表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/35

第11幕 出た!風林火山の四戦士!!



三光同盟の目的は大陸復古の鍵を握る下剋錠を手中に収めることだ。だが、同盟に所属する東西南北のサムライド達の目的は決して一筋縄ではない。大陸復古の大志を掲げる者もいれば、敬意の先へ忠義を貫く者もいる。また己の実力を誇示する者もいれば、仇敵を倒すことに全霊を注ぐ者もいて、とどめに己の美学を貫く為の者もいる。

そして、同じ組織、同僚同士においても元々は他国同士のサムライドであり、敵でもなければ味方でもない関係である。己の武勇と知略、駆け引きと実力が組織内において8段の階段で構成されるピラミッドの頂点を目指すこととなる。豪将、魂将、雄将、爆戦士、激戦士、強戦士、中戦士、軽戦士。この8段の階段の先には宿聖。軍団のトップの座がある。そしてこの肩書きこそ所属するサムライド達のステータスそのものである。そして今新天地において無名の戦士達が肩書きによる階級社会へ身を投げようとしていたのだ……。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


鏡湖池。それは金閣寺を囲むように、また守るように存在する広大な湖である。その湖が一瞬にして真っ二つに割れた。広大な湖の割れ目が、かつての栄光を象徴する寺院を一瞬にして奈落の底へと飲み込み、けがれなき湖水は、瞬く間にして一滴たりとも地上へは残らなかった。


湖が消滅して姿を現した物体は、だ円形の地上を金箔で塗りつぶされたドーム状の建築物だ。だが、金閣寺が当時の権力者たちを象徴する文化の粋ならば、このドームは外見に特に造詣が感じられず、中もオブジェや装飾ひとつない無骨な建築物だ。このドームに求められるものは華やかさではない苛烈さだ。ドームの中央と観客席の合間には、今にも物体を溶解せんとするマグマが湖のように注ぎこまれており、禍々しい中央を長柄める観客席には東西南北の主要四軍団のサムライド達が観戦している。

「この猛者達の闘技場・ヴェーテス・アリーナにおいて新参者を迎える時が来た!」

今、ドームの先陣には同盟のトップに立つ男ケイから、同じ同盟に属する観客でもある何人かの部下に、これからの戦いの始まりを宣告された。その際の彼は三光同盟旗揚げ時のカリスマに満ちて、改めて面々にトップに相応しい貫録と気迫を見せつけている。

「我々三光同盟はゲン・カイと彼らを支える風林火山の四戦士も迎え入れることに成功した。ゲン・カイの実力は大陸における五強の1人としてかつて東部軍団の宿聖であったマローン・スンプーと互角以上の実力者であり、この地でも亡国の女傑と呼ばれたリマ・ナガーノを軽く葬り去った彼の実力は言うまでもない」

ケイの後ろにそびえる巨大なモニターにはゲンの姿が映し出される。彼の大陸時代の戦い、ミーシャとの死闘、リマを仕留めたこの大陸での戦い、そしてケイ自らが介入した再度のミーシャの戦い。この戦いを一言で言えば熾烈かつ苛烈、強烈な死闘を披露しミーシャを除けばゲンは相手に圧勝を収めている。

「ゲンの実力は言うまでもなしだが、大陸時代に面識のなかった者が多い中、四戦士の実力を疑問視する者も多いであろう」

「ですので、ケイ様と私が考えたデモンストレーションがこのヴェーテス・アリーナでの決闘なのですよ」

そこにケイの後ろで何やら考えているような姿勢を取るハッターが指を鳴らせば、すぐにドームの先端からは牢獄に閉じ込められて、それぞれが強力な拘束により身動きが出来ない状態の17人のサムライド達が、モミーノとアクエーモンに牽引される形で観客達の前に晒された。

「あれは確かウジーエ、モリナリ、フィーネとスネーク殿の部下のサムライド……どうしてこのような場所に」

「ふふふ。それは実力がなかったからじゃないかしら」

特等指定の観客席でサクラとトリィが彼ら3人に気が付いた。ご存じのとおり彼らはスネークの苛烈なやり方に耐えきれずに脱走したまではいいも、今自分を闘技場へと牽引する赤鬼青鬼コンビに捕われてしまった面々である。

トリィは何かあったとサクラへ考えを促そうとするが、サクラは全く眼中にないのだろう。自慢の扇子を仰ぎながら優雅に、そして彼らをごみの様に見下すような目で傍観を続けている。

「ところでトリィ、そのサイバーフォームは何かしら」

サクラが気付いたが、今回のトリィは外見から一味違うようである。何故なら彼女は執事服からサイバーチックなタイツと私立探偵を彷彿されるトレンチコートを被った姿でノートパソコンらしきデバイスを手にしている。サクラが口にしたサイバーフォームと、その姿は言われているが、ライド・マシーン”リーフェスト”の力を借りて自分の姿を変える彼女のバリエーションの一つである。

「今回のように観戦できる機会は貴重です。この戦いを参考に私も少し強くなれればいいと思いまして」

サクラに問われてトリィは顔を少し赤らめながら、照れくさそうに自分の決意を口にする。自分は元々戦闘用ではない故に戦いが不得手だと考えていたからかもしれない。

「スネークは勿論、私は認めたくありませんが、ミランでさえ私より強い。後れを取っている私がサクラ様の力になるには少しでも強くならなければいけないとおもいまして……」

「まぁ感心ね。ですが、戦闘はミランとその他大勢に任せておけばいいの。貴方は私の執事のような存在だから、別にそこまで強くなる必要はないのよ」

「は、はぁ……」

「ふふふ。東部軍団には興味はありませんが、久しぶりにサムライド同士の戦いを観戦して満喫する事も面白くてよ?」

この貴重な観戦の機会をトリィは今回を貴重な機会ととらえているが、サクラにとってはこの戦いを眺める意義などどうでもいい話で、楽しめばいいと考えているらしい。そこに一途な従者と適当な主君との温度差が見て取られる。


「イオーノ、ウド、スワコ、ガサワーラ、タカトー……どうやらあの者達はマローン・スンプーの部下で東部軍団の面々です。教主様」

「ほんまかいな。どないやらマローン亡き東部軍団は烏合の衆とケイ様から見なはれてんかからこなうな憂き目ぇ遭てもたんかいな」

「それはあり得ます。そしてあの者達は南部軍団での反乱に加担したフィラオカン、モットー、クニトラ。モミーノ殿とアクエーモン殿が鎮圧した際に捕縛した面々です」

「ライレーン、われ本当に詳しいな」

サクラとトリィ。その隣では、眼鏡をなおしながら同じ特設観客席で観戦する西部軍団の宿聖ガンジーと同席していた豪将ライレーンも試合の様子を観戦しようとしていた。それで彼女の知識と情報の多さにガンジーは思わず彼女に賞賛を送った。彼の上機嫌な褒め言葉を受けるが、ライレーンは淡々と自分が携行していたノートパソコン型の機械を睨めながらキーをたたく。

「私は相方に徹するタイプです。何時共同戦線を張るかわからない同僚を知れば知るほど同僚の実力を引き出すことが出来ますうえ、万一の事態に備えが効くからです」

「なるほどなー。けど用無しと反逆者にはこなうな仕打ちとはケイはんもハッターも少し厳しいのちゃいますか」

「それはあります。ですが、ハッターは東部軍団の強大な力を披露して、新生東部軍団の実力を証明させることで、私達を含む3軍団から軽視されないようにする必要がある。そうみてこのようなことを計画したものではないかと私は考えています」

「そういうことならそういうことでいいんじゃね? 俺好みの女はいないしまぁお手並み拝見と行こうぜ教主さんよ」

ライレーンの落ち着いた丁寧な物腰に対し、ザイガーは相変わらずクールに、少し不真面目に、またお気楽な返事をする。

「そうやな~いやぁうちらからは犠牲者がいまへんし、ハッターが、西部軍団がこの計画に噛んでるなら見届けやないきまへんかな」

「そんな必要ないですよ!!」

隣のザイガーが言う事もあり、ガンジーはひとまず試合の一部始終まで観戦する事に決めた。しかし、突然鹿の様な角が目立つ兜を始め鎧武者を彷彿させる少年がガンジー達の元へ駆けだしてやってきたのだ。

「お前は激戦士ディア・カノスケ!」

「ガンジーさん、ザイガーさん、ライレーンさん! どうして貴方達がこのどうでもいいような戦いを観戦しちゃっているんですか!!」

その少年ディアは激情的な性格だろう。上司であるガンジーの元に現れては必死になって、この観戦行為がばかばかしい事だと言わんばかりに吼えかかろうとしているのだ。

「ディア。どないでもええとか言うけどな~、これわいら西部軍団が絡んでるしな、あの五強の1人ゲン支えた四人なんや。シン達倒す為に東部軍団との挟撃作戦計画する際にわいらの参考になるんやで」

「シンか芯かどうかは知らないですけどね! 僕の敵はモーリ・トライアロー、中国地方に我が物顔で君臨する陰陽党の面々なんですよ!! あのモーリとその2人の娘を僕が倒さないと僕の立場がないんですよ!!」

このディアはモーリらに相当な敵意を抱いているようである。モーリ・トライアローとはゲンやミーシャと同じ五強の一人ではあるが、2人の娘と共に中国地方の安泰を貫く事を選び、日本列島での混迷に一切干渉を行わないいわば中立組織のリーダーである。

「あのなぁ。モーリはんはなーうちら三光同盟に停戦条約を組んでるんや。わいら西部軍団は二つの組織の狭間に存在する少数しばくぐらいしか西には用はないんや」

「用はなくても僕は困りますよ!! 大陸時代に僕の故郷イズモと月光の戦姫であるハル・フィーサ様を滅ぼしたあの老いぼれを倒さないと僕は気がすみませんよ! ええ!!」

「そないなこと言ったかてなぁ。わいはあのモーリはん敵に回して勝てる自身はおまへんし、敵に回せばシンはんとモーリはんの挟み撃ちになるんや、デメリットの方が多いやさかい」

