第19話「冀州恋慕」
第19話で御座います!
ちょっと早い気がしましたが、最近の彼女の扱いを可哀想に感じたので、予定を少し早めてみました。
side 藍
華琳達と別れて幾週が経った。
変わり映えしない風景が続く。
はぁ、平和だなぁ。
「藍お姉様、黄昏てないで手伝って下さい!!」
「黄昏たくもなるよ~焔耶~面倒くさいよ~。」
「…確かに、藁を斬っている様だ。」
「荒れすぎですね。」
そう言う訳で、今賊と絶賛戦闘中である。
それぞれが散会して賊に当たっているが、緑、焔耶、緋焔、3人の武器は、範囲が広いので、結構怖いのだ。
焔耶が鈍砕骨を振るっているのを見るのは初めてだね。
『鈍砕骨』桔梗様が、お墨付きを与えた時に記念として渡したらしいが…
大金棒…場所を選ぶ武器だが馴染んでるなぁ。
焔耶は当然だが場所によって剣を使う。(桔梗様曰く、私に会うまでは力こそ全てみたいな考えだったので鈍砕骨を小さくした金棒を振り回していたらしい。)
だが焔耶と真名を交換した次の日に、私の稽古を見たいと言ってきたので、桔梗様に抱っこされて母上と私の稽古を見学した時に思うことが合ったらしく、金棒と剣の訓練をし始めたそうな。
緋焔を助けた時や、華琳の所で賊討伐した時も剣使っててかなり上手かったから金棒はどうなんだろう?とか思ってたけどこっちは気持ちいい位ホームランしてるね。
そう考えてる内に、賊が逃げ始め皆はその場から動かなかった。
追撃する意味ないもんねぇ。
今は、火の粉を払うだけで十分。
「はぁ、緑~。」
「袁紹ならもう冀州に着いて暫く経ってるわ。」
「それで…これ、ねぇ」
賊の襲撃は冀州に入って10回は数えた。それ以降は面倒くさいから数えてない。
「この書状どうする?」
「とりあえず、街見て最終判断。」
「判った。」
「焔耶、緋焔!暗くなる前にもう少し進もう~。」
そう2人に告げ、緑と顔を合わせて苦笑しながらギョウへ向かうのだった。
side 藍 out
side 焔耶
幾度目かの賊を追い払い息を整えていると、藍お姉様と緑姉さんが暗くなる前にもう少し進むと仰られた後、緑姉さんと笑い合っていた。
藍お姉様は緑姉さんはとても仲がいい。
それはワタシも理解してるが、凄く寂しくも感じる。
藍お姉様がワタシを見て下さらなくなってしまわれたら…
自分が自分で無くなってしまうような、言葉に出来ない不安がこみ上げて来る。
「…焔耶、どうした?行くぞ。」
「あ、ああ。」
緋焔に促され歩くが少し藍お姉様達と離れてしまった。
この距離がワタシと藍お姉様の…
何を考えているんだワタシは!?
お姉様が!藍お姉様がワタシを!ワタシを…どんどん気持ちが落ち込んで行く、そう言えば近頃藍お姉様に撫でて貰ってない無いな…
笑いかけて貰ったのは何時だっただろう…
何であの隣に、藍お姉様の隣にワタシは居ないんだ?
「…焔耶、気分でも悪いか?」
「ああ、少しな。」
「…少し休むべきだな。」
緋焔はそう言い藍お姉様達に声を掛けようとしたがワタシはそれを遮った。
「待ってくれ緋焔。」
「…なんだ?」
相変わらず表情が変わらない奴だが、暫く一緒に居るうちに表情を出すのが苦手なだけだと気付いた。
「緋焔は何とも思わないのか?」
「…何がだ?」
「藍お姉様達が仲むつまじくしているのを見て、だ。」
「…別に。」
何時もの間のように思えるが、何時もより少し間が長い。
「緑姉さんと話せないのは平気なのか?」
「…何が言いたい。」
「緑姉さんの事を何時も見ているのを見ればイヤでも気づく。」
「っ!?」
凄く動揺している。気付かれてないと思っていたようだ。
「安心しろ、緑姉さんは気づいていないはずだ。」
「…そうか。」
今度は凄く安心している。
緋焔の表情の変わりようは面白いな。
だが今はそれが目的ではない。
「緋焔、協力して欲しいことがある。」
「…何だ?」
「今日は野宿になるはずだから、夜に藍お姉様と2人きりになれるように、緑姉さんを引き留めておいて欲しいんだ。」
「…焔耶は藍、わたしは緑、か。」
「頼む。」
「…上手くやれ。」
辺りも暗くなり、野宿する事になった。食事も済み、後は眠るだけになった時に緋焔が緑姉さんに話し掛けた。
「…緑、聞きたいことがある。」
「うん、良いけど、どうしたの?」
緋焔は緑姉さんに戦術論を聞き始めた。
緋焔の話し方なら暫く時間が稼げるはず。緋焔に心の中で礼を言いやりたい事をする事にする。
「藍お姉様。」
「どしたの?焔耶。」
ああ、藍お姉様がワタシを呼んで下さっている。
しかし、これで満足しては緋焔に申し訳が立たない。
「藍お姉様、少しご相談が…」
「うん、良いよ。2人の方が良い?」
