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囁きの海岸

【囁きの海岸】にたどり着くまでに10回近くの戦闘を行った。

彼女たちも今までに戦闘をシミュレーションして戦い方を考えたことはあったみたいだが、初めての隊列に戸惑っているようだった。

それでも少しずつ慣れて来ているのを感じる。

モニカはだいぶ戦闘に慣れているようだった。

と言うのも、モニカの放つ魔法は一直線にしか進まないため、俺は詠唱に合わせて位置を変えたり、本来当たらない魔法が放たれてから敵を誘導して敵に命中させているからだ。


セレンにそれだけの技量は無いため、ノワールとのコンビネーションに苦戦している。

そのうちペアを交代しても良さそうだと思う。


「師匠」


セレンは俺のことを師匠と呼ぶようになった。

ノワールはジークさん、モニカは先生と呼ぶ。

統一感がないがそれもまたよし


「どうかした?」

「師匠の方がお強いのにどうして私な先に敵を捉えることができるのでしょうか」


セレンの索敵は俺よりも鋭い。

それにはちゃんと理由があるのだが…説明をあまりしたく無いのにも理由がある。


「女性は男性よりも感覚が鋭いんじゃないかな、敵の探知範囲も俺より広いみたいだし」

「感覚…ですか」

「俺は手を抜いたりはしていないよ、それがセレンの実力ってことさ」


セレンは顔を上げて嬉しそうな顔をした。

実のところ男性も女性も索敵能力に差はない、レベルの強弱も関係ない、問題があるとするなら索敵そのもののせいだと言える。

索敵は敵意だったり音を拾うことに優れている。

俺の場合、音を拾おうと集中した時にセレンの息遣いやモニカの澄んだ声の相性が耳元で聞こえるのだ。

余計な音や声を切り捨てて集中出来ればセレンと同じように索敵できると思うのだけどもはっきりと言おう、なんかエロくて集中できない!

だから適当に誤魔化す!


「そろそろ到着するね!」

「お姉ちゃんは海を見てはしゃぎすぎないようにね」

「わかってるってばー」

「砂に足を取られないように気を付けましょう」


良い心がけだ。

ゲームと違って俺も気を付けなければいけないな。


「セレンは敵の攻撃を回避し続けること、キツイと思ったら距離を取ること、その際ヘイトがノワールに行かないようにね、攻撃は一切してはいけないよ、ノワールは魔法を正確に当てる瞬間を見逃さないこと、魔法の無駄撃ちはセレンの負担を大きくしてしまうからね」

「はい!」

「わかりました」

「モニカは逆に魔法をどんどん使ってもらうよ、MPが2割を切ったら回復するまでゆっくり休んでて良い」

「どうして魔法を使い続ける必要があるんですか?」

「魔法を行使し続けるとレベルが上がった時に伸びるステータス値が高くなるんだ、いろんな魔法を早く覚えるためだね」

「えー、ずるーい!」

「明日はモニカとノワールはペアを交代してもらうから、それまでにレベルを上げて初めてのペアでも動けるようにするんだ」

「わかった!」


【囁きの海岸】に到着して俺たちは海岸沿いを歩く。

セレンが歩みを止めて俺たちに静止するように合図する、確かに近くにきているな。

姿は見えない、これは…


「砂の中です!」


セレンの声で俺はモニカを抱き上げて後ろに下がった。

セレンは砂から這い上がってくる巨大なカニを前に怯んでいる、これは良くない兆候だ。


「モニカ、魔法を詠唱して待っていてくれ、俺が2人を後ろに下げる」

「わかりました」


モニカを下ろし、俺はセレンに駆け寄る。


「セレン、一度ノワールと下がるんだ」

「で、ですが」

「いいから」


セレンは何も言わずにノワールの手を引いて後ろに下がる。

カニは大きく鋏を振り上げて俺を叩きつけようとするが、俺はそれを短刀一本で楽々に受け止める。


「セレン、今からセレンのスピードで攻撃を交わし続けるからよく見ていてくれ」


俺はそう言うと鋏を弾き返し次の攻撃を待つ。

薙ぎ払いを屈んで避け、叩きつけは少し横に避けるだけ、カニが前に歩いているのは不思議な光景だが、カニだと思わなければ違和感もない。

後ろからモニカの魔法が飛んでくる。

俺は攻撃を避けながらも横目でモニカの魔法のタイミングを見ていたため、無言で放たれた魔法を避け、その先にいるカニを命中させる。


「格上の相手でも怯んじゃダメだ、冷静に避けて隙を作って味方に攻撃してもらうこと、自分で攻撃しても良いけど今は避ける練習だな」


俺はひたすらに避け続け、モニカの魔法は敵に当たり続ける。

魔法が10発当たったくらいで敵は消滅した。


「今くらいの動きならセレンでも出来ると思うけど、怖い?」

「自分より強い敵と対峙すると体が思うように動かなくて・・・」

「もし自分がやられたら次はノワールが危険になる、わかるよね?」

「…はい」

「ノワールとセレン、どちらが近距離戦闘しなきゃいけないかわかるよね?」

「はい!」

「じゃあ後ろからもう一体敵が来るからその相手をするんだ、ノワールは魔法で援護だ」


俺はモニカを抱えて後ろに下がり、離れたところで二人の様子を見る。


「セレンちゃんは大丈夫ですか?」

「技術があればレベル差があってもその差を埋められるからね、頑張ってほしいな」

「先生、質問の答えになってません…」

「慣れないと無理だろうね、本当にまずそうなときは間に入るよ」


セレンはカニの大振りを短剣で受け止めるが勢いに負けて吹き飛ばされる。

砂まみれになりながらも受け身はしっかり取ったがフォローに入らないと次の一撃は避けられないだろう。

カニの薙ぎ払いを俺は間に入って受け止めた。


「ノワールは攻撃を続けて」

「はい!」


ノワールもモニカも動きは悪くない、魔法の発動タイミングも少し拙いが味方に当たらないようにしているのが伝わってくる。

セレンには難易度が高すぎたのかもしれない。

ノワールの魔法でカニは消滅する。

俺は格上との戦闘について話し合うことにした。


「一度セーフエリアに入って先にキャンプの準備を進めよう」

「はい!」


ノワールはいつも元気いっぱいだ。

セレンは自分の不甲斐のなさが悔しいのか下唇を噛み締めている。

目的地に着いた、砂浜の真ん中に何故かある小さな草原。

どんな環境なんだと不思議ではあるが、ここではモンスターに襲われることがないエリアになっている。


「ここがセーフエリアだね、テントの設営はしておくから3人は休んでて良いよ」


アイテムボックスから折り畳みの椅子を出して3人に座らせる。

俺は大きめのテントと小さめのテントを一つずつ設営し、大きい方を3人に使わせた。


「あとで話をしにそっちのテントに行くから、また後で」


そう言って俺はテントに入った。

パーティも明日で解散になるかなぁ…。

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