「そうだ。ディア殿、戦いは場当たり的な行動が敗北へ導くのだ。少し自重したらどうだ」

「デメリット云々の問題じゃないですよ!自重したら僕が僕じゃなくなりますしね!!」

ガンジーの、ライレーンの説得もディアに対して効果は薄く、かえって本人の立場がなくなってしまうことを突っかかるばかりだ。

「あ、こら! ディア、お前こんな所にいたのか!!」

「あかんがな! ガンジー様に罰あたりや!!」

そんな所に少し離れた観客席から走って、僧侶の衣装を着用してスキンヘッドの2人のサムライドがディアをひっ捕らえるようにやってきた。

「おっショーケイ、ヨリチカ、丁度ええ所に来てくれた!ディアをちょっくら捕らえてくれなかい!!」

「「御意!!」」

ガンジー達の特等席に就く事が許されるのは一定の階級を得た者のみ。ディアはまだその域でないこともあり、またこれ以上彼にあれこれ言われるのをガンジーは厄介だと思ったからだろう。

それから、ひっ捕らえる命令を受けた両者はディアの腕を掴んで連行するかのように連れ去っていく。

「こらディア! お前はどうして西ばっかに目を向けるんだ!!」

「モーリがいるからですよ! あいつがいる限り僕は西へしか戦う気はないですよ!!」

「だからモーリは一応味方同然なんや! 攻めたらうちらが危ないんや!!」

「はなせ! はーなーせー!!」

取り押さえられたディアは自分の言動を否定する事をせずに一般観客席の元へ引っ張られていった。彼の様子を半分呆れた目で見つめるのはガンジーとライレーンである。

「ディア・カノスケかぁ。わいはとねん奴軍団に加入させてもたんかいな」

「ディアの実力は悪くないが、ディアは大陸時代に母国をモーリに滅ぼされた過去があるようで、それからずっと復讐することしか頭の中にないようです」

「そや、やから復讐の麒麟児とか呼ばれる訳やけど、どないにかいならなかやえなぁ」

「俺がモーリを殺そうと思えば出来なくもないがなぁ、あいつはどうやら自分の手であいつを倒したいようでな。困った奴ってわけだな」

「さよかいな……けどあいつあんじょう操れたら西部軍団は有利なんやが、ひょっとしたらわいの限界ちゃいまっか?」

ディアの存在を考えるガンジーにライレーンとザイガーの返答を挟んで軽くため息をつく。自分は部下をまとめる器ではないのか。能力で有能だが性格に問題がある部下をうまく導く事が出来てこそトップの器ではないのかと。ガンジーは少し頭を痛めているようである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


観客席の中央で、北と西のトップが互いの考えが抱く中で、遂にアリーナのコロシアムには17人のサムライドが一斉に檻から放たれ、ハッターの操縦で拘束が解かれた。

そんな彼らがかつての仲間に見下されるような位置に置かれ、同時に入口へつながる中央からの通路は一瞬にして収納されてしまい、彼らはまさに孤立してしまったのだ。

「まさか俺達殺されるのか……」

「どうなるのか~」

「やべぇ……むっちゃやべぇよ。風林火山の四戦士とか俺、噂には聞いたことあるぜ」

17人のうちウジーエ、フィーネ、モリナリの3人は死刑宣告が迫っているのではないかと考えて不安が募り、特にモリナリは全身がもはや振動した状態だ。

「風林火山の四戦士に選ばれている四人は疾風の勇将マサト、森林の智将カスガ、烈火の猛将アリカ、鉄山の闘将VAVA……。カイ国が大陸有数の国になったのはゲンだけでなく、あいつ等のおかげとも聞いたことがあるぜ」

「そ、そんなかっこいい肩書き俺達もっていないぞ」

「だから、それほどそいつらは強いんだよ! ウジーエ!!」

「あ、何かあるんだなー!」

四戦士の噂と肩書きをモリナリから聞けばウジーエは身をすくめてしまう。

この中で一番能天気だったフィーネが指を刺した方向を2人が振り返れば、5、6人ほどのサムライド達が彼らをここまで引っ張ってきたアクエーモンとモミーノへいちゃもんをつけて挑もうとしていた。

「お前ら一体何なんだよ! 俺達をこんなところまで引っ張ってきて」

「俺達を処刑しようとするなんて!!」

「図体ばかりでかい奴が偉そうに!!」

「あの時僕がやられたのは計算外でしてなぁ……」

「カブトクワガタの色物コンビ!」

「な、なんだと!!」

「同志!!」

モミーノとアクエーモンを叩く彼らは元々組織に不要と見なされるなり、反逆を企んだなりとその2人に敗れてここへ連れてこられた身である。そのような負けを、どちらにしろ実力が欠けたことで敗れた自分達を認めようとしない彼らの勇気は立派だ。無謀かもしれないが。

こんな無謀な彼らの挑発や難癖をぶつけられているモミーノとアクエーモンは、赤鬼と青鬼と呼ばれただけはあり戦闘力は高い。しかしそれに反して、思慮に関してはやや弱い面がある男達だ。

彼らがそのような罵声に耐える力は備わっていないのか、一度キレた彼らが取った行動はまさに素早かった。

「ホーンリフター!!」

「シザーリフター!!」

赤鬼と青鬼は、言葉の暴力に耐える力が足りなくとも、倒す力は十二分備えている。先方の2人を真っ先に捕らえ、2人をそれぞれ頭部の角で抉って、ちぎって破壊することで、両者の実力が、自分を認めない彼らの無能の前にアピールしてみせる。

「あぁぁぁっ!!」

「ぬわっ!!」

「だぁぁぁぁっ!!」

「俺は何も言っていないのに!!」

モミーノとアクエーモンの勢いは収まらない。赤鬼と青鬼を侮辱した3人はともかく、全く関係のない1人まで彼らにリフトアップされてしまい、為す術もなくそのままリング外のマグマへと叩き落とされる結果になった。

「やばいのだ~」

「危ない危ない、下手したら俺達も危なかったぞ」

「いや、俺達もどっちみちあいつ等と同じ目に遭うかもしれないぜ」

「モリナリ……どういうことだ?」

「いや、あの四戦士も一人一人が赤鬼、青鬼と匹敵する強さらしい。いや数の差でいえば赤鬼青鬼も危ないほどだ」

「そんな奴と1対1でたたかうのか……」

「ガクガクブルブル……」

ウジーエら3人を始めとする残りの面々が震えている時に、そのコロシアムの一方から通路が接合され、マグマの海を越えて壁と中央を繋いだ通路からは扉が開かれた。

「さて今こそ四戦士に出陣してもらわねばならないな」

「そのとおりですぞケイ様。四戦士は東部軍団としてゲンを支えるにはうってつけのサムライド達ですなぁ。その強さは赤鬼と青鬼と匹敵すると思うぞ」

「俺と匹敵するだと!」

四戦士の登場を示唆させるハッターの話を耳にしたモミーノが激しく反応した。武闘派である自分に双肩するかもしれない四人の戦士が今ここに現れようとしているからだ。

「落ち着け同志! 俺達はこの戦いの勝敗を隊長からゆだねられているぞ!」

「同志……」

「とにかくだ! 本当かどうかはこの目でしっかり見ればわかるはずだ!!」

「その通りだのぅ。モミーノ、アクエーモン! では入場してもらおうかのぅ!!」

こうしてハッターの合図により扉の先からは4人のサムライドが一列に並んで姿を現した。4人とも個性が分かれてはいるが、外見では他のサムライドと比べて特に異端と思われる。

だが、彼ら4人の余裕を見せる笑み、平常心を失わない冷静な表情からは彼らにとって確かな自信の象徴だ。

「あれが四戦士か……」

「やべぇなぁ、やべぇなぁ」

「ガクガクブルブル……」

残された11人。その先頭に立っていた3人に関しては完全に戦意を喪失しかけている。特にフィーネは全身が梗塞してしまった様子である。

「さて、俺達の初陣の相手は決まっているか」

「はい。四戦士筆頭のVAVA殿。既に試合の調整は終わりました」

四戦士の中で最も巨体を誇り、鉄面と機械の鎧を全身に纏う男VAVAは、ハッターからの報告に耳を立てて、左端のサムライドと目を合わせた。

彼らは目配せで十分考えを共有する事が出来る程の関係だろう。VAVAに応えるように左端のサムライドが一歩前に踏み出た。踏み出た一番左のサムライドは美しい金髪を背中まで伸ばし、まさに麗しいの一言に尽きる顔つきを持つ。

「疾風の勇将マサト・ナイト。風林火山の称号にそぐわない先鋒というところか」

「はっ。だが、ナイトが先鋒とはいえ我ら四戦士の実力が拮抗している事を忘れないでもらいたい」

「ほぅ。VAVAお前は随分謙虚だな、風林火山のトップはお前であることは私でも知っているというのに」

「トップであろうとそれはごく微々たる差だ。トップとはいえ、ごく僅かな慢心が頂点の座を揺るがし、他のものに差をつけられてしまう程度の力量の差だ」

VAVAはナンバー2の身でありながら、そして四戦士のトップであるにも関わらず、身を弁え過ぎたような落ち着きと謙遜を見せる。だが、彼はケイに対して怖気づくこともなくそのような事を堂々と言い放つ。その所は彼が単なる控えめな性格ではないだろう。

「そうか。では標的は……」

「ケイ殿、そこは少し待っていただきたい」

「どういうことだ?」

四戦士の試合が始まろうとしていた時だ。VAVAはケイへ堂々とで意見を述べようとする。その堂々とした態度を持つ彼にケイもまた神経を苛立たせる事もなく、しっかり耳を向ける事を忘れない男だ。

