107:ランチが運ばれてくるまでに
扉をくぐると、そこは何故か自分の部屋でした。
「なんで!?」
何処をどう繋げたら戻るの? 空間捻じ曲がってない?
「おかえりなさぁい」
そして室内ではリリスが優雅に紅茶を飲みながら待っていた。
「え、うん、ただいま」
つられて挨拶を返す。
「はぁ、なんか変に疲れたわ」
「ほとんど待ち時間だったからね」
あとに続いて狐々乃月とアリシアも入室してくる。
あとさりげにディスられてる気がする。
「あらぁ、私の迷路はお気に召さなかったかしらぁ?」
「いきなり放りこんどいて、気に入るもなにもないわ」
「そうですね。それに御主人様と離されてしまいましたし」
アリシアがしれっと照れるようなことを言う。
だから不意打ちは止めてくれ。
「貴方はどぉだったぁ?」
「うん、なんだかんだで楽しかったよ。2人はともかく、迷路や障害も丁度いいくらいの難易度だったし」
簡単にはクリアできないけど、頑張ればクリアできるという難易度は夢中になるのに最適だ。
「そぉ。それなら私も頑張った甲斐があるわぁ」
リリスはそう言って優しげに微笑むと、カップに口をつけた。
ここで話に区切りが付いたと見たのか、アリシアがリリスへと問い尋ねた。
「それで、例の件はどうなりましたか?」
「ん~、まぁ今の所は大丈夫よぉ。すぐにどうこうって事にはならないはずよぉ」
「そうですか」
意味深な、というか意味の分からない応答に何か蚊帳の外な気分になる。
「何の話?」
「ふふ、女同士の話よ」
気になって聞いてみたものの、そう返されては男の身では口を閉じるしかない。
古今、女同士の話に男が首を突っ込んで、それが功を奏した試しがない。
「では、私は昼食の用意に入りますね」
「え? あ、そっかもうそんな時間か」
朝食を取って一服して迷路に落とされ、そこから3時間近く遊んでいた。
もとい迷っていたから、もう昼前になるんだ。
「じゃあウチは――」
「狐ちゃんはちょっとこの部屋にいてくれなぁい?」
「は? なんで……あぁ。しゃーないな」
「ありがと」
また分からないところで話が進行している。
別に今更始まったことじゃないけど。
こちらの記憶が無いせいか、3人(イデアも含めると4人)はちょくちょくお互いだけ通じるような話をする。
共通の話題について話をするのは構わないんだけど、出来たら見てないとこでやって欲しいなぁ。
ちょっと疎外感。
「よぉし、私も一旦席外すわねぇ。あ、アリシアちゃんお昼ご飯は私の分も用意してねぇ」
「嫌です」
「そんなつれないこと言わないでよぉ。それじゃあお願いねぇ」
アリシアの返事を待たず、リリスはイデアを引き連れて出て行ってしまった。
「はぁ、仕方ないですね。それでは御主人様、私は昼食の準備のため部屋に戻ります」
「うん」
アリシアもお辞儀をして退室した。
結局、リリスの分も作るんだろうなぁ。
口ではなんと言いつつもリリスのことを嫌いきれないアリシアだからね。
「ほんなら、ウチはご飯出来るまで大人しく本でも読んどくわ」
「そうだね、そうしよう」
狐々乃月に賛同して、読みかけで置いてあった本を手に取った。
そして昼食が運ばれてくるまでに、2人で黙々と本を読み続けた。




