第9幕 合体、三体合神トライベガス! 天王と夜叉、修羅の兄弟!!
「兄さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
これは遥か2万年の悠久の時をさかのぼり、その世界屈指の戦いと呼ばれたとある戦いの物語である。
機械音と爆発が鳴り響く夜景に金髪が駆けた。兄を叫んで駆けた先には闇に影が飛び、無人の敷地へと周辺の荒野を飲み込む竜巻だ。雲を掻きけさんとばかりに伸びる渦へ彼は躊躇いもなく溶け込むことを選んだが、間もなく渦の壁から弾き飛ばされ影が地面へ落ちた。
この時彼が巨大な障害に弾き飛ばされたまま地面へ叩きつけられたとその光景を目にしながら戦う者は思った。しかし
「ゲ、ゲン・カイ! 何でこんな所にいるんだ!!」
「!!」
ゲン・カイ。彼に矛先を向ける側の男の声にその場のサムライド達は動揺をせざるを得なかった。一方からすれば絶好の獲物として狙い、そしてもう一方は彼を命を天か地に捧げようとも死守せんとする者の戦いが発生したのだ。
「よかった! ゲン様は無事だ」
「あぁ……いや! あのときゲン様を救おうと竜巻に突入した者が餌食になっているのでは?」
「確か、あのときゲン様を兄さんと呼んだサムライドということは……」
「「まさか!!」」
「……」
ゲンを守ろうとする者からすれば彼の無事は朗報のようなものだ。だが、彼の生を救うと共に身を投げた者がいた事を彼らは感づいた。彼らの不安が何故かぬぐえない様子と言動から瞬時に状況を把握したときには彼にとってはまるで悲報を知ったかのように瞳が見開いた。その瞳は自分を兄と呼ぶ者。つまり弟が己を救うために身を捨てたからである。
「き、貴様……テンがなぜ俺の犠牲になる必要がある! 俺が助けに行く!!」
「無茶ですゲン様!」
「ゲン様が巻き込まれてしまったらカイ国の未来はどうなるのですか!!」
「ええい! 離せ離せ離さんか!!」
部下たちに己の身体を抑圧された間に目前で猛威を奮った嵐が収束を見せ、白き螺旋から身体が、いや一片がゲンの足元へとワンバウンドして地に着いた。月明かりに晒される部分はスパイラルの中で朽ち果て、砕かれた彼の上半身。それが目の前にある事実は彼、またはゲンの弟・テンが自分を犠牲にした事である。そして上空には先ほどまで螺旋の原動力ともいえる中央に存在する一人のサムライドである。
「しまった……まさかゲンではなく」
「貴様……貴様! よくもテンをやりやがったなぁぁぁぁぁっ!!」
「ゲン様!!」
今、自分を、また自分の身体の自由を妨げる障害全てが吹き飛ばされた。その勢いで、弟を殺した標的へゲンは腕を振りほどいて戦場へ向かう。
この時、大陸歴は161年10月28日。この戦いは約2万年のタイムラグを挟んでゴングが鳴らされた。
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「でやぁぁぁぁっ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
時は2060年。今、積年の宿命に応えるように剣と剣が激しく打ち合い火花が、閃光が、そして疾風の風が吹き荒れた。燃えさかる剣を受け止める力は吹雪のように純白の色をした二刀流だ。
互いが衝突しあい、周りの石や岩が弾き飛ばされ、残りのサムライドも量産型兵器も本能が危険を警告したかのように一度中央激戦区から後退を選ぶ。
「さすがミーシャ様だ! あんな力だけの男なんてミーシャ様の義の前にはかなうことはないのさ!!」
「おーいナオ!!」
ミーシャへ急行する青い鎧の主はサイトである。彼は崖に捕まっていることだけしか出来ず良くも悪くも燃え尽きたサタケを引きずったまま、相変わらず主君へ骨抜きになり恍惚とした表情を仮面の中で作る少女の前に到着した。
「おおサイト! 君は地味だけどいざという時にいないと君の大切さを知るよ!!」
「その言い方はないだろうが……ってそうじゃないんだな! ナオ、俺たち義闘騎士団は残りの部隊を叩いて少しでもミーシャ様の義のお手伝いをするんだな!!」
「サイト、その意気さ!僕がミーシャ様に助太刀すれば戦況はがらりと」
「いやそれは違うんだな! まだユキムラという敵の秘密兵器が残っているんだな!! そいつにサタケがやられたから油断したら脅威になりかねないんだな!!」
「うぅ……武器の差で過信して……ごめん」
責める気があろうともなくとも事実を口にするサイトへサタケは自分の力不足が申し訳ないと感じたのだろう。力が抜けたようにへなへなと、一応彼なりに申し訳ない気持ちを前面へ出して詫び、その姿を見てサイトは軽くため息をつく。とりあえず悪気があって失態を招いた事がサイトの怒りに火をつける悪循環にまでは至らなかった事だろう。
「ノン!僕のミーシャ様への思いを、愛を君はわからないというのか!」
「お前が言う愛とか誇りとかは耳が痛くなるほどこっちもわかっているんだな。だがなナオ、ミーシャ様はゲンをこの手で倒すことを考えているはずなんだな。まして1対1の戦いにお前が参加しても喜ぶはずがないんだな!!」
「……なるほど」
「それより、ナオが部隊を率いて残りの敵部隊を片づけた功績の方がミーシャ様にほめられると思うんだな!!」
「ミーシャ様が……」
「ちょっと待てサイト!!」
サイトの主張は正論として並の相手なら理解を得やすいだろう。だがナオは正常な人物とは言い難い面がある少女。いや、一癖も二癖もある相手に付き合わされている彼である。大陸時代から自然と曲者を飴でうまく誘導させる手立てや言動を弁えていただろう。
彼の上手い言葉に包まれた正論にナオは愛しの剣豪にニヤニヤと笑いっぱなしなので、どうやらその問題は一応解決した訳になる。
だが、これだけではアクの強い騎士団の面々は決して常識人にとってはありがたい方向へ話を持っていかないようである。今度突っかかって来たこの男カキーザも別の意味でアクが強い騎士団のメンツであり、傷ついても彼自身の闘争本能が全く衰えない男なのだ。
「カキーザ、お前は深手を負っている身だな! ここで無茶をしたら後でいろいろ辛いんだな!!」
「辛いもくそもあるか! あのゲンとやらは俺が倒すんだよ!! たかがこんな怪我の一つや二つでな……」
その時、サイトの鉄拳がカキーザの鳩尾へのめり込んだ。深手の彼にとっては何気ない一撃も十分な強さだったようだ。彼は言葉を吐く暇もなく、唾とともに自分の意識が瞬時に飛んでサイトの胸にうつ伏せになって倒れ込んだ。
「カキーザは本当にそうなりかねないから困るんだな。こいつを何とかして……」
サイトが自分の胸に装飾された五角形のエンブレムに親指を突っ込ませて捲るように装飾を開けると、何重ものボタンを素早い動作で押す。この動作の答えは赤褐色の棺が自分の胸から飛び出すように現る。そしてその棺へカキーザを入れて棺の蓋を絞めた。
「俺はカキーザを連れて本陣まで帰還するんだな! なるべく早く戻ってくるからそれまでにミーシャは雑魚部隊の片づけを頼むんだな!!」
「まかせたまえ! 僕を誰だと思っているのかい!? 近いうちにミーシャ様へ身も心もささげる僕が失態を犯すわけがないじゃないか!!」
(すごい不安だが……まぁいいか)
ナオの自信にあふれまくりな返事は逆にサイトを心配させるものだ。だが、ここでは彼女を信じることがおそらく最善策なのだとサイト本人は何度も自分に言い聞かせる。
「そうだサタケ。お前もナオと同様雑魚の後片付けを頼むんだな」
「え? 俺ライド・アーマーを壊されているのに」
「ライド・アーマーをやられただけだな。お前自身はほとんど無傷同然だな」
「いや、俺サイトがくれたソー・ベガスも壊されちゃったしどうやって対抗しろと? 指揮能力も自信ないぞ俺、それにな、それにな……」
「どこまでお前は逃避する男なんだな……」
一時サタケの異様な自信の表れだった新兵器は既に破壊されている。新兵器が破れる=自信が砕かれるという何とも弱い精神面の彼だ。そんな彼を導く役目を託されたようなサイトはやはり嘆息してしまう。
「サタケ、お前の相棒がいるじゃないか」
「俺の相棒? このバントウのことか」
「そうなんだな……バントウにはな、ごにょごにょ……」
「……!」
サイトが耳を貸せばサタケの頭には豆電球が付いたかのように表情がぴかっと明るくなる。多分今の彼にテンションの下がるような話をすれば付いた光はスイッチを切られたかのように電球が消えるだろう。精神面が弱い彼はまた精神面がある意味寿命間近の電球のような性格だ。
「そうか、そういうことか。もーサイトちゃん早く言ってよ~」
「そ、そうだ……(サ、サイトちゃん……?)」
「ならいくぞ! ライドロール!!」
「アオッ!!」
サタケの右手に握られたライドロールは鞭状の姿になり、バントウの首輪に向けて激しく叩かれた。彼の首輪の装飾が点滅すると、そのまま彼の手足が収納されて目のシャッターが閉じ、尻尾が丸くまとまると同時に下腹部からグリップが展開され、目の前の忠実な愛犬かつ相棒はいつの間にか1機のキャノン砲へ姿を変えていたのだ。
「わーお! こんな機能がバントウについていたなんて!!」
「バントウを修理する際前みたいにパーツの共有が不可能だったからまぁその代償としてお前の必殺武器に変形する機能をつけておいたんだな。スペアパーツと比べれば劣るかもしれないんだが」
「いやいやいや、これで十分だぜサイトさん!」
(……そう言っているお前が一番不安なんだな)
