第18話「覇王様との邂逅!」
第18話で御座います。
今話ではほんの微量な百合臭を…
ボーダーが判らない。
side 曹操
徐公明が目覚めたとの知らせが届いた。
流石に軽い怪我(春蘭が言うには本気で斬ったらしい)で済んだにせよ、此方に非がある以上、すぐに会うわけにも行かないので体調が戻り次第、会うことにした。
少しあの4人の事を考えてみたい。
まずは、一応の知り合いである、満寵だろう。彼女は小さい頃に両親に連れられては洛陽に来た事があり、その時に知り合った。
彼女は私とは違った思想と考え方を持ち、容姿も可愛かったのでとても気に入っていたのだが、彼女が洛陽から離れる際には、父親の後ろに隠れてしまい、挨拶をすると目をそらしてそそくさと行ってしまった。
昨日の事を含めて値踏みしたのが致命的になってしまった様だ…
私とした事が、何たる不覚。
おかげで、残り3人を手に入れる事がかなり難しくなってしまった…
相手に対する対応を考え直すべきかもね。
次に、緋色の髪の女だが、春蘭の剣を捌いただけでなくその後の冷静沈着ぶりは秋蘭に勝るとも劣らない存在だ。
あの様な将を持つ事が出来れば戦力の拡充はもとより、国の安定に繋がる治安維持に有効でしょうね。
前髪が白い女は、まだ荒削りの様だが彼女達が連れているだけあり、怒りに我を忘れながらも向けた剣は怒りに濡れているだけではなかった。
あれはまだまだ伸びしろがあるのだろう、見ているのが楽しいでしょうね。
そして最後が、徐公明…
今回の騒ぎ、と言うか此方側の失態だけど、まさか攻撃を受ける事によって此方に牽制を入れてくるとは思わなかった。
おかげでどれだけ4人を欲しても、非が此方にある為に此方から頼むことが出来ず、向こうが言ってきたことを大部分で飲まざるを得なくなる。此方は完全な受け身にならざるを得ない、向こうは逆に大抵の事なら通せる関係を徐公明は作り上げたのだ。
あの斬られる瞬間に此処まで考えたのかしら?
だとしたら、いえ4人とも欲しい人材だわ。
ならば、出来うる手を全て打つしかないわね。
其処まで考えて私は、政務に意識を集中させるのだった。
次の日。徐公明が、謁見に応じると言ってきたので、謁見する事にした。
良かった、交渉の場にすらつかないという事もあり得たから少なくとも話は聞いてくれる様だ。
慎重に行かないとどの場面でも相手は席を立てるため、念入りに纏めた考えを反芻する。
其処まで考えると、秋蘭が徐公明を連れてきた様だ。
「華琳様、徐公明殿達をお連れ致しました。」
「通して頂戴。」
そう言いながら驚いていた。
まさか自分だけじゃなく、他の3人も連れてくるなんて、人数を制限していないし出来るわけがない、此方を簡単に許すつもりは無いみたいね。
頭の痛い状況に、一瞬顔しかめるが、会うと言った以上会わないといけない。
内心溜め息をついてしまったが、気を取り直して徐公明達と、相対するのだった。
本来なら謁見の間を使うのだが、徐公明が怪我をしたという事を考慮して、会議室を使うことにした。
うちの陣営で無い者を此処に入れるのは気が引けたが、客間では効果が薄いし、謁見の間は座れないから仕方ない。
徐公明達4人に着席を促し私が席につき、秋蘭が私の左側に立った状態で謁見が開始された。
「徐公明殿、加減はどうかしら?」
「いやはや、少し怪我をしただけですからお気になさらずに。」
「そう言うわけにはいかないわ。謝罪として、あなたを斬った春蘭、夏候元譲はひと月の謹慎を言い渡したわ。そして私の真名、華琳をあなた達に預けたいのだけど、受け取って貰えないかしら?」
真名は私達にとって命と同義のモノ、謝罪の仕方としても最高のモノになる。
先制攻撃みたいな形だがなりふりが構えない、不意を突いて揺さぶりを掛けてみる。彼女の事だ、早々に断るとは思わないのだけど。
「お断り致します。」
「なっ!?」
秋蘭が前に出そうになったが手で制した。
まさか逡巡すら無く即答されるとは思わなかった。
一瞬笑いそうになったが、気を引き締め理由を聞いてみる事にした。
「謝罪を受け取っては貰えないという事かしら、理由を聞かせて貰えない?」
つまらない理由なら噛みつける可能性が出てくるし、理由がまともなら彼女の人となりが判るので少し期待してしまう。