「出来れば。」
「緑、緋焔。ちょっと向こう行くね~。」
「行ってらっしゃい。」
「…ああ。」
緑姉さんは優しく送り出してくれた。
緋焔と目が合い目礼した後、すぐに藍お姉様を追い掛けた。
「で~どうしたの?」
「そ、その…」
2人っきりになった途端用意していた言葉が吹き飛んでしまった。
何も言えなくて、俯いてしまう。
「恥ずかしい?」
俯いたまま首を振った。
恥ずかしい訳じゃない。
寧ろ、怖いのだ。
藍お姉様はワタシの目標であり愛しい人だ。
藍お姉様に必要とされたくて頑張って来たのに、拒絶されたらと思うと怖くて何も言えなくなる。
「焔耶。」
目の前に柔らかい笑顔のお姉様が居た。
「ちょっと座ろ。」
そう言われてお姉様と向かい合わせに座った。
「大丈夫?」
ワタシの事を気遣ってくれている。
情けなくなると共に凄く嬉しくもなった。
そして、意を決して聞いてみる。
「お姉様。」
「うん?」
お姉様の返事と共にワタシはお姉様に抱きつく。
「え、焔耶?」
「藍お姉様、ワタシはお姉様をお慕いしております。」
お姉様を見てみるとかなりビックリされているらしい。
「焔耶?とりあえず、落ち着いてね?」
「ごめんなさい、藍お姉様。ワタシはもう耐えられないんです!!」
「へ?」
「藍お姉様と初めてお会いして助けていただいたときから、ワタシはお姉様の為だけに生きていこうと自分に誓いました。」
黙ってお姉様は聞いて下さっている。
「誓いを立ててから、ワタシは今まで以上に武術や勉学に励む事が出来ました。そして、桔梗様にお墨付きを頂いてお姉様のお役に漸くなれると思い、お姉様と再開しました…でも、お姉様はワタシの想像を遥かに超えている方でした。武術でも知恵でも勝てないと落ち込みましたが、それでもワタシはお姉様のお役に立ちたいと思っていましたが、そこに緑姉さんが現れました。緑姉さんは凄い知恵者でワタシの知らない事を、藍お姉様も判らない事をすらすら答えられる方でした。ワタシは…武術も知恵も何も足りない半端な人間です…でも、ワタシはお姉様と一緒に居たいです、愛して…欲しいです…」
此処まで言い切った時にはもう目が霞んでしまって、お姉様の顔が見えませんでした。
「焔耶、愛して欲しいって家族として?」
「…」
違うと言いたいがもう声が泣き声でまともに答えられない。
「涙で答えられない?」
泣きながら頷く。
「私はね、緑が好きなんだ。」
初めて聞いたが、やはりとも思った。
そして、ワタシの終わりも感じ取ってしまった。
side 焔耶 out
side 藍
『私はね、緑が好きなんだ。』
そう焔耶に告げた時、焔耶は涙を流していたが同時に表情が消えていた。
今も涙を流しながら震えている。
私は緑が大切だ。
自分がどうなっても、緑を守ると誓っている。
けれど、焔耶が私の事を『お姉様』と言った時に守る物が増えたと思った。
そして、今守ると誓った大切な子が泣いている。
守るって命だけを守れば良いの?
違う。
焔耶が勝手に好きだって言ってるだけ?
違う。
私は緑を愛しているから、この子は愛せない?
違う!!
私は、多分…
ああ、何時の間にか私って愛してる人がもう1人増えてたんだ…
「焔耶。」
「あ゛い。」
顔が凄い事になってる。
私のせいだね。
「私って、今気付いた、と言うより焔耶に気付かされたんだけど。」
「?」
「スッゴい欲張りみたい。」
そう言いながら、焔耶の顔を拭ってあげる。
「焔耶。」
「ぐすっはい。」
「私は、緑を愛してる。けど、同じ位焔耶も愛してる。」
「お、お姉様…ご、ごじょうだんを…」
「今、真剣に話してる。」
「ワタシ…」
「さっきはゴメン、私は我が儘で欲張りだから、緑も焔耶も両方欲しい。」
「お姉様…」
「何?」
「言葉は頂きました、けど、う…」
言葉を紡がせる前に私は、右手で焔耶の後頭部を左手で腰を掴み唇を奪う。
舌も絡ませながら、暫くそうして私から離す。
焔耶はすっかり真っ赤に上気した状態になっている。
「信じてくれる?」
焔耶はただ頷いてそのまま眠ってしまった。
色々迷惑掛けちゃったからなぁ、責任は取るんだけどさぁ…
この状況を緑にどう説明すべきか本気で死ぬかもしれない恐怖の中必死に考えるのだった。
side 藍 out
百合から百合~ズにクラスチェンジ。
幽州が遠いですねぇ。
この度、私の初小説が一週間でPVが50000を超えユニークも6000人を超えました。まだまだ至らない作者でありますが、ご覧下さっている皆様に厚く御礼申し上げます。
これからも真・恋姫†無双 『転生後も共に』をご覧頂けるように努力していきたいと思いますので、宜しくお願い致します。