今、目をキラキラさせるサタケは、やはり新品のおもちゃを買い与えられて喜ぶ子供同然だ。しかも彼にはもう前科があり、また同じような事態になりそうではないかとサイトは心配してしまうが無理はないだろう。
「いいかサタケ、このバントウキャノンはビーム兵器だが、お前のエネルギーを使わないんだな」
「すげぇっ! ということは何発も撃って大丈夫……」
「違うんだな!!」
「おわっ!!」
温厚なサイトがその時珍しく怒鳴り、至近距離でそのどなり声を聞かされたサタケの耳は無事ではあるまい。耳に指を突っ込みながら怒声を聞かされたサタケは身体をばねのように左右へ震わせている。余程煩かったのだろう。
「おいらが言うのは、バントウがエネルギーを負担するから使用するに関して十分エネルギー切れに気をつけろと言う事なんだな!!」
「ご、ごめん……」
「そんな事言ってる暇があったらさっさと雑魚の梅雨払いをするんだな! ナオ、頼んだんだな!!」
「任せたまえ! さぁいくぞサタケ!!」
「あ、ああ……」
ナオに振り回されるようだがサタケは急いだ。サイトは二人を見送りながら急いでライド・ホース”キュリアス”に乗馬し、手綱付近のボタンを押して後部からチェーンを展開させてカキーザの眠るソウルシュラウドにつなげた。
「さて、おいらはカキーザをディーゴスへ搬送しないといけないんだな!」
自分の腰から取り出されたサイトの鞭はキュリアスへ打ち付けられ、重荷でもある重傷の仲間を背負って帰るべき場所への帰還が始まった。
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「死ねぇミーシャ!!」
「させはしない!!」
上空では火の玉と車輪が激しくぶつかりあっては壁や地面を足場にして跳ね返りながら両者の勢いは衰える事を知らない。
火の玉はゲンの放った疾走業火弾だ。彼の両腕のグローブの回転に全身が回転して、先端の炎を武器として身体をロケットのように飛ばす。
そして車輪はミーシャの車懸りだ。飛翔紋剣を両手に握って身をかがめながら、また縦に回転しながらホイールのように地面を駆けては、足場の斜面を活かして空中へ飛び上がる。
「どうだミーシャ……失う代償に手にしたこの力は」
「失う代償はお前の娘の命! 力の為にお前の娘へ手をかけるとは何たる不義!!」
「俺の弟を殺ったお前が良くそのようなことを言えるな!」
「それは戦場での出来事だ! お前の娘殺しの理由にはならない!!」
火の玉と車輪の死闘はまさに苛烈を極めた。アスファルトの台地は熱と質量を前に抉られ、斜面は砕け散り、ただでさえ荒廃する地面はもはや荒みきれない程荒れていくのだ。
だが、この激突のデッドヒートはゲンの方が圧倒的に不利だった。それは身体同士のぶつけあいでミーシャが全身を甲冑で守っている事に対し、ゲンの場合は両腕以外比較的に軽装な姿。攻められれば弱いことが否めなかったのだ。
実際に外野から見た考察は間違いではないのだろう。先端の炎を燃やすゲンの回転は既に弱まりを見せているが、全身を武器と化したミーシャの勢いは未だに留まりを知らなかったのだ。
「ちっ……」
ここでゲンは回転をやめて綺麗に地面へ着地するとともに、迫る敵の車輪へ面を向けた。根気を試されるような先程の戦いを自分から放棄した彼に対しミーシャはやや高慢な自信を持ち始める。
「どうやら耐えきれないとみたか……だが、おまえのような力で力を得たような者には限度がある!!」
「……」
「何も言い返せないか。それも私が義を後ろ盾にしているからだ、私には間違いはないからだ……!!」
ゲンは無言のままミーシャから一歩たりとも退こうとしない。彼の自信はミーシャも知ってはいるが、その自信があっても実際に勝てるかどうかはまだ分からないのだ。またその自信を撃ち破るだけミーシャは自信を持っていた。それは義があるからだろうか。それは彼女自身しか知る事が出来ない理由だろう。
「力で力を求める者になす術は限られる……」
その時車輪の姿がゲンの上空で解けた。いや解かされた。または解かざるを得ない事態に陥ったのだろうか。ゲンは車輪両側面の飛翔紋剣を両手で受け止めてあおむけに倒れると同時に右足をまるで車輪を蹴り飛ばすように突き上げて、巴投げの要領で彼女を投げ飛ばした途端、その勢いで彼女は車輪を解いてしまったのだ。
「俺は力で力を求めてなどいない! 力を求めるには、全てを成し遂げる力を得るには手段を得ない!! それが今の俺だと覚えておけ!!」
「ちっ……!!」
ミーシャが受け身を取っても、いや取るからこそ計算に入れたのだろう。彼女のふくらはぎから膝裏を狙って右手のパーツが足元を救ったことで、彼女は宙に飛ばされてあおむけに倒れてしまう。
「この私が倒されるとはな……だが!!」
ミーシャが起き上がった時には、既にもう一発のロケットパンチが彼女の顔面を抉らんと突っ込んでいた。だが五強の一角と呼ばれていただけはあり彼女は冷静に左腕から放たれた鎖・チェーンロックで拳をぐるぐる巻きにして動きを制御支えて捕縛したのだ。
「たかがロケットパンチ。動きを止めてしまえばこちらの……!!」
目の前の標的を簡単に止めたミーシャであったが、その目の前へゲンが高速で迫っている事実が更なる驚きであった。以前の戦いで彼のスピードは分かっていた。だがそれを差し引いても彼のスピードは倍以上なのだ。
「たぁっ!!」
走りながら放たれたラリアットがミーシャを後方へ吹っ飛ばす。その後方へ吹っ飛ばされたミーシャへアッパーを決めるかのように、左腕でアッパーを放つモーションと共に捕われた左腕を装着するとともに渾身のアッパーが追い打ちをかけるように決まった。
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「すごいっす!! お師匠とミーシャが互角の戦いを繰り広げているっす!!」
その様子を比較的付近の戦場で眺める小さな姿はユキムラである。ユキムラはただ戦況を興奮しながら眺めており、左腕の苦痛も全然気にはならないほどだ。
「お師匠頑張るっす! おいらもお師匠とミーシャの戦いを邪魔されないように努力するっす!!」
その努力はおそらく義闘騎士団を自分が引きつけることだとはユキムラ自信は分かっているだろう。だがまだ幼い彼は言動が一致しない所もあり、試合に魅せられて指揮系統が疎かになっている事実に気づかなかった。そんな隙だらけの状況を見逃さないのは並のサムライドなら当然であろう。
「チャンスだ! 僕もあの戦いには息をのめないけれど……隙を見せる訳にはいかないのさ!!」
『気をつけろ! ユキムラは強いぜ……あのときはちょっとばかり油断したとはいえ俺の新兵器だってあいつにやられたからな』
「それは君が新兵器に自惚れていたからじゃないのかい?」
『うっ……』
ユキムラへ気付かれないように身を隠しながら進軍するナオは、通信機のサタケを指摘するが、彼女もまたミーシャへの愛に自惚れている人物である。なので正論であってもあまり説得にならず、聞かされた方としてはむしろ腹ただしいようである。正論は正論なのだが。
「まぁそれはそうと、あのユキムラとやらは世代からして一応先輩格である君を倒しただけ性能はあるし戦い方もそれなりにわかっている。だけど……」
言動からすればナオは新入りの点を抜いても騎士団員としては性能とは別の面で危ういサムライドだが、当の彼女は決める時に決める事を忘れない女だったのだろう。隙を狙う事を彼女は躊躇わないのだ。
「あの様子で注意を怠る様子だと軍の統率力はまだまだのようだね。それにユキムラは右腕を失っているから戦闘力も低い」
「なるほど……でも今の俺たちとあいつ等の兵力はそう変わらないぜ?」
「なら兵力を減らせばいいだけの話! 僕に任せたまえ!!」
「あ、あぁ……」
ナオは勝利を確信したかのように采配の腕をとった。草原に隠れる彼女の指揮と共に左右からは黄色い光が幾つも点灯したのだ。
「おっと! 敵さんっすね!!」
敵の接近を前にユキムラは敵襲を感じ取った。東西から攻め込まれるソルディア編隊に対しユキムラは兵を二部して個々の撃破を選ぶオーソドックスな作戦をとることにした。兵の数が勝るだけか、それともユキムラの指揮がいいのだろうか。その答えはまだ分からないが、彼の猛攻に押される形で量産型兵器の面々が少しずつ退かれていく。
「へへ! おいらに任せればなんとかなるっすよ!! このまま軍をえーと……西にいくっす!!」
それからユキムラは西へ向かった。その理由はおそらくなんとなくだが、西へ向かえばとりあえずは勝てるのだろうと思ったぐらいの適当なものだろう。
だが、彼のまだ稚拙な判断によるかすかな確信は放たれた青い光によって自分が率いる軍を落としたことで揺らぐ結果となった。
「こ、こんなところに伏兵っすか!」
「ユキムラとやら! さっきのリベンジはここで晴らさせてもらうぜ!」
「あ、あんたはさっき俺に敗れた人!!」
「……」
ユキムラにとってはサタケは取るに足らない存在だったのだろう。また本人が覚える気がないうえに、まだ子供の彼だ。覚えようとしても覚えられない場合もあるだろう。だが先程名乗ってその名前を覚えられない事は名乗る側としては悲しいもの。サタケが真横にずっこけている所からそれは見て取れるようである。
「俺一応サタケって名前があるから覚えろよ! それより、お前を今度こそ倒すことができるぜ!!」
