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第21話「ダブルトライアングル」

第21話で御座います!

side 焔耶




陳留を出立してから一月ほど経ち漸くワタシ達はギョウにたどり着いた。


そして隣に立って居る藍お姉様は、少し渋い顔して考え事をしているみたいだ。

ワタシの言葉遣いが変わった点だが、緑姉さんから言葉遣いが少し堅いと言われたので、少し砕けた言い方にした所、前以上に可愛がってくれるようになったので今も続けている。

そんな他愛の無い事を考えていると藍お姉様が緑姉さんに一言伝えた。


「緑~。」


「折角来たのに華琳さんの書状、無駄になったみたいね。」


「え?」


街に入って、まだ2刻も経ってないのに藍お姉様達は、ギョウが駄目だと言う事にワタシは驚きを隠せなかった。


「焔耶、後で教えてあげる♪」


「は、はい!お姉様!!」


藍お姉様と緑姉さんは、意思が繋がっているみたいに少ない言葉で理解し合う。

それを羨ましげに見ていた時に藍お姉様が、ワタシも何れ判るようになるし無理はしないで良いと言ってくれた。


そして今は藍お姉様はワタシの考えた事をさっきみたいに気付いて話してくれるので、焦らず藍お姉様や緑姉さんの言いたい事を理解出来るようになる事が、今のワタシの密かな目標の1つだ。


ワタシ自身の事は今は良い。ゆっくり進める事を決めたので、気持ちも充実しているから。

それよりも、今目下火急の要件がワタシの後ろにある。


緋焔のおかげで、ワタシは藍お姉様はもとより、緑姉さんとも親密になれた。

最初はその事に有頂天になっていて気付けず、緋焔が緑姉さんを見なくなって居た事に後になって気付いた。


いや、見なくなったのではなく、1日の始まりに1度だけ緑姉さんを見ている。

まるで思いを捨てようとするかの如く…


緋焔は、感情表現が下手な上に口下手で、自分の思いを相手に伝える事が出来ていなかった。


その事には、藍お姉様も気付いて居た様で、旅の最中に緋焔と話をする機会を幾つも作っていたが、全て不発に終わっていた。


藍お姉様も察する事は出来ていたが、理由にはたどり着いていないので悩んでいるのを見かけたこともあった。


多分、と言うか確実にこの件について気付いているのはワタシだけなのだ。


緑姉さんは、かなり、いや下手をすればそこいらに居る学者如きでは相手にならない位、頭の良い人なのだが、唯一の欠点になりそうな所が、自分に向けられる好意的な感情に気付かない事があるようなのだ。


それ以外の感情には敏感に反応出来たり敢えて反応しなかったりするので、好意限定と言う何とも…はっきり言うと面倒くさい事になっている。


緑姉さんと緋焔、ワタシは緋焔のおかげで、思いを伝える事が出来た。


今度はワタシの番だ、ここで仲間を助けないで何時助けるというのだ!!


待っていろよ、緋焔!!




