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第37話「幕間・緋焔迷いを捨てる。」

 第37話で御座います!


 今回の幕間も若干の百合が咲いております。

side 緋焔




 大戦の後、藍の調子も戻り、緑の機嫌が良くなって来た。

 それまで、緑はとても不安定になっていた。

 藍がおかしくなったせいだ。

 そして、藍の様子がおかしくなった時に緑がとても悲しんでいたのだが、それを見るのが忍びなくて、緑を抱きしめた。

 そのままなし崩しに関係を持ってしまい苦悩していたが、その事で逆に緑から謝られてしまい、わたしは藍の代わりで構わないと告げたら、平手で殴られてしまった。


「…緑、何故怒っている?」


「あなたは、藍の代わりじゃないわ。」


「…確かに、藍ではないしな。」


「そう言う意味じゃないの。」


「…すまない、意味が判らない。」


「最初に謝った理由は判る?」


「…すまん。」


「あたしは、とても弱ってたからあなたに無理矢理抱いて貰ったのだけど、あなたの気持ちも聞かずに行為に及んでしまった事を謝ったの。」


 顔が赤くなっているな。

 恥ずかしい事なのか?


「…気にするな、緑にとって藍は半身と言っても過言では無い。それ程の奴があの様な状態になったら不安にもなると思うぞ?」


「緋焔はあたしと関係を持つの嫌じゃなかった?」


「…お前が満足ならわたしは何もいらない。」


「緋焔。それじゃ駄目よ。」


「…緑?」


「そ、その、焔耶にも言われたけど、あ、あたしは、あなたに対して責任を…」


「…いらん。」


「そうはいかないわ。」


「…いらん。」


「緋焔!」


「…責任とやらでわたしと共にあるのか?」


 緑が驚愕している。

 緑は熱くなりすぎるきらいがある女だからな。

 頭は良いんだが、もう少しだけ…いや、他人に対しては恐ろしい程に冷たいか。


「…気にするな、お前が健やかならわたしは何も望まない。」


「ごめんなさい。あたしは、少し間違ってたみたい。」


「…間違い?」


「あたしは、最初誰もいらなかったの。藍だけ居れば他の人なんていらなかった。」


「…」


「けれど、焔耶やあなたに出会って変わったわ。」


「…変わった?」


「ええ、焔耶やあなたと一緒にいるうちに、あたしにとって藍と同じ位にあなた達も大切な人になっていたの。」


「…藍と同じ、か。」


 少し嬉しいか?

 顔や胸が熱いな。


「そして、焔耶に言われた時に考えた。」


「…何をだ?」


「あたしにとってあなたがどういう存在か。」


 興味があるな…

 うん?どうしたんだ、わたしは?

 身体が震えている?

 これは、わたしは緑の事を怖がっている?

 違う気がする。

 では、何だ?

 あとあると言えば、緑の気持ちを聞くこと位か?

 緑のわたしへの気持ちを聞く、か…

 怖いかもしれないな、嫌いだと言われたらどうなるか判らない。


「あたしは、藍を愛しているわ、そして緋焔あなたも好きになってる。」


「…わたしを、か。」


「緋焔、こんな移り気な女だけど、あたし、あなたも愛して良い?」


「…お前こそこんな人の気持ちも判らない女を好いてくれるのか?」


「あなた自身が良いってあたしは思ってる。」


「…う。」


「う?」


 身体中がとても熱い、一言だけの筈なのに言葉が出ない。

 し、しかし伝えないと。


「…り、緑。」


「何?緋焔。」


「…のむ。」


「のむ?」


「…宜しく頼む!!」


 どうしたと言うんだ、戦場で叫ぶより気力が必要とは思わなかったぞ…

 緑も驚いているな、やはり声が大きかったか?

 緑の顔を見ると驚きから、笑顔になる。

 緑の笑顔が直接見れない。

 どうしたと言うんだ、わたしは?


「此方こそ、不束者ですが宜しくお願いします。」


 そう緑が言った後、ゆっくりとわたしに緑が身体を預けてきたので、戸惑いながら緑を抱きしめたのだった。




 その後、緑と共に休みや夜を過ごす様になって、緑と言う女が色々判ってきた。


 緑は身内に対して熱くなりやすい為、其処を突くとからかうことが出来る。

 わたしでは、知恵が足りないのでなかなか熱くさせられないので、今度藍に頼んでみたい。

 緑は昔、偏食だったそうだ。

 緑から直接聞いたのだが、家族の前では何でも食べられるが、自分1人になると好きな物しか食べなくなってしまう為、藍が色々な料理を作るようになったそうだ。

 自室に信じられないくらい本が置いてあり、本に注釈を入れていたり自分の考えた論などを常日頃から書き留めているようだ。

 緑には良く知恵を貸して貰っているが、ただでさえ頭が良いのにまだ努力をしているのは感服する。(口に出していたようで、そのすぐ後、緑に「あなたも十分強いのに努力してるじゃない?」と言われて顔から火が出そうになった。)

 たった1人の女を好いただけでわたしも変わったものだ。

 一言言われただけで一喜一憂してしまうからな。

 だが、心地いい。


「どうしたの、緋焔?」


「…いや、心地いいと思っただけだ。」


「あたしも気持ち良いわ、緋焔。」


 緑と夜を共に過ごすのも、慣れた…いや、身体中が熱くなるこの感覚には慣れそうも、いや慣れなくても良いか。

 時折怠惰になるのも良いだろう。


「…緑。」


「なぁに?」


 面と向かって言っていなかった言葉は言っておくべきだな。


「…好きだ。」


「ひ、緋焔?」


「…言っていなかったと思ってな。」


「愛してる。じゃなくて?」


「…愛してる。」


「あたしも、愛してる。」


「…藍よりか?」


「比べられないかな?」


「…狡い女だ。」


 即答されてつい笑ってしまう。


「信じなくて良いわ、比べられないの。」


 緑の顔に少し影がさす。

 安い女だな、わたしは…

 そう思いながら緑を抱きしめる。


「緋焔、少し痛い。」


「…つまらない事を言ってすまん。だからお前もつまらない事を言うのは止めろ。」


「うん。」


 緑も抱きしめ返してきた。

 藍は藍、わたしはわたしだ。

 藍、1人で緑を支えるよりは楽になるかもな。

 そんな他愛の無いこと思いながら緑を抱きしめ眠りについた。




side 緋焔 out

 緋焔さんを忘れていた訳では決して御座いません。


 話に絡ませ辛いとか、そんなコトハゴザイマセン。


 しばらく戦後の幕間が続きますので宜しくお願い致します。

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