「真名を預けて頂けると仰いましたが、此方が気にしていないと述べている以上過剰な謝罪になるかと、私達4人に部屋を貸して頂ましたし医者も用意して下さったとか。此処までして頂いたのですから一言で構わないかと私は思います。」
「本当にそんな事でかまわないの?」
「曹孟徳殿は、我々に対して謝罪を行動で示して下さいました、ならば模範となるように口頭でも謝罪して謝罪とは如何なるモノかを示されるべきだと思います。何よりあなた様はこの陳留の刺史様です、私達一介の旅人に謝罪として真名を預けてしまうと…」
「過剰な謝罪をした事が逆に民達への示しにならない。」
「そう思います。」
徐公明の目を見据える。いい加減な事を言うようなつまらない目ではなく、真剣に自分の考えを意志を述べている。
私は何てつまらない事を考えたのだろう。
彼女は傷付けた相手を気遣ってくれているのに、私は彼女を謀に掛けようとした。
それを悔やみ、自分の言葉で謝罪する。
「徐公明殿。ごめんなさい、2度とこの様な事が起きないようにするわ」
善処などと言う言葉遊びをするつもりはない。
私は今思う本心を彼女に伝え目を見つめる。
少しして彼女が一瞬目をつむり、目を開いた時に言葉を紡いで来た。
「謝罪をお受けします、曹孟徳殿。」
そう言って彼女は、笑顔を見せてくれた。
「ありがとう、受け取ってくれて。」
まさか、真っ直ぐ私に言葉を向けてくる者が居たなんて…
私は少し頬が緩んでしまったのだが気付かれない様に真顔に戻しもう少し彼女と話をする事にした。
「ねぇ、徐公明殿。」
「何でしょう、曹孟徳殿。」
「謝罪を受け取ってくれたのだから、今度は真名を受け取って貰えるかしら?友として、ね。」
「友、ですか?」
「ええ、あなたが言ってくれた言葉は私の間違っていた部分を正してくれた。間違いを正してくれる人間は尊いわ。だから友として真名を受け取って欲しいの。」
「買いかぶりだと思うんだけどねぇ~。」
「あら?いきなりね?」
「こんな感じが普段なんだけど、こんな奴が友達で良いの?」
「私は、あなた自身に友になって欲しいと思っているのだけど?」
「取り繕う奴が、友達とは言いにくい?」
「当たり前でしょう?」
「私の真名は藍だよ、これからよろしくね、華琳♪」
「私こそよろしく藍。」
真名を藍と交換し合い私達2人は笑い合うのだった。
side 曹操 out
side 藍
謝罪を受けたと思ったら、真名交換になってビックリしてる藍さんですよ。
まあ、華琳と笑ってる間、両サイドのお二人から不穏な気配を感じたので、仲間に話を切り出すことにした。
「緑、焔耶?」
「「何か(ですか)?」」
「私はもう華琳の事許しているのに、2人はまだ怒ってるの?」
「「…」」
「藍、構わないわ。普通はそう簡単に許せる事じゃないもの。」
「あんまり気にしてない奴が此処におりますが?」
「あなたは変わり者なだけでしょう?」
「華琳酷くない?」
「正当な評価と言って欲しいわ。」
そう言い合いまた笑い合う。
う~ん意外に華琳と相性が良いのかな?
そんな事を考えているとデカい溜め息が聞こえた。
「曹孟徳殿、約束は守って下さいね。」
「我が真名に誓って。」
「改めて名乗らせてもらいます、姓は満、名は寵、字は伯寧、真名は緑と申します、華琳さんよろしくお願いします。」
「此方こそありがとう、よろしくね緑。」
「ワタシはまだお前を許したわけではない。」
「ええ、当然だわ。」
「だが、藍お姉様と緑姉さんが真名を預けたから一応名乗らせてもらう。姓は魏、名は延、字は文長、真名は焔耶だ。」
「ありがとう、焔耶此方こそよろしく。」
「…姓は張、名は燕、字は伯明、真名は緋焔だ。」
「構わないの?」
「…殺しても死なん奴の事で揉めている、お前達の方がどうかしている。」
「緋焔も私の扱い酷くない?」
「…緑がお前に対して行っている対処をしただけだ。」
「ぷっ。」
「其処で吹きますか?華琳。」
「あなた達いつもこんな感じなの?」
「はぁ、大体は。」
「冗談を言い合える友、か。」
「少なくとも1人は間違いなく、あなたを友達だと思ってますよ?」
「あなた達にも思って貰えるように努力するわ。」
「期待しないでお待ちします。」
「「ふふっ。」」
緑と華琳のわだかまりもマシになったのかな?