「俺達四戦士はこの程度の雑魚どもに負けるわけがない。そうだな……」

何か不服な点があったVAVAは、少し思考させて指で3の数字を作ってケイに見せた。3とは何か。ケイが暫く考えたが、答えを思い浮かんだ顔を作った。

「1対1では物足りない。四戦士1人1人が個々3人のサムライドを3分以内で片づけるつもりというのだな」

「そのとおりだ」

VAVAの忽然とした振舞いに観客が、また生贄がどよめきの声を立てる。1人1人が雑魚とはいえ、3分で3人を片づける発言は、余程己の能力を自負している者しか言えない事である。

「1対3のチーム戦ときたか、わいもあの程度のサムライドなら勝てる自信はあるんやが、さすがに3分で片づける事は出来ない気ぃするな」

「つまり、あの方は相当な自信の持ち主ということですね、教主様」

「そうや、わいら西部軍団はチームワークが売りのつもりやけど、それほど強いサムライドを軍団に組み込むことが出来たらわいら地味な存在から脱却できる気ぃするけどなぁ」

「しかし教主さんよ。あいつ、ここでハッタリ言っている可能性もあるんじゃないか?」

VAVAの自信全開の発言に興味がそそられるガンジーとライレーン。しかし、ザイガーの言うとおり実力が未開のサムライド故に本当とは信じきれない所もある。

「ケイ殿、俺達の宣告を絶対的な物にする術はあるか」

 ザイガーの意見がVAVAに耳が届いたかは分からない。だが、VAVAは自分が単なる自意識過剰と見なされる事は嫌うようで、何か自分達に口約束を死守させる事を自ら求めたのだ。

 ケイがハッターへ顔を向ける。だが彼はケイの催促を待ち望んでいたかのように、首輪ほどの長さのベルトを彼に見せた。それからハッターが一歩前に出てベルトをVAVAへかざすようにして見せると。VAVAもまた、ハッターの考えが読めたのだろう。首を盾に振った。

「皆さん、ルール変更です。四戦士の首にこの爆殺帯をつけて、試合開始から3分以内にその爆殺帯が爆発して……はい、さようなら。と言う事です」

「制限時間が過ぎた時には、たとえ負けでなくても俺達の負けというわけだな」

「おや? この場で恐れを為したのですかVAVA殿。東西南北のトップが観戦している試合なのですよ?」

ハッターが少し乗り気になった。どうやら盛り上がる戦いになると見えたからだ。

おそらく彼はこの戦いを普通に進めたら四戦士が圧勝してしまうと考えていたのだろう。しかし、VAVAが自分から安易な勝ちを求めない姿勢に、己の心の内に秘めた計画が刺激されたのだろう。

万一の時に用意した爆殺帯がここで役に立つとは内心では思わなかったはずで、予想外の出来事が楽しい模様である。

「いや、俺達はそれで大丈夫だ。これで時間と首を狙って勝利というハンデをつけることが出来るからな。俺達四戦士の実力が拮抗していると言ったとおり、俺が負ける自信がなければ、この3人も負けはない」

「おぉ。それはそれは大変結構な自信を抱いていますなぁ……さすがゲン様の四戦士といったところでしょうか」

「当たり前だ。さて、相手が誰になるかは分からないが最も俺たちに不得手は存在しない上、このような屑同然の雑魚に俺が負けるわけがないがな」

忽然とした態度でVAVA、アリカ、カスガ。そしてトップに選ばれたマサトは先端の電光掲示板を眺める。

四人の、生贄達の、そして観客達の視線が集まる電光掲示板は彼らに片づけられる運命の最初の生贄を躊躇なく選び出した。


「元東部軍団中戦士ウジーエ・ナオト、モリナリ・アンドュー、フィーネ・ノ・ヒローナ。ですなぁ」


「「……」」

「どういうことなの……ってあれれ」

コンピューターが選び出し、ハッターのアナウンスにより告げられた最初の生贄。よりによって特に恐慌状態だった元東部軍団、スネーク・サイドの部下トリオだ。

ウジーエ、モリナリは辞世の詩を今にも詠みあげる気配であり、余りプレッシャーに感じていないフィーネが後ろを向けば、他の8人がフィールドの地下へ自動に引き込まれたのである。

「おっと、この戦いがひょっとして激戦になってしまったら戦意が萎えますからねぇ。弱者とそこの仮面の人に呼ばれた皆様の為の救済措置ですよ、あ、貴方がたには余り意味がありませんがねぇ」

ハッターの飄々とした語り口調が試合、いや殺るか殺られるかの殺し合いの始まりを示すようなものかもしれない。

そして、決戦の地に近付いたマサトへアクエーモンが万一の際に身体を拘束して、モミーノの手で爆殺帯がつけられた。


「最初の相手はどうやら戦意を喪失しているようですね」

「怖がりな敵さんだなーこれじゃあマサトが可哀そうだよー」

(高揚状態と恐慌状態では3割程度の戦闘力の差が生じるとゲン様から、ヤマカーン参謀から聞いたことがある……)

腰までの黒髪に両目を隠したカスガと猫耳をはやし、まるで小学生から中学生と間違えられてもおかしくない小柄な少女アリカが相手の3人と同志であるマサトの寸評を述べる。   

それから腕を組んで考えるトップのVAVA。彼の脳裏には主君と父代わりの人物の教えが届いていた。

「アリカの言う通りだ。あの程度の屑中の屑を倒しても先鋒のポジションからマサトが軽視されてしまうかもしれない……ハッター殿、ルール追加訂正だ」

「何ですかいVAVA殿。まさか三方の敵を前に仲間の命が惜しくなったからルール変更とでも……」

「ルール変更はルール変更だが、決して俺や保身は考えていない。むしろ制限時間を3分から2分6秒に縮めてもらいたい要求から分かるはずだろう」

「何ですと……」

VAVAから己の首を敢えて絞めるように述べる様子からは、またもや観客席がどよめきの声で支配される。このルール訂正でさらにマサトにとって、いや四戦士は不利な条件を突きつけたからだ。

その条件を躊躇いなく付きつけるVAVAには四戦士のリーダーとしての威厳と冷徹な姿勢が感じられるようである。

「ずいぶん強気なリーダーですなぁ。これでマサト殿が破れたら仲間殺しの汚名をかぶることになりますがねぇ……」

「話はこの位にしてもらいたい。俺は、いやアリカもカスガも少しでも我ら四戦士の力を証明したいものでな」

「わかりました。では……」

ハッターが指を鳴らすとマグマから別の小島が浮かびあがり、モミーノとアクエーモンがその小島へジャンプした。それからすぐに小島の下からは中国様式の鐘がせりあがってきた。


「これでトップを買って出たマサトの立場がある程度何とかなりそうですね」

「さすがVAVA! 頼れる~!!」

「アリカ、勘違いするな。マサトの事を配慮するとともに俺達は勝利までのタイムアタックを競うことにもなるのだからな」

「……」

喜ぶアリカにリーダーとして仲間でもあり競い合う相手同士でもある事を促すVAVA。カスガは彼の行動に感謝しながらマサトへ視線を向けた。マサトは対戦相手を前に未だに口を開けようともしていない。

(マサト、貴方は自分から四戦士の潤滑油として汚れ役を躊躇わず買って出ますね。そんな貴方は四戦士になくてはならない……大切な方です)

カスガの意思が通じたはずだろう。これから始まる戦いに自信を持っていたのかマサトは軽く仲間達に笑顔を向け、相手を目のあたりにしても余裕に満ち溢れた笑顔を全く絶やさなかった。


「ちょっと、俺達あいつらに舐められているような気がするぞ……」

「ウジーエ、フィーネ、とりあえず俺達は3人、大陸時代からの仲間同士じゃねぇか! たかが一人に負けるほど俺達腐ってねぇぞ!!」

「どうなるんだか~」

3人が自信を失いかけている時に、モミーノがアクエーモンの支える大鐘を自分の拳で叩いて見せた。激しい大音量が至近距離から鳴り響くが両者は全く動じない。そんな2人が放った大音量が試合の始まりなのだ。

「いくぞウィーエ、フィーネ!」

「ぎょ、御意!!」

「なのね~」

相反するフィールドで3人が襲い掛かった。だが、標的である肝心のマサトは全く動く気配がなく、彼らの顔が近付いた時にようやく瞳を見開いたのだ。


「んまぁ!!」

「何!?」

「ど、どういうつもりだあいつ!!」

「なのね~」

突然叫んだマサトの第一声は三人の勢いを鈍らせてしまうような程女口調、しかしどこか可憐な声調ではなく男性が無理やり甲高く叫んでいるかのような聞き苦しいものに聞こえた。

その脱力させるマサトの様子にあっけにとられる観客席の中で、何人かが彼の属性に、またそれゆえに予想される展開に気づいていたようで、次のセリフが答えを示すことになった。


「あの子は女の子だし! あの二人は男の方なのに私好みのかっこいい男の子じゃない不細工よ!! 私を倒していいのは美男子だけなのよっ!!」

「「……こいつ?」」

「どうやら……オカマなのね~」

「……」

フィーネの言ったとおりこのマサト・ナイトは性別上では男であるが、女性と見間違えそうな外見もあるのか中身は女性、いわばオカマの部類に振るい分けられてしまうサムライドなのだ。

既にそれを知っている者は全く動じないが、他の面々は色々な意味で引きの感情が芽生えている者も少なくはない。

「な、なんだこいつ同性愛の考えを持つのか!」

「な、なら大丈夫だ多分! こんな女男に俺達が負ける可能性は少ないぞ!!」

「そうなのね~ランブルスティンガーでやっちゃうのね~」

ランブルスティンガーとのフィーネからのキーワード共に彼女を先頭に、他の二人が彼女の斜め後ろに位置するように移動する。

だが、目の前のマサトの行動から考えると彼らのフォーメーションへの移行はタイミングを読み間違えていた上に、余りにも隙を見せていた。何故ならマサトは背中から2門のキャノン砲、両腕からはシールド状のパーツが既に展開されていたのである。

