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第08話 さようなら、涙覇

 吠えた。全身に浴びせられている殺気を振りほどくように。

 腕が動く。光の刀剣、再生。

 遠心力を味方に男に向かって光の刀剣を振り抜く。

 だけど。

 男の首を狙った一撃だった。が、砕けたのは光の刀剣の方で。

 やはり効かない。

 オーバーレイ・セカンド。ジョーカー・綺羅(きら)、水瓶座・起動。

 サードでのジョーカーの起動だ。

 砕けた光の刀剣に質量を持った水の刃が産まれる。そいつで男の胸を突くと男の全身が凍りついて。

 即座に距離を取る僕、星伽(ほしとぎ)

 射手座・起動。

 ここでようやっと男の姿が目に入る。

 真っ白の衣装に、艶のない真っ黒の髪。

 真っ白の肌に、真っ黒の虹彩と瞳孔。

 黄金の、冠に似た角。

 腰には真っ黒な長大な槍。

 左目には交差する透明色の剣――『覇紋(はもん)』。【(はたがしら)】を持っている証拠。

 そいつに向けて射手座の矢を射る。

 飛来する矢。を、男は氷を砕いて掴み取る。

 希望が見えた気がした。男は矢を受け止めた。それはつまり当たれば効くからに他ならない。

 ならば。

 

「オーバーレイ・フォース!

 ウォーリアネーム【星の(さえず)り】!」

 

 星伽が光の珠となる。なって、僕の胸へと飛び込んで。

 途端僕の黒かった髪が夜空色に。

 紫だった虹彩が真紅に。

 背には夜空色の炎の翼『凛凛翼(ルミナスウィング)』。

 体に灯るはパペットが持つはずの光。

 オーバーレイ・フォース、パペットとの同化だ。

 努力の結果と心の在り方に加え『精神』に呼応して拡張の幅が広がる状態でもある。

 同時に光の星・(めぐり)の全てを集めて一振りの光の刀剣に。蠍座の毒を刀剣の刃に。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

 

 光の刀剣は刺突に構え、全身を流星の如く飛来させ――いや、撃ち出した。

 男の手が動く。

 腰に下げられていた黒い槍に右手がかけられて。

 光の刀剣の切っ先に黒い槍の穂先が触れた。

 

「っ!」

 

 力の余波を、閃光を散らす切っ先と穂先。

 刺突を止められた。こうも繊細な動きが力を込めた状態でできるのか。

 

「良い一撃だ、子供」

天嬢(てんじょう) 涙覇(るいは)!」

「『ゼロ』だ。『三極(ヴィルーソ)』のゼロ」

 

三極(ヴィルーソ)』! の一角!

 

「天嬢 涙覇。覚えておこう。

 お前が死した後も」

「――!」

 

 槍がブレる。ブレた後にはもう一本の黒い槍が出現していて。

 左手に握られる黒い槍。

 そいつが僕の心臓に向けて撃たれて――貫いた。

 

「……っ!」

「今回はお前を殺せた事で良しとしよう。

 さようなら、涙覇」

 

 消える。ゼロの姿が『(ポータル)』の向こう側へと消えていく。

 落ちる。僕の体が地へと向けて。その僕の体をウェディンが受け止めて。

 完全に消え去ったゼロ。

 それを認めて僕は、体を起こした。

 時計座による複製。ゼロが貫いたのは複製された僕だったのだ。

 僕の反応は通用せずこちらの有す【(はたがしら)】による防御能力も【羽衣(シール)】と言う鎧もあっさり超えて殺してきた。

 

「死ぬかと……ウェディン、良く取り乱さなかったな」

「取り乱した方がそれっぽかった気もするけれど、私お芝居は苦手みたい」

「そっか」

 

 二人、揃ってゼロが消えた場所に目を向ける。

 向けてゼロを思い出す。

 

「……強かった」

「そのゼロを追い返したのよ。

 誇りなさいな」

「……ああ」

 

 だけれど、このままではダメだ。騙し討ちは一度しか通用しないだろう。


「まあ、今は肩を貸してあげる」

「え?」


 引き寄せられた。引き寄せて、僕の頭を鷲掴みにして自分の左肩に押しつけるウェディン。


「悔しかったでしょう」

「……」


 ああ……。

 この人は、ウェディンは。


「割と肩が冷たい」

「それ、自分の涙の温度じゃないの?」

「……分かんない」


 僕は敗けた。まだまだ弱い。


「ああ、もう! 強くなりてー!」

「……ええ。私もよ」


 感じた【死】を現実にしてはならない。

 僕の死は次の死に繋がる。

 もっと強く、強くならなければ!

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