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第87話「幕間・妹が苦しんでるようです」

 第87話で御座います!!


 皆様、お久しぶりです。

 かなりのグダグダ感を感じる話になっておりますが、更新させて頂きます。

side 焔耶


「っふう」


 ワタシは、朝の日課にしているスワンチカの素振りを終えて、一息ついていた。

 薊城に帰ってきて暫く経ったが、戦の慌ただしさも漸く落ち着きを見せてきた。


「…んむ、そう言えば、近頃お姉様に可愛がって貰ってないな」


 そう呟いて、ワタシは自分の身体を抱きしめた。

 無理矢理されて怒った後、お姉様から誘われる事が無くなった気がする。

 そう言う意味では無かったのだが、あの時のワタシは八つ当たり気味、いや我が儘だった気がする。

 お姉様は許してくれたが、ワタシ自身が許せなかったのもあった上に、お姉様が与えてくれる快楽に溺れてしまい、うやむやにしてしまいそうだった事が許せなかったのだ。

 確かにワタシだけの失敗ではなかったし、お姉様が無事でちゃんと陳留にも帰れたんだからそれで良いとお姉様が言っていたが…


 あーっもう、何だかイライラするぞ!!

 うむ、無心になる為に素振りをもう一度やるぞ!!

 と言う訳で、ワタシは時間の許す限り素振りを繰り返したのだった。




「…耶、焔耶!!」


「っ!!はいっ何でしょうか!?お姉様!!」


 ボーっとしてしまい、お姉様に呼びかけられても気付かなかった様だ。

 今は仕事中だと言うのに、ワタシは一体何をしているのだ。


「焔耶、大丈夫?どっか調子でも悪いのかな?」


 藍お姉様が、心配そうにワタシの顔を覗き込んできた。

 その藍お姉様の顔をワタシの目が捉えた時に、ワタシの心臓が早鐘を打った様に早まった。

 やはり、ワタシはお姉様に魅了されているらしい。

 お姉様になら、何をされても反応してしまうだろうな。

 『何』の部分は聞かないでくれ、ワタシにだって羞恥心がある。


「すいませんでした、以後気をつけます」


 そう言うと、お姉様は少し思案顔になったと思ったら、急に立ち上がってワタシにこう言ってきた。


「焔耶、今日は午後から街の警備状況の視察だったよね?」


 そう言われて、ワタシはすぐに頭の中をひっくり返して思い出す。


「はい、午後からはその予定になっております」


 ワタシは藍お姉様の秘書官だからな、流石に藍お姉様の予定は頭に入れている。

 しかし、お姉様は何故…

 まさか不甲斐ないワタシは置いていくという事なのだろうか…

 などと考えていると、藍お姉様に眉間を人差し指でつつかれた。


「何を難しい顔をしてるのかな、焔耶は。まさか、私が焔耶を置いていくかもしれないとか考えちゃってるのかな?」


 藍お姉様は何時もの茶目っ気のある顔でそう言ってきた。

 うっ、やはり顔に出してしまうか、結構恥ずかしいものがあるな。


「は、はい。藍お姉様の足を引っ張ってしまうかもしれませんので…」


 そう言うと、藍お姉様に頭を撫でられた。


「焔耶は、私の秘書官でしょ?なら、私と一緒に付いてくるのが当たり前じゃないの?それとも、私と一緒に視察に行くのはイヤ?」


 藍お姉様がそう宣った。

 その言葉は…


「狡いですよ、藍お姉様。そんな言い方されたらどんな事でもワタシが断れない事を知ってるのに…」


 そう言うと今度は何も言わずに、藍お姉様はワタシの頬を撫でてきて、ワタシはその感触に目を細めるのだった。




 所変わって、今ワタシは藍お姉様と共に、薊城の城下町に出ている。

 現金だが、『2人で視察に行く』と意識した途端、凄く集中出来たので今こうして藍お姉様と2人、何処で食事をするか考えているのだ。

 ふふっ、当然『視察』なのだから、腕を絡めたり、見つめ合ったり、お姉様に甘えたりは当然出来ないが、2人で街に出て見回るなんて久しぶりで、とても楽しいものだった。

 ふむ、少し遅かったらしく大半の店は忙しくなる時間になってしまったようだ。

 この混雑では、2人で座れる場所が見つからないな。


