第78話 世界の敵
「お前は?」
警戒を怠らずに、オレ。
相手は人型だ。男性。年の頃は二十前半と言ったところか。ブルーの短髪に、赤い装束。ベビーブルーの目は切れ長で鋭い。
こいつだ。殺意を放ってきたのはこいつだ。
「バリエンス。
身共の名はバリエンス。トゥルーフォルスの子、“冷威”のバリエンスだ」
眼光強くオレたちを睨む。
が、名乗ったな。これまで名前も分からなかった相手があっさりと。
「ああ、妹を連れて来てくれた礼だ。それ以上の意味はねえ」
「マインの事?」
「他に誰がいんだよ。こっち来いよ」
「いやでーす」
べ。舌を出す燦覇。
「親の仇と一緒にいたいってか?」
……仇? 親。そうだこいつトゥルーフォルスの子って言ったな?
「ちょっと待て。情報生命体は、お前たちはトゥルーフォルスから生まれたのか?」
「……情報生命体?」
怪訝そうに首を捻る。
「なんだそりゃ? 身共らは菓子の塊だぞ」
「菓子の……」
お菓子・トゥルーフォルスと言えば、パーパスのお菓子の河が連想されるが。
そこでキュアが口を挟もうとするがウェディンに手で口を塞がれる。今はこちらに会話を任せ少しでも情報を、と言う意味だろう。
お菓子の塊。
トゥルーフォルスの子。
パーパスのお菓子は全てが祈り。
「燦覇やお前たちは、心の結晶?」
「そうだ。パーパスに集まった祈り・心。身共はその中の“冷”の心から産み落とされた。
トゥルーフォルスの復讐の種だ。
【世界の患い】とも呼ばれるがな。
世界の敵。
まあてめえらから見たらそうか。
身共たちからすりゃ世界の敵はてめえらなんだがな」
「呼ばれる? 誰に? 誰が名づけた?」
「てめえらのお偉いさんだ」
お偉いさんが名づけた。と言う事は。
「こっちのお偉方はお前たちを知っている?」
となるが。
「知ってるさ」
バリエンスの表情が怒気に歪む。
「人間共がくそったれな欲を出さなけりゃこうはならなかった。
くそったれな選択をしなきゃ身共たちが不幸にならずに済んだ。
くそったれな指導をしなけりゃ身共たちが世界の敵になるなんてなかった!」
「意味が分かんねんだよ! 理解してほしけりゃ分かるように話せ! でなけりゃぶっ飛ばすぞ!」
堪えきれずに、キュア。
「ちょ、二人共怒りで言い合わない!」
間に入るはウェディン。
キュアもバリエンスも睨みあっていてこのままでは会話が破綻してしまう。
けれどもウェディンの言葉でいくらか落ち着いたらしい。二人は同時に深く息を吐いて、吸う。
「……で、トゥルーフォルスとは何者だ?」
平静を取り戻した二人を見て、問うはアウサン。
「パペットさ。トゥルーフォルスはパペットだ」