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恐れ

「話をしにきたけど、大丈夫?」

「どうぞ」


セレンの許可が出たのでテントの中に入るとそこはもう女の子の匂いがした。

結構歩いたし銭湯もしているのに女の子の匂いがするのは感動である。


「先生?」

「ああごめん、じゃあミーティングといこうか」


ノワールは両手の拳に力を入れて気合を入れた。

ふんすっ!と言う声が聞こえた気がした…?

いや…間違いなく言ったな。


「モニカとノワールは戦ってみてどうだった?」

「仲間に魔法が当たらないようにするのが精一杯です!」

「私も…動きながら戦うのはまだ無理そうです」

「まだってことはそのうちできると思っているって事だよね?なら十分だよ」

「どうしても動きが固くなってしまって…」


レベル差による圧があるから、そう思っていた。

今からは検証のしようがないけど前の世界では自分のレベルが魔物より高いとき敵は怯んでいたが、この世界では敵が怯んでいない。

魔物のレベルが高い時は圧がありうまく動けなかったことだし。

こっちの世界ではそう言ったものがない、純粋に彼女たちが戦闘に慣れていないだけなのだと思う。


「命の奪い合いをするのは初めてだよね、敵の殺意に怯んでいるんじゃないかな」

「…すぐに慣れる方法はありますか?」

「実践慣れしかないんじゃないかなぁ…」

「先生の方が魔物より強いんだから先生の殺意に耐えられたら怖いものなんて無いんじゃない?」

「それだよモニカちゃん!」

「却下、殺意の強弱調整なんてやった事ないし…みんなに怖がられるのも…」

「お願いします!」


セレンは深く頭を下げた、今日のミスがよほど悔しかったのだろう。

向上心は認める、3人とも成長しようとする気概はひしひしと伝わってくる。

そんな希望を打ち砕いてしまうんじゃないかと思って賛成はできなかった。


「お願いします!」


頭を下げたまま再度頼まれてしまった。


「わかったよ…3人とも怖がらないでよ?」

「う…無理かも…」

「怖くても先生は先生です」

「よろしくお願いします!」


殺意のコントロールってどうやったら良いんだ?

うーん…殺す殺す…頭の中で思うだけじゃ変化がない。

武器を持ってみたらどうだろうか。

短剣を手に持ち、3人の首を刎ねる想像をしてみたが恐怖を感じているようには見えない。

これも違うか。

そもそも殺意が湧く時はどんな時だろうか。

自分が危険な時よりも大切な人が危険な目に合っている時の方がきっと力が出る。

そうなると…想像してみるか。

俺は下を向き目を閉じる。

俺は縛られていて身動きが取れない、目の前で大切な人が暴漢に襲われている。

大切な人が泣き叫ぶ、暴漢が俺をみてニヤリと笑う。

服を破られ、嬲るように体を弄り、男の精が放たれた瞬間。


「殺してやる」


短剣を待つ右手に力が入り、自然とその言葉が出た。


「先…生…?」


声に気がついて俺は我に返り、目を開け視線を上げると3人は体を寄せ合いながら座り込んでいた。


「殺意…出てた?」


セレンは震えながら頷いた。

殺意はしっかり出ていたらしい。

いつから出ていたのかもわからないが、どこからどうみても怯えている。

頼まれたからやったのに罪悪感を感じてしまう。


「私たち…殺されないですよね?」

「当たり前だ、それより大丈夫?」

「怖くて先生の顔が見れません…」

「慣れれそう?」

「絶対無理です!」


ノワールが大きな声を出して否定した。

となるとレベルを上げる以外に方法はなさそうだ。

俺が強めの敵と戦ってパワーレベリングをした方が早そうだ。


「レベルは簡単にあげられるけど問題は戦闘経験が積めないことなんだよなぁ…」

「わ、私は!…慣れたい…です」


感心した。

恐ろしい殺意を感じても折れない、克服したいと言う心構えは尊敬するべきだ。

しかしなんだこの匂いは…

俺は鼻をスンスンと鳴らし匂いの元を探ろうとした。


「先生出てって!」


モニカの大きな声に驚きつつも何となく察した俺は何も言わずにテントから出た。

外は日が落ちて暗くなっていた。

食事の準備でもしておこう。


焚き火の上に網を敷いたテーブルを乗せビーフシチューを温めた。

鍋から漂う香りにつられて3人がテントから出てきた。


「さっきはすいません…」

「俺も配慮に欠けていたよ、ごめん」


開口一番に謝られてホッとした。

モニカが怒ってノワールも怒れば教えるどころではなく今すぐ出て行けと言われても仕方ないだろうと思っていたからだ。

全員が木の椅子に座り、俺はビーフシチューをお皿によそい、全員に配った。

食事をしていると世間話になった。


「師匠はどうやって殺気を放ったんですか?」




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