第43話「これからの未来の為に」
第43話で御座います。
サブタイが三回も変わってしまいました。
今、私達は自分達の本拠地である薊城の謁見の間で拝礼を行っている。
緑の打った手の為だが、こう来るとは思わなかった。
白蓮を筆頭に緑以外全員が緊張している理由は2つあるが、その1は目の前の人物のせいだ。
現皇帝『劉弁』陛下。
まだ幼い彼女が玉座に座り、これまた幼い現渤海王『劉協』皇子が寄り添う様に一緒に居る。
そして緊張を増やす要因その2が、幽州組が拝礼してる横にいて、同じく拝礼している董仲穎率いる董卓軍の面々である。
彼女らが何故此処に居るかの前に、軽く誰が居るか説明しておこう。
まず董卓軍の当主である、董仲穎ちゃんだね。
儚げな深窓の令嬢然とした美少女だ。
しかし、その瞳の力は、他を圧倒出来る確固たる意志を秘めている。
それでいて、物腰穏やかでさっき顔を合わせた時、軽く挨拶したけど先に会ってたら、私の仕える人間違ったかも知れなかったね。
しかしこの子、可愛すぎませんか?
へ?浮気なんてしませんって。
こんな儚げな子が悪政ねぇ。
妬み確定だね、袁紹ちゃん格好悪いよ。
んで、私達に隠しているようだけどバレてる、不満バリバリな仲穎ちゃんの知恵袋、賈文和ちゃんね。
緑曰く、「そんなに仲穎が大事なら、有無をいわさず涼州の檻にでも放り込んでおけ!」と仰っておられました。
君子危うきに近寄らずを、地で行ってたら、今頃此処に来ることすら無かっただろうね。
私はその気持ち、判らない訳じゃない。
緑も当然判ってるけど、洛陽は危険すぎると言うのが、知恵者なら少し考えたら判るはずなんだそうな。
まあ、仲穎ちゃんに押し切られたんだろうね。
あの雰囲気に、ちょっとウルウルしながら「駄目?」って言われたら、私だとOKしてしまうだろう。
続いて武官3人衆の1人、華雄将軍だ。
複雑に言うと猪、簡単に言うと猪な彼女である。
一直線な所がかなり強く出ているけれど、彼女も悪い子じゃ無いのが判る。
寧ろ、昔に見た焔耶を思い出したからだ。
一応これからやって行く以上、緋焔か星か焔耶辺りに揉んで貰ったら、この世が広いって気付いてくれるんじゃなかろうか。
ちなみに、私は戦うの嫌いだから混ざりませんよ~。
えと、次は張文遠ちゃんだね。
彼女はまあ、星に似てる気がするよね。
城に着いて早々、兵に指示を出していた姿は見事だったけど、終わった瞬間に食堂探して酒飲んでたから、今の星と同じ生活してるなぁと思った訳ですよ。
ただ、私は彼女がキライダ。
ナゼカトイウトキョニュウダカラダ。
ナゼアンナニオオキイノ?
ワタシナニカシタカナ?
カミトカイウヤツガイルナラ…イタネ。
アイツラガっ!?って私どうしたんだろう?
文遠ちゃんの事を考えたら意識が飛んだ?
