1000年後の世界
俺の名前は田中ジークフリード、本名だ
親がキラキラネームを付けたことにより小中高と名前をいじられてきた。
高校生の時に不登校になり、それから御年30歳、ずっと引きこもっている。
親が資産家なこともあり生活には困っていないのが唯一の救いではある。
「これでこのゲームもクリアかぁ」
サバイバルクラフト、ローグライク、ロールプレイング、シミュレーション
いろいろなゲームをやってきたが最近はレトロゲームといわれるものに手を出している。
近くにおいてある水をぐっと飲んで次のゲームは何にしようかと悩んでいた。
ネットの友達なんて作る気もしないしソロでやっていたほうが気楽だ。
「久しぶりにあれやるか・・・」
今は昔のゲームもダウンロード版があるおかげでハードを買わなくていい。
無駄に高いから助かっている。
起動したゲームはブレイズフロンティアというゲーム
発売日が1990年代のゲームということもあってたくさんの要素が含まれているわけでもない
ダンジョンに潜ってレベルを上げて、ボスを倒してクリスタルを集める。
全部集めたらラスボスへのダンジョンが開かれ、倒したらクリア。
単純なゲームだがダンジョン内のギミックがしっかりしていて好きなゲームだ。
「発売から数十年たっても好きで遊ぶユーザーがいるなんて開発者冥利に尽きるって思ってるのかなぁ」
なんてことを言いながらゲームを起動する。
「まったくもってその通りじゃ」
どこかからか声がした。
そんなわけはない、家には俺しかいないのだから。
「お前さんのようにブレフロを愛してくれているユーザーがいるから、わしは嬉しくて嬉しくて・・・」
顔面涙と鼻水でぐしゃぐしゃのじいさんがパソコンのモニターから出てくる。
俺は思わず驚いて椅子から転げ落ちた。
「驚かせてしまってすまんのぉ、わしゃ神じゃ」
「か、神様?そりゃこんな現象・・・信じますけど・・・」
「今日がこのゲームの発売日から30周年じゃと知っておったか?」
「い、いえ・・・」
神様を名乗る年寄りは宙に浮いたまま俺と会話を続ける。
「実はこのゲームを作ったのはわしなんじゃ、そんなに売れなかったがゲームの出来には満足しておる」
「は、はぁ・・・」
「それで、いまだにこのゲームを楽しんでくれている子供たちをこの世界へ召喚してやろうと思っての」
「えぇ!?困りますよ」
「ゲームをクリアしたらまたここに戻してやってもよい、だからちっと遊んでみんか?」
そういう条件なら悪くない。
だいぶ昔にこのゲームをやりこんだから宝箱やボスの強さ、ダンジョンのきみっくまで頭の中に入っている。
そういう意味では楽に楽しく攻略ができるんじゃないか?
「そういう話でしたら・・・せっかくの招待、受けさせていただこうと思います。」
「ほっほっほ、それじゃあ早速だがキャラクターメイキングをしようかの」
俺の部屋から一瞬で風景が変わり、ゲームのクリエイト画面のような場所にいた
「説明は必要かの?」
「いえ、たぶん大丈夫です」
最初は職業選択
ファイター、ドワーフ、シーフ、ハンター、エルフ、ウィザード、フェアリー、プリースト
職業は8つ
俺は迷うことなくシーフを選んだ。
そのまま名前の入力が始まる。
「判断が速いのぉ、こりゃ楽でいいわい」
神様が話しているのを横目に俺はキャラクターの制作を続ける。
守護属性は・・・どれも大して変わらないんだよな、属性ダメージ-25%なだけだし。
火、水、土、風、光、闇、邪、無
無?そんな属性なかったけどな・・・これにしてみるか。
次にボーナスポイント選択画面に来た。
これが時間かかるんだよなぁ・・・
「これどれだけ、かかってもいいんですか?」
「気が済むまで、と言いたいところじゃがエクストラボーナスを10回連続引くまでとか言われたらわしも困るしのぉ」