「私の好みに合わない方に負けるわけにはいかないのよっ! 返り討ちにしてやりましょうか!!」

「ええっ……!?」

「ちょいまち……!!」

「少し、頭を冷やした落ち着くのだ~」

「うるさいわねっ! ビルスライナー、ビルスファントム、ビルスクレセント、ビルスビッダー、ビルスガーダー!!」

“やりましょう“の言葉と共にマサトの身体を白いオーラが包み。反撃開始の砲撃が鳴り響いた。

彼の左肩からはキャノンが火を吹き、右肩からは砲口の光が一直線に放たれる。それだけではない。その両肩間接からく型のカッターが飛ばされ、止めに両肩のシールドと腕の間からは8本のビットが放たれ止めに肩のシールドがブーメランとして飛ばされた。

それだけではない。これ程の一斉攻撃が、彼ら3人のランブルスティンガーのフォーメーション形成のタイミングに行われた。

合体や変形時には隙があると言う通り、おそらくそのランブルスティンガーは合体技だろうが、その手の技を放つには隙が存在するもの。その隙をマサトは見事に狙った。

「うぉぉっ!!」

「わぁぁっ!!」

「リー!!」

「ビルスランサーで……もうっいやっ!!」

攻撃の雨が一斉に3人へ振りかかった。発生した煙と共彼らの悲鳴が聞こえた。どうやら好みでない相手への怒りか、まだ止めをさせていないと判断したのかマサトは背中のランサーを引きぬいては、一直線へ駆けだしたのだ。

マサトの勢いは留まりを知らず、いつの間にかマサトの姿が捕らえられないほどの速さを彼自身が生み出す。決して全速力で走れば広い訳ではないフィールドを切り込む彼はまさの疾風の二文字に相応しい男だ。

それから、激しい煙の中へ突入したマサトの素早さは、煙を掻き切る規模の強風そのものである。煙からは幾多もの爆発が起こり、その爆発は煙を全て吹き飛ばしてしまう程の規模であり、マサト自身にも少なからず被害を与えてしまう程の威力であろう。


「なんて無茶だ……あの距離で止めを刺して爆発を引き起こしたら本人も無事じゃない!

いや、あの首の爆殺帯に引火してしまう……」

「永遠にさよなら♪」

「!!」

マサトの無茶な行動に対し、必死に何かを掴もうと観戦したトリィは驚きを見せたが、その驚きはまた別の驚きへ切り替わる。

何故なら真っ先に突っ込んだはずのマサトが爆煙を背にビルスランサーを構えて、さらにビルスガーダーも元の両肩へ連結されているのだ。サムライドである自分の目には全く捕らえることが出来なかったが、今の彼女はサイバーフォームだ。そのフォームを活かした機能で己のとらえた映像を両手に握られたノートデバイスに、別アングル・スロー映像として出力することで事の真意がようやく突き止められたのである。

「そうか! これはそんな仕組みだったのか!!」

「トリィ、さっきからうるさいですわよ。あのサムライドが勝っただけの話じゃないの」

「それはそうですけど、あの勝ち方はすごいじゃないですか!!」

トリィのデバイスの映像から彼女の両目に映された答えとは、マサトが一直線に駆けて、ごく最小限の動きで直線をほぼずらすことなくランサーの先端で3人を貫くと同時に煙からその姿を現し、爆発が起こった時には彼はマグマを超えてアリーナの壁を蹴って宙を回転しながら彼へ飛んだビルスガーダーと合体して、全く元の姿で、また手傷一つ負わずに決め台詞と共に勝利を収めただけである。

それだけの行動をマサトは通常のサムライドであれば全く目視できないほどの速さで遂行していたのである。

「さすが四戦士の1人。あの動きと技の速さを少しでも私が強くなるヒントになったら……」

「全くだな。あの素早さは私でも真似はできない」

「ライレーンさん……!?」

トリィはマサトの実力に心が惹かれ、憧れも感じた。そんな彼女の隣ではライレーンが彼女のデバイスのディスプレイを眺めていた。

「いや、私もな例え軍団が違えど共同戦線の際に、どれだけ相方が有利になる戦いに展開するように相手の研究をしているからな」

「ライレーンさん……これは!?」

「いや、これは私達西部軍団の面々のデータだ。私は自分で言う事もなんだがペアで行動する方が向いているうえに、相手からも相方に指名されるから相手をよく知らないといけない訳だ」

「こ、こんなに……」

「トリィとか言ったな。戦いの場で余裕が少しでもあれば、仲間の動きや行動パターンを見て学ぶべきだ。お前は自分の実力がないと悩んでいるようだな」

「は……!?」

ライレーンの落ち着いた、そして核心を突く物言いにトリィは図星だったようで顔を赤らめながら驚いてしまう。そんな彼女を見るとライレーンは少し微笑ましげに笑って見せる。

「何、今のお前は現状を打破しようと行動しているではないか。口だけではなく、実際に物事をやるお前は伸びると私は見ている」

「あ、ありがとうございます……ライレーンさん!」

「どうやら私は能力云々よりもひたむきな者に甘いようでな……よし、後で私のデータを渡そう」

「ええ……!? ライレーンさん! ちょっと!!」

「何、相手の長所、短所から己を磨く事は大切だ。それに軍が違うからなかなか顔を合わせる機会がないが、私でよければお前を手ほどきすることぐらい可能だ」

「ほ、本当ですか!?」

トリィの両目が輝きをみせ、ライレーンは彼女のひたむきな姿勢を微笑ましそうな目で見守る。

そんな二人をよそに、コロシアムのマサトは既に試合終了の鐘と共にモミーノから全く無傷の爆殺帯を解かれた。通路を通って四戦士の元へ帰った時にタイムリミットの2分6秒が経過したが既に爆殺帯は機能を停止されていた。

「さっすがマサト!」

「当然よアリカ♪どうだったVAVAちゃん、私頑張ったかしら? ね! ね!!」

「ちゃん付けはやめろマサト。それはそうとお前の結果は上出来。次はカスガ、お前の番だ」

「はい」

『元東部軍団軽戦士スワヨ、中戦士ガサワーラ・ナカト、強戦士タカトー・ヨリツーグ』

そして、マサトの次に向かうのはカスガである。元東部軍団である彼女の相手が電光掲示板に映し出された。

「やります……」

第二試合。それはカスガの”やります”の言葉と共に試合は見事あっさり片が付く結果となった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「けろろ~ん」

「弱小だと思っていたようですが……手ごわいわね」

第二試合はは蛙を模した帽子をかぶった少女スワヨが厄介な存在になった。何故なら彼女はフィールドをまるで池のように己の身体を沈めて、地面から頭から飛び出して奇襲を仕掛けるからだ。

さらに彼女がカスガを翻弄している事でタカトーは自分が攻撃されることなく結界を張ることが可能であり、その結界を活かしてガサワーラが自分の握った狙撃ビーム砲”DHイノシスカノン”による強力な攻撃を、チャージから発射までの隙を抑えて放つ事が出来るからである。その3段コンボによる攻撃をカスガはただ回避する事を選び続けた。

「けろけろ~ん。私は他のサムライドと違って無機物へもぐりこむことが出来るんだけろーん」

「僕達の前にどうやらお手上げのようだね」

「一応元祖東部軍団の俺達だからな。いい気になっているあいつに俺達三人組が役立たずじゃないことを思い知らせてやるんだ!」

「……」

カスガに攻撃の手は塞がれた。タカトーのビームの弱点を狙えば結界が遮り、タカトーの結界の弱点を狙えばスワヨが飛びかかり、スワヨを狙おうとすればビームが襲い掛かってくる。この隙のない攻撃になす術はないのか。


「けろけろけろーん! 弐番手はそんなポジションなんだけろーん!!」

「くっ……いったいどうすればいいの」

(なるほど。VAVAが大将とすれば、アリカが副将、マサトが先鋒。そしておそらく私は次峰か中堅の微妙な地味な立場。だけど私達四戦士の実力が拮抗し合っている事は事実。微妙な存在においても力は示す事は出来るわ)

「けろけろーん!!」

四戦士における自分の存在意義に答えを出したカスガは、着地した瞬間に自分の両手を結界へと向けた。それに反応したかのようにスワヨが飛びあがる様子を彼女が見逃すことはなかった。

「ワンパターンなやられ役を演じてあげると相手の行動がついつい単調なパターンに陥ってしまうものね」

「ケロロ!?」

静かな口調で余裕の様子を現すと、カスガの足が一瞬で凶器と化した。

両足の裏からバーナーとしてスワヨへ火を噴き、さらに彼女の両足が後方180度に折れてナパーム弾が追い打ちをかけるように放たれた。

だが、カスガの潰すべき目的はスワヨだけではない。結界を張るタカトーにも向けられていたのだ。

「裁断しなくてはいけないわね」

「何……うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

裁断のキーワードと共に、タカトーとその結界へ向けてカスガの両手から6本の鎖分銅が飛び出でた。分銅はタカトーを貫きながら鎖の勢いでマグマへ突き落として見せた。

「十二短棒……やります」

「あうあうあうあ! マグマはすりぬけようとも……いいえ、ケ……」

それからカスガは地上へ足をつけるまでに彼女の髪飾り計12個のパーツが両手に1本の棒として連結させた。

それまでに自分を守ってくれたタカトーを失い、呆然とするガサワーラ、それにカスガの猛攻を受けて地上で伸びていたスワヨには、カスガの十二短棒によるスイングが無力な2人をマグマの海へタカトーに次いで叩き落とす結果へとつながる。

ガサワーラが沈み、そして今、スワコの手がマグマに飲み込まれた時に試合終了の鐘が鳴り響いた。


「貴方達程度のサムライドなら敢えてやられ役を演じてその気にさせるだけで脆くなるもの。その気になればいいタイムが稼げるけど、私は出来るだけ無傷で一掃する主義だから、タイムでの遅れは仕方ないわ」

