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第80話 いつまでも突き放していられると思うなよ

 バリエンス、パペット・オウコと解け合い一つに。

 左目に灯るベビーブルー色の豪雨の『覇紋(はもん)』と同じ色をした波の『凛凛翼(ルミナスウィング)』が背に輝く。

 そして更に。


「【(トリ)】――エスペラント!」


 ベビーブルーの円環を身に纏う。

 それに応じてオレもオーバーレイ・フィフスを起動させようとしたところで、


「【(トリ)】――エスペラント!」


なんとキュアが先に。

 初めての挑戦ではないようで苦もなく躑躅色(つつじいろ)の円環を生み出し纏い。

 あいついつの間に!


「はっ! あたしらをいつまでも突き放していられると思うなよ涙覇(るいは)!」


 キュアの事だから夢の城から戻ってすぐにでも試したのだろう。一発成功させるつもりで。そうして辿り着いたのだ。大したもんだ。


「先行くぜ!」


 一人、バリエンスへと向かって行くキュア。

 彼女に後れを取らないよう、


「【(トリ)】――エスペラント!」


オレもオーバーレイ・フィフスを起動する。


「「【(トリ)】――エスペラント!」」


 それとほぼ同時にウェディンと燦覇(さんは)も。


「「【(トリ)】――エスペラント」」


 ここで更なる驚愕。

 真架(まか)とアウサンまでもがフィフスに到達した。


「国議が民間に先を行かれるのは良くないのでね」


 黄色の円環を纏い、アウサン。


「苦労したけど。アウサンは特に」


 藤色の円環を纏い、真架。

 サラッとアウサンを言葉で一刺しするけれどアウサンの方は素知らぬ顔だ。

 オレも、と言うか多分皆大変な思いをして成功しているだろうからドヤ顔はできないな。


「良し、んじゃキュアに続こうか!」


 言ったオレを先頭に戦闘に加わろうとする。

 キュアはもうバリエンスと戦っている。一対多数は卑怯な気もするが不満を漏らしている場合でもないか。

 と思った瞬間だ。

 周囲に気配が現れた。


「――!」


 本当に唐突の出現だった。

 人の形をした黒い影が現れたのだ。こちらの人数を上回る数で。


「なんだこいつら?」


 意識があるのかないのか、ふらりふらりと体を揺らす様は幽霊にも思える。

 顔に表情はなく、と言うか顔の形があるだけで目も口もない。

 ただ、な……怒気がある。バリエンスから感じるものと同じ威力の怒気が。


「【世界の患い(ワールドエネミー)】さ!」


 キュアの攻撃を避けながら、バリエンス。


「気いつけろ! そいつらはまだ自我の芽生えていない菓子の塊【世界の患い(ワールドエネミー)】!

 自我はなくとも実力はあるぜ! (かたき)を見据える心眼もな!」


 一斉だ。一斉に黒い影の【世界の患い(ワールドエネミー)】がオレたちに殺到する。


「くっ!」


 まるで黒の波に呑まれるかの如く視界が人影に染まった。

 まずい、熱や呼吸の探知でも仲間を確認できなくなった。おまけに流される!


「っち!」


 思わず舌を打つオレ。

 ラッキーなのかアンラッキーなのか背後に敵はいない。だってキューブにぶち当たったから。

 少しだけ空気が肺から吐き出されてしまうが呼吸困難に陥るほどではない。

 黒い影も前から圧殺しようとはしてこない。なぜだ?

 やがて黒い影がオレから離れる。

 離れて球形にオレを取り囲む。まるで黒いボールの中に入っているような気分だ。

 皆は?

 黒い影から注意は反らさずに離れてしまった仲間の気配を探る。

 目で見える範囲にいるのは燦覇と真架か。遠くにいくつか黒スフィアも確認できるがこちらの人数と黒スフィアの数が合わない。黒スフィアの方が多い。いくつかはダミーだ。

 キュアとバリエンスは――動き回っている光が見えた。戦闘継続中だ。

(ポータル)』は開けないようだ。封じられている。


「!」


 オレを囲う黒い影たちの形が変わった。剣にだ。

 無数の剣が飛び交い、回り、オレへと徐々に向かってくる。黒スフィアがゆっくりと縮まるように。

 オレを少しずつ削るつもりか。悪質な倒し方だな。


 ――静かに、けれども残忍に――


「ん?」

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