第49話「血戦!!まぼろしの城」
第49話で御座います!
今話では、一応私の中では、仲良しの彼女達が活躍してたりします。
尚、私にしては久しぶりのシリアス仕立てになっております。
side 焔耶
ワタシは今、国境沿いにある城『幻城』で袁紹軍に対して睨みを利かせている。
まあ、今薊城では、お姉様達が会議などをしている状況だからな、ワタシにだってこの城の警備につくと言う事が、如何に重要な事か理解しているつもりだ。
「焔耶!!定時連絡異常無しだって!!」
「そうか…良蓮、兵の交代時間を少し早めて貰って良いか?」
「何かあった!!」
「いや、今は何もないんだがな。妙に静かなのが、気になるんだ。」
「…判った!!敵に備えて、交代の時間を少し早めるね!!」
「ああ、頼む。杞憂なら良いんだがな…」
辺りが暗くなって来たな。
ワタシもそろそろ休むとしようか。
何かが起こった時に、体調不良で指揮官が動けませんでした。
では、冗談にもならないからな。
こうして、ワタシは兵に休む事を伝え、適当な所で良蓮にも休むようにと伝言も頼んで床に就いたのだった。
…異変は、夜が明けた頃に起こった。
「文長将軍!!」
「っ!?一体何だ!?」
突然、兵がワタシを起こしに来た。
あ、まさかお姉様が…
冗談は横に置いておいて。
ワタシは当然だが何時でも動けるように服は着たまま眠っていた(本当なら具足も付けたかったのだが、藍お姉様には綺麗な身体を見せたかったので、型が付きやすい具足は外したのだ。)ので、具足をつけて部屋を出た後、伝令に来た兵に尋ねながら城壁に向かっている。
「袁紹軍が国境を越えたか?」
「はっ!!現在袁紹軍は幽州の国境を越え、幻城に向かって行軍している様です!!」
「袁紹軍の数は?」
「斥候の報告によるとその…」
「構わん、そのまま報告しろ。」
「はっ!!5万の軍勢を確認したと、旗は顔と文だったそうです。」
「…主力か。判った、下がれ。」
「はっ!!」
緑姉さんが言っていた通りになるとはな…
緑姉さんは、袁紹軍が10倍の数でこの城を攻め、その軍勢は主力で来る可能性があると言われていたから、その心構えをしていたが…
やっぱり、怖いな。
この城は元々、袁紹軍と戦うためだけに、緑姉さんが作った城だ。
つまり、ワタシが此処に送られた理由は、此処で袁紹軍と戦って…
ワタシは何を考えているんだ?
確かにワタシは多少聡くなったかも知れんが、本質は変わってなどいない。
戦ってみなくては、勝ち負けなど判らんのだからな。
「良蓮。」
「あ、おはよう焔耶!!」
「ああ、おはよう。」
「凄い数が迫ってきてるよ!!」
「その様だな。良蓮、援軍要請は出したのか?」
「早馬を薊城にもう出したよ!!」
うん、良蓮の早馬となると薊城に着くのは3日後といった所か…
其処から準備をして此方に向かったとして…余分に18日はかかると見ておこうか、余裕は持たせるべきだしな。
一当てしたい所だが、馬が伝令用しかないから速攻をかけられないし、此処は定石通りの籠城戦をするしかないか。
精々耐えて見せよう、緑姉さんが知識の限りを詰め込んだと言うこの幻城の恐ろしさを、見せつけてやろうじゃないか!!