「ふ~む、んじゃ焔耶~食べながら行こうか」


「え?あ、ちょっと!?藍お姉様!!」


 突然の食べ歩き発言を受けて先に進み始めたお姉様を、必死に追いかけようとしたら、藍お姉様はすぐに立ち止まってしまい、ワタシは藍お姉様の背中にぶち当たってしまった。

 藍お姉様は吹っ飛びはしなかったものの、地面と口付けを交わしていた。


「お、お姉様?大丈夫ですか?」


「ちょっと痛かったよ…」


 見たところ藍お姉様の鼻の頭が少し赤く涙目になっていた。


「すいません、藍お姉様…」


 何というか、ワタシと藍お姉様の息と言うか呼吸が全く合ってなかった。


「焔耶?大丈夫?」


「え?あ、大丈夫、です…」


 うん、ワタシは大丈夫、問題無い…

 あれ?どうしたんだろう?

 ふらふら、する…

 藍お姉様の顔が3つに見える。


 と、思った所で、ワタシの目の前が真っ暗になった。


 う、さ、寒い。


 頭が痛い。


 頭が熱い。


 身体が痛い。


 あ、急に額に冷たくて気持ちいい物が…

 頭がボーっとしているが、気になったので目を開けてみる。

 額が冷たい理由は、水に浸した手ぬぐいが置いてあるからの様だ。


「あ、焔耶。気分はどう?」


「藍お姉様?此処は…ワタシの部屋?」


 多分ワタシの部屋だと思われる。

 藍お姉様の部屋とは違うように思うし、多分ワタシの部屋だろう。

 どうやらワタシは、視察中に倒れてしまったらしい。


「お医者さんが言うには、風邪だってさ。ゴメンね、焔耶。私、焔耶の調子が悪いの判ってたのに休ませなかったのは、反省してるよ」


「いえ、此方こそすみませんでした。自分の調子に気づけないなんて、どうかしてたみたいです」


「いやいや、これは…」


「いやいや、それは…」


 と、2人で謝罪合戦になってしまった。

 途中で気分が悪くなってきたので、ワタシは藍お姉様に合戦の中止をお願いした。


「…藍お姉様、止めましょう、不毛すぎます」


「あ、う、うん、確かにね。焔耶もしんどい時にゴメンね」


「謝罪は受け取りますから、藍お姉様も受け取ってくださいね」


「うん、ありがとう焔耶。私も謝罪を受け取るよ」


 漸く謝罪合戦が終わってホッとすると、身体の疲労感以上に空腹が襲ってきた。

 どうやら、病気はほとんど治っているらしい。 そう言えば、一体何時まで寝ていたんだろう?

 時間の経過が判らない上にさっきは真っ暗で、ワタシが起きた時に藍お姉様が火を灯して、灯りをつけてくれたから今は夜だという事だけは判る。


「藍お姉様、ワタシは一体何時まで寝てましたか?」


「え~と、3日かな?」


「なっ!?」


 み、3日間も倒れていただと!?

 い、いかん!!

 確かあの日の次の日には、異民族対策の会議があったはず、資料もワタシが用意してたから渡す手はずをその日の内に済ませる予定だったのに、何てことだ…


「もしかして、会議の事気にしてる?」


「…」


 そう言われて、ワタシはただ頷いた。

 またか、またなのか、ワタシは一体何をしているんだ?

 藍お姉様だけでは飽きたらず、他の者達にまで迷惑をかけるなんて…

 そうして、ますます気が落ちていくワタシの寝ている寝台の横に、藍お姉様が椅子を動かしてきた。


「ま~た、焔耶君は落ち込んでるのかね?」


 と、藍お姉様はワタシに語りかけながら、額を冷やしていた手拭いを取り替えてくれた。

 大分身体が楽になっている。

 まだ調子は良くないが、多少無理をすれば身体は動かせるようだ。

 ならば、直ぐにでもと身体を起こそうとすると、藍お姉様に止められてしまった。


「何を起きようとしてるのかね?」


「いえ、多少調子は悪いですが、身体は動かせるようですのですぐに復帰します」


「あのね~、焔耶さんや。風邪引いたって事は無理しすぎたって事ですよ?私にいっつも無理するなって言う1人であるその焔耶さんが、風邪引いて倒れた訳ですよ。私が倒れた時、焔耶さんは激怒してませんでしたかね?さっきまでは心配してたけど今、私は怒ってますよ?」