まぁ、良かった。
んじゃちっと気になる事を聞いてみよっと。
「ねぇ、華琳。」
「何かしら?」
「城がごたついてる理由ってもしかして近くで戦でもあるの?」
「どうしてそう思うのかしら?」
顔がマジに戻った。
軽くやっちまった感があるけど、多分こっちも迷惑掛けたしなぁ。
「兵達の調練が泊まってる間、聞こえてたし荷駄を準備する音も聞こえてくるからね~。」
「ふぅ、音だけで其処まで気付くかしら?」
「緑と焔耶が部屋から出してくんないんだもん。」
「本当?」
「外には出歩いてません、間違いありませんよ。」
「はぁ、機密なんだけど?」
「手伝って欲しくないの?」
「何を言っているの?」
「賊討伐に手伝いいらない?」
「それはあなた達が手伝ってくれるんなら…」
「緑~路銀どんな感じなの?」
「一応目的地までは持たないかも知れないわね。」
「藍、緑、焔耶、緋焔、賊討伐を手伝って貰えないかしら?」
「良いよ~♪」
「藍は、ただでやってくれるなんて嬉しいわね。」
「ちょっとマテや。」
「他の3人には報酬を支払うわ。」
「ヒドいわ~やさぐれちゃうよ?」
「藍なら平気ですね。」
「皆が私を虐めるよ…。」
ボケすぎたので華琳が咳払いをしてきた。
「んんっありがとう皆、あなた達の力を貸して頂戴。」
side 藍 out
side 華琳
賊討伐の援軍として4人を客将扱いで、それぞれ兵を貸し与えたのだが、1月の予定を3週間で終わらせてしまった。
焔耶と緋焔が前曲、秋蘭と緑を後曲、私と藍が本陣となったのだが、焔耶と緋焔は春蘭の代わりを完璧に勤め上げた。
緋焔が武力で圧倒し、焔耶は緋焔の目の届かない部分を助けたり指揮を取りながら戦い続け前曲を維持し続けた。
秋蘭と緑は、得意な武器がお互い弓で賊が近づいて来る前の一斉射で数を減らした後、前曲2人の前線維持の手助けを行っていた。
藍は結局戦場に立たなかったが、兵站の運用が恐ろしい程に上手かった。
討伐行中、補給が滞る事が一切無く、またほんの少し多い位だったので、糧食を運んでいた兵の足が鈍らなかった。
結果、兵や資材を必要最小限で討伐行を完了させる事が出来たのだった。
陳留に戻って幾日が経ち、明日には藍達が旅立つ。その前に引き留め…いや、少し話をしたかった。
城壁に藍が立っていた。
「あら?眠らなくて良いの?」
「高い所が好きなんだよ。」
「せめて星が綺麗だったからとか言ったら?」
「干し柿礼だったから~」
「はぁ、もういいわ。」
そう呆れながら言い、2人でケラケラ笑い合う。
何かずっと昔からこうだったみたいな自然な感じだ。
「明日でお別れなのね…」
「生きてさえいれば、また会えると思うよ?」
「…」
「どしたの?」
「私は今まで欲しいモノは必ず手に入れてきたわ。」
「うん。」
「でも、笑い合える友は手には入らなかった…」
沈黙が降りる、言いたい事が言えない…
私は彼女が欲しい、けど手に入れたら友で無くなってしまうかもしれない…
そう思うと怖くなる。
ああ、2人で笑い合っている時に私は幸せを感じてたのかもしれない…
私は…
「華琳。」
「何?」
「約束しよう。」
「約束?」
「そう、約束。この世界は多分荒れていくんだろうけど、生き延ぬいて再び会えた時に歩いてきた道を教え合う。」
「お互い敵になるかもしれないわ、その時あなたは私と戦える?」
「戦えるよ、全力で。」
「そう…」
言い切られてしまうと胸が痛むものね。
「華琳が誇れる友達で居たいから。」
そう言って見せた笑顔に思わず顔を染めてしまった。
それと同時に全力で彼女と戦いたくなった。
ああ、全くあなたは飽きない女だわ。
「なら、私も藍が誇れる友になってみせるわ。」
「十分だと思うんですが?」
「あなたは、今の自分に満足?」
「してない。」
「ふふっなら私も同じよ、満足なんてしてないわ。」
「すごいのが敵になりそう。」
「後悔した?」
「反省も後悔もしない!!」
「反省はしなさい。」
「「あははっ。」」
藍は私より背が高いから届かないわね。
「藍。」
「ん?」
「ちょっと屈んで。」
「うん。」
城壁の上にある2つの影が一つになる。
「え~と、華琳?」
「じゃあね、藍。早く寝なさい。」
こうして藍の言葉を聞かずにさっさと部屋に帰ったのだった。
藍達の旅立ちの朝、謹慎が解けた春蘭と秋蘭を伴って私は城門まで来ている。
今4人に春蘭と秋蘭は真名を預けている。
藍が真名を受け取ったのを見計らって、話掛ける。
「旅立ちには良い日よりね。」
「おや~陳留の刺史様がお見送りしてくれるとは出世した?」
「変わり者が馬鹿をしないか、見に来たのだけど?」
「ヒドい扱い再び。」
「あなたはそうなる運命なのよ。」
「「ふふっ。」」
「冗談はこれくらいにして、これを持って行きなさい。」
「これって…良いの?」
渡した物は、2つの書状。
袁紹と公孫賛への紹介状だ。
「ありがとう、華琳。」
「約束を果たすまで死ぬなんて許さないから。」
「華琳もね。」
「あなた達も生きてまた会いましょう。」
「ええ、判りました。」
「言われるまでもない。」
「…ああ。」
こうして4人は、北に向かって旅立った。
予想では公孫賛の下に行きそうだけど。
どちらに行っても強敵になるわ。
藍、あなた達とまた会える時を楽しみにしているわ。
side 華琳 out
如何でしたでしょうか?
ちょっとぐたった感じになったと言うか圧縮しすぎたと言うか…
その部分でケチがつきそう…
百合のボーダーが微妙に判りませんから、無茶して消されないように頑張ります。