、棺の厚みを増やしていく。
10秒も経たないうちに、もはや石の厚さは1mを超えていた。
「今のうちに、少しでも回復を」
だが、時間は想像ほどは稼げなかった。
棺が衝撃で揺れて僅かに罅が入る。
「ちっ」
脱出が間近だと判断し、私はさらに距離を取るべく這いずって下がる。
「いや、さすがは不死身の魔女だね。あれくらいならすぐに回復するか」
だが、這いずる私の前に再びエリザが姿を現す。
石の棺は罅は入っているが、壊れてはいない。
壊す必要もなかったってことね。
「ならどうしたものかな」
考え込むエリザに、私は遠慮なく石柱をぶつける。
しかし、石柱はエリザの身体には当たなかった。
彼女はその場から動いてはいない。
彼女はその身体を霧状に変化させて石柱をすり抜けたのだった。
吸血鬼は霧に変身することはよく知られているが、まさにその体現だった。
そしてすぐに実体化し、私の首を掴んで持ち上げた。
「か、は……」
頸部を締め上げられたことで、呼吸と血液の循環が著しく制限される。
「骨を折っても内臓を潰してもダメなら……あっ」
エリザは良い方法を思いついたようだが。
「なら、四肢をもいでみようか」
それは私にはたまらなく嫌な方法だった。
戦闘パートに突入しました。
これから何話かは戦闘描写が続きます。
基本ゆる小説のつもりなので、サクッと終わらせたいです(願望)