このセリフがカスガの戦い方を現している。相手の慢心を誘う為にカスガは敢えて弱いふりを演じ続けて敵が仮初の優位に立つ芝居を作っていたのだ。

彼女の瞳が前髪からちらりと見える時、その瞳では常人では想定出来ないほどの速さで組み立てられ、緻密に計算されたシナリオが、今完遂された事を示していたかのように輝きを放っていた。


「わーお、カスガっちってばすごーい」

「己を見失うことなく相手を静かに策に惑わせるなんて、さすが森林の智将と呼ばれただけはあると認めないと私もいけないわね~」

「カスガはカスガの得意戦術で戦っただけの話だ。戦いは所詮、お前はお前、俺は俺のやり方で勝てばいいだけの話だからな」

「あっ、それもそうだね~」

通路が接合されると同時にアリカがフィールドへ全速力で駆けだしていく。彼女と交代するカスガはすれ違いに、彼女なりの笑顔を見せてアリカの健闘に期待する。

「お疲れ~カスガっち!」

「ありがとうアリカ。四戦士の序列ではあなたはナンバー2。アリカが勝てば勝負は決まったものよ」

「ほいほーいまっかせといてー! 敵が誰であろうとたたいてのしてあげるんだから!!」

アリカのハイタッチを受け止めて勝利を飾ったカスガの役目は終える。第三ラウンドに立った。

「さてとー! ならいきますかー!!」

「アリカ、お前が勝てこの勝負が決まるのではない。お前も勝てば勝利が決まるということだ! この4連戦は我ら四戦士に一敗も許される事はない!!」

「オッケーオッケーVAVA! このアリカちゃんは本番に強い事に定評がありますからまっかせといてー!!」

アリカが中央のフィールドに立ち、繋ぐ通路が消えれば電光掲示板に名前が浮かび上がった。

相手は少年っぽいショートヘアーのフィラオカン、ライド・マシーンのようなサイズのキャノン砲を握りアンテナのような触角の前髪のモットー・ヤーマン、茶髪のストレートロングのクニトラ・アキ。全員元南部軍団の中戦士でありカズマへ反旗を翻そうとした罪でこの場に捕われてしまったサムライド達である。

今、この3人は自分の明日を賭けて各々の武器を構えてアリカへ向かおうとしているのだ。


「ふふふ~どうせ四人でやっと一人前の子供じゃないっすかね~一人ぼっちで戦う感想はどうっすかね~」

「あたし達がこのような屈辱に晒された悔しさをあのうどの大木の代わりにお前で腹刺してやるよ!!」

「……」

「うひゃあ……あたし子供と見られたり、覚えのない怒りを叩きつけられたりしちゃったなぁ……」

モットーとフィラオカンからの挑発に対しアリカは頭を掻きながらぺろりと舌を出して愛らしい表情をだす。それから暫く知恵を絞る彼女は突然腕をぽんと叩けばある事を思いついた。

「あ! でもこの3人を軽ーく片づけちゃったら特に困ることないじゃん!! へっへ~」

「はぁ……? 馬鹿じゃねぇの! あたしらがあんたのようなガキに倒される訳がねぇよ!!」

「どうせあんたを殺しても別に誰から怒られる訳ないっすからね~その言葉そっくり返すっすよ~」

「……」

互いが挑発を済ませた時に、モミーノの手で鐘が鳴った。そして今両者が激しく円状のフィールドを駆けだした。ただ一人、クニトラを除いてだが。

「てやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

フィラオカンの両手に装備されたグローブから光の粒子が弾薬のようにアリカへ降り注がれる。しかし、彼女は両足に装備されたローラーブレードで狭いフィールドを小さな体と確かなスピードで自分の庭の様にすばしっこく動き回って被弾を防いでいる。

「さすがアリカね。スピードはマサトには一歩譲るけど、小柄なサイズが功を奏しているわ」

「でしょでしょ! あぁん、これでアリカが男の子だったら私の彼氏なのにねぇ~」

「これくらい妥当な線だ。さてアリカ、次はどう動く」

フィラオカンの攻撃に加え、モットーのライド・マシーンを変形させたビームキャノン攻撃もアリカを苦しめようとする。だが彼女が余程素早いのか、この二人の実力が今一歩だろうか。どっちにしろこの戦いは彼女が戦場のペースを握っている事は事実なのだ。

「おっと! あぶないあぶない……!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

フィラオカンとモットーが繰り出した激しいビームの激突した時にアリカが高く飛びあがった。

しかし、突然何かの落下音が迫っている事にアリカが真上を見れば、茶髪のロングヘアーが風に揺れながら、先程まで目の前に突っ立っていたはずのクニトラがビームソードを両手にして自分を亡き者にせんと斬りかかって来たのだ。

「グレンダー・ジックル!!」

瞬時にアリカの腰からは薙刀の刃に長柄が取り付けられた武器が両手に握られた。グレンダー・ジックルと名をもつ剣の刃には熱が伝導され、赤色の刃がビームソードを受け止めて、後方へ受け身を取って着地を決めた。

「残念っすね~」

そこに存在するもう一人のクニトラにモットーが、アリカへざまぁと言わんばかりの表情を向けながら、クニトラに隣接して軽く指でこつんと弾く。すると彼女は何の抵抗もなくマグマの海へ身を落としていき、静かに溶けていったのだ。

「ど、どういうこと!? あの女の子偽物なの!?」

「あのサムライドにそのような高等能力があるのかしら……」

「はい~ここでどうやらお困りの様なので説明しましょう」

会場外からの3人目の登場にアリカとカスガはもちろん、他の観客面々も戸惑っているようなので、もはや司会気どりのハッターがマイクを握り状況を説明しようとする。

「はい、実は試合開始前からアキトラを空席に忍ばせておいたのですよ。この三人娘が特異な連携攻撃で相手を殺したいと私に押しつける為、ついついをやらせてあげたいのでちょっとルール違反を黙認しました。いやぁマサト殿にカスガ殿とお二人さんが強い強いもので、一方的なワンサイドゲームは観る方としては面白くありませんからねぇ。四戦士の皆さんごめんなさいねぇ。はい~」

本心が今一つ読めないハッターが主催するこの試合は彼の気まぐれや思いつきでギミックが用意されているが、そのギミックはアリカ達四戦士のハンデとしてはいい加減厳しい程の段階ではないだろうか。最もハッターの仕掛けたギミックを受けて最も困る者はもちろん四戦士たちだが。

「もぅ! あれじゃあアリカが死んじゃう~!! どうなっているのよ!!」

「落ち着けマサト。アリカはこの程度のハンデで敗れるほど軟ではない。おそらくアリカはここでへこたれるような奴じゃない」

動揺するマサトに対し、リーダー格であるVAVAは冷徹な視線を維持し続ける。その様子にはリーダーとしての貫録と、裏では確かにアリカの実力を信頼しているからこそ生まれる感情かもしれない。

「うっひゃーすこしあたし予想裏切られちゃったよ」

「あの女……全く懲りていない」

「ひゃ~私達のコンボに動じないなんて、ありゃあアホの子属性っすよ!」

「クニトラ! そんな事はどうでもいい!!」

立ち上がるアリカの元へクニトラとフィラオカンが切り込みをかけようと突入を開始する。クニトラのビームソードがアリカを十字に切ろうとするが、先程と同様グレンダー・ジックルを前に受け止められてしまう。だがクニトラの役目はこれで果たされた。

「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「なんと!?」

何故ならクニトラに身を隠す形から突然飛びあがりフィラオカンが回転蹴りをかましてきたのである。さすがにこればかりは防ぎきれないか。

アリカは片方のグレンダー・ジックルを捨てて右腕に備えつけられた回転カッターで彼女の蹴りをはじき返そうとするが、相手は全体重を右足へ集中させており、突っ立った状態での、しかも体重の差では圧倒的に不利なアリカが受け止めるには無茶があった。

さらにクニトラの攻撃を互角に受け止めていたアリカの両腕での支えが片腕だけの支えになってしまったことで不利は否めない。

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

2人の猛攻を受けて遂にアリカはフィールドの中央へ弾き飛ばされた。あおむけに大の字になって倒れる彼女の元に2人が、そして別方向からモットーがビームキャノンのエネルギーをフルへチャージしようと準備を整えている。だが彼女は気を失っているのか。その場に倒れたままピクリとも動きはしない。

「これでこいつもどうやら終わりっすね~」

「子供だからね……」

「こいつをたおさねぇと私達の立場がねぇ! おいモットー!!」

「了解了解。消し炭にしてやるっすよ~!」

モットーの構える砲身へ光が充満される。発射までの時間はもう秒で数えるにも残り僅か。しかしだ、その秒単位の合間でアリカが目を見開いてこう叫んだのだ。


「スーパーアリカちゃんターイム!!」

「なぁっ!!」

「きゃぁっ!!」

スーパーアリカちゃんタイムが彼女の反撃開始のキーワードかどうか、またその直後に放たれた技かは分からない。

だがアリカの左腕が突然ロケットパンチの様に飛びだし、オットーの顔面へ鉄拳がぶち込まれたのだ。その鉄拳は強大なビームキャノン砲を携えるオットーですら足を地面へ着かせる事を許さないほどの威力であるようで、彼女は一番フィールドの隅に近かったことが災いした。見事速攻マグマへ突き落とされて為す術もなくリタイアだ。

 さらに、モットーがチャージ中にアリカの攻撃で吹き飛ばされた事が災いだった。それにより手元が狂った状態で発射されたビームがちょうど一直線先にいたクニトラの顔を消し去ってしまい、実質彼女は味方の攻撃が暴発して破壊されてしまったのだ。

 そしてアリカの左腕が本体へ接合されるとともに、両肩のアーマーがグローブの様に装着されて彼女は飛び上がるようにして起きた。


「うそだろ? オットーとクニトラがこんなにあっさりと……」

「嘘じゃないもんねー! スーパーアリカちゃんタイム発動中のあたしは無茶苦茶強いもん!!」

「あ、あわわわわ……」

重たそうな拳を備えた自分の腕を、ぐるんぐるんと軽く振りまわして己の強さをアピールするかのアリカの構え。にやっと天然っぽい元気な笑みのどこかには勝利を確信したかのような笑みを見せている。

