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2日目④ーボート小屋ー

目の前には眠っているシルクの顔があった。

焚き火の燃える音が響き、ゆらめく炎がが周囲を照らしている。

幼く整った顔で小学生と言われても納得してしまうかもしれない。

この寝顔は守ってあげたい。

体を起こし周囲を見渡すとボート小屋の真ん中にあった囲炉裏で焚火がされている。

タヤとメリッサが見当たらない。

外はすでに夜、外で出ることも、シルクを置いていくこともできない俺はシルクの頭を撫でていた。


「よく頑張ったよ、シルク」

「俺たちも頑張ったぞ」


地下室の扉が開きタヤとメリッサが階段を登って上がってきた。


「キスの一つでもするかと思ったのに、残念」

「だから2人はそう言う関係じゃないって言っただろ?」

「タヤは女心がわかってないなぁ」

「そんなことより今の状況を説明してくれ」


話題を変えよう。


メリッサが最初に目を覚まし、日が沈むのを確認してここで一夜を過ごすこと決めた。、

積まれていた薪にファイアバレットで火をつけ、何か食糧はないかと探そうとしていた時にタヤが目を覚まし、タヤが全員の傷を癒してくれたらしい。


2人は地下室の存在に気がつき、魔物が現れないことから安全と判断し地下室を探索、食糧は何もなかった。


小屋に戻ろうとするとシルクの泣く声に気がついき慌てて戻るとシルクは俺にしがみつき泣いていた。

タヤとメリッサが驚いた顔でシルクを見ると、シルクも驚いた顔をしていた。

シルクはメリッサに抱きつき号泣。

タヤとメリッサがやられてしまい、俺はシルクを運んできた後倒れたのだと思ったらしい。

泣き疲れたシルクは俺の横に寝転がり向かい合うように眠りについたらしい。

再度地下の探索に行って戻ったのが今らしい


「シルクのあんな表情初めてみたわよ」

「僕もシルクの感情があんなに表に出たのを初めてみた気がする、僕は友情だと思うけどメリッサは愛情と恋心だって言って聞かないんだよね」

「タヤは子供すぎるのよ」

「メリッサの発想の方が子供だと思うけどね」

「俺はノーコメントで、生きてることを感謝することにするよ」


実際良く生き残れた。

全滅してもおかしくないくらいには絶望的な状況だったがよく打開できたと思う。


「あたしぶっ飛ばされた後気がついたらここにいたからあんまり実感ないのよね」

「さっきも言ったけど間違いなくみんなの力だね、1人でもかけていたら死んでいただろうね」

「危険な目に合わせてしまった、リーダーの俺の責任だよ、すまない」

「勝手に小屋に入ろうとしたり呼び鈴を鳴らしたりしてたのは私たちよ、ジークが気づいてくれなかったら間違いなく死んでいたわ」

「そうだよ、ジークはリーダーとして背負すぎだよ、僕たちは仲間なんだ、背負わせてくれよ」


初めて仲間の温かさを感じた。

1人でゲームをしていた俺には心が温まる経験は滅多になかった。

こんなにも心地よい感覚なのか。


「ありがとう、シルクが目を覚ますまでもう少し休憩することにするよ」


俺は寝転がりシルクの寝顔を見つめた。

こんな小さな体で限界まで耐えてくれたんだな。

シルクの寝顔を見ていると瞼が落ち、俺の意識は途切れた。




「…ジーク、起きて」

「…シルク?」


シルクに体を揺さぶられ目を覚ました。


「タヤとメリッサは食べて眠った」

「ん…ご飯?」

「クマドリの肉、トドメを刺した私だけが入手していたみたい」


そう言って炙ったクマドリの肉を俺に手渡してくれた。

少し怖いので鑑定。

【クマドリの肉 体力最大値5永続上昇】

熊肉なのか鶏肉なのかどっちになるんだろうか。

顔は鳥、首から下は熊だからそれぞれで肉が異なるのかもしれない。

なんて考えながら一口。

うまい。

そして最大HPが5増えた。


「このお肉…ステータスがアップするみたい」

「こんな素材、というかアイテム初めて見たよ」

「メリッサが半分以上1人で食べた…」

「1人で?4等分になってないのか」

「メリッサの胃袋はブラックホール…」


俺とシルクは笑いながら食事を済ませた。

今までにない特殊な素材も今後増えることになりそうだ。

鑑定でしっかり確認するようにしよう。


「私ジークが好き」

「俺もだよ」


突然の発言に脳死で言葉を返してしまった、と言うことは俺はシルクに惹かれていたのか?

肉を食いながら「俺もだよ」は告白への返答としてどうなんだ?


「シルク…あのさ」

「大丈夫、ジークの言いたいこと分かってる」


この流れはわかっていないやつだ。


「私はジークのことが好き、ジークも私のことが好き、でもタヤとメリッサに迷惑をかけたくない」


あれ、ちゃんとわかってる

なら恋人にならない方がいいってことも理解してくれているか。


「だから私たちは恋人にはなれない」

「そう、わかってくれてありが…」

「でも体だけの関係なら大丈夫」

「大丈夫じゃない!?全然良くない!?」


思わず現世で好きだった配信者と同じイントネーションが出てきしまった。


「…ダメってこと?」

「そんな捲れた顔して上目遣いで言われてもダメです。」

「じゃあ私が他の人と付き合うことになってもジークはいいの?」

「そう言う攻め方はずるいんじゃないかな?」

「別にずるくない!?」


発音を真似するな。


「じゃあ考えとく、戻るまで何があるかわからないんだ、気を引きしめよう」

「…わかった」


少し突き放すような言い方になったがシルクにもわかって欲しい、最後に悲しい別れをすることになるかもしれない。

俺はこの世界の人間ではないのだから。



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