「跳ね橋を上げよ、これより籠城戦を開始する!各員持ち場に就け!!」
『はっ!!』
戦闘が開始されて早9日が経ったが、袁紹軍は外堀を未だに越えられていない。
最初の日の攻めで、この堀の恐ろしさを味わってから袁紹軍は堀を埋める事に躍起になっている。
この堀は深さは腰程度の深さなのだが、『水が黒い』為、底が全く見えず、何も知らずに入ると、見えない底に張り巡らされた、大小様々な杭が足に突き刺さる仕組みになっている上に、水に油が入っているため城壁を登ることが出来ないのだ。
それに気付くと今度は、袁紹軍は堀を埋めにかかるが、ワタシ達は当然矢を撃ちまくり、堀を埋めようとする袁紹軍の動きを阻止しようとする。
この流れは当然此方の計算通りだ。
時間稼ぎなんだからな。
今度は矢の撃ち合いになったが、気にせず撃ちまくる。
袁紹軍はワタシ達の矢が切れるのを、期待しているかも知れんが、この城は緑姉さんが作った用意周到な城だ、備えは当然ある。
と言うかこれを考えた緑姉さんは酷いと思う。
実はこの城、地下道が通っていて、わざわざ補給用の偽装村を作って其処に小荷駄が余裕をもって通れる位広い地下道を2本通して補給線を確保しているのだ。
相手は不思議がるだろうな、何故か矢が尽きないし敵の兵が飢える様子すら無いのだから。
よしんば気付いても、もう遅いしな。
予定の日にちは半分を経過している。
そろそろ外門の城壁での戦いも限界だな。
数に差がある以上仕方がないが、寧ろ耐えた方だろう。
ワタシ達は城壁から下がり内門まで逃げた。
この外門から内門までの道のりにも緑姉さんの策略…いや、嫌がらせが仕込まれている。
この幻城は、緑姉さんが袁紹軍と戦うためだけに作った城だと説明したが、その所以は城の中にもある。
この城には、兵しか居ないのだ。
普通は領民を守る為に城壁があるのだが、それを最初から取っ払ってあるので、領民を守りながら戦うと言う枷がこの城には無い。
更に酷いと思えるのが、外門から内門の中には厚い壁と居住区の様な物を利用して、巨大な迷路に仕立てており通路も当然狭いので人が2人並んで通れる程度なのだ。
居住区の様な物も中に人が入れるので、不意打ちを喰らわせる事が出来るし、撤退は網目状に張り巡らされた地下道を使っている。
この地下道は、補給線とは別の為、罠として落とし穴などが仕掛けてあり、味方以外が通りにくくなっている。
通る事が出来たとしても、この地下通路は人1人が通れる通路なので、相手の死体を積み上げれば体の良い壁になる。
また、街にあたる部分が迷路の為、袁紹軍が休憩を取るには迷路を破壊するか、一旦外に出るかしないといけないため、此処でも時間が稼げる。
ふむ、予想通り壁を壊し始めたな。
しかし、ワタシは聞いているからかも知れないが、緑姉さんが言う人の心理とか言うのは面白いな。
壁を破壊するのに懸命になるあまり、壁に使われている材料は気にならないらしい。
ワタシは味方が迷路内に居ないことを確認した後に、兵に迷路の皮を剥ぐように命じた。
今はもう夜なのだが、内門の城壁から見える景色は、赤一色だった。
『火計』…迷路の壁に使われている材料の大半が木などを加工して更に椿油などを仕込んで燃えやすくしたらしい。
内門の外側は地獄絵図と化している。
外門の城壁と内門の城壁は石で出来ている為、燃えることがないのだが、(尚、外門の城壁と内門の城壁は繋がっていない為、城壁を使って外門から内門へ侵入する事は出来ません。)人の焼ける臭いは相変わらず、嫌なものだな…
火計を見たり行ったりは当然しているが、ワタシにだって慣れないものもあるんだよ。
そろそろ時間なんだが、まだだろうか?