side 焔耶 out






side 緋焔




苦しい。気持ちが悪い。こんな気分になったのは、初めて人を斬った時以来だ…


藍達と共に、常山を旅立って此処まで来たが、最初はとても充実していた。


藍は力はわたしより弱いが、素晴らしい剣技と体術を持っているので舌を巻く事がある。


わたしの強さが、まだまだだと教えられた時は、まだ強くなれると密かに喜んだものだ。


焔耶は、まだ荒削りだが、素質があるし、わたしが口下手だと気付いたのか、わたしの言葉を時折代弁してくれていた。

こういう奴を友と言うのかもしれんな。


そして、わたしが旅をするキッカケになった存在である、緑だ…

黒山党の1件で、わたしは最後に命を絶とうと思っていたときに、緑は許すと言ってわたしを包み込んでくれた。


その時まで、おやじ殿が死んだ時以外流したことのない涙を緑の胸の中で流した時、緑にこの借りをと思い旅に同行した。

その日の夜に、わたしはまた泣きそうになった。

わたしを道連れにしてくれたばかりか、字や真名を作ってくれたのだ。


本来、字や真名は、親や親類が付けるモノらしいが、おやじ殿はなかなかウチに居なかったので、字や真名を付けてもらえなかった。

それを気にしたことはなかったのだが、緑に名付けて貰った時にわたしは槍を振るう意味を見いだすことが出来た。

ただ、わたしの命と心を救ってくれた緑の為に、と…


だが、今はまた判らなくなった。

それは、焔耶に手を貸し焔耶が藍に思いを伝える為の手伝いをした朝の事だ。

藍と緑が、恐ろしい勢いで争い始めたのだ。

始めはなぜこうなっているのか判らなかった。

横に居る焔耶がオロオロして居るので原因は昨日何かあったのか?と思うに至った後、震えながら焔耶が2人の間に立ち緑が焔耶を押しのけて、そして…


藍と緑が…


気付いては居たと思う、だが、現実にそれを見たときわたしの中がおかしくなった。

理由が判らない。

藍と緑と焔耶はあれ以来更に仲が良くなった様に見える。

藍と緑が口を合わせていた後から何故か緑を見れなくなった。

朝起きた時に緑を見ると此処に居てはいけない気がし始めたのだ。

そして何故か、藍はわたしに話かける機会を事あるごとに作ってきたが、鬱陶しいだけだった。


藍は嫌いじゃないのに何故か今は話したくもない…


わたしは、一体どうしたのだろう。

おやじ殿、教えて欲しい。

わたしは、一体…




誰か助けて…




「緋焔。」


ハッとして声の主を見る。

暗がりに焔耶の姿があった。

宿に帰ってからまた外に出て1人で考えたが、何時の間にか辺りは暗くなっていたようだ。


「…どうした、藍達と一緒じゃないのか?」


「お前こそ1人でどうしたんだよ。」


「…考え事の答えが判らない。」


「判らない?」


「…ああ、藍も緑も勿論焔耶、お前も嫌いじゃない。だが、藍と緑が話をしているのを見ただけで、言いようのない不快感を覚える。」


わたしと違って焔耶は、色々な所に旅をした事があるから、わたしの不快感について何か判るかもしれない。

藍と緑には聞けないからな。


「その答えの前に緋焔、お前は緑姉さんとどうなりたい?」


「…どう、とは?」


「本気で判らなかったんだな。」


焔耶が呆れた顔をしている。

わたしはお前達と違って、学などないんだから仕方ないだろう。


「緋焔、頭が悪いとかじゃないぞ。」


「…じゃあ、何なんだ?」


「ワタシは、緑姉さんみたいに頭が良い訳じゃないから、緋焔に答えを導き出させるなんて出来ない。」


「…ああ。」


「だから答えを言うがお前は緑姉さんの側に居たいんだ。」


「…」


首を傾げる、確かに一緒に居たいと思うが、緑を見る事が出来ないんだぞ?


「藍お姉様の代わりにな。」


「っ!?」


「多分、お前は緑姉さんに好意を持ってたんだけど、藍お姉様と緑姉さんの口付けを見て何か思ったんじゃないか?」


「…ああ、此処に居たら邪魔になるんじゃないかと。」


「羨ましいって思わなかったか?」


「…羨ましいかは判らないが、藍がしていた事をしてみたいとほんの少し思ったかもしれない。」


「ふぅ、お前にとっては初めての感覚かもな。」


確かに今まで焔耶が言っていた事は思い当たる、わたしの思いは緑への好意だったのか…


「…なあ、焔耶。」


「どうした?」


「…最近、藍がわたしと話をしようとしてたんだが。」


「ああ、お前の反応が薄くて会話が成立しないって藍お姉様が嘆いてたぞ。」


「…藍と話すのは、嫌いじゃなかったんだが、藍と緑が口付けをした日から、鬱陶しくなったんだが、これは何だ?」


「やっぱりそうだったか。」


「…判るのか?」


1人で考えるだけではいけないようだな。

焔耶は何時も藍や緑の頭の良さを言っていたが、わたしからすればお前も十分に頭が良いぞ。


「それは間違いなく藍お姉様への嫉妬だ。」


「…嫉妬。」


確か、相手を妬む気持ちだったか?

わたしは、藍を妬んでいたのか?