「だいたいかっこいいグローブつけたなら拳で勝負だよ! ほら、撃ち合うよりさー、拳で勝負しないともったいないじゃん!!」

「う、うああああああああああっ!!」

今、フィラオカンが恐怖におびえながら駆けだした。その彼女は拳を振るおうとしているが拳には覇気がない。

それに対しアリカは本来拳で戦うタイプゆえかローラーブレードを全開させて、腕を激しく縦に回転させながら、身体を横に回転させて放ったアッパーが全てを決めた。

「バーニング・アリカ・サイクロン!!」

「ええ……きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

まさに強烈な一撃だ。炎の渦に包まれたかのように回転しながら突撃をかますアリカの放った鉄拳はフィラオカンに断末魔を与える機会をも与えずに、彼女が回転しながら場外へ、いつしか彼女の、また他のサムライドでも捕らえきれないほど高く吹き飛ばされてしまい星になって消えてしまったのだ。

「……」


彼女の戦いは前の二人と比べれば劣勢の印象が多少あった。しかしフィラオカンを天へ昇らせたほどの一撃と、一同へ向けた勝利のⅤサインと屈託のない笑顔のお陰もあり彼らに勝るとも劣らない実力の持ち主であることを観客へ与えたといってもよかった。

「へっへー! カスガっちのやり方を少し真似ちゃいました!!」

「んもう! それならそうと私に言ってもいいじゃない!! アリカがやられちゃうんじゃないかと私は思ったのよ! んもう!!」

「いや、アリカ……多分理解していない所があるような……」

「それは後で問う事にする。だが、アリカが四戦士屈指の爆発力とパワーを持つ烈火の猛将だとの事実を示した戦いといっても良い……」


アリカの戦いに半分呆れつつも半分喜ぶ四戦士の面々。そして今、電光掲示板にはアマーノ、ウド。元東部軍団強戦士の2人の名前が映し出された。

残り2人が指名された事は、まだ戦いで己の実力をアピールしていないVAVAが立ち上がる理由になる。

「VAVA、あなたの出番よ」

「分かっている。実力が拮抗しているとはいえ俺は四戦士筆頭……惨めな戦いは許されない!!」

VAVAが立ち上がる。四戦士屈指の重厚な巨体が前へと出た。

彼らを前にアマーノとウドの2人は互いに彼らに対抗する方法を練り上げていた。出番がくる日まで地下へ身を隠していた為試合の全貌は知らないも、自分がこの場に呼ばれ、四戦士が健在な事と、同じ立場の者が存在しない事から覚悟は決まっていた。


「ウド、俺の推測だが今までの3試合で俺達と同じ強戦士もいたが結果的に負けている」

「アマーノさん、何か方法はないんですか!」

「一応ある。あいつらは3分以内に蹴りをつけないと負けとみなされ、首の爆殺帯が爆発して死ぬんだ!」

「首の爆殺帯……そうか1!」

戦前から窮地に陥ったと思った二人は策を練るが、その中でアマーノは爆殺帯に目を付けた。

それは彼らの勝利を生への絶対条件とするアイテムであるが、爆弾を仕込まれた帯は外部からの刺激に弱いとの判断は妥当だ。他の者は気付いてもいないが、首を狙う事は勝利への近道でもある。

「そうだ、とにかく首をねらえ! 首を狙って爆殺帯を爆発させれば俺の勝ちだ!!」

「さすがイオーノさんだ! そうだ、俺達は何の負い目もないんだ! マローン様がやられただけで用無しになって処刑される事に身の覚えはないんだ!!」

互いが首をうなずかせて、自分達の作戦を練り終えた。そしてVAVAがフィールドに立ちモミーノが鐘を叩く事で戦いが始まる。一斉の射撃攻撃と共に。


「死ねぇVAVA! ここでお前を亡き者にしてやるわ!!」

「てやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

VAVAは前面に両手でのガードを固めて前方からの攻撃に耐える。だが何時しか彼の鉄の両腕も強烈な射撃攻撃の前に破壊されてしまうのではないだろうか。しかし煙が晴れたとともに大半の者が考えた答えはノーとなった。


「俺は鉄山の闘将VAVA。四戦士屈指の装甲を誇る俺には意味のない攻撃だ……」

「な、何だと……」

「俺の装甲は耐熱耐電耐寒……それだけではない、弱者のような生半可な攻撃に崩れる事はない!」

だが、いやここは常識以上の結果となってしまったのかもしれない。彼は哲の巨体を一歩一歩2人の元へ踏みこませ、また鋼の手足へ接触反応はあったものの、一斉砲撃の前に装甲がキズものなどにはならなかった。

「俺達の一斉攻撃を受けても全然反応なしなんて……救いはないのか……!」

VAVAの腰から取り出した銀色の光による鞭”ヴァルヴァービュート”がウドへ強烈な一撃を叩きこんだ。反撃開始の合図ともいえる一撃を前に彼が吹き飛ばされ、再度立ち上がろうともするが、彼の目の先には進撃に躊躇を覚えない彼の姿があった。

「救いはないだと? 当たり前だ、俺を倒せない弱者に救いを与える事は罪だ!!」

「弱者……!?」

「弱者はこの世から消えろ! ヴァルヴァーVコレダー、ヴァルヴァーAファイヤー、ヴァルヴァーSマシンガン!!」

「「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

VAVAの持論と共に顔面からは電撃と熱線が、腹からはミサイルが、3種の武装で一斉にウドとアマーノを仕留めたかに見えた。

だが、現実はそうやすやすと済むものではないのか。ここで倒されたかと思ったウドとアマーノは彼らの予想は裏切る形で健在だったのだ。


「ぐ……どういうことなんだ」

「イオーノさん、どうすれば……」

あれだけの一斉攻撃を受けても彼らはよれよれの身だが一応息はあるのだ。止めをし損じたのか、いやそれはミスを敢えて犯したと表現を変えた方がいいだろう。

VAVAは笑い声を抑えながら一歩一歩ウドの髪を引っこ抜くように掴んだのだ。

「ぐあっ!!」

「ウド! てめぇ……ぐひゃあっ!!」

弱者の意見などVAVAにとっては聞く価値もない無意味同然の言葉だ。

右腕からのカッターでウドの腹を突き刺すように殴り込み、ウドの口からは血が混じった反吐が飛ぶ。それだけではなくアマーノの頭部を挟み込むように、両腕のスパイクパーツがアマーノの頭を挟んでつぶす。その頭部をつぶされて倒れてしまったアマーノの頭を鉄の右足が粉砕せんとばかりにつぶす。


「まだ時間は2分ある……どうやら二万年ぶりによみがえった俺の地が屑どもをこのままにしておくわけにはいかないようでな! でやっ!!」

「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!!」

「!!」


VAVAの右腕がウドの頭部を見事に引きちぎって見せた。ちぎられた頭は彼の手で爆発することになり、残されたものは頭部の機能を喪失した屍のみだ。観客席からは一つも二つも声が出ない。

「出ましたね。VAVAが何故ここで頭を破壊しただけで試合を終えようとしないことを」

「VAVAが私たち四戦士において最強な点は圧倒的な装甲じゃないわ。その標的を徹底的に破壊し尽くす残虐非道さよ」

「いいぞ! VAVAやっちゃえー!!」

マサト達3人が言うとおりかもしれない。彼らの勝利は比較的あっさりとした形で相手を負けに追い込んだのだが、VAVAに関しては相手を虐げ尽くして、相手の戦意を喪失させるどころか、精神をもずたずたに崩壊させんと攻撃の嵐で弱者を飲み込み砕かんとするのだ。

「あの戦いはある意味爽快ですなぁ」

「うむ。あの男はともかく、四戦士ともども我々三光同盟にはいないタイプの人材。見事だ……」

「ふふふふふ……ははははは……壊れろ、砕けろ……見ろ、屑どもが無数の塵にされていく姿を! そしてたかが屑は塵としてこの世から消え去ればよい事を教えてやるわ!! はーっはっはっはっはははっは!!」

ケイ達2人から、また同じ四戦士の面々からはVAVAの苛烈な戦いが見守られる。そんな彼に握られた鉄球ヴァルヴァーチャックが激しくウドとアマーノの亡骸へ叩きつけられ、ピクリとも動かないパーツは彼の足に蹴り飛ばされ、粉々に粉ひきのようにつぶされてしまう。

戦いはマサト、カスガ、アリカと比較すれば圧倒的に非道の部類に分類されるだろう。

そして己の死が実現される時が迫るにつれ彼の破壊への衝動は急速に消え失せ、アクエーモンのもとへ振り向いた。

「おい貴様! この勝負は俺の勝ち同然。この厄介な首輪を外してもらおうか!!」

「お、おぅ……」

おそらくVAVAの破壊に関する拘りに目のあたりをして、少々反応が遅れていたのだろう。一瞬ぼやっとしてから慌てて彼の爆殺帯を外して、これにより四人は四戦四勝と全勝の成果を出した。


「ふふふ。二百世紀ぶりの破壊はこれで十分だろう……ふふふふ、ははははは……」

勝者のみに歩む事を許された入口とフィールドを繋ぐ通路をVAVAは歩む。だが、その途中でくるりと観客の方へ振り向いて見せて、何か考え事があるように指さして見せた。

「どうだ。これが俺たち風林火山の四戦士の実力そのものだ。覚えておけ」

「へっへーすごいでしょ! あたしに互角でかなう相手はいるかしら~」

VAVAのアピールに呼応してかアリカが再度戦場のフィールドへ飛び込んでくる。そこで彼女が天然かどうかは分からないが、当たり周囲を見回して相手として相応しい存在を探しているのだが、それはどこかわざとらしい点がある。ある2人が彼女の視界に入っていなかったことだ。