気を取り直して最奥に一人突っ立つサタケにはバントウキャノンが両手に握られていた。新兵器を再び手にした彼は上機嫌そのものである。
「俺にはまだまだ新兵器が残されていたぜ! サイトの奴がバントウを改造していたなんて棚から牡丹餅だな!! どーだ、お前が右腕を破壊されたお前に勝つ自信があるぜ!!」
『サタケ! 君は同じミスを繰り返すつもりなのかい!? 君がまた新兵器を過信してユキムラを倒そうとしたら破れてしまうのがオチだよ!』
「うっ……」
『サタケ、僕のサポート役でもあり、僕より後に騎士団に加入したからは僕の命令に従ってもらうよ』
「わ、わかった……」
『そう! 僕の魅力を分かればいいのさ!サタケ、僕と君はユキムラの軍を左右に引き裂くように軍を退かせて、僕の合図とともに進軍して距離を縮めるんだ!!』
「オ、オッケー!!」
ユキムラはとりあえずナオを信じて作戦に従事した。明確な理由がなくても少なくとも戦い慣れしているのは彼女のだということもあった。彼は調子に乗りやすいが、頭脳が決して単純な作りではなく、人並みに理解と常識はもっていたのだろう。また以前の失敗もありやや腹が立つ所もあるが、ナオに従った方が凡人にとってはベターな選択肢としてみなしたのだ。
そんな彼女の作戦は相手を引き裂いて包囲して叩き、接近させるにつれ包囲網を一つにまとめてつぶす作戦である。
「へへっ。この作戦ならバントウキャノンは過信じゃなく十分に戦えるようだ!」
『サタケ! 油断は禁物だよ!!』
「わかってるわかってるって……相手を倒さないで雑魚の梅雨払いをするくらいは俺にだってできるって!」
バントウの砲身が光り輝けば目の前の量産型兵器を片っ端から叩いていく。そんな今のサタケは自分の実力の凄さに自惚れていることは本人は知らないだろう。
「う、うわぁ! こんな所でっすか!?」
「死ねぇユキムラ! これでここから出て行け……もう終わりだぁ!!」
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「その戦い!」
「ちょっと待ったでごわす!」
「三人寄れば文殊の力!!」
「?」
「ホワイ?」
「ええ? ええ……ええええっ!!」
サタケにとって折角のチャンスは上空から3つの光が飛びだしたことで阻まれた。その三つの光に包まれるサムライド。そのお世辞にもかっこいいとはいえない馬鹿面の持ち主はヨシーナ、ヨシーマ、イワーナの3人だ。
「レッツ!トライベガスディメンジョン!!」
そのキーワードとともにヨシーナを頂点にしたトライアングルが急降下する中で形成された。まずヨシーマの腕両腕と、胸部腹部の外部装甲が本体から切除され、トライアングル中央へ移動する。次にヨシーナの手足が収納され、彼に先程のヨシーマの別パーツがドッキングされる。これにより何かの頭部、胸部、腕、腹部、腰を形成するなかでヨシーナとイワーナもまた頭と両腕を体の内部へ収納させ、頭身を何段か伸ばすことで両足を形成する。
そして両足が本体に結合したとともにヨシーナ自慢のリーゼントが90度上に移動して、ヘルメットでもあるリーゼントの裏が顔に装着されて、3人が合体した答え。鉄の巨体が地面へ着地した。
「なんだ!? サムライド同士が合体しやがった!!」
「「「そうだ! この三光の野望を果たすためパワー全開!! 三体合神トライベガスだ!!」」」
三体合神トライベガス。それはヨシーナ、ヨシーマ、イワーナの爪弾き者である3バカが三光同盟に存在することを許される理由であり、彼ら3人にとっては最大の切り札である。
「1人で1倍のこの力も」
「2人で4倍! 3人で9倍!! でごわす!!」
「爪弾き者のワターシ達は半分程度の実力しか出せませーんが! 合体したらアンヴァンシブルデース!!」
「そうだ、並の半分程度の俺達は三人そろえば三乗して八分の一! 最強の証だ!! どーだ参っただろ! すごいだろ!! 増し増しだろ!?」
「……余計弱くなってるじゃねぇか」
このような緊迫した場で馬鹿をやる者に突っ込みを入れてしまう事はサタケの持つ固有スキルだろう。分数を乗数して強くなったと自負するヨシーナのアホの子属性持ちへそのスキルは発動した。
「なんだと! 俺たち三体合体の力が弱いと思ったら大間違いだぞ!!」
「いや、ヨシーナ、たしかにおいどんたちは今は強いのですたい、ばってんその計算では弱体化は否めないんでごわす」
「落ち着くのーね! 今こそ力を合わせないと、三人寄れば文殊の知恵!三人寄れば文殊の知恵!!」
この状況で三人寄れば文殊の知恵を呪文のように唱えるイワーナであるが、それがこの戦場で役に立つかどうかはわからない。半分躊躇い、いや呆れながらチャージされたバントウキャノンの引き金をトライベガスへ焦点を変えて放たれただが、
「あれ……嘘?」
だが、合体するタイプは、サムライドよりも変形合体のスーパーロボットはまさに鉄の城や偉大な勇者、宇宙の王者のようなものだろう。サタケが放つバントウキャノンの直撃を受けても彼らはピンピンしているらしく、その巨体でガッツポーズを決める始末だ。
「それはさておき三体合体の俺たちの実力はすごいぞ! 何故なら……」
「これでーす!!」
「えええええ……さっきまでバントウキャノンなら大丈夫だと思ったけどそうでもないの!?」
「そうだったりするぜ! 俺たち三人のエネルギーエンジンが連結すればパワー全開になったりするんだぜ!!」
「つまーり、あなたの下手なオフェンスアンドフィニッシュもダメージゼロだったりするのでーす!!」
「ひやぁ……そりゃああんまりだ」
「悲しいけど……これ戦争!なんちゃって!!」
一度新兵器が破られるとやはりサタケは脆いタイプのようである。見事に優劣の差が逆転してしまい、戦勝ムードのトライベガスはどこかのキャラのセリフと共に足を思いっきり蹴りあげて、ソルディア一列に強烈な回し蹴りが炸裂する。また額のマークからの光線が地面を焼く。
「な、なななななんだなんだこんな奴……ってあれ!?」
半分自棄になってあまり効果のないバントウキャノンを何発か放って少しでもトライベガスへダメージを与えようとするサタケであるが、残念ながら鉄の巨体にはかなわない模様である。その上悪あがき同然の攻撃もバントウの目が点滅したことで終わりを告げる。エネルギーが尽きてしまったことで彼の状況は更に悪化してしまったのだ。
「うわぁ! 本当にエネルギーがないよってななな!?」
「この俺達の進撃を無駄な攻撃で阻むサムライドは許さない! 三体合神トライベガス~♪」
「と言いたい所なんだけーどユーはプライスレスで~す!!」
「ええ……」
トライベガスは吹き飛ばされそうになったサタケをつまんで腕をぐるぐる振り回す。その先は少し先にある崖だ。その崖をゴミ箱代わりにごみくず投げ捨てるようにサタケをぽいっと奈落の底へ飛ばしてしまったのだ。
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 落ちるのらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! おちちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「アオォォォォォン!!」
崖から放り投げられたサタケはもうトライベガスの相手ではないまま役目を終えた。それから巨人はソルディアを軽くつまんでは投げ、両肩の鎌を振り回して敵の頭部を刺しては破壊する獅子奮迅の活躍を見せているのである。
「あんな為す術もないサムライド、トリプルベガスソード使わなくたって大したことないね!」
「三つのパワーを一つになれば一つの理想はミリオンでーす!」
「合体時間中は調子がいいんでごわす……奇跡ですたい」
ソルディアを相手にその巨体を生かしてじゃあれ合うかのようにソルディアをちぎっては投げちぎっては投げ。通常のサムライドにとって約3倍の背丈を持つソルディアは彼ら3人の前に並のサムライド以上にあっけなく始末されてしまうのだ。
「すごいっす……あんな巨大なサムライドがいるなんて……」
「いやーそれほどでも!」
「おいどんはケイ様の命令により」
「あなたたちゲンの軍団へ助太刀が決まったのデース!!」
「は、はぁ……」
とトライベガスはユキムラ側として参戦を表明したようである。戦闘能力はそれ相応のものだが、性格がどうもあれであり、単純天然のちびっ子も本能が危ない人であることを知らせたか軽く引いている模様である。
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「これで終わりにしてやろう……」
「!!」
激闘の末遠方へ存在し、互いをむきあう両者だが、今ミーシャの胸部が展開され、スクリューパーツが激しい回転を開始した。目の前で放たれようとしている技……あの時弟を葬り去った因縁深い彼女の必殺技の前座である。
「あの技に俺はなすすべもなかった……だが今の俺は風林火山形態であることを忘れてもらっては困る!!」
その時ゲンの両手に閃光が走った。その赤と青の閃光を両腕に閉じ込めて突き進む。胸から腐食させる竜巻が放たれる前にミーシャのアーマーを破壊させてしまおうという考えである。
「俺の計算ではこのままいけば今の俺は勝てる……今の俺は勝てる!!」
「甘いな!」
「何っ……!!」
ゲンが戦場へ一歩、二歩出る前にミーシャは竜巻を放った。その竜巻の風力は彼にとっては強力とは感じないがそれは風林火山形態ゆえだろうか。ただ一つ言えることとすれば彼女が放った竜巻は彼の勢いを止めるのには十分な威力があったということだ。