 と言われて、藍お姉様は『私怒ってます』と言う態度を取っているようだ。

 なのだが、藍お姉様は基本的に表情に出して怒らない人なので、見た目では全くと言って良いほど怖くなかったりする。

 だが、今のワタシには藍お姉様の一つ一つの所作が、凄く怖かった。


「ら、藍お姉様…」


 震える声を聞いて、驚いたのか藍お姉様はワタシの声を聞いて、すぐにワタシの手を両手で掴んできた。


「ど、どうしたの!?しんどくなった?脅かしたのがマズかった!?大丈夫!?あ、すぐお医者さんを!?」


 自分で風邪だと言っておきながら、ワタシの態度で慌てふためく藍お姉様。

 どうやらワタシも藍お姉様も動揺しているらしい。

 だが、切羽詰まっているワタシには、それに気付く余裕など欠片もなかった。


「捨てないで…」


 ただ、ワタシにはそれしか言えなかった。

 藍お姉様に相応しい女になる所か、ワタシは藍お姉様の足を引っ張ってばかりいて、もうどうしようもなく怖かった。

 身体の震えも止まらない、ただ怖かった。

 そんな時、藍お姉様がワタシの身体を少し奥に押しやった。

 お姉様?一体何を?

 そう思っていると、藍お姉様はワタシの寝ている寝台に潜り込んできて、ワタシに久しぶりの口付けを交わしてくれた。


「お休み焔耶」


「へ…あ、ワタシは」


「とにかくお休み。今は寝なさい、側に居るから身体を休めなさい」


「…はい」


 さっきまで震えていたのが、嘘の様にワタシは藍お姉様の胸に顔をうずめていた。

 藍お姉様の心音が聞こえてきて、ワタシはウトウトし始めたのだった。






「…耶」


 誰かが呼んでいる。

 あ、この声は…


「焔耶」


「おはようございます、藍お姉様」


 そう挨拶すると、穏やかな表情で藍お姉様が応えてくれた。


「ん、おはよう焔耶。気分はどう?」


「良いです…あの藍お姉様…」


 答を聞こうとした時、藍お姉様はワタシの言葉を遮ってきた。


「なら、少し動ける?」


 そう言われて、ワタシは服を着替えて藍お姉様と久しぶりの外に出た。


「ん~、気持ちいい朝だね~」


「そうですね」


 簡単な返事しか返せない。

 藍お姉様はワタシが答を聞こうとする度に、遮ってくるので返事を簡単にしか返せなくなったのだ。

 そして、ワタシが朝一に鍛錬をしている城の一角に来たとき、突然藍お姉様が話を切り出してきた。


「焔耶、明日から何時も焔耶が朝からしてる鍛錬を、私もさせて貰うからね」


「は?え、いや、へ?」


 急に朝の鍛錬を一緒にする宣言をされて混乱しているワタシに藍お姉様は近づいてきて、答を返してくれた。


「焔耶、何か重大な勘違いと言うか、思い違いをしてるみたいだから言っとくけど、焔耶が何をしても、もう私から逃げることは出来ないんだからね?」


「藍お姉様?」


 藍お姉様はワタシを抱きしめてから耳元で囁いた。


「まあ、何度でも言ってあげるけど、焔耶、お前を手放す気は無いよ。一生ね。焔耶も私について来るって言ってたでしょ?忘れないで、ずっと一緒に居るって約束した事を」


 しまったとしか思えなかった。

 思い違いも甚だしい。

 誰に言われた訳でもなく、藍お姉様とオーディンの前でワタシは藍お姉様の為に全てを捧げて生きると誓ったはずだ。

 例え誰に何と言われようと、ワタシ自身が自分に幻滅しようと、ワタシはただ、藍お姉様の為に生きるのだと、そう誓った事を忘れていた。


「まあさ、失敗なんていくらでもあるよ。人間なんだもん」


 藍お姉様が耳元で囁きながら、ワタシの髪を撫でる。

 何時の間にかワタシも負けじと、藍お姉様を抱き締めていた。

 すると、誰かが此方に近づいてくる気配がした。


「焔耶?風邪はどうやら治ったみたいね」


「「緑(姉さん)」」


 ワタシと藍お姉様が声のした方を向くと、少し機嫌の悪そうな緑姉さんが此方に向かってきていた。