ボーナスポイントは3枚のカードを引き、その数字の合計がそのままポイントになる。
ただし、3枚とも同じ数字だった時、エクストラボーナスをして加算してさらに3枚引ける
数字は1~6
例えば6,6,6を引いた場合加算し、さらにカード3枚引ける、それがまたぞろ目だった場合さらに~
といった感じになる。
ちなみにエクストラボーナスになる確率は1/36、n連続だとn乗になる。
「一回こっきりでエクストラボーナスを3回、何の数字になるかはランダムじゃ!」
「わかりました、それでお願いします」
3回なら粘れなくもなかったが俺も早く中の世界を見てみたいということもあったので我慢した。
運に任せてみるのもいいだろう。
一回目、4,4,4
悪くない
二回目、6,6,6
最高だ
「おぬし運がいいのぉ」
三回目、4,4,4,
十分だ
かなりいい数字を引き当てれてかなり満足している。
ボーナスポイントが44
俺は運に24振って攻撃力と防御力に12ずつ振った
このゲームの運は敵のアイテムドロップ確率に関わってくる。
しかも運はレベルが上がった時にランダムで上下するが、初期ステータスの運が高いと上昇の確立もかなり上がるというものだ
ゲーム内で運を上げるアイテムは2種類あり、手に入れられることはできるが
・-3から+3、上がるか下がるかは50%
・+1から+5
の二種類あるが、確定で上がるアイテムはラストダンジョンの箱からしかでず、モンスターのドロップはないといった仕様のためきつすぎるのだ。
「それでは、ちょっとしたプレゼントをしてからお主には旅立ったもらうぞ?」
「わかりました。」
「プレゼントはチュートリアル説明書と特殊能力じゃ」
チュートリアル説明書、これはでかい
本来1~4人のパーティ編成でできるゲームだ、自分のキャラクターしか作れないということはどこかで仲間を集めることができる場所、もしくはイベントがあるはずだ。
説明書があるのはありがたい
「特殊能力というのは?」
「ブレフロの中に存在する魔法があったじゃろ、レベルを上げて覚える、石板から覚える、この二つじゃが一つだけ魔法を最初から覚えているという感じじゃな、ただしHPやMPの使用は必要じゃ」
「なるほど、提案があるのですがよろしいでしょうか」
「む?なんじゃ?」
「ゲーム内にいたNPC鑑定士、あの鑑定は魔法に含まれますか?」
「そんなことよく思いつくのぉ、いいじゃろ、おぬしの特殊能力は【鑑定】じゃ」
俺の体が少しだけ青く光った、能力をもらったということだろうか。
「容姿はどうする?」
「この世界の成人と同じ年にしてください」
「であれば18歳じゃな、よし、それでは楽しんでくるのじゃ!」
神様がまばゆく光りだし、目が眩んだ。
光が治まり目を開けるとどこかの部屋の一室にいた。
「ここは・・・」
周囲を見渡すと鏡があり、目が留まった
服装は皮の装備か?初心者冒険者のような恰好をしている。
今どういった状況なのかまったくわからない。
部屋から出ようか悩んでいるとノックの音がした。
「お待たせしました。ジークフリードさんこちらへどうぞ」
「あ、はい」
返事をしたはいいが状況がわからないから少し困惑してしまう。
まぁ悪いようにはならないだろう。
部屋を出るとめちゃくちゃきれいな女性が待っていた。
「お待たせしてしまって申し訳ありません、全員に丁寧に説明していますのでお時間がかかってしまいまして・・・」
「いえ、大丈夫です」
「ギルドマスターがお待ちです」
案内された部屋に入ると40代ぐらいのいかついおっさんが椅子に座って待っていた。
まじでこんな海賊みたいな人がいるんだ
「おう、座ってくれ」
「あ、はい」
椅子に座っておっさんと向き合う
「ようこそ冒険者ギルドへ、といっても先日出来たばっかりなんだけどな」
