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3日目①ーガリウスー

周囲から音が聞こえ、目が覚めるとシルクは俺にくっつくように座っていた。

こいつ何もわかってないんじゃないのか?


「ジーク、目が覚めた?」

「あぁ、おはよう」

「…おはよう」

「みんな疲れていたからね、自然に起きるのを待っていたんだよ」

「寝坊が、得意な私でも起きているのにジークは相当疲れてたみたいね!」


手を腰に当てて偉そうなメリッサと小さくため息をつくタヤ、苦労してるんだな。


「みんな、ダンジョンで一夜を明かしてしまったが、継続して潜れる状態じゃないから一度引き返そう」

「あたしのフランベルジュもジークの短剣も無くなっちゃったしねぇ」

「魔物が現れても極力逃げるよ、戻ってギルドに報告が最優先、鍛冶屋に行って装備を揃えよう」

「…わかった」

「今までの戦闘でメリッサか俺の武器になりそうなものは出たかな?」


答えは沈黙。

タヤとメリッサには後で地下に何があったか聞こう。

俺たちは急いでゲートに向かい、ギルドに戻った。


「着いたー!」

「ギルドへの報告は俺がするからみんなは飲み物でも飲んで待っていてくれ」


俺は受付のお姉さんの元へ行く。


「お疲れ様です、報告に来ました。」

「昨日は来られなかったのだギルドマスターも心配していたんですよ?お顔が見られて安心しました」

「ひどい目に合いましてダンジョンで1日を過ごしました。それを踏まえてギルドマスターに直接報告をしたいのですが」

「俺っちならここにいるぜ」


横から出てきたおっさんはカウンター越しに座り、そこに座りなと言わんばかりに指を刺す。


「お前らが最前線調査パーティだ、周りの奴らも参考に話が聞きたいだろ、話してくれ」

「別にいいですよ」


俺は昨日の出来事を説明した。

ボート小屋を発見したこと。

鍵が閉まっているが呼び鈴を鳴らしたらクマドリが壁をぶち破って現れたこと。

クマドリの行動、俺たちの立ち回り、絶技に関しては隠したままにした。

周囲の冒険者は俺たちだったら全滅だ、弱点はあるのか?ボート小屋は避けるか、と考察している。


「とんでもねぇな、よく生きて帰ってきた」

「辛うじてですよ、運が悪ければ全員死んでいました。」

「運でもなんでも生きていれば勝ちだからな」


ガハハと高笑いをするおっさん。


「報告はそんなことです、一昨日渡した素材は武具になりましたか?」

「…すまん、他の冒険者のものも含めて持ち帰ってくれたあれらは全て研究材料として回収されちまった」


「はぁ?」


思わず声が出てしまった。


「王の書状を持ってきた士官に全部押収されて鍛冶屋と仕立て屋には何も渡せてないんだ、本当に申し訳ねえ」

「シルク来てくれ」

「…呼んだ?」

「おっさん今の話をシルクにもしてくれ」

「あぁ…」


おっさんはシルクに先の内容を伝えた。

俺がシルクを見ると何も言わずコクンと頷いた。


「嘘ではないことは分かりました」


貰っているであろうお金も無償で貸す宿代、ただ同然の食事代、人件費、それらに当てていると考えれば納得だ。


「許せませんね」

「…なに?」

「僕たち冒険者は命をかけて調査しています、少し良い防具をつけても1日の戦闘でこんなにもボロボロになる、当たりどころが悪ければ僕は死んでいたでしょう」


左腕の服をまくり、膝から肩までクマドリの爪で引っ掻かれた後が生々しく残っていることを見せる。


「研究素材?大いに結構、でもそれは僕たち冒険者の生存率を高めることとどっちが優先なのか、考えずともわかることではありませんか?」


そうだそうだ!

俺たちは道具じゃない!

周りの冒険者も声を荒げる。


「お前らやめろ、それ以上は反逆罪で捕まっちまう…だとしたら素材は直接加工屋に持って行った方がいいだろう、だが今お前たちが利用している施設や食事のためにも、ギルドには素材を提供してほしい」


そう言ってギルドマスターは頭を下げる。

確かに恩恵に預かっているのは間違いない。

だがこのままバカ国にむざむざ金を渡していても冒険者が、苦しくなる一方だ。

しかし国とは関わり合いたくない。

そこで一策打つことにした。


「ギルマス、商業連盟にツテはありますか?」

「有力な加盟店ではないが知り合いはいるぞ」

「その人に伝えてください、ギルドの最前線調査パーティが連盟会長に会いたいと言っていると」

「な、会えるわけがないだろう!」

「会えますよ、儲け話ですから」

「…わかった、話が拗れたら俺が責任を取る」

「それでは急ぎよろしくお願いします、でないと他に交渉する必要が出てきますので」


そういい俺は席に戻る。

他にツテなどない。

しかし先見の目がある商人なら確実に食いつくと確信していた。


「どうだったー?」

「少ししたら呼ばれると思うからしばらくここで待機かな」

「誰かと約束してるのかい?」

「そんなところかな」

「…報告は済んだ」

「じゃあ鍛冶屋に行くのはもう少し後かな?」

「それも含めて待機しよう」

「おっけー!」


二十分後


「こちらにジークフリード様と仰る御仁はおられますかな?私はイリス商会長兼商業連盟会長をしております、ガリウスと申します」


ガリウスと名乗る長身のお兄さんが現れる。

もっと太ったおっさんを想像していた。


「釣れたな、よし、行こうか」

「大物を釣り上げたね、面白くなってきたよ」

「あの人チョーイケメンじゃん!」

「…ジークの方がカッコいい」


俺たちは立ち上がってガリウスの面前に立つ。


「私たちが最前線調査パーティです、本来伺うところをお呼びだてしてしまい申し訳ありません」

「敬語など堅苦しいのは結構です、これから皆様には一儲けさせていただけそうな気がしますので」

「ギルドも巻き込んだお話をしたいのでギルドマスターにも立ち会っていただいても?」

「それは話が早く進みそうで何より、では参りましょうか」


俺たち4人とガリウス、おっさん、おっさんの知り合い、計6人は馬車に乗り移動した。

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