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Hollow cathedral  作者: 林檎亭
第1章 目覚め
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10:過去の手掛かり

今この子なんて言った?

やはり、私の事は覚えていない。

そう言った。

それはつまり、記憶を失う前からの知り合いという事じゃないのか。


「君は過去に会ったことがあるのか?」


アリシアはその問いに力強く頷いた。


「はい、私はずっと昔から御主人様と共におりました」


ずっと、共に!?


「え、もしかしてこれは突然のことじゃなくて、昔っからアリシアとは主従関係だったってこと?」


にわかに沸いた記憶の手がかりを見つけ、必死にそれに手を伸ばす。

しかし、アリシアは悲しそうに顔を横に振ると、


「申し訳御座いません。それはお答えできません」


「え……ど、どうして?」


予想外の答えに愕然とする。


「それもお答えできません。私がいまお答えできるのは、私は御主人様とは以前からの知り合いだった、ということだけです」


「どういうこと? それに、いまって?」


いま答えられないなら、後ならいいのか?


「それが、決まりだからです」


「決まりってなんの?」


「それも、お答えできません」


その突き放すような返事の連続に、一瞬カッとなりそうになったけど、アリシアの表情を見てその怒りは一気に冷めた。

後悔なのか、憐憫なのか、悲哀なのか、何処からくる感情か分からないけど、凄く辛そうな表情をしていた。

それは、決して個人的な感情ではなく、感情をも抑えないといけない決意の元、答えないのだと分からされてしまった。


「本当に、申し訳御座いません。もし納得できないと仰るならば、この命を差し出してでもお詫びいたしましょう」


命よりも大事な決意。どれだけの悲壮な決断なのだろうか。


「いや、いいよ。こっちこそ無理に聞いてゴメンね」


怒りなんて、とっくになくなっている。

気にしなくていいよ、と小さく震えるアリシアの肩に触れる。

こんな華奢な肩にどんなものを背負っているのか。


「だから、命を差し出すなんて言わないでね」


出来るだけ明るく言ってみた。すると、少しは安心させてあげられたのか、震えはゆっくりと収まっていった。


「御主人様……」


安心して涙腺が緩んだのか、アリシアの目が滲んできている。

いやぁ、よかったよかった。やっぱり女の子には落ち込んだりして欲しくないもんね。

などと、安心していたのもつかの間だった。


2014/4/24 誤字修正

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