ガハハと声を上げて笑うおっさん
「先日出来たんですか?」
「なんだお前王宮のお触れを見て冒険者登録に来たんじゃないのか?」
変に疑われるとまずいな
「両親が他界してつつましく生きていたんですが、知人から稼げる仕事になるかもしれないから冒険者になってみないか?と言われて登録に来たんです」
「なるほど田舎からの手稼ぎか、一発逆転を狙えるかもしれないって読みだな?いいぞーそういう好奇心からの行動はおっさん好きだぞ!」
なんとか誤魔化せたかな
「良ければ詳しく聞かせてほしいのですが」
「ここから近い湖畔にダンジョンができたらしくてな、1000年前に倒されたはずの魔導王ってやつが復活したのが理由じゃないかって噂がたってな」
「第一回調査隊100人が湖畔に行ったらしいんだが指揮官を残して全滅、兵士たちは死ぬと同時に土に還ったそうだ、熊の化け物が一瞬で全員を薙ぎ払ったんだとよ、指揮官は帰ってきてすぐ自ら命を絶ったらしい。故人を悪く言いたくはないがまぁ癖の強い無能集団を送り込んだって噂だったしな・・・」
「それからどうなったんですか?」
「王宮は兵士を派遣するのは割に合わないから1000年前と同じように冒険者を募って調査に向かわせることにしたのさ」
「1000年前の情報とか残ってないんですか?」
「四人の勇者が魔導王を倒した、くらいしか分かんねえんだよな、記述も残ってねえし」
「そうですか・・・」
「で、今こうして面接しているんだが・・・興味津々だな、おっさんは嬉しいぞ」
「他にも冒険者はいるんですか?」
「あぁ、生活に苦しい人たちは冒険者になりたいってやつが多いな、でも大体が複数人集まってくるからお前さんみたいに一人で来る奴は珍しい」
「パーティーの募集とかはどこでしたらよいのでしょうか」
「一階が冒険者への依頼を張り出す場所になっている、まぁ今は調査しかねえんだが、そこなら人がいるんじゃねえか?」
「わかりました、あのお名前をうかがっても?」
「カンスだ、ギルドから支給するものがあってだな、これを持って行ってくれ」
そういってカンスが机の上持ってきたのは小さな剣と皮のベストと指輪だった。
「これは?」
「手ぶらで行くってわけにもいかないだろ?これは餞別だ」
「指輪は何ですか?」
「これは王宮に大量に保管されていた古代文明の指輪らしい、なんでも魔物を倒した際に手に入る素材が自動で収納されるらしい、理屈はわかんねえがな」
ゲームの時のシステムを指輪で補っているってところか
「わかりました、一度パーティーメンバーを募集して湖畔に行ってみたいと思います」
「おう、ギルドの宿は自由に使ってくれていいからな、やばいと思ったらすぐ帰って来いよ」
部屋を後にして俺は一階においてある椅子に腰を掛ける。
整理するとゲームの時から1000年立っていて人類は平和ボケしていて、強い人はいない。
パーティーは5人以上でも組めるようになっている。
死んだら終わり、おそらく蘇生もない。
ゲームと一緒で最初は湖畔からの攻略なるみたいだな
ステータス画面をどうやって見ればいいのかわからないのが懸念点ってところか
周りはお仲間だらけって感じだな、大体がチームを組んでいるように見える
これじゃチームを組むことも難しいそうだな。
「ちょっといいか?」
誰かが後ろから声をかけてくる
振り返るとそこには一人の男の子と二人の女の子がいた
年は同じくらいだろうか、ハーレムか?むかつくなこいつ
「何か用ですか?」
「僕はタヤっていうんだ、君も冒険者かい?」
「そうだけど」
「僕たち田舎から出てきてて、もう一人くらいメンバーが欲しいんだけどパーティーに入ってくれないかな?」
怪しすぎるけど話だけは聞いてみようか
「とりあえず座らないか?」
三人を座らせて話を続ける
「なぜ僕を?」
「あなたが若くて一人だったから」
