103:知力・体力・時の運
「あれ? アリシアと狐々乃月?」
最後と告げられたその部屋には、2人が並んで立っていた。
アリシアは涼しい顔で立っているけど、狐々乃月はなにかうんざりした顔をしていた。
「はい、お待ちしておりました御主人様」
「ホンマ待ったわ。どんだけ迷路に時間かけてんねん」
どうやら2人は先に迷路を攻略してここで待ちぼうけをくらっていたらしい。
多分かなり待ったんだろう。
だから狐々乃月は機嫌が悪いんだな。
「で、3人揃ったけど何か始めるんか?」
もうこれ以上待たされるのは御免だと、狐々乃月は天井に――リリスへと話しかけた。
「はいはぁい、お待たせぇ。3人揃ったみたいねぇ。それじゃあ、早速だけど始めるわねぇ」
リリスがそう言うと、突然部屋の中央に3組の机と椅子が現れた。
それぞれ2mくらい離れていて、机には横から覗けないように仕切り板が取り付けられていた。
「好きな席に座ってねぇ」
「やって。ほら座りーや」
「え? あー、アリシアは何処に座るのかな?」
「私は御主人様のお隣に」
「あ、そうですか」
何故か座る場所の決定を渋る3人。
というかほんとになんでだ。
「何悩んでんねんな。決まらへんなら、真ん中に座りーや」
「う、うん」
特にこだわりはないので言われるがまま真ん中の席に座ると、2人もすぐに両サイドに座った。
さっきの席選びはなんだったんだ?
「座ったわねぇ。それではぁ、ヘクセンケーフィヒ最後のアトラクションを開始しまぁす。イデア、説明お願いねぇ」
ヘクセン……あぁ、そういえばこの迷路そんな名前だっけ。
「ja。ソレデハ説明ヲ始メサセテ頂キマス。此レカラ開始シマスノハ、くいず対決デ御座イマス」
クイズかぁ。ここまで散々体力を試されてきたから、今度は知力ってわけだな。
「今カラ出題サレマス問イヲ最モ多ク正解シタ者ノ勝利デス。注意事項トシマシテ、解答時ハ必ズ御手元ノぼたんヲ押シテ解答権ヲ得テカラオ答エ下サイ」
見ると机の奥の右側に掌で押すのに丁度いい大きさのボタンがあった。
「同ジ問イデ三回間違エマスト、其ノ問イノ解答権ヲ失イマス」
つまりは早押しクイズで、解答権は各問題につき3回ってことか。
「マタ、先ノ迷路デノ成績ヲ考慮シマシテ、ぺなるてぃヲ設ケサセテ頂キマス」
「ペナルティ?」
「ja。到着時間差一分毎ニ一秒ノはんでヲ背負ッテ頂キマス。具体的ニハ、一位ありしあト二位狐々乃月ノ到着時間差ハ三分デシタ。其ノ為、狐々乃月ハ問題文読ミ上ゲ終了カラ三秒間解答ヲ待ッテ頂キマス。尚、コノ待チ時間ハ累積シマス」
「つまりは、ウチは問題が出てから3秒は答えられへんってこと? んで、それは問題毎ちゃうくて全体でってこと。例えばアリシアが最初の問題で3秒以内に答えられへんかったらその時点でハンデは消えてなくなる。けど、1問1秒で答えれば3問はウチは何も出気ひんと」
「ja。理解ガ早クテ助カリマス」
「まぁそれはええわ。んで、コイツとウチの差はナンボなん?」
それは大いに気になる。
狐々乃月がここに着いてから結構経ってたみたいだしなぁ。
もしかして30秒くらいハンデあったりするんだろうか。
「狐々乃月ト彼ノ差ハ百二十四分ナノデ、百二十四秒ノはんでガ彼ニ課セラレマス」
「124分!?」
そんなに差があったの!?
そりゃ2時間も待ちぼうけしてたら狐々乃月もあんなうんざりした顔するよ。
むしろそんなに待たされて何の不満も感じさせない表情をしてたアリシアが凄い。
「というか、そんなに2人は早くゴールしてたんだ? まさか障害の数に差があったりしないよね?」
ないだろうな、と思いつつ聞いてみると、マイクの向こうから隠す気のない大きな溜め息が聞こえた。
「nein。ムシロ彼女達ノ障害ハ貴方ニ比ベテ非常ニ難易度ノ高イモノデシタ」
あ、やっぱりそうなんだ。
最初の壁登りの時にリリスが言ってたもんね。
「うん、ゴメン聞いたのが悪かったよ」
「御主人様、仕方ありませんよ。まだ御主人様は病み上がりなのですから」
いや、確かに病み上がりではあるけど、いくら回復しても2時間もタイムを縮められる気はしないなぁ。
「質問ハ他ニ有リマセンカ? 有リマセンネ」
答える前に質問を締め切られた。
「ソレデハ、くいずヲ始メマス」




