第33話「幕間・龍、壊れゆく友を思いて…」
第33話で御座います!
百合臭がここにも…これは軽めですがお気をつけ下さい。
side 星
今日、私は少し複雑な気持ちでいる。
藍殿と2人で夜に酒を飲む約束をしたのだ。
最初は喜んだのだが、今になって少し怖じ気づいてしまったのだ。
正直に言うと、藍殿は緑殿達と…関係を持っている事に少し怯えてしまったのだ。
藍殿はよく言えば気さくでおふざけが過ぎるが優しい人で、悪く言えば自分を殺してでも身内を守ろうとする自分を大切にせぬ人だ。
残された者が悲しむ事が判っていてもそうしてしまう、そんな藍殿を見るのが私はあまり好きでは無い。
丁度良い機会だから藍殿との一献を楽しみながら、皆が藍殿を心配していると言ってみることにしよう。
「藍殿と2人で飲むのは初めてですな?」
「何時も鍛錬とか食事を一緒にしてる位だからね~。」
今、藍殿の部屋の窓際で月眺めながら酒を酌み交わしている。
「このメンマ、お酒に合うね~♪」
「ほう、藍殿も判ってくれますか?緋焔殿も旨いと言ってくれましてな。」
「うん、これおいしいわ~、今度何かに使ってみたいな~。」
「ああ、藍殿は料理がお上手だとか?」
「単なる趣味なんだけどね~。」
「ご謙遜を、焔耶や良蓮が大層褒めておりましたぞ?」
「そう言って貰えたら嬉しいなぁ。星、今度このメンマ一緒に買いに行かない?」
「構いませぬよ。」
そんな他愛ない話をしていると、藍殿の目が虚ろになっていく。
まただ。
時々、何かが壊れたように藍殿は目が虚ろになって黙ってしまう。
「藍殿。」
「…」
「藍殿!」
「っ!?せ、星?どうかした?」
「藍殿、前から時折その様になられますが、どうかしましたか?」
「何でもない、じゃ、納得してくれないよね?」
「出来ませぬな。」
少し口調を強めて言ってみる。
皆が心配しているが、誰にも自分の事を言わない藍殿だから無理だろうが忠告位は聞いてもらわねば。
我が友が苦しんでいるのに黙って見ているなど出来ないのだから。
「病気じゃないみたいなんだけどね。」
「藍殿?」
「聞きたかったんじゃないの?」
「確かに聞きたかった事ですが、答えて下さるとは。」
「本当は誰かに言いたいよ。助けてってさ。」
「藍殿…」
「私、そんなに強くないよ。何時も潰れそうだもん。けど、皆に心配掛けたくないのに心配させて…いやになるよ…。」
藍殿の顔が月明かりに照らされたとき。
心臓を握りしめられた様な苦しさを感じた。
青白く儚い、今にも消えてしまいそうな顔に、藍殿の涙が頬を伝って行く。
「藍殿、私を信用してくれてありがとう。」
私も泣いているようだ。
何が藍殿を苦しめているというのだ。
あの様な表情をする人間が嘘を吐くとは思えない。
我が友を苦しめる原因が藍殿本人にも判らないとは。
悔しい…友が苦しんでいるのに何も出来ない自分が…
何も出来ない…か。
藍殿はまさか不安だから彼女達と?
無理矢理笑って自分を保つために…
聞いてみるか。
こんな難しい事に私は踏み込めるのか…
私は藍殿を友だと思っている。
彼女の気がそれで紛れているというなら…!!
「藍殿。」
「…どうしたの?星。」
「藍殿は、自分を保つために皆と行為をされているのか?」
「…そう取られても仕方ないけど違うよ…それじゃ私最低じゃない…?」
「愚問でしたな。藍殿は、その行為をすれば少しはマシになりますかな?」
「…誘ってるの?駄目だよ…自分を大切にしなきゃ…。」
「私からすれば、自分を大切にしていないのは藍殿ですぞ?」
「そうだね…ごめんね…星…」
「っ!?失礼。」
そう言いほんの少しの憤りと共に、無理矢理藍殿の唇を奪う。
初めてだったが、かまうものか。
弱り切った友の気が紛れるなら。
酒を飲んで暖かい筈の藍殿の身体は、氷の様に冷たかった。
当然唇もだが、口付けをしていると藍殿の目の焦点が合ってきた。
今かと思い話かける。
「藍殿、大丈夫ですかな。」
「星にまで迷惑k…」
乾いた音が部屋に響く。
「藍殿、この趙子龍を見くびってもらっては困ります。」
「星…」
「私は自分の友が苦しんでいるのを、指をくわえて見ているなど出来ませぬ。」
「ごめん、星…謝ってばっかりだなぁ、私って。」
うっすらと消えそうな笑みを浮かべている藍殿を見るのが辛い。
「星、我が儘言って良いかな?」
「私に出来ることなら。」
「身体が思う様に動かないから、寝床まで運んて欲しいんだ、それで出来たら星に抱いて欲しい。」
「…。私は、そう言う行為をしたことがありませぬが構いませぬか?」
「うん、構わないよ。お願い暖めて…」
「承知した。」
消えそうな藍殿の笑みを打ち消すべく、私も笑みを浮かべて藍殿を寝床に運ぶ。
藍殿こんな事しか出来ぬ私を許して欲しい。 せめてこの一時だけは健やかに…
side 星 out
星さんも可愛いですね。
藍さんどうなっちゃうんでしょうか…