「まさかあいつも俺に想定して技を強化したのか」
「いや、ただお前が来ることを想定してチャージ時間を短縮して攻撃を仕掛けただけだ。今のお前のスピードでは全力で放つ事は時間的に不可能だと見たからだ」
「なるほど……俺の必殺技を不発にさせるつもりだな……」
「うむ。この程度の攻撃ならお前を拳一つで葬り去るほどの威力はないものの、動きを止めることはできよう!!」
「甘いわ!!」
竜巻の中でゲンの拳が標的へ飛んだ。その拳を目にしたミーシャだがそうした途端に彼女はまたも不敵に笑って胸部を閉じてから飛んだ。
「悪あがきはここまでだな!」
ミーシャが前方へ飛んで拳を回避すれば、両腕のチェーンロックが宙を移動する両腕を仕留めてみせた。
「あの竜巻の中では威力はさておきスピードも落ちる!そんな状況で攻撃を仕掛けてくるとはゲン、お前もよほど手が詰まったようだな……これで終わりにしてくれよう!飛翔紋剣・車懸りの舞!!」
そして、空中に飛んだミーシャは再び飛翔紋剣をスパイク代わりに伸ばして、身体を丸めて回転させて突撃させた。再び軍配を手にして防御の体勢をとるが、竜巻内に存在することで今のゲンの体は竜巻に存在する酸の力で溶解していくことが、アーマーの酸化とともに感じられ、彼の体は危険に陥る。
「ぐ……」
「これで終わりにしてくれよう! さらばだ風林火山!!」
軍配で防御態勢をとるゲンだが、ミーシャの車懸りに太刀打ちできるものとはとても思えない。そして彼女のスパイクが彼へ直撃する秒読み段階となった瞬間だった!!
「うわぁ!!」
その時、彼女の車輪は突如現れたフィールドに弾き飛ばされ、オフロードの地面に横倒れになって激突した。
「……」
「どうやら先ほどの戦いにおけるエネルギー消耗の件がわずかながら響いていたようだな」
「お前は……誰だ!」
「天王不辱……辱める事がない存在、また姫君を守る至高の騎士……今は亡国への信奉者……ケイ・ヨシナガだ」
「ケイ・ヨシナガ……」
霧が晴れて見えるケイは黒をこの手でかぶり紫の鎧兜に強固な守りと力を得た男である。彼は無言のまま右手からは漆黒の光と渦が車輪の動きを徐々に後退させていった。
「何だと……私の車懸りを……」
「はぁっ!!」
雄叫び一発とともにケイの右手の力が急速に誇大化する。黒の光が車懸りの彼女を見事に弾き飛ばす威力を見せたのだ。
「ふぅ……久しぶりにこの力を発揮するには丁度いい相手だな」
「お前は誰だ……何故ゲンに力を貸す」
「私はお前の同志になれないからだ。義で全てを片づけようとする者に私の考えが受けいられられるとは思うまい。悔やむならお前の義を悔やむべきだ」
「義を持って悔やもうとしたことなど私は考えていまい!」
「なら仕方がない。全てで力を求めようとするゲンの方が私としては気が合いそうだ……」
「なるほど……不義を犯す不届き者には軽く灸を吸えないといけないようだな」
この男・ケイとはわかりあうことができない。義に基づく考えで行動するミーシャの出した答えは飛翔紋剣を両手に握る事である。そんな敵対行為に対し彼は首のマントをはぎ取り、そのマントで飛翔紋剣を鞭のように打ちつけることを選んだ。
「ただのマントのくせに……質量があるだと!」
「そうだ……」
マントを握る右手の動きに合わせてマントが剣へと姿を変える。右手に握られたマントは布のようなしなりが形状の変化とともに徐々になくなっていき、長剣へと形を変えるとともに刃になり得る程の固さを持ち合せている。
「このクロス・トリングはただのマントではない。だが私のトリングを受け止めるとはさすが五強の一強と言ったものだな。たかが五強だがな」
「どうした、何がおかしいというのだ!」
「お前は知らないようだが……五強とは大陸において一地方で勢力を伸ばしたサムライドの事を指すにすぎない。お前はその事を知っていたかな……」
「あぁ、それがどうしたというのだ!!」
「それだ」
ミーシャの誇りを傷つける事を躊躇しないケイの物言いに彼女は苛立ちを急速に増幅させている事を自分自身は気付かなかったかもしれない。だがケイは彼女へ勝算を持っているのだろう。表情に全く焦りを見せていないのだ。
「私のアワ国は大陸時代に都の権限を掌握した大国。都を支配下に置いた国は実質の最強。都を制した力を持った私は五強に匹敵、いやお前を倒すことができる自信がある!!」
「ほぉ。お前は不義の上に命知らずとみた。私を倒すことができる自信があるというのか、ならば覚悟は決まっているも同然だな!!」
チャックトンファーを両手に装備したミーシャが自信と余裕を見せるケイの元へ急ぐ。だが本人は知らないだろうが彼女はやや血気にはやっていた。
義で力を制するはずのゲンとの闘いに水を刺され、しかも相手が力を求める存在へ加担したからであろうか。宿敵の味方は当たり前だが敵である。その一方でケイは余裕の姿勢を見せてなにも構えずにその場で立っていることを選んだ。その直立不動は自信の表れでもあり、また余裕故に隙を見せている事でもある。
「ミーシャ・ツルギ……義と誇りを重んじるお前だ……私がこれだけの自信と無礼を働けばお前も冷静さを欠くだろう……」
ケイは笑った。これだ。この表情と表情に背負った考えこそ戦場における彼の強みなのだ。義を貫かんとする志を力に変えるミーシャに対し、ケイは相手の力を削ぎながら余裕の姿勢を保つ事が強さなのだ。
(ふっ。お前に勝てるかはさすがに私も分からない。だが相手が勝手に力を削がれたら私にも勝機はある……)
「レザークラッシャー!!」
「そんな攻撃など!!」
左腕からクローが飛んだ。しかしミーシャも決して猪突猛進の荒武者のように心の髄まで焦りや怒りに支配されてはいないようで、併せ持つ冷静な側面により回転する彼女が放つ右腕のチャックトンファーが襲い掛かる手を軽く薙ぎ払い、そして背を向けると両手で弾き飛ばされたクローを掴んでは一本背負いを決める体制に入った。
「戦神の一本背負いなど……」
「甘い! 私の前で背中を見せるとは油断も程がある!!」
ミーシャの目の前で受け身の態勢を取ろうとするケイであるが、彼は不思議なことに無防備な背中を彼女の目前に晒していた。風になびく彼のマントが唯一の守りだが、そのような心細い守りはすぐに彼女に破られてしまうだろう。また自分から背中を見せてきたことは彼女にとっては好機の二文字が相応しかったのだろう。すぐさま右腕からはチェーンロックが仕掛けられた。
「甘いな……クロス・トリングを甘く見てもらっては」
ケイが余裕で語るクロス・トリングとは、先程鞭や剣へ姿を変えた漆黒のマントのことであろう。攻撃面においては非凡な効果を発揮するマントだが、今の紙一枚の様に風に浮くマントに鎖鎌を受け止めることが出来るか……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……!!」
しかし、いやこの場合はやはりかもしれない。激突の答えは我々の予想を裏切り、ケイの言葉通りの結果となった。先ほどまで紙のようなクロス・トリングが鋼鉄へ物質が変化したかのように、チェーンロックを弾き飛ばしたのだ。さらにマントが彼の手に握られながら彼が表を向けば、先程の布、いや金属は銀色の斧へと全てを変化させたのだ。
「無駄だ!!」
振り向くとともに斧へ変化したクロス・トリングが正面へ投げられた。またケイの右手が相手を指さすとともに漆黒の光が飛んだ。大柄な斧の軌道を追いかけるかのように一直線にビームが放たれる。ビームの口径が小さいのだろうか、斧の刃が強大なのだろうか。正面からは斧一つしかこちらには見えない。
「巨大な斧を盾にビームの単純な軌道を視角から妨げさせるか……なら」
ケイの作戦を読んだのだろう。ミーシャは腰の両側に備えられた菱形のパーツを前面へ飛ばす。そのパーツは空中でくの字に合体しては、回転しながら斧とぶつかりあう事で両者の勢いが相殺された。両者が僅かに弾き飛ばされることで斧の軌道がずれ、その後ろから目の前に迫るビームの光が見えた。見えると見えないとの差は標的への回避運動を取るにおいては大きく左右する条件である。彼女は回避をとるだけの能力は持ち合わせているようで、目の前に見えた光を軽く避けて見せた。
「……」
「お前の作戦はこの程度か。並のサムライドならまだしも私になど……」
「それはどうか……」
「何……」
ミーシャは作戦を読んで行動を移した。だが、ケイは彼女が作戦を読む事も想定において作戦を立てていたのである。右に移動して避けたまではいいが、彼女は斧とビームの軌道の末を知らなかったようである。宙で回転しながら落下していくトマホークの刃にビームが反射して、その光が彼女の側面へ直撃したのである。
「どうだ。戦神と呼ばれていたお前など私の足元には及ばない」
「まさか……私の戦術まで読んでいたとは相当な実力者だな」
「当たり前だ・私は温室で育ったお前達とは違う。お前と同じ温室育ちのつもりが、裏切られたせいで故郷の全てを失った。そこから俺はたった一人で故郷を復活させて故郷アワ国を大陸屈指の強国へ仕立てた……」
「!!」
ミーシャとケイが駆けたタイミングはほぼ同じだ。両者とも拳に刃を備えながら拳で拳を、血で血で洗うような格闘戦へ持ち込む。
「一人の戦士として、一人の指揮官として、一人の参謀として、一人の宰相として……私は母国の全てを己の力全てで支えてきた。すべてに精通させた私の力が今、戦神であるお前と五分五分に戦っている!!」