「あ、緑姉さん。ご迷惑をおかけしました」


 藍お姉様が離してくれたので、緑姉さんに向き直り謝ると、緑姉さんの両手がワタシの顔を掴んで口付けを交わされた。

 何やら急に口付けされるのが多くなってきた様な気がする。


「焔耶、下らない事は考えずに、その日自分に出来ることをしなさい。失敗したらあたしや藍に言いなさい。いくらでも何とかしてあげるわ。その代わり、同じ事をしては駄目よ?」


 最初の言葉は厳しく、その後の言葉はとても優しく緑姉さんは話してくれる。


「…はい、緑姉さん」


「そうそう、お姉さん達に任せなさいな、可愛い妹兼嫁さんの為なら何だってするんだからね~」


 そう言いながら、片目を瞑って何時もの茶目っ気を出す藍お姉様。


「ありがとうございます、藍お姉様」


 うん、頑張ろう。

 何時も通りで良いのに、何故かワタシは逸ってしまった。

 ワタシはワタシであってすぐに代われるわけでもないのにな。


「あの、緑姉さんにもワタシがおかしい事が判ったんですか?」


 さっき緑姉さんはワタシが悩んでる節を理解していたと言う発言をしていたので、そんなに判りやすかったのかと思い聞いてみた。


「ああ、それは見てれば判ったわ、ただ何に悩んでるのかは忙しかったから判らなかったけど、あなたが風邪で倒れた時に藍から聞いておいたの」


 なるほど、藍お姉様が緑姉さんに伝えていたのか…

 全く、ワタシは何時まで経っても…

 ってこういう考え方がいかんと言うに!!


「藍お姉様、緑姉さん。余り同じ事はしたくないですが、また悩んでしまったら…その…」


「正直に言ってくれたら、ちゃんと応えてあげるよ~」


「そうね。後、一応関係各所に詫びを一緒に入れに行きましょう」


「はい、緑姉さん」


 うん、何時も通りでいい。

 何時も通りに行こう。


「まあ、今回はワタシが風邪で倒れてしまうと言う失態を犯してしまいすいませんでした、緑姉さん」


 そう言われた、緑姉さんはワタシの目を見て意図が判ったのか話に乗ってくれた。


「そうね、あなたが倒れてしまったら、藍が無茶した時にお説教しにくくなるわ。あなたもあたしや華琳みたいに藍に対しての止め役なのだから身体を労りなさい」


「はい、緑姉さん」


「な、何故に焔耶が落ち込んでたけど立ち直りました~からの私弄りに方向転換したのか一応聞いておいていいかな?」


 藍お姉様からそう言う質問が来たので、返事を返すと緑姉さんと声が重なった。


「「いつも通りだから」」


「ですよね~」


 と言い、藍お姉様は地面に『の』と言う字を書き始めた。

 緑姉さんが言うには、藍お姉様が落ち込んだ時の姿の一つらしい。


 うむ、落ち込んだ藍お姉様も可愛いな。

 あれ?この物言い、何処かで聞いたことが…


 この後、ワタシと藍お姉様と緑姉さんは関係各所に謝罪回りをして行った。

 当然だが、藍お姉様と緑姉さんは付いてきて外で待っていたり、余所に居てなるべくワタシを1人にしてくれた。

 ワタシとておんぶにだっこなどごめん被るからな。


 そうしている内に、良蓮が泣きついてきたり、やんわりと白蓮様が叱ってきたり、緋焔がワタシの額を軽く叩いてきたり、星がニヤニヤしながら『昨晩はお楽しみでしたな?』と言ってきた。

 単純な何時も通りがこんなに嬉しいなんて…


 自分でこの『何時も通り』を壊さない様にしようと誓った春の日々だった。


side 焔耶 out

 如何だったでしょうか。


 一月近く更新出来なくて申し訳なかったです。

 今回は、焔耶がグダグダと悩みまくる回になってしまった上、次話も悩みながら書いておりますので遅れそうです。

 こっちの話が滞っているのに、別の話を書いている私をお許しください。

 こっちも早いうちに、更新出来るよう頑張りますよ~。

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