まあ、耐え続けるだけだ。
ああ、ちなみに良蓮は此処には居ない。
あいつは大分前に地下道を通って、偽装村から此方に向かっているはずだ。
良蓮は騎馬戦の方が得意だし、逆に白兵戦は出来るがさせない方が良い。
何せ、騎馬の公孫軍、白馬義従の一角を担ってる奴だからな。
火が収まった頃には、既に日は昇っていた。
袁紹軍は昨夜の火計を物ともせず、内門の城壁を登ろうと躍起になっているが、此処にも緑姉さんの手が加えられている。
少しずつ城壁が外門の方に傾斜しているのだ。
つまりは、相手の方に城壁が傾いているので、梯子の長さが合わないと、梯子が倒れたり手を伸ばしても届かなかったりしてしまうのである。
外門ではこの加工をしていないし、傾斜が分かり難いからか、気付きにくいのでやっぱり時間稼ぎが出来るようになっていたりする。
ちょっとした問題点は下が見難い点か、緑姉さんはこの内門を作る時に何かを悩んでいたが、教えてくれなかった。
多分この見えにくいと言う部分だと思うのだが、何故『崩すか』等と言っていたのだろう?
この城壁は欠点はあるけど、立派に役目を果たしているのだから…
まあ、緑姉さんが考えていることをワタシが判る訳もないか。
「援軍は必ず来る、各員一層奮起せよ!!」
『はっ!!』
さて、籠城戦もいよいよ最後だな…
流石に5万の軍勢を籠城戦とはいえ5千で耐えたのだ。
生き延びた兵が居るならば、その者達に感謝と恩賞で答えてやらねばならんな。
考え事をしながら、鈍砕骨を右肩で担ぎ、左手には短めの剣を手に、お姉様に教えて貰った鈍砕骨の隙を左手の剣で消しながら戦い続ける。
漸く袁紹軍の雑兵を蹴散らし一息つく。
辺りを見渡すと、ウチの鎧を着た見知った兵が走ってきた。
「文長将軍!?よくぞご無事で!!」
「…ああ、お前こそよく生きていたな。」
「我々は公孫家に仕える北の精兵で御座います。そして、将軍が命掛けで戦っておられるのを見て奮起せぬ腑抜けは我が軍にはおりません!!」
「ありがとう、伝令を頼めるか?」
「はっ。」
「各部隊長に兵を纏めて反撃に備えさせてくれ。」
「っ!?ならば!!」
「次の攻撃を凌ぎ次第反撃に移る。」
「承知しました!!」
伝令が走っていく。
この状況だ、どうなるかもはや判らん。
だが、ワタシはワタシに出来る事をやるだけだ。
新たな敵兵が現れたか、後は突き進むのみ!!
藍お姉様・緑姉さん・緋焔・星・良蓮・白蓮様。
そして、我が師にして母上、桔梗様…
願わくば、今世でもう一度お会いしたいです。
『我が名は公孫家が将、魏文長なり!我が首欲しくば…名乗り出よ!!』
side 焔耶 out
如何でしたでしょうか?
何かヤバそうな感じが出てたら幸いです。
「作者、ちょっと待て!!」
《何かね?藍さん。》
「あんた…焔耶をどうする気?」
《どうして欲しい?っと冗談だから、ミストルティンを仕舞え。》
「ど・う・す・る・気?」
《一応ルート決まってはいるんだけどね、3つほど。》
「3つもあるの?」
《うむ、見てみる?お前さんの記憶に残らないけど。》
「見る。」
《即答か、んじゃ簡単に書いたルートだけどこれね。》
「…あのさ。」
《何かね?》
「私に恨みでもあるの?」
《無いよ。》
「三番以外通りたくない…」
《ほう、三番も大概やけど?》
「酷いよ…こんなの…」
《冗談だがね。》
「へ?」
《3つ考えたルートはマジだったんだけど、エンディングにどれも合わなかったんだわ。》
「は?どういう事?」
《つまりは3つ共ボツ案な訳だ。》
「…ぶち殺す。」
《うおっ、だからミストルティンは危ないっつの『大盾』!!》
「くぅ~か~た~い~!!」
《作者をマジで斬り殺すとかねぇ…とりあえずこれ見て機嫌直してよ。》
「…うん?あ、これ…」
《第50話だべ。》
「本当にこの通りなの?」
《私の気が変わらなければね。》
「このままでいて欲しい、と言う訳で次回も宜しくね♪作者、変えないでよ?」
《善処はしよう。》