ケイの言葉はやや熱気が込められていても、本来の冷静沈着さも滲み出る王者の貫録そのものだ。だがその言葉の奥では自分が全てを注いできた母国の復活への想いが背負われている。その為には同志となり得るゲンを仲間に迎え入れる為に、ミーシャを宿敵と見なし戦う事を選ぶのである。
「……強い」
ミーシャとケイの壮烈な戦いの中で一人ゲンは傍観せざるを得なかった。戦闘姿の彼は先程の己と同程度の実力を発揮しているからである。だが、実力だけではない。彼の歩んだ道にどこか自分の面影を感じていたのだろう。単に強さに興味を持っただけではないようである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「離せ! ミーシャ様に敵対する不届きものを僕は倒さないといけないんだ!」
「あぁ! この三体合体のでかい奴は俺たち騎士団の手で止めないとミーシャ様の敵として襲い掛かってくるんだな!」
一方ミーシャと互角の戦いを繰り広げるケイを家来として助太刀せんとする者がいた。三体合神トライベガスのことである。そんな半人前の3人が合体して並の3倍以上(本人談)の実力を持つ巨人に立ち向かわんとする相手2人はナオとサイト。カキーザは深手を負って戦線から降板しており、サタケは相変わらず頼りにならない。ここでは残りの2人がミーシャを守る最後の存在なのだ。
「何するんだにゃろー!!」
「ヨシーナ、この騎士団なかなか強いでごわす」
「うどの大木でーすか!? 救いはないんですか!?」
サイズは三倍以上ではないが、当のトライベガスは色々な面で平凡以上のポテンシャルを持つ。だが、サイズが平凡以上のサムライドであることが、ナオを相手にしている事は良いのだがそれなりのサイズにそれなり以上の強度を持つライド・アーマーに身を包んでいるにもかかわらず、当の彼女はスピードに関しても並み以上でありサイズの差から小回りが利く彼女をトライベガスが追う事が難しいのだ。
「ふふふ! 蝶のように舞い蜂の様に刺す! 素晴らしい言葉だとは思わないかい!?」
逆にナオにとってはでかい相手は好都合の様である。最もサイズの差が余りにもあることも原因かもしれないが、彼女の鞘から抜かれたファイスソードがカマキリの刃のように、背中からのファイスピアーが蜂の針のように執拗に巨体へ攻撃を加えているのだ。
「ナオ、油断はするなよ! お前もサタケほどではないにしろ……怖いもの知らずは仇になるからな!!」
後方のサイトはライド・ホースから用意されたバズーカ砲を片手に後方支援に踏みとどまる。ビッグサイズのトライベガスにおいてはその威力は多分蚊が止まった程度にしか過ぎないが鬱陶しいことには変わりはない。しかしそんな蚊を攻撃しようとしても蜂が自分の周りをうろちょろ飛び回っていては迂闊に攻撃が出来ないのだ。
「あーもう! うろちょろ鬱陶しい!!」
「ヨシーマ! ベガスコックローチやベガススイッターはないのデースカ!」
「そんな局地的な武器はいくらなんでもないですたい! それよりトリプルベガスソードでゴワスよ!!」
三人組の良心ヨシーナの言葉がトライベガスの両腕を背中に刺さった柄を握る結果となった。トリプルベガスソードは一応並よりポテンシャルの高いはずの彼が持つ必殺剣である。その必殺剣を真上へ構えた時空が何色であろうとも雷が天から降りかかりその際に全身が金色に発光するのである。
「うわっ!!」
その光はプラズマかまた別のエネルギー波か。彼の光の膜に弾き飛ばされたナオだが、一応騎士団として騎士道を邁進している事のだろう。彼は軽く受け身を空中で取って被害を最小限に抑えた。
「ほらみろナオ! 相手は馬鹿でも一応強いことは確かなんだな!!」
「面白いじゃないか……ぼくのファイスソード、ハイパーファイスラッシュを見せるときじゃないか!」
「お前なぁ……へたれよりはましかもしれないけど気をつけろよ!!」
「大丈夫! 僕はミーシャ様の為に全てを殉じる覚悟は出来ているからね! 義の為にね!!」
ナオがファイスソードの柄を両手に握りしめると、刃へ何処からかのピンク色の光が剣先から彼女を包み込む。周囲の小石や砂利が徐々に宙へ浮いて、足元の周辺には小さな波紋が放射円状に広がりつつある。金色の光は留まりを知らず、ピンクの光はまだ小柄なれどまだまだ勢いを弱めずトライベガスへ肉薄せんと輝きを増していった。
「トリプルベガスソードにプラスマ走り! 大陸の悪魔もまっまっまっ! プタツデース!!」
「いやイワーナ! ここはいくぞ若さのトリプルベガスソード! だろ!!」
「若狭!? それは福井県でーす! ここは長野県ですよ!!」
「その若さと若狭じゃないですたい……それよりあのサムライドも厄介な力を発揮してきたでごわす」
「大丈夫大丈夫……俺は絶対勝てる!!」
「「何ですと!!」」
「ここで騎士団討ちとってトライベガスの、俺達の華を咲かせてやる!!」
ヨシーナの平時の軽く思えないほどマトモな勝利宣言を見せた。エネルギーのチャージが完了しトライベガスの目が光った。
「その秘策は……これだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「「何……!!」」」」
ヨシーナが叫んだ。その叫びは相棒の二人はともかく、ナオとサイトですら気迫に脅かされてしまうにわかに信じがたい光景だ。そして秘策が明かされようとした……!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この三光同盟の野望を余所者の手で汚す者は許さない! 三体合神トライベガス!!ただ今、花道まっただ中だ!!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「「「「……」」」
その時、戦場が静粛と化した。周囲があっけにとられる中、先程まで剣を構えていたナオですら剣を振るタイミングを逃してしまった程あっけにとられたのだ。その中でノリノリのヨシーナの手でトリプルベガスソードが振りかざされようとした……が、
ビービービービービービービービービービー……
「あれ……」
トライベガスの動きは徐々にぎこちない者となり、振りかざされた剣とその手も緩やかな動きとなり、最終的にはピタリとその手が止まってしまった。なおそれと反比例して彼らの身体から鳴り響くブザーの音は徐々に高まっていく。
「合体時間……限界だと?」」
「「……な、なんだってー!?」」
「「……」」
「あはは! これで今後の展開なんか気にしなくていいもんねーだ……って絶対にゆるさねぇ義闘騎士団!! こーなったらせめて出番を増やして再挑戦してやる!!」
「そんなことよりおうどん食べたいで~す!」
「ちょ、収拾がつかなくなる……ってお前らまともに戦う気がないですたい!! あぁイワーナがおかしくなってきもうした! 元からだけん……」
「「……」」
その時ヨシーナは元から頭のねじが飛んでいた可能性もあるが、彼が弾けてしまったのだ。得意のノリ突っ込みスキルとイワーナの唐突な物言いスキル、ヨシーマの真性突っ込みスキルが三位一体した瞬間をナオとサイトが……見る気にはならなかったのだろう。既に両者はミーシャの援護へ急ぐのみだ。
「あ! こらよせ……あれ合体解除……」
そんでもって三人は強制合体解除となり、限界へ達した三人のパーツが宙で分解して三人が仲良く山になるように積み重なっていく。
「あぁ、出番が終了、やられ方がいい味出している」
「全然役立たないデース」
「そろそろ立場ないですたい……それよりヨシーナさっきの秘策はなんだったのですたい」
「勝利の決め台詞を先に言えば勝利は約束されたも同然と思ってやったのだが……どういうことだイワーナ! お前があのとき、まっ! まっ! まっ! ぷたつとか縁起でもないこと言うからこうなったんだよ!!」
「だったら怒りの鉄拳唸りを挙げてサムライドまっ! まっ! まっ! ぷたつにすべきだったですか~!」
「……」
相変わらず訳のわからない事でも前会うヨシーナとイワーナにくらべてヨシーマは2人の肩をちょんちょんと突きながら相手の二人がミーシャの元へ急いでいる事を教えた。
「ちょ!! あんたらどこいくの!! ここで俺の出番終わり!?」
「多分そうですたい……」
「ちょ! それ卑怯だろ!! おい武士は背中を見せないというじゃないかー!!」
「いや、作戦としてはおいどんたちにかまうよりは遥かにまともなんですたい」
「善は急げでーす! 仕方ないねの許容マイハート!!」
「バーカ!急がば回れもあるんだよ!! 待って! 待って待って待って……俺をここで見捨てないで、置いていかないで! ねぇ! ねぇ!!」
ヨシーナが色々な液体(多分涙)をだらだらこぼしながら、誰へ向けてかは分からないが出番を求めている。しかし騎士団の二人は一応この馬鹿二人(また三人)よりは全うなのだろう。彼らをスルーするスキルも持っていたようだと思う。
そんな中奇抜な踊りで時間を稼ぐイワーナと出番の終了を悔むヨシーナに何も言っても無駄だと思ったのか、ヨシーマはその場で改まって咳払いをして地面に正座した。
「結局そのままずうずうと時が流れて行きもした。さて、おいどんが呼び出されたのはもしかして、時間を稼いで馬鹿一人を退場させるだけじゃったかもしれませんが、皆さんはどう考えもすか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「この光……この者、相当な実力者だ!」
