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10日目①ー疑ー

この二日間、俺は今後どうするかをずっと考えていた。

全て仮説になるが、考えをまとめるとダークエルフのリリアもしくはその奥にいるダークエンジェル、そのどちらかが転生者だという結論になった。

大まかに理由は3つある。


1つはリリアが遺跡と廃鉱山に現れたことだ。

本来いるエリアを離れて別のマップに行くことはこの世界の仕様として可能なことなのだと思っていた。

しかし考えてみれば外に出られるのであればそのまま人間を滅ぼせるはずだ。

わざわざ遠回しに冒険者を狙う理由はわからない。


そして他のマップのボスが外に出ない理由、それは出られないからではないだろうか。

今の人類はレベルが低い、まともに戦っても勝てるわけがない、しかし攻めてはこない。

だとすればなんらかの理由で出てこれないのではないかと考えた。


2つ目はリリアが塔を離れることができた理由だ。

リリアは種族がエルフ、理屈はわからないがダークエルフに進化?変化?している。

つまりは扱いが魔物ではなくエルフと同じだから外に出られたのではないか。

しかしゲーム時代ダークエルフは常に監視されている。

ダークエルフとは二度戦う方になるのだが、一度目は負けそうになり逃亡する、二度目は逃亡を試みるが主人であるダークエンジェルに2度も負ける無能はいらないと一撃で殺されていた。

リリアが外に出ていれば気が付いているはずだ。


リリアがダークエンジェルを説得しているパターン、こっちだとリリアが転生者になる。

ダークエンジェルがリリアに命令しているパターン、こっちだとダークエンジェルが転生者となる。


この2パターンのどちらかでないとリリアの行動に匙が通っていない。

この推測に間違いはないと思う。

であれば会話が成り立つかもしれない、一瞬で殺されるかもしれない、それはわからない。


3つ目は宝石も石板もあるべきところになかったと言うことだ。

クマドリから手に入る宝石。

ボート小屋の中で入手できる石板。

ケイブドラゴンとなってしまったドラゴンパピーが落とす宝石。


1つも見つかっていない理由として、リリアが先回りして回収していたとするのであれば、さらに転生者の可能性が上がる。


ダークエルフの塔に行く事をシルクに話したら反対されてしまったが、何となく反対されることはわかっていた。

二日間の説得がうまくいってしぶしぶではあるが了解をもらった。

もちろん俺の過程が間違っている可能性、あっていても殺される可能性は否めないがそれでもリスクを冒すだけの価値はある。

転移クリスタルの準備も万端だ。


もともと考えはまとまってはいた。

シルクを説得するために二日間はかかるだろうとも思っていたし、説得を試みては夜にイチャイチャ、説得を試みては夜にイチャイチャとずるい手段に出たがそれも功を講じたんだろう。


「シルク、準備はいいか?」

「絶対に無理しないで、やばいと思ったらすぐに引き返すんだからね?」

「ああ」


俺たちはダークエルフの塔に向かった。

以前俺が一人で来た時と同じように、入り口を開けた際に広がるエントランス。

俺とシルクは手をつなぎ一歩踏み出せば転移ゲートにより脱出できる位置に立っている。


「よく来たな人間、ん?この前の人間か?」


声とともにダークエルフがレッドカーペットを歩いてやってくる。


「この塔に立ち入ることは許さないが、死にに来たのか?今なら見逃してやってもいいぞ?」

「こっちにも事情があってそういうわけにはいかないんでね、話をしに来た」

「貴様の事情なぞ知らん、話をするつもりもないな」


そういうとリリアは細剣を取り出し剣先を向けてきた。


「話をさせてくれ、リリア」

「貴様・・・なぜ私の名前を知っている」

「俺たちの会話はダークエンジェルも聞いているのか?だとしたら話がしたい」

「たかが人間が何様のつもりだ!」


リリアがフェンシングのような構えを取った時、その声は聞こえた。


「おやめなさい、リリア、話を聞いてあげようじゃありませんか」


頭上から黒い天使の羽が降り注ぎ、天井をすり抜けて降りてくる堕天使。

リリアは頭を垂れている

レベル差が開きすぎているからなのだろう、この圧力の前で立っていることすらできそうにない。

俺とシルクは膝から崩れ落ちる。


「あらあら、威勢はよかったですがどうやら私の前では小物のようですね」


宙を舞っていた黒い羽根がダークエンジェルの体の周りに集まり、凝縮され黒い腕輪になった。

彼女がそれを身につけたとたん、発していたオーラが小さくなった。


「彼らは話がしてくてここに来たのでしょう、であれば話せる状況にしてあげるのも優しさ、封印術を自分にかけることも厭いません」

リリアはずっと黙っている。


あの腕輪は封印の腕輪なのか。

俺たちとの力量差があり過ぎる、世界は広い。

というか問答無用で殺されなくて本当に良かった。


「初めてのお客人ですからね、私の部屋に招待しましょう」



彼女が魔法を唱えると俺たち四人は一室に飛ばされていた。


「リリア、全員分のお茶を準備しなさい」

「…かしこまりました」


俺とシルクは椅子に座り彼女と向き合う。


「私はダークエンジェルのリリス、この塔の主です」

「俺はジークフリード、冒険者だ」

「私はシルク」

「ジークフリードにシルクですか、それで話というのは?」

「あなたが理性的な人で良かった、一つだけ質問させてくれればいい」

「その質問には答えても答えなくてもよいのですか?」

「結構だ」

「いいでしょう、どうぞ」


間違っていたらすぐに転移クリスタルを使って逃げる。

まともに戦っても勝ち目はない、この場に連れてこられたのも逃げられなくしている可能性がある。


「俺たちは別の世界から召喚された人間だ、リリス、リリア、どちらか別の世界から召喚された、なんてことはないか?」


リリスは無言だった。

リリアが運んできたお茶を一口飲んでようやく言葉を発した。ティーカップなんてあるんだな。


「正直驚いたよ、同じ境遇の人がいるなんてね、でも、真実かどうかは信用はできないな」


話し方も普通になった、本当に転移者かもしれないと淡い期待をする。

リリアはリリスの横に立ち俺を睨んでいる、主人の前で警戒をする犬みたいだ。

この二人の関係性はどういったものなのだろうか。


「俺たちは元の世界で名前を周りにいじられている、あなたたちもそうなんじゃないのか?」


リリスは驚いてリリアの顔を見た。


「・・・信じるよ」

「リリス様、こいつらのいうことを信じるのですか?」

「リリア、君は予定通り次のマップに行ってくれ、ここは僕が話す」

「しかし…」

「リリア、命令だよ」

「分かりました」


リリアは彼女に一礼をして姿を消した。

これで話がようやく始められる。



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