第83話 誰かを殺した手でお前は恋人の手を取るつもりか
「だけれど!」
光の刀剣を解いて光のクナイ群を形成。自分の周囲にランダムに浮かせたまま移動を開始する。
オレを追って眼球も来る。無論、光線を放ちながらだ。
そいつをオレはクナイの一つでガードし、消され、また別の光線を別のクナイでガードし、消され。
何度も何度もそれを繰り返す。
守られる体と攻める眼球。
大丈夫だ、体の動きは光線についていけている。細かい技術が必要だが劣ってはいない。
ならば攻める。
体を急停止させ反転。眼球の一つへと向かって行く。
光線をガードする度に減るクナイ。しかし一つ眼球をクナイで貫いて、落ちていく眼球。
また別の眼球へと攻める。貫き落とす。
クナイが尽きるのが先か眼球を全て落とすのが先か。
「片腕だと!」
少々厳しいかも。
左腕を元に戻せるか?
心によって心が折られたと言うのなら――思い出せ。オレの信念を。
誰よりも輝くのだと誓っただろう。太陽であるのだと!
「綺羅めけ!」
オレの心よ、誰よりも強くあれ!
――強く輝き、殺すのか――
オレの中に侵入していた【世界の患い】の感情が抵抗する。
当然か。
――強すぎる輝きは誰かを焼き殺すと言うのに――
だが人は光を求めずにはいられない。
オレたちは光の下で生きていく存在なのだから。
――そこに、お前の恋人がいる――
だから?
――誰かを殺した手でお前は恋人の手を取るつもりか――
ああ、そうだとも。
――血に汚れた手で恋人を汚すつもりか――
汚してはダメだと言うのか?
それは、違う。
お前たちはトゥルーフォルスを汚さない為に戦っているのか?
――我らはトゥルーフォルスを守り、復讐するもの――
――彼を貶める全てを破壊する――
それは、守るべき存在を“美術品”として見ているからさ。
――美術品――
そうだとも。一切の汚れを許さず、一切の色褪せを許さず、一切の破れを許さない。
美術品さ。
オレたちは違う。
共に生きていくと言う事は共に汚れていくと言う事さ。
そりゃ時には洗いたくもなるだろう。
けれど、相手の手が汚れているから手を取るのを躊躇うなんて、オレたちにはない!
「動け!」
左手が大きく開かれる。そして力強く握り込む。
「良し!」
左腕を振り上げる。復活だ。