「幾多の不届きものを始末した伝説の必殺技。烈風正拳乱舞。胸から放たれるソルティアスプラッシュに飲み込まれたら朽ち果て、拳で貫かれるのみだ」
地上ではケイとミーシャの技が激突し周辺には波紋が絶えない。宙で放たれた三を含んだ強風ソルティアスプラッシュが吹き荒れるが、ケイの両腕から輝く円状の光が彼を守る盾代わりとして機能しており、強烈な嵐へ巻き込まれることはないのだ。
「ミーシャ、お前は知らないだろう。このトゥエルヴァーリングの力を……だがお前を飲み込んでは弾き飛ばすこの光を食い止めるとはミーシャ・ツルギが戦神と呼ばれた事の能力はあるということか」
「……あの光は何か。あれだけエネルギー兵器を使うことはこの者は私を短期で葬り去ることを考えているのか。できることならこのソルティアスプラッシュを限界まで発生させたいが、これ以上の使用は私のエネルギーの残量から私が危うい」
「ゲンとの戦いで相当エネルギーを消耗したかと思えばまだまだなのか……何!?」
その時、ケイの両腕に変事が起こった。彼の前方へ突きだされ、エネルギーシールドの役目を担う両腕が何者かの手で横へ開かれようとしているのだ。彼のエネルギーシールドは両手から発生するエネルギーシールドを密接させることで厚みを増すことにより攻撃を防ぐ事が可能。もし、その両腕が開かれてしまえばシールドの効果は弱まり、彼も彼女の嵐に飲み込まれてしまうのだ。
「このような力を持つのか……いやミーシャはこの技を放つだけで手が回らない。騎士団の誰かだな」
今のミーシャは自分と同じ他の行動に手が回らないほど必死に勝負へ打ち込む。ならば他の騎士団の者しか当てはまらない。ケイの予想はあながち間違いではなくミーシャの近くには円盤状の金のシールドを前面に構えるナオがいたのだ。
「ふふ。このナーオエンジョーを甘く見てもらってはいけないよ……ミーシャ様の素晴らしきソルティアスプラッシュを受け止めるだけで精いっぱいの君は僕が用意したステージギミックにまで関心は回らない……」
激闘の中ナオが余裕を持って笑みをのぞかせる。今、シールドからの発せられる超音波をケイへ放つ。ナーオエンジョーとは彼女のシールド裏に仕掛けられた超音波発生装置からの音波で相手を自分の意のままに操ることが出来る強力な兵器である。
だが、音波発生時のエネルギー消費は激しく、また音波発生までの隙もある。それ以前に彼女もまた義を重んじる性格なのでこのようなやや卑劣な兵器を使う事はないのだが、ミーシャが万一の時には彼女の信義に反しても彼女を救う事がナオの思考回路においては、最優先される項目となるのだ。
「なぁナオ……ミーシャ様は1対1の勝負に誇りを感じられるお方だ。ここはミーシャ様の意志を尊重してな……」
「ミーシャ様がやられたら意味はないんだよサイト! ミーシャ様を失ったら僕はどうすればいいと思うんだ!!」
「いや、そこまで俺は……」
「それにミーシャ様とゲンの1対1の真剣勝負に水を刺して、ミーシャ様の敵になる不届きものに正々堂々なんて4文字はもったいないよ!!」
本来の性別を超えて騎士道精神へ身を投じる彼女だが、その行動の原理は全てミーシャへの想いによる。ミーシャこそ自分の全て。今の彼女はその騎士道精神を捨ててまでミーシャを助ける事を選ぶのだ。
「まずい……どっちにしろエネルギーがない」
「あの男エネルギーがないのか……それとも……」
「僕の力が尽きてもミーシャ様は僕が守る!騎士道を捨ててまで愛する人を守り抜く。それが僕の騎士道なんだ……!!」
危機に陥るケイ、現状を今一つ把握できないミーシャ、信義に反しても愛する彼女を救おうとするナオ。三人の思惑が渦と光の中でよぎる。その中で一人外れたサイトだが、その本人は気付いた。遥か後方から漆黒、真紅、純白の光がものすごい勢いで迫っているのだ。彼が振り向いたとき顔が一瞬にして蒼白させた。
「な、なんだ……あれは夜叉か!!」
「そうだ!」
その男は駆けめぐる。両肩から突き出た二本の棒と、真紅の振袖、純白の鬣に般若そのもののの仮面。たまたま近くにいたサイトに対し鬣が激しく回転した。その鬣は回転するや先程までのしなやかさが嘘のようにギロチンのように回転し、暗黒そのもののオーラを身にまとっての頭からの体当たりはサイトを弾き飛ばすには十分な威力だった。
「何なんだ……こいつは」
「人は僕を戦乱の夜叉と呼んだ……そしてこれが僕の百鬼夜行形態さ!!」
「……何だと!!」
名乗り終えた彼は振り向いたナオへ肩から引き抜いたショーテルの刃が腰を囲むように挟みこんだ。振り向いた彼女は若干戸惑いながらもナーオエンジョーでそのサムライドの動きを自分のものにしようとしたが、
「ならビーグエイクサウンザーツだ!!」
しかし、一旦ショーテルを手放して肩関節の円盤部分から突きだされた棒を片手に一本ずつ握り、鞭のような先端を彼女のシールドに打ち付けたのだ。
「何のつもりなのかい!!」
「音には音……君の音波なんて僕の手にかかれば無意味なものさ! それより君のセリフはそのまま僕の方から君に聞きたいね……兄上!!」
「!!」
その時彼は叫んだ。兄上との言葉とその声は嵐を一人受け止めるケイの耳に届いた。遥か二万年前以上から聞きなれていた声から誰かは一発で推測が出来た。
「カズマ! お前……」
「兄上! まず無断で援軍として参上したことは許してください……ただ僕は兄上をこの命に代えてでも救って見せます!! これで僕の失態が許されないと思いますが。僕は兄上の弟として恥じない戦いを見せます!!」
「……」
「ほぅ。君はあの不届き者の弟……」
「……兄上を不届き者呼ばわりするとは許さないよ! それより騎士団のくせに兄上の動きを封じてミーシャとかに勝たせるなんてそれでも騎士か!!」
「僕はミーシャ様が勝てば他に何もいらない!ミーシャ様の敵になるなら僕は容赦しない!!」
ナオの首に刃が迫った。先ほどのビーグエイクサウンザーツを円盤部分に収納してはレバーの様にスティックをあげてから引き抜かれた瞬間先程の柄には巨大な孤を描く刃が繋がれた。ビーグエイクショーテルが彼女の首を切る体制を整える。
「一歩でも動いたら君は僕が処刑するよ!!」
「う……」
「やめろ! お前ナオに何をするつもりだ……」
「お前たちこそ兄上によくも! 外野は黙っていればいいんだよ!!」
「な……うわっ!!」
ナオの首を拘束したナオの背後からサイトが現れたが、やはりカズマ存在を察していたのだろう。手早い動きでもう一組のショーテル”フェンサーショーテル"が右肩のシールドに連結され、独りでに鎖に繋がれた盾が彼とライド・ホースの接合部分を鋭く挟む。その状態でシールドに連結されたブースターの勢いがサイトを付近の瓦礫の壁へ叩きつけた。
「これだけじゃないよ! スピニングメガロブラスト!!」
騎士団の残り二人を無力化させたカズマだが、彼は更に攻勢の姿勢を進める。鬼のような厳つい仮面と白の鬣はまさに夜叉の二文字が相応しい。仮面が赤く発光し、鬣が回転するたびに紅へ染まりケイが受け止める竜巻の元へ割り込むかのように飛びこむのだ。
「何……」
「カズマ、お前スピニングメガロブラストを……!!」
ソルティアスプラッシュがスピニングメガロブラストによって撃ち消され、当のミーシャが炎に包まれた。ソルティアスプラッシュは強酸を含む事もあり、固体に対しては効果的な技だが、それ以外の物質には効果が薄い。このソルティアスプラッシュは竜巻の風圧さえ撃ち破られたら、意外と脆い一面を持っていたようである。
「申し訳ありません兄上、兄上は僕の命を削る大技を使うなと言いたいつもりだと思います……」
「あぁ……」
ケイはカズマに難色を示す。スピニングメガロブラストは彼のエネルギーを全て熱線と火炎へ変えて顔面に接続された般若の仮面からの火炎放射と、鬣からの熱線で相手を攻撃する荒業であり、カズマの切り札である。だがエネルギーの消耗が多大なだけではなく別の件からも兄としては使うことが望ましくないようである。
「でも兄上、僕は兄上の七光でここまで来た訳じゃない。僕は実力を持っている事を兄上に知ってほしいんだ。失態を補えるかわからないけど僕の全力を兄上に見てほしいんだ!!」
「何……お前の実力を見てほしいのだと」
「はい! 僕は兄上にこの命を救われた時から兄上の様に強くなりたいと決めたんだ! カッター兄様からアタク兄様からは兄上の力になる為に教えを受けて、命を捨ててまで僕を、兄上を支える為に脱出させた……そしてこの時こそ僕が兄上を支えるときなんだ!」
「カズマ、お前はアタク、カッターの後を」
「はい! ここで僕が支えなかったら……僕は何のために屍を乗り越えて、時を重ねて、そして現代に支えと存在しているんだ!! 兄上を支える事の出来ない僕は意味のない存在なんだ!!」
「……!!」
今のカズマはミーシャ、ナオ、サイトの3体のサムライドを己一人で相手にしているのである。ショーテルクラッシャーが、ビーグエイクショーテルが、そしてスピニングメガロブラストが相手の動きを封じながらそれぞれを苦しめているのだ。その戦いの理由は兄の支えとして自分の実力が相応しいかを証明する為の戦いである。先の兄2人がいない後兄を支える事が出来る者は自分しかいないと思ったからだ。
「兄上、これが僕の全力です! そして……兄上の全力を僕に見せてください!!