「お、おいそこの小娘! 青鬼と呼ばれた俺、モミーノの存在を忘れていないか!!」

その2人とは赤鬼と青鬼。三光同盟主要幹部において屈指の武闘派ともいえるパワーコンビの2人である。四戦士において屈指の攻撃力を持つアリカに相手にされない事がやや思慮が足りず短気なモミーノの苛立ちに火をつけてしまったのだろう。

「同志! ここは落ち着け!! お前がこんなところでキレても意味はないぞ」

「あ、私は全然いいよ! 赤鬼青鬼とか言うけど、あたし怖くないよ!!」

「ぬぬぬ! 赤鬼青鬼が怖くないだと!!」

「同志! やはりここで血祭りにあげるべきだ!!」

モミーノを収拾させようとしていたアクエーモンだが、アリカの自信満々の発言が彼にも平常心を失わせる結果になってしまったのだろう。

審判のために本フィールドから離れていた小島から飛び込む形で二人の鬼がフィールドに着き、アリカもまた元の戦場へ走りだしていく。そのあとを追うかのようにもう一人が四戦士から飛び入り参戦した。

「おっとアリカ~ここは私もやらせてよ! 1対2じゃアリカに不利でしょ?」

「マサト! でもあたしさっき3対1の相手に逆転のギャラクティカを……」

「あれはギャラクティカじゃないでしょ……じゃなくあれはアリカが無傷でしたし、あの3人が大したことないというところもありますわよ! あの2人はタダものでない気がするのよ。んもぅ」

飛び入りのマサトに関してはアリカよりも理解があるのだろうか。おそらくアリカ本人は気にもかけていないだろうが、アクエーモンとモミーノは相当な実力を持っており、彼らが表舞台に現れる前のデモンストレーションから実力派理解されただろう。

「ガハハハハ! そうだ!! 俺様赤鬼アクエーモンも3人の雑魚を相手にすることくらい容易いことだ!!」

「しかもこの青鬼モミーノと同志は無傷で合わせて6人を先ほど葬り去ったばかりだ! どうだ、お前たちにこの俺様を倒せるのか~!!」

「へへー! 燃えさせること言ってくれるじゃん!! サイズでは不利だけどあたしたちは常に全力全開一撃必倒のスピリッツだよ!!」

「そのとおりです!あなたたちのパワーはそれなりにありそうですが、醜い男どもが勝てるほど世界は甘くないわ!!」

赤鬼と青鬼の自慢に対しアリカの闘志は全く萎えることがない。おそらく彼女が最も楽天的な性格だからだろう。それに対しマサトは現実をある程度は見据えているが、答えの方はそうでもないようである。

「み、醜いだと!!」

「落ち着け同志! どうせ俺たちのような力自慢はそう言われる宿命だ! だがそこまで言うなら手加減しない!!」

「ふふふ。美しさは強さのステータスですよ! では!!」

「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」

「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ナイトの挑発が試合開始の合図そのものだ。両側の戦士たちがフィールドを駆けるが巨体の二人に対し、相手は小柄な少女と細いオカマ系の男性である。力比べにおいては赤鬼と青鬼に軍配があがるだろう。彼ら二人はその事を信じて、

「いくぞ同志! ツープラトンのダブルラリアットだ!!」

「おぅ同志! 俺はあのオカマのニューハーフを……!!」

そのままツープラトンの体勢に入るのだが、モミーノがとらえたマサトの姿はいつしか彼らの目の前には存在することはなかった。もう一方のアクエーモンはアリカが奮う鉄拳を拳で受け止めるが、

「こいつなかなか!!」

「うひゃー! でかいだけあってずいぶん固いし強力~!!」

互いの実力はほぼ互角だ。アリカの拳を受け止めるアクエーモンは、彼女がまんざら口だけか、相手が弱かったから買ったに過ぎない敵ではないことを理解し、また彼女も単なるでかいだけの相手ではないと実感した。

しかしアリカはにやりと笑って見せた。何故だ。それは前方の敵だけにしか目が向かなかった彼を仕留めるには十分な計画が進行していたのだ。なぜならもう一人の相手は四戦士において最速のスピードを誇るマサトなのだ。目にも捉えられない動きを見せるマサトはビルススピアーでアクエーモンの後ろ首を取ろうとする。だが、

「でかいからって鈍いと思うな!」

「何っ!!」

「さすがだ同志!!」

その時、モミーノはアクエーモンの背中を守るように、素早く向きを位置を切り替えてスタッカーチョッパーでビルススピアーの先を食い止めてみせた。

「ふふふふふ……」

「醜い男の分際で! どういうことなの……!!」

「オカマの癖に……!!」

アクエーモンとマサトは互いが実力を認めているかのように一歩下がれば、また一歩前へ出る。

大柄なコンビと少女と細身のニューハーフの対決では後者の方が健闘しているかにみえるだろう。だが戦いはパワーがすべてではない。スピードと反応の良さで等身体面での優劣は馬力だけでは決まらないものである。パワーなら赤鬼青鬼、スピードなら風と火が有利と一見見えるが、実際は両者の実力がほぼ拮抗しているからこそ、このような一歩も譲れない光景があるのだ。

「ええいやめろ! やめろ!!」


その状況で、ケイの鶴の一声が、赤鬼を、青鬼を、またマサトをアリカをも動きが止まってしまったのだ。

「ここから先は私闘だ。有能な者同士の殺しあいにつながる私闘を私は認めない」

「ケイ様……」

「しかしこの二人は俺たちをバカにして!」

「モミーノ、アクエーモン!!」

「教主様!!」

ケイからの停戦命令に関してモミーノとアクエーモンは根っからの武闘派であるゆえか弱気な命令に不服なようである。しかし彼の意思を組んで観客席からはガンジーが立ち上がり、なんと中央のフィールドへ飛び降りて中央へスタッと着地したのだ。

「わてはこんな戦いで勝ってもうれしくありまへんで! 東部と西部の武の象徴であるお前たちのどっちかが犠牲になってしまうなんてあんまりや!!」

「ガンジー様……」

「むぅ……ガンジー様には隊長含め俺達を立てた恩がある! 仕方ない!!」

「ガンジー、見事だな。西部軍団は他の軍団と比較すれば華々しい機会が少ないが、お前のカリスマを見させてもらったぞ」

「それがガンジー様ですよ。ケイ様」

「は、ははっ!!」

ケイからの高い評価を受けて、ガンジーは思わず頭をその場で下げてしまう。それはともかく、彼の説得のお陰でモミーノとアクエーモンが無駄に血を流す事もなかったのだ。

「何~ここで戦い終わるなんてつまらないよぉ」

「しかし醜いくせにあの男たち中々だな……」

「そんなものだ。あの男は見ため通りのパワーはともかくスピードも併せ持つ。頭の方はどうかわからないが、単純な殴り合いで挑ませればどちらかがやられている可能性もある。ケイとガンジーとやらの判断は的確なものと見た」

「ええ。頭脳戦であの方の相手をする場合私やVAVAの方が有利。でも決して相手が頭脳戦で挑まずパワー戦でいどむこともあるから……力があるにこしたことはないわ」

戦いに向かう側としてはこの中断はイマイチなノリだが、観戦していたVAVAとカスガにとってはこの戦いの引き際を無難な判断とみた。

これはサイドがサイドだからかもしれないが、もしこの二人のサイドが逆になろうとも彼らは同じ考えだっただろう。ここに四戦士の武闘派と頭脳派の区別がついたといってもいい。


「ふふ、どうでしたかガンジー殿」

「あの四戦士実に強いな。あのランクとしては全員魂将としての昇格となるな」

「全員魂将……ケイ様、あの四人の方で最も目に付けている方は誰でしょうか?」

「そうだな……四人とも実力が拮抗している事は間違いではないが、やはりVAVAか……あいつが四戦士の中では最年長なだけはある抜群の統率力は大きいからな」

「ははぁ。ですが、そのVAVAだけ2人を相手にしか戦っていないのに他の3人と比べるとハンデがあるような気がしますな」

「……確かに」

四戦士において、ケイは実力が拮抗する中でVAVAがナンバー2に相応しいと考えてはいたが、ハッターの意見も最もだ。ひょっとしたら彼だけが若干ハンデが緩い事もあり得るのだからだ。

「確かに階級の合計では釣り合うが相手の数も戦いにおいては確かにサムライド一人の数が及ぼす影響は結構大きいからな」

「なるほど。確かにカズマ様の言うとおり。あの6人が勝手に暴走してアクエーモンとモミーノに返り討ちされなければ調整は出来たのですが……」

「ケイ殿、ハッター殿」

その時、またもVAVAが組織のトップと知恵袋に意見を突きつけたのだ。またも何か己に重荷を背負わせて、それをこなすことでまたも実力をアピールさせる彼の組織内でのやり方なのかもしれない。

「他の者は1対3の勝負だったが、俺のみは1対2。一応勝負はついたにはついたが、名目上リーダーとして俺だけ軽い条件なのに納得がいかない」

「やはりお前は納得がいかないか」

「あぁ。かといって3人を俺に始末させろとは言わない。ただ俺と渡り合えるにふさわしいサムライドとタイマンで勝負と行きたい。これに勝利したら俺はナンバー2として豪将の位を貰いたい」

「ほぉ……お前の言い分は分からないでもない。だがお前に比例する者を簡単に死へ送るような事は余程の限り出来ない」

「そうか……」

VAVAの今度の意見は流石にやや無茶な所があったのだろう。ケイは冷酷なトップであっても、実力のある同志を何の理由もなしに無暗に遮断する愚劣な手は取りたくはないのだ。

「現状でお前と比例しながら死へ追いやる必要のサムライドが見つからないから保留とする。しかし万一そのような事態が起こった場合にはお前の意見を尊重するつもりだ」

「はっ……」

「よし、これでこの戦いは終わりとす! 各軍団はすぐに元の持ち場へ帰還せよ!!」

そしてケイからの言葉でこの四試合は終わりを告げることとなった……。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


