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第88話 怒りを二度と悲劇を繰り返さないと思う心に変えるのだ

 エネミーC・D・Eから極大の光線が撃たれた。

 だが編まれたナイフの壁をトンネル状に変形させ絶妙な角度に調整し、三つの光線を通しトンネル内部のエネルギー場で別の場所へと――エネミー三体へと受け流す。

 これに貫かれたエネミー三体は動きを止めて、ナイフを眉間に食らってしまう。


「五感の全てを奪う」


 ジョーカー、起動だ。


「苦しむ光を自ら受けろ」


 エネミー三体の体が崩れる。内部から爆発でも受けているかのように。

 膨れ、縮み、ヒビが入り、光が漏れ。

 五体のエネミーが集合する。集合し融合し、壊れる体を補おうと言うのか。

 けれども【世界の患い(ワールドエネミー)】へ殺到するナイフたち。

 首をもがれ、腕をもがれ、脚をもがれ。

 徐々に小さくなっていく黒い体。

 その中央から光の粒が現れた。紙に包まれたキャンディーだ。

 キャンディーに一つのナイフが突き刺さりさらってアウサンの元へ。アウサンは包みを取ると中にあったキャンディーを――なんと握り潰してしまった。

 そして粉々になったキャンディーをバラバラになった【世界の患い(ワールドエネミー)】に砂をまくようにまいて。


「さあ、向き合ってみろ」


 光の粉を受けて【世界の患い(ワールドエネミー)】は光に染まっていく。


 ――……侵される……我らの怒りが――


「今なにが見える? 人々の笑顔が見えているのではないか?

 辛いか? 辛いならば良し。それは心が繋がっている証拠。

 お前たちが光を捨てていないなによりの証拠だ」


 ――そのような事!――


「お前たちは知っていたのだろう。自身の中に甘味があるのを。

 それを胸の中心に埋め込んでいるのはなぜだ?

 忘れられぬからだ。

 いずれ復讐を果たした時、こうでありたいと、こう笑っていたいと思い続けているからだ。

 そうだ。

 お前たちは復讐に染まりながらも、笑顔を待っていたのだ。

 それはもう、お前たちの中にあるのだと言う事から目を背けて。

 怒気を捨てろとは言わない。

 誰かを恨むのもまた生きる活力となるから。

 だが甘味を捨てられぬならば、一度向き合え。甘味を隠してまで行わなければならない復讐か、今一度自身に問え」


 ――怒気を晴らす! その為に我らは!――


「晴らす方法など、一つではない。復讐だけではない」


 ――閉じ込めろと言うのか、この怒りを!――


「違う。変換するのだ。

 復讐対象を愛せとまでは言わない。許す必要はない。

 だが、怒りを暴力に使うな。それはただの争いの種だ。拡大するぞ。

 怒りを二度と悲劇を繰り返さないと思う心に変えるのだ。

 お前はお前たちのような存在を生まない。

 生みたいのか? 悲劇を! 同様の存在を!」


 ――あろうはずがない!――


「ならば怒りを変換しろ!」


 ――繰り返したくはない! 悲劇を!――


「その為に! 生きろ!」


 強い閃光。

世界の患い(ワールドエネミー)】から黒色が剥がれ落ちていく。

 バラバラだった体が一つに収斂する。寄り添いあって一つの体へと変化する。

 小さいけれど、蜂だ。とても小さな光の蜂となって、アウサンのかざした指先にとまる【世界の患い(ワールドエネミー)】。

 アウサンの同化が解かれた。

 金色の蜂であるパペット・トレリオンと光の蜂は近づいて、飛び回り、やがて光の蜂はトレリオンの中へと溶けて消えた。


「トレリオン」

『想いは確かに、この胸に』

「ならば誓おう。

 ボクたちと来るのなら。

 ボクたちは二度と悲劇を繰り返さないと」


 胸の前で十字を切って、神か主に誓いを立てるアウサン。

 オレにキリスト教徒のような心はないから十字がどれほど重要なのかは分からないが、アウサンの言葉に嘘はないだろう。それは言える。

 仲間だからね。


「――良し」


 一つホッと胸を撫で下ろし、別のスフィアへと目を向け――木があった。

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