「私の全力か……」
「はい! 僕の力が兄上の支えになるなら、兄上の力で僕はもっと強くなって兄上の力になりたいんだ……!!」
「わかった! なら……」
弟の想いを受け止めた兄。自分にあこがれて自分に追いつこうとする弟の声に右腕に漆黒のエネルギーをチャージし、脚部のブースターが業火を纏わされたミーシャの元へエネルギーの噴射と共に近づく。
「絶破極刑・天命散拳を使う……カズマ、よく見ておけ! お前をあの絶望から救い、お前に高みを目指す希望を与えた技を、そしてカズマ、お前は私を、この技を、超えろ! 鋼の信念と肩書きに違わぬ実力を持つお前なら私を超える器を持っているのだ!!」
「兄上!」
弟へ改めて実力の証明をする事は、弟の力量をここで見極める意味もある。そして三光同盟の総帥として大勢のサムライドを束ね、自分に課された使命を成し遂げる為に相応しい能力を見せつける為にミーシャへ顔を向けてみせた。
「ミーシャ……お前はあくまで敵としか見ていなかった……だが、私は今お前を破壊する決心がついた!! 俺の力が大志を成し遂げ、カズマの希望の捨石として散れ!!」
「何……ぐあっ!」
ミーシャの顔面に漆黒の右腕が仮面に覆われたミーシャの顔面を握りつぶさんと触れた。そのまま彼女をエネルギーの力を借りて天へ持ち上げて握力を増していく。
「くたばれ! 蒼き軍神ミーシャ・ツルギ……そしてカズマ、よく見ておけ!!」
「兄上……」
この時ケイは勝利を確信したかのような笑みを見せ、ミーシャは何か一種の覚悟を決めた瞳を見せていた。
「超電地割砕!!」
「何……うおっ!!」
「兄上! ああっ!!」
彼女の死を持った覚悟が天に通じたかは分からない。またはケイに一種の気の緩みがあったかはわからない。その結果突然天から雷が降り、地面を激しく打ち付け、電気が通るはずのない地面には亀裂が入り、地底からは蓄えられたエネルギーが飛び出すかのように蒼きの光が地面から放たれていき、周りのサムライドや量産型兵器が自然と吹き飛ばされる。突如サムライドですら理解に追う事が出来ない常軌に外れた現象が今、彼らの目の前で発生しているのだ。そしてその中でまた一人の人影が地面から飛び出す。
「風輪貫拳&豪炎華砕脚!!」
声と共に2人の人影が回転しながら竜巻に身を包んでいく。地面からの閃光と竜巻がその場にいる全てのサムライドの視界を奪う。やがて光から火の輪に包まれた竜巻が地上に飛び出し、荒れた大地へ火球を放ちながら遥か上空へと昇っていく。
「我……弱者の味方である……この地で均衡を保つことこそ錠を持つ者の使命である!!」
「下剋錠……まさか!!」
下剋錠。ケイにとっては大義を成し遂げる為に必要不可欠な存在であり、喉から手が出るほど大切なアイテムだ。その下剋錠を名乗る竜巻の存在が彼の目の前に猛威を奮い、絶大な力を見せつけんと静かに、しかし確かに渦巻き続けるのだ。
「そうだ。我こそ下剋錠を握る者である! 錠を握る者は一方的な勝者に雷を落とし地面を割る。そして亀裂から全てを吹き飛ばす突風と共に、業火が全てを焼き払う!!」
「何……下剋錠は勝者に渡せないと言うのか!!」
「そうだ。究極の勝者とは両雄が並び立ち、両雄同士の決闘で勝者を得た時である! 究極の勝者がこの下剋錠の持つ者との戦い……かつての究極の勝者に勝つ事で錠を渡されることが許されるのである!!」
「究極の勝者だと……」
「そうだ。大陸において世界を変えた力は究極の勝者である! 世界を変える力を持つ下剋錠は究極の勝者以外に相応しい者はいないのである!!」
究極の勝者。その言葉にケイは息をのむようにして構えた。一方的な勝者では意味がない。最強の者を最強が制する事で真の最強に相応しいと認められ、その者に自分を任せようと目の前の下剋錠は告げているのだ。
「なるほど……世界を変える力は最強が持つに相応しいとのことか」
「ケイ。お前の勢力は確かに強力である。しかし、今のお前は烏合の衆を倒しているだけにすぎないのである。烏合の衆がひと固まりの組織になった時こそ実力は問われるものである!!」
「……」
「最も全てはお前次第だ。我の忠告に従うも背くもお前次第。また我を倒して強引に錠を手にしても私は何も言わない……お前が強大な力で破滅するかどうかはお前次第だからである……」
ケイへメッセージを残して、天からの声が消えた。それと共に青い光が消滅し、先程までの地割れが嘘の様に収拾していたのである。
「……あれが下剋錠の力……この世界に下剋錠を持つ者がいるのか……両雄が揃い相手を下した時にその資格を得るのか……」
ケイは天からの声を聞き入れてその場で一人考えたが、答えを出すのは速かった。目の前が真の下剋錠が否かは分からないが、真偽の前にケイは躊躇いで葛藤する事を考えずに、彼なりの判断で答えを出すのだ。
「だが軍事行動はやめない……我々三光同盟に揉まれて倒すべき存在が生まれたならそれでよし、もし我々が日本列島を支配したならその錠を持つ者を倒せばいいだけの話だからな……」
ケイは微かに笑いながら一人歩く。その標的は地上に取り残された紅き軍神ゲン・カイである。
「ケイ・ヨシナガ……お前の腕は見させてもらったが、俺はお前の助太刀を求めてはいない……」
ゲンは己の権力を維持しようとケイに対して突っぱねた感情を現すが、ケイは彼の想像とは正反対にゲンの前で彼を歓迎する姿勢を見せる。
「ゲン・カイ……さすが五強と呼ばれただけの力はある」
「それは俺への皮肉か?」
「いやそうではない。私はお前を同志に加えるつもりなのだ」
「同志……だと?」
「そうだ。我々三光同盟はビーグネイムの民の悲劇を知らずに嬲り殺しにしたこの大陸の民へ報復し、大陸復古の鍵を握る下剋錠を手にする事を目的に同志を集めた組織である!」
「それは俺も知っている。確かマローン・スンプーがお前の同盟に入ったが……」
「シンキ・ヨースト。紅蓮の風雲児とかに破壊されてしまったのだ。あのマローン・スンプーがだ」
「……」
マローンが破壊された事をゲンは既に話は知っていた。だが改めてマローンがシンに破壊された話を耳にすればゲンにはある考えが芽生えたかのような思慮深い表情を見せた。
「マローンの死で東部軍団の機能は停止したも同然……そこでマローンとほぼ互角の実力を持つゲン・カイ。お前に東部軍団の宿聖として大陸復古の為に戦ってもらいたいのだ」
そして、ケイはとうとう目的を明らかにした。東部軍団再生の為にゲン・カイを目に付け、この戦いで彼へ助太刀して彼を組織に引き入れようとするつもりだったのだ。
「俺は大陸復古には興味はない。俺は力のみだ。力の為にあらゆる手を取ることが俺だ」
「それでもいい。お前は力を求めればいい。お前はミーシャ・ツルギと競い合う事を大志より優先させてよい」
「ほぉ……随分太っ腹だな」
「当たり前だ。お前ほどの実力者を厚遇しなければお前に失礼だからな。だから」
「だから……」
「お前の脇を固める最強……風林火山の四戦士は我々が確保した」
「何!?」
ケイの意外な言葉がゲンの動きを止めた。この動揺においてケイはゲンの心の脆さを確信した。彼は目的を果たせると口元を微かに動かした。
「そうだ。お前が共に行動する事を許した風林火山の四戦士は私の手の内にあるからな。お前が私の敵に回すなら四戦士は私の手で処刑する事も出来るからな。最もお前が私の同志になるなら、四戦士はお前の指揮下。俺からは最低限の干渉しかしない」
「……」
「どうだ。私の同志になればお前を優遇することは事実だ。最もお前が敵になるのなら、同盟の名の元にお前たちを片づけることが出来るからな……」