北西南の三軍団はすでに本来の持ち場所へ消えた。そして東部の四戦士を待っていた者は彼らの主君と、彼らにとって未来の翼ともいえる存在だった。

「ゲン様お久しぶりです。まさか四戦士ともどもが二万年の時を超えてゲン様の元で力を振るえる日がまた来るとは思いませんでした」

ゲンの元へVAVAが服従の姿勢を取る。その姿勢からの言動は先ほどのやや自信にあふれ残酷な姿を見せた彼とは思えないほど従順な言葉づかいである。

「お前達の戦いを見させてもらったが、さすが既に名が轟いている四戦士だ」

「お褒めにあずかり光栄です」

「……」

VAVAとカスガはゲンへ服従の姿勢をみせるが、カスガに関しては何処か彼に顔を向けることが出来ないのか表情が桜に染まっているのだ。

そんなシリアスムードな左脳的な2人に対しアリカ、マサトの右脳的な2人は同じ右脳的なユキムラとの再会に喜び、先程の試合で会話を弾ませていたようである。

「うっひゃー! さすがアリカ姉ちゃんっ!! あの必殺ギャラクティカは最強っす!!」

「へっへーユッキー! あたしの必殺ギャラクティカ最強でしょ! でしょ!!」

「ユキムラちゃん、アリカだけでなく私の方も。ほら、私だって先陣を切って数秒で敵を仕留めたんだから! アリカのパワーを評価する余裕があったら、私のスピードテクニックを評価してほしいのに……」

そのユキムラは以前の戦いでカキーザに腕をもぎ取られてから復元がまだ不完全状態なので、腕にギブスと包帯を巻きつけている。

「だけどユキムラ……思いっきりやられちゃったねー」

「うう……アリカねえちゃん、あの義闘騎士団とかのサムライドは鎧を装着しているからおいらが灼輪灯を撃っても全然効果がなかったみたいなんすよ」

「義闘騎士団のサムライドはライドアーマーを常時着込んでいるようなものだ。灼輪灯を万能兵器と思うようではまだまだだな」

そんな会話にVAVAがユキムラの行動を諭すように会話に入る。ゲンには従順であるがユキムラには厳格。だが決して卑しい言動や同期は全く感じられず単に短所を指摘するだけのものに留まっている。

「VAVA~少しユッキーに厳しすぎだよ~」

「俺は事実を言っただけだ……それより義闘騎士団で相手の腕をもぎ取るようなことをする奴はカキーザ以外にはいない!」

「カキーザ……VAVAちゃんにつっかかってきて、あのときヤマカーン様を殺めた私達にとってはにっくき存在の1人ね!」

「「……」」

マサトの怒りを含めた声に、過去を呼び起こされカスガはともかく、アリカですらも口を閉じてしまう。

だがVAVAは立つ。カキーザはともかく義闘騎士団に苦い過去を味わったからこそ立つ事を選ぶのだ。

「我ら四戦士がゲン様の元に集った今こそ義闘騎士団を倒す好機だ! 何度も苦渋を味あわされた騎士団はもちろんのこと、ヤマカーン参謀を殺めたカキーザ、テン様を散らせたミーシャこそゲン様と我ら新生東部軍団においての最大の敵だ……!!」

「そのとおりだ……!!」

ゲンとユキムラとの再会に、そして新天地での彼ら東部軍団の決意に彼らは指揮が高揚状態だ。だがカスガだけはやはりなぜか顔を前が身に隠すように俯いており、彼をちらちらと見ながら目をそむけており、少なからず脈ありの反応を持つ模様だ。


「あーら、義闘騎士団の皆さ~ん、お久しぶりです」

「……!!」

その時、義闘騎士団の元に二人の女性が顔を出す。一人は金髪のロングヘアーをゴムで両端を結び、大きな丸メガネをかけて甘ったるい声で接触をかます。

「プラム・スノー、貴様も生きていたのか……」

「あーらVAVAさん。お久しぶりね~あなたはこの世界でもその無駄に大きく大げさな図体を活かして戦場で蹴る殴るの応酬かしら?」

「何だと! 裏でしか活躍できない女狐のくせに!!」

「むーそうだそうだ! でかいからっていい気になるなー!!」

「んもぅ! これだから女は嫌いなのよ! 私は!!あ、アリカとカスガは別よ!! 誤解しないでね!!」

「……(マサト、今はその事に触れていない)」

この女プラムの皮肉はVAVA、アリカ、マサトの3人の怒りを買う、カスガは比較的冷静に、ナイトへの突っ込みを心の内でしているが、彼女なりにプラムへは不快感を抱いているはずだ。

しかしプラムは敢えて彼らの怒りを買っているだけかもしれない。その修羅場が良くわからないままユキムラは首をかしげ、ゲンとカスガは敢えて黙認の態度を取る。

「あらあらあら、鉄仮面に、ちびっこに、ニューハーフ。うらやましいですわね~。あなたたちのような個性が強い方でないと戦場にはふさわしくありませんからね~」

「何の話っすか~プラムさん、おいら相応しいっすか?」

「ええ、ユキムラちゃん~貴方の様なサムライドは戦に出てこそ意味があるのよ~サムライドたる者、戦に出て散ってこそ本望……」

「……!!」


プラムの褒め言葉は明らかに死を促進させるものである。この言葉をユキムラが真に受ける事を恐れてかアリカが彼の前へ通せんぼするように立ちはだかる。

「ユキムラを殺すような事に引き込まないで! あんたにユキムラの事を言う資格はないもんね!!」

先程のお気楽な様子から一転して、真剣にプラムを睨みつけるアリカの表情には先ほどのあっけらかんな要素はない。ただ味方の敵に容赦なくユキムラは自分の者と突き刺すようである。


「俺たちサムライドは戦う宿命に生きる存在。お前のように後ろでぬくぬくしているように女々しい奴に分からないだろうな!!」

「も~女々しいなんて~後ろは後ろで大変なんですよ。貴方達のような武闘派のもとで私たちは頑張る事が出来るのよ~」

「……」

「おっと、私は南部軍団と打ち合わせがあるの、じゃあね~」


その言葉と共に飄々とプラムが控室から姿を消し、そこには先ほどまでプラムの後ろに隠れていたやや暗いエメラルドの女性がおどおどとしながら姿を消したプラムと四戦士の狭間で戸惑っている模様である。

「あ、あの……その、プラムさんは……」

「失せろ!」

「ひぃっ!!」

だがその女の言葉はVAVAによって撥ねつけられてしまい彼女はおどおどしながら控室から外の扉へ身を隠してしまう。

「お前の様な弱者が我ら四戦士とゲン様に近付く事は許さん!! 俺達の近くに弱者は必要ないわ!!」

「!!」

「ご、ごめんなさい……」

プラムの件で機嫌を損ねているVAVAに彼女の落ち着きのない情緒不安定気味な発言は怒りに油を注ぐ結果となる。慌てて彼女が控室から出たところを見計らってカスガがV彼の顔を見る。

「VAVA、マーヤはまだ何も……」

「あの女が非力である上に、プラムの元へいるかぎり、俺があの女に情けをかける理由もない! それよりゲン様、あのような女まで何故東部軍団として……」

「VAVA、あの女にもお前達にない切れる物があるからだ。俺一人で好き勝手やることが出来る事はあの女のお陰もある事を忘れるな……」

「はっ……失礼しました」

ゲンへプラムの不信感を募らせるVAVAだが、当のゲンは彼女を理解しているか理解していないかは分からないが彼女を捨てる気は殆どない。たとえ危険と裏表一体としても、彼女を使いこなして自分達は目的を達成させるつもりであるからだ……。


「東部軍団の目的は打倒義闘騎士団。後方の憂いを断った今こそ義闘騎士団を叩く時……。どうせシンとかが率いる新興勢力は、その気になればすぐにこの手で潰すことが出来るからだ!!」

「「「「はっ!!」」」」

「俺達東部軍団の拠点は山梨だ。急ぐぞ」

「「「「はっ!!」」」」

今、ゲンの元に大陸時代に彼の手足として武勇を振るった風林火山の四戦士が幾年の時を超えての再会を果たした。新たに甦った東部軍団はシン達にとっては新たな脅威となるか。そして四面包囲に晒されることとなった彼らの運命とは。


「まてよ」

各々が山梨へ向けて出動を開始し、VAVAもまた彼らの後を追う。だがその時に何処からか声が聞こえた為にVAVAは足を止めた。

だが声の聞こえた方向には誰もいない。暫く考えると自分の背中に気配を感じた。いつの間にか後ろへ姿を見せた者は白の袴に赤青黄色のトリコロールカラーの装甲を被る金髪の男。彼のきつい眼光からは保身と野心が裏表一体となって現れている。

「安心しなよ。俺はあんたを陥れるような事はしねぇよ。あんたは東、俺は北と余所者だからな」

「北部軍団の者か……」

「そうだ。俺が北部軍団豪将ミラン・ヨドハシ。あんたが東部軍団魂将VAVA。俺と同様軍団のナンバー2として相応しい男だ」

「下がれ。お前の様な名も知らぬ余所者に俺は付き合う暇はない」

「おいおい、そんな言い方はないぜ。俺はお前を買っているんだよ。お前と互角の実力者を用意してお前のランクを上げる為に俺はここへ来たんだぜ」

「ランクをあげるだと……?」


ミランの何やら裏があることは否めない発言にVAVAは耳を傾けた。作戦成功。その様子から彼の口元はにやけた。

「あぁ。お前は豪将のランクを得たいから俺が手を貸す訳だ。俺がそいつを陥れて公開処刑までひっぱた時にお前が止めをさせばそれでいい訳だ」

「……何故、お前はそこまでやるのか」

「俺にとって同じ軍団の奴はみんな敵。俺の未来を脅かす奴を摘むためだ」

「……ほぅ」

ミランの言葉にVAVAは首を縦に頷く事を選んだ……その時ミランの口元に野望の開始を告げるかのような笑いが見えた。



続く


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