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決裂


 ゼノンの希望ナイツリーダーが突然の病に倒れた。

 リディは慌てて彼女の元に駆け付ける……




 「隊長!」

 

 「……ありがとう。来てくれたのね」



 倒れたシュタインは、騎士たちによって医務室に運ばれていた。聖職者(プリースト)達の賢明な治療の甲斐もあったのか、意識は回復しており、ベッドから上半身を起こして話ができるまでには持ち直していた。リディは飛び出したものの、結局ソレルに案内されて此処にたどり着いたのだった。 



 「ふぅ。思ったより元気そうでやんすね」レンダは腰に手を当てて、偉そうに話す。

 「まったく、リディったら取り乱しすぎでやんすよ? 無敵のシュタイン隊長がそんな簡単に死ぬわけないでやんす!」


 「血を吐いて倒れたて聞いたら、普通動揺するだろ? お前が冷静すぎるんだよ」


 「騎士と言うものは、どんな緊急事態にも落ち着いて、冷静に対処する能力が必要なんでやんす。ですよね? シュタイン隊長」



 レンダが雰囲気を重くしないためにワザといつも通りに振る舞っているのをるのを理解していたシュタインは、2人のやり取りを見て小さく笑った。



 「ふふっ、ありがとう。あなた達を見ていると元気がくるわ」


 「隊長、それで、体の方は?」


 「そうね、ひとまずは落ち着いたかな……ただ」


 

 シュタインは、窓の外に顔を向ける。

 外には今日も、青い空と白い雲があった。その下には慣れ親しんだ、乾いた白色を基調とした美しい城下町が広がる。ずっと、彼女が守ってきた国の姿がそこにはあった。

 


 「……みんな、苦しい事だけど、良く聞いて」


 「えっ?」


 「私は、もう長くはない」


 「そんな……!」


 4人の若き騎士たちは驚きを隠せない。

 特に、リディのショックは大きく、体の力が一気に抜けてその場でしゃがみこんでしまった。しかし、シュタインは話を止める事は無かった。 

 

 「隠していてごめんなさい。実は、私は生まれつき高い能力を持っていたのだけれど、同時に<壊死病>という病を患っていてね。発症すれば1~2か月で肉体や精神を蝕まれて死んでしまうらしいの。だから、神官様からは普通の人間よりも短命になることを告げられていたわ。だけど、こんなに若いうちに発症する可能性は無いとも言っていた。おそらく、世界が一つになった事による環境の変化が発症を促したのかもしれない」


 「嘘でしょう? 嘘だと言ってください! 隊長が死ぬだなんて!」


 「リディ……残念ながらこの病は治療法がないの。聖職者(プリースト)の魔法を使っても直せないし、薬も効かない。今まで発症して治った人間はいないと言うわ」


 「嘘だ……」



 リディは、まるで幼い子供に戻ったかのように、シュタインのベッドにしがみつき泣き出した。

 他の3人はただ、それを見守る事しかできなかった。



 「大丈夫って言ったじゃないか! 任せておけって!」


 「ごめんね……本当に予想していなかった事なの。あなたには悪いと思ってる」


 「謝らないでよ、姉さん!」


 「!!」



 次の瞬間、リディの顔に痛みが走った。

 シュタインが、彼の顔を平手で打ったからだ。その顔には、さっきの穏やかな表情からは想像もできない怒りの表情が現れていた。 



 「貴様……立場を(まきま)えろ!」


 「姉さん?」

 

 「さっきから、何だ? めそめそめそめそと、赤子のように泣きついて……皆の目の前で醜態を晒すただのふぬけか!? それなら、この城に仕える必要はない。甘ったれたふぬけなど騎士を名乗る資格はない! さっさと、ここから立ち去るがいい! 二度と顔を見せるな!」


 「そんな!」


 「五月蠅(うるさ)いっ!」


 思いきり、突き倒されて、リデイは後ろに尻餅をついた。そして、怒りが収まりそうにないのを悟った仲間たちによって、無理やりに部屋から引きずり出された。


 

 リディの頭の中は混乱していた。

 実の兄弟のように慕っていた、姉のような存在のシュタインに迫る死。そして、突然冷酷なまでに拒絶された現実に、対処できるほどの精神力を持ち合わせていなかったのだ。




 彼らが居なくなったのを見届けると、シュタインは大きくため息をつき、再び窓の外に目をやった。

 その灰色の瞳は、深い苦悩と悲しみに満たされていた。








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