「面白い。どうやら俺に仲間になれと言うのだな」
「あぁ。立場上は部下だが私はお前を同志としてみなすつもりだ……」
ケイは用意周到な男である。ゲンは敵に回ることを許されないうえ、仲間に加わった際のアドバンテージも用意している男だ。またゲンは力を得ることに手段を選ばない男である。同志を得る為の下準備が完全な男と、力を得る為に手段を選ばない男は不思議と合致するものであった。その証拠にゲンが彼に手を出したのだ。
「そうだ。私は大志を求め、お前が力を求める……悪くはないはずだ」
「用意周到な男だな……お前は」
「お前にそのような事を言われたくはない。だが同志になったからには我々の本拠地京都へ急げ。そうだな……2時間あれば十分だろう」
「分かった……」
「そうだ。それでいい。あと間に合わなかった場合、四戦士のアドバンテージが失われると思った方がいい」
「……」
ゲンへ話す事を話したらケイは次の場所へ向かった。それは3対1で死力を使い果たして起つ事すら難しく四つん這い状態で息を切らせたかのように体中が震えていた弟の元である。
「カズマ、お前はよくや……」
労いの言葉を掛けようとしたが、兄は見てはならない光景を目にしてしまったようである。腕に隠れて顔が見えないが、弟の顔の下には先ほどの夜叉の面と鬣が地面に落とされていたのである。
「兄上……」
「カズマ、その顔を見せないでくれ……お前が遭わされた地獄を考えるたびにあの時の私の非力さと不甲斐なさが甦る」
「兄上、そんなこと言わないでください!あの時の兄上は僕にとっては憧れで……」
「カズマ、今はその鬼面を装着していろ……お前の醜い素顔にされてしまった顔は味方に見せるべきではない。それに……私はお前が憧れていたあの力を見せることが出来なかった……馬鹿な兄だ」
「そ、そこまで兄上は申さなくても……」
「いや、愚かな兄に対し弟のお前はよくやった……お前のような弟に私の様な兄が罰を与える理由も資格もない。カズマ、お前への処分は白紙とする……」
「兄上……!?」
憧れの兄の口から語られた言葉は弟にとっては思ってもみない言葉だった。宿聖としての失態と無断出撃から自分への厳罰は避けられないと思っていたからだ。
「本当ならお前に報酬を与えたいが、先程の失態もあるから現状維持だ。だがお前が俺にとっては必要な支えでもあり弟でもあることは変わらない……それを忘れていたとは馬鹿な兄を許してくれ……」
「兄上……」
弟は般若の面をかぶりながら兄の元へ寄った。涙が仮面の元で流されているかどうかは分からないが、弟は鬼面越しに泣き叫ぶ。そんな弟には兄が不器用ながら厚く抱擁をかます。
「あれ、お師匠……何かあったっすか?」
「いや、何でもない……」
「あっお師匠! 待ってくださいっす!何処へ行ったっすか!!」
そして駆けよるユキムラを無視してゲンは一歩一歩を踏みしめていく。ケイとカズマの兄弟。その光景はかつて弟がいた頃の過去の自分に重なる所があったのだろうか。ゲンはただ彼の元から去りゆく事を選び、まだ兄弟の事情を知らないユキムラもとりあえずゲンへ就いていくことを決めた。
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「……俺とバントウがあのとき崖から落ちた所俺がライドロールでなんとか落ちずに済んだ所で俺は竜巻に包まれて……そこまで竜巻に巻き込まれてこの場にいる訳で……」
その頃、サタケは自分が置かれている状況が今一つ理解できなかった。分かることは先程の戦場からいつの間にか自分が騎士団の拠点ともいえる新潟にいたことである。
「サタケ! そんなに考えてもしかたがないんだな!! 少なくとも俺達はゲンだけでない他の何かにも負けたんだな!」
「ううっ……ごめんサタケ。俺、今度はそこまで調子に乗ったつもりはないけどあんなバカでかい奴が現れたら……」
「言い訳しなくてもいいんだな! それより騎士団の初陣として例えみじめな負けをしても新兵器を手にして調子に乗っていたとしても、お前は臆せずに相手に挑んで無事ここまで生きてきたから最低限の条件はこなしたんだな!」
「……俺がっすか?」
「そうなんだな! それなりの勇気があればお前はまだまだ強くなれるんだな! 俺達義闘騎士団は限界知らずなんだな!!」
その言葉と共にサイトは少し離れた位置を示して見せた。その場ではカキーザとナオが練習試合をしているのだ。最も互いの練習試合に隙はないようで、相手を殺さんとするばかりの勢いでドリルを回したり、アローを放ったりしているのである。
「す、すごい真剣勝負だな……」
「そうなんだな。カキーザは義闘騎士団のリーダーとしてのプライドとおいら以上にゲン達を倒す意気込みがすごいんだな、ナオだってミーシャ様の為に強くなる事に意地を燃やしているんだな」
「騎士団リーダーの誇りとミーシャさんの愛の為か……」
「そうなんだな! 騎士団は譲れない物があるから己を鍛えて強くなるんだな!! もちろん俺だって副団長として皆を支えていくだけの力をもっとつけないといけないんだな! カキーザやナオに比べたら戦闘は不得手だけど、だからと言って現状で満足してはいけないんだな!!」
「ひやぁ……すごい意気込み、俺大丈夫かな……」
「大丈夫なんだなサタケ、お前は元々のポテンシャルは悪くないんだな!お前にも譲れないものがあるじゃないか!」
「……」
やはり自信をなくすサタケにサイトはフォローを欠かさない。サタケにだって一応サムライドとしての意地と誇りがあり、アキの手で謀殺された仲間達の敵を討つ事が自分が強くなる為の理由だと改めて思い出したのだ。
「そうなんだな! 強くなるためには譲れない思いを持つ事! 忘れないうちに俺が徹底的に磨いてやるんだな!!」
「は、はい! でも殺すのは……」
「大丈夫大丈夫! 死なない程度に全力で相手になるんだな」
「ひやぁぁぁぁぁ……」
そしてサタケとサイトもまた組み手を始める。突如の第三者の介入の前に騎士団は壮絶な敗北を喫した。だがその敗北をばねにして最強を極めることが騎士団の面々なのである。彼らの怒涛の組み手を上空から眺めるのは赤と青の戦士である。
「トダカ、あの力を使って良かったのでしょうか……」
「あぁでもしないとあたし達が存在する理由がないだろ?争いを仲裁して均衡を保つ事は大陸時代も今も変わらないからな」
「それはそうですが……出来る事ならこの力を使いたくないです。私の寿命を早めることになりますから」
「それもそうだ……大陸時代とは違い私達が力尽きたらもう錠を継ぐ者はいないからな……ミツキ、お前があの三光同盟と並ぶ雄を形成することがあたし達の命運を決めることになる……お前はあの風林火山を越えなければならないが、それもまた点が決めた宿命なのだろう……」
その言葉と共にトダカ、ユーサイ。均衡を保つ二人のサムライドは姿を消した。力を求めるゲン、義を貫くミーシャはこの世界でも決戦を迎えねばならない存在であろう。そしてゲンは新たな力を手に入れようと一歩進めた。ミーシャが義を貫く事で勝利をもぎ取る日は来るのだろうか……ミーシャは1人飛翔門剣を握り、月を背にして真下へ剣を奮う。彼女なりに自分の失態への贖罪と己の非力の戒めかもしれない。
「あの男が乱入した事もあるが私はゲンを討つ事ができなかった。この命もないはずだ……私は義を貫く限りは強くあらねばならない……義を貫く事で私は自分を保つ事が出来るからだ……」
続く