「緋焔は、そう感じてなかったかもしれないが、緋焔の心は藍お姉様に取って代わって緑姉さんの側に居たいと思ったんだろうな。」


「…それには藍が邪魔だと?」


「多分な、お前の中でしっくりきたか?」


なる程、今まで悩んでいたのが嘘の様に晴れたな。

だが、解決したわけじゃない。


「…この気持ちの悪さは理解できた。」


「後は解決するだけだな。」



「…ああ、すまないな。わたし1人では思い付かなかっただろう。」


「ワタシは、お前のおかげで藍お姉様と緑姉さんの2人に愛して貰えるようになったんだ。今度はワタシの番さ。」


「…ありがとう。」


突然、枝の踏み折る音が聞こえて振り向く。


「…誰だ!?」


「ごめんなさい。」


緑だと?一体どうしたんだ?


「…どうして。」


「2人が帰って来なかったから、探しに来たの。」


「…何処まで聞いた?」


「「考え事の答えが判らない。」の辺りかな。」


ほぼ最初からか…


「…幻滅したか?」


「いえ、寧ろ謝りたくなったわ。」


「…謝る?」


「緋焔が悩んでいる事が判っていたし、好意を向けているのも、ね。」


「…。」


「けど、逃げてばかりじゃ駄目よね。」


「…逃げる?」


「あたしは、今はこうやって焔耶や緋焔と話せるけど、昔は他人と話すのが苦手で、自分の考えや思いを相手に伝える事が出来なかったの。」


緑が、わたしと同じだったと言うのか…


「そんなあたしを変えてくれたのが、藍だったの。藍はあたしを色々な所に連れていってくれて、何も出来ないあたしに一緒に居て欲しいって言ってくれたの。」


「…そうか。」


折角焔耶が、わたしの為に答えを示してくれたが、無駄になりそうだな。

そう思うと、急に胸が痛くなった気がした。


「あたしは、藍に全てを捧げて生きるって誓ったわ。だから、あなたのk…「緑姉さん!」どうしたの?話の途中に声を掛けるなんて。」


「緑姉さんはズルいです。」


「あたしが?」


「緑姉さんは、藍お姉様に自分とワタシを幸せにしろと言っていましたが、緑姉さんは、自分が幸せなら自分に向けられた好意を無碍にして良いと言うんですか!!」


「焔耶…」


「…焔耶、もう良い。」


「良くない!!友が無碍に扱われ様としているのを黙って見ていられるか!!」


焔耶…お前と言う奴は…


「あたしも藍みたいに責任を取れていう事?」


「緋焔が向けている緑姉さんへの気持ちは本物です。」


「…焔耶、ありがとう。もう良い、これ以上は緑に迷惑だ。」


「涙目で言ってる奴に言われても納得できるか、未練タラタラの癖に。」


「っ!?悪いか!わたしなりに考えたんだ!!」


「悪い!それで物欲しそうな目を緑姉さんに向けながら、ワタシ達に着いてくるのか?」


「…」


「緑姉さんもです!そんな面倒くさい状況作ったら禄な事になりません!!」


「うぅ、でも。」


「でもも何もありません!藍お姉様に2人を娶れって言ったんだから、緑姉さんも2人娶ってください!!」


「「…」」


何故だろう、年下の焔耶にしこたま怒られて無理矢理納得させられている。

どうしてこうなったんだ?


「緋焔、あたし…」


「…緑、無理はしなくて良い、と言いたかったんだが、確かに焔耶の言う通り、はっきりさせた方がいい。」


「緋焔…」


「…緑、藍の2番目で構わない。隣に居させてくれないか?」


「あたし…あたしの何処が良いの?」


「…お前はわたしの命と心を救ってくれた。緑にとってはつまらない事かもしれんが、わたしにとっては大事な事だ。」


そう槍を振るう理由だからな。


「こんなあたしなのに…」


「…藍もわたしも理由は違うかもしれんが、側に居たいと思ったんだ。こんななどと言わないでくれ。」


「ありがとう…」


向こうを泣かせてしまったな。

こういうつもりじゃ無かったんだが…

緑と共にあるには、藍とも決着を付けないといかんな。




side 緋焔 out

無理矢理感がある…


話を纏められる人が羨ましいですね。

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