「あーえっと彼女は説明が苦手でして・・・僕のほうからいいですか?」
「よろしく」
「先ほども名乗らせてもらいましたが、僕はタヤ、プリーストです」
「そして金髪のやる気のなさそうな彼女がウィザードのシルク」
「・・・どうも」
「紫の髪の彼女がエルフのメリッサです」
「こんな見た目してるけど一番年取ってる自信はあるんだからね!」
それは自信満々でいうことなのか。
「君を誘った理由は2つ、僕たちのパーティーにはフロントがいない」
確かに、バランスのいいパーティーだけどファイターかシーフが欲しいだろうな
「もう一つは同じ年くらいのソロがいないことなんだ、ほら二人は可愛いだろう?変な輩に付きまとわれても困るからさ」
「君たちは恋人とかじゃないのか?それじゃなきゃハーレムでも作っているのかと思ったけど」
「同じ村の出身ってだけだよ、それに僕には村に残して来た許嫁がいるからね」
「協会の人同士でしか結婚できない風習なんて終わってるわよねー」
なるほど、それで俺に声をかけたというわけか
「一つ聞きたい、フロントがいないと言っていたけど君たち冒険者になりたてだよね?どうしてパーティーの構成とかをもう考えてるの?」
「僕たちの村に1000年前のお伽話があってね、剣士、魔法使い、僧侶、エルフがお話に出てくるんだ」
「その四人の勇者が魔導王を倒すって物語なのよ」
「・・・いいよ、パーティーに入ろうか」
「本当に!?声かけてよかったー」
タヤはほっと胸をなでおろした
「俺はジークフリード、ジークでいいよ、加入には条件があるんだがいいか?」
「何かな?」
「悪いようにはしない、俺をパーティーのリーダーにしてほしい」
「理由を聞いても?」
「信じないと思うよ?」
「聞くだけ聞こうかな」
「俺は1000年前に魔導王を倒した勇者の一人の剣士だ、召喚されたみたいでね」
タヤはぷっと噴き出して笑い始めた
「冗談だろう?そりゃ君が勇者の一人だったならとても心強いけど」
「タヤ、この人冗談言ってない」
シルクがぼそっと言う
「シルクが言うならそうなんだろうね、敬語使ったほうがいいかな?」
「敬語はいらない、信じてもらえると思ってなかったけど」
「この子相手のウソが見破れるのよね、なんでかわかんないけど」
「・・・特技」
そういって親指を立てる
なんにせよ話はまとまりそうでよかった
「ただ俺は1000年前の知識しかないうえにさっき召喚されたばっかりなんだ、だから道もわからない、一緒に行動していいか?」
「僕たちはもうパーティーだろう?一緒にいよう」
タヤいいやつだな
俺は死なないように守ってやらなきゃいけないな。
「あたし早速だけど湖畔のダンジョンに行ってみたい!」
「そうだね、僕もちょっと見に行きたいかも」
「・・・あたしも」
「湖畔まではどうやって行くんだ?」
「ギルドの敷地内に湖畔までの転移ゲートが設置してあるらしいよ」
誰が置いたんだそんなもの
「じゃあさっそくレッツゴー!」
「ちょっと待った、先に回復針をもらっていこう、一人2本だってさ」
「そうだった!忘れてた!」
ゲームにもそんな設定あったな
回復針を回収してゲートの前に立つ
「俺が最初先頭で戦うからみんなは見ていてくれ、敵が後ろにわいたらメリッサがヘイトを買うこと、タヤとシルクは絶対に敵に近づかないでくれ」
「大丈夫なのかい?」
「タヤはターンアンデッドしか使えないだろ?最初の魔物はコボルトとかだからやることがないはずなんだ」
「さすがだね」
「シルクはバレット系の魔法が使えると思うんだけど狙いを定めるのが難しいからね、味方にもあたる可能性があるから少し待ってほしいかな」
「・・・了解」
「メリッサも二人を守ってくれるかな?」
「おっけー!」
俺は一歩踏み出してダンジョン【静かな森の湖畔】へと向かった