あはは~ちょっと憑かれ、んんっ、疲れてるみたいだね~。
そして3人衆最後の1人が、緑曰く、危険人物指定された子である、呂奉先ちゃんです。
緑が裏切りの可能性を示唆したけど…。
この子そんな事するかな~。
だって、奉先ちゃんの目、仲穎ちゃんと同じ位澄んでるだもんね~。
ちょっと謁見の間に来るとき、彼女とも話?たんだけど、この子も悪い子じゃ無いのが判った。
「お前良い匂いがする。」とか涎を出しながら言われて焦ったんだけどね。
その後ずっとこっちを見つめてたから何かな?と思ったら、「く~」と言う音が奉先ちゃんから聞こえて、横に居た次で説明する公台ちゃんが慌てて、仲穎ちゃんが困った様に微笑んで、文和ちゃんが片手で頭を支えて呆れてた。
奉先ちゃんがお腹を減らしてる様だったので、謁見の最中にこっそり食べようと思った、私特製のあるお菓子を、彼女に一つ上げたら、手首ごと食べられて本気で焦ったね。
おかげで手が涎でべとべとになっちゃったよ。
奉先ちゃんから美味しいからもっと欲しいと言われたが、残りが2つしか無かったので断ったら、罪悪感しか湧かない目で今も見られてます。
ま、まあ、純粋な子だから気をつけた方が良いだろうけど、其処まで気を使う程じゃないと私は思ったよ。
最後の人物は、さっきちょっと名前が出た陳公台ちゃんです。
何か緑達が初見の奉先ちゃんと話そうとしたら、蹴りが飛んできたそうだ。
私はその時公孫軍の筆頭将軍なので、劉弁陛下と劉協皇子の守備陣営の構築計画に駆り出されていた為、その場に居なかったのだ。
んで、解放された夜、キョロキョロと辺りを見渡していた公台ちゃんを見かけて声をかけたが、奉先ちゃんを探している最中だから、声をかけるなと言われたので、公台ちゃんを捕まえて(抱っこした。)一緒に探してあげたのだ。
邪魔するなとか言われたけれど、この城は素人さんが1人で歩ける程簡単な作りじゃない事を伝えて、探していると、丁度幽州組と仲穎組の皆が城の食堂で食事をしていたので、事なきを得た。
公台ちゃんも指をツンツンしながら礼を言って、奉先ちゃんの所に行ったので、素直じゃないな~と思った訳ですな~。
人物説明が終わった所で長々しいセレモニーも終わり、劉弁陛下や劉協皇子、仲穎ちゃんにする必要あるのか判らないが、事態の説明する事になった。
「この度、皇帝陛下及び渤海王様や仲穎様にお越し頂いたのには訳が御座います。」
おおっ、流石白蓮、カッコイイね!
さっきまでカチコチだったのが嘘のようだ。
「あ、う、えと、何故朕達をえ~と、そう幽州へ呼んだのか聞いてもいいかや?」
「はっ、大変言いにくい事で御座いますがよろしゅう御座いますか?」
「あ、う、協…」
「判ったよ、弁姉さん。公孫賛、構わないから、述べてほしい。」
「はっ、…あのままでは洛陽が火の海になっていたからで御座います。」
「ひ、火の海じゃと!?協!?」
「ううむ、やはりそうなってしまうか…しかし皇室も此処までぞんざいに扱われるとはな。」
「嘆かわしい事と存じます。」
「して、貴女らの狙いは何かな?」
「何か、と申されますと?」
「とぼけるのは止めよ、我らを手に入れた理由を述べよと言っているのだ。」
「我々は、皇帝陛下や皇子の御身w「嘘を吐くのは止めよ!」皇子?」
「どいつもこいつも同じ事を言ってくる、そんなに皇帝の座が欲しいのか!!仲穎達は余や弁姉さんを守ってくれていたが、愚か者共が欲に眩んで洛陽を攻めようとした、其処に危険を顧みず、無欲で助けの手を差し伸べる者など、最早この国に居るものか!!」
皇子の叫びにも近い言葉の後、長い沈黙が降りる。
仲穎ちゃん達は唇を噛み締めたり、悔しそうに目を瞑っていたりしている。
しかし、叱責に近い声を浴びせられても白蓮は微動だにしなかった。
流石は私達が信じた主だね。
「皇子。」
「…何だ。」
興奮はしているけど、聡明だと言われただけあって、すぐに冷静さを取り戻したみたいだね。
「陛下や皇子は、この幽州の端に位置する場所に行った事は御座いますか?」
「…ない。」
「其処は、私や公孫越の故郷でありますが、北に近い最前線故、匈奴・烏丸・鮮卑などの異民族の襲撃や北の寒さ故の冷害に苦しめられて来ました。」
「…。」
「それでも、公孫家の祖先や私達はどんなに厳しくとも、此処にこうして生きていられるのは、我らを民や国が必要だと、生かしてくれているからだと思っております。」
静かに、しかし重い白蓮の心の言葉にホロッと来てしまう。
ふと横を見ると何時も笑顔を絶やさない良蓮が、俯いて静かに泣いている。
当然だろう、どれだけ厳しい事態に陥っても彼女達は戦場に政務にと走り回り、正に命を賭けて北の要衝を守ってきたのだ。
だから、幽州州牧になった時、幽州中から頼んでもいないのに、貢ぎ物が届いた。
民達が何を思ったのかは、判らないけど少なくとも、守ってもらえると信じたから、贈って貰ったのだと思いたい。
白蓮や良蓮は、その礼を言って回り、改めて幽州を守る決意を固めたのだから。
その白蓮の思いを聞き、私は改めて白蓮を支えようと心と真名に誓いを立てた。
「陛下や皇子のご懸念は理解しております。ですが、今、此処に居る仲穎殿達に負けぬ、忠義を此処に示したく存じます。」
そう言って白蓮は一礼した後、私達の方向き、小さな短刀を取り出した。
周りが少しざわついたが、すぐに収まった。
いや、白蓮が黙らせた。
短刀で自分の後ろ髪を切り捨てたのだ。
流石にこの行動に私は驚いたし、隣の緑もうっすらと泣いていた。
どの世界だろうが人が同じなら、髪を切ると言うのが、どれほどの覚悟を示すのか判らないはずが無いからだ。
特に歴史が古ければ、尚更に判ってもらえるだろう。
陛下や皇子、仲穎ちゃん達も驚きに目を見開いている。
良蓮なんか、ああもう、ただでさえ泣いてたのに収まりがつかなくなってる。
良蓮に手拭いを渡していると、白蓮が短刀を鞘に戻し陛下達の方へ向き直り、髪と短刀を目の前に置き居住まいを正した後一言言ってのける。
「これが、我々の覚悟で御座います。まだご懸念が御座いましたら、仰せ頂きたく思います。」
そして平伏し、私達もそれに習い平伏した。
少しの間を置いて皇子の声が響く。
「…面を上げて、答えてくれ公孫賛。」
そう言って玉座から降りてくる皇子。
「何で御座いましょう?」
「お主は何故こうまでして僕達に忠誠を示してくれるんだ?」
言葉が少し落ちた、多分これが、劉協皇子の素なんだろうね。
年の若い子が自分や姉、助けてくれた恩人の為、精一杯背伸びをしていたんだろう。
どうするの、白蓮?
次の言葉で決まっちゃうよ?
「我々は、漢王朝に忠誠を誓っておりますが、それ以上に民達の事を思っております。そして、今漢王朝が潰れてしまえば、一番に被害を受けるのは罪無き民達です。我々は民達に生かされております、そして我々を生かしてくれている民達の為に、最もしなければならない、漢王朝を守る事をしないなど、そもそもあるはずが無いのです。」
「…民達の為か、月も同じ事を言っていたよ。」
皇子の声が少し震えている。
沢山我慢して来たんだろう、親は既に無く信じられる人が義理の姉しかおらず、漸く仲穎ちゃん達が来て平和になるかと思ったら、仲穎ちゃんを除こうとする輩が現れる。
どれだけ不安だったか私には知る由もない。
「酷い事を言ってごめんなさい、伯珪。信じさせて貰っても良いかな?」
不安そうに聞いてくる皇子に、白蓮は優しく笑みを見せ応える。
「私の真名は白蓮と申します。皇子、お受け取り下さい。」
何時の間にか玉座から降りてきていた、陛下と皇子が白蓮に抱きついて堪えていたものを吐き出していた。
白蓮は、その2人を優しく抱きしめ2人の背中を撫で続けていた。
如何でしたでしょうか、何処まで話が延びるのでしょうか、判りませんね…
因みに白蓮ファンの皆様、髪切っちゃってすいませんでした。