第69話 つまり邪魔って奴だね
地下、訓練場。
元々は父さんと母さんの為の訓練場だがオレが産まれてから三人の為の部屋になった訓練場。
「広い方が良いな」
訓練場の隅にあるコンソールに触れて二・三操作するオレ。すると部屋の壁が、天井が広がっていく。【空間歪曲法】――その名の通りに空間を歪めて広さを変えるシステムだ。
「景色はと」
ただの白い部屋では味気ないので景色も変える事にした。う~ん、なににしようか……良し決めた。
「知らない街だ」
「邪馬台国と言います」
「邪馬台国」
「想像で補完されている部分が多いんだけどね」
昔の日本を再現してみた。燦覇に日本の歴史を見せたかったからだ。
オーバーレイ・サードで形作っているから実体を持っている。
「人はいないの?」
「ノンプレイヤーキャラとして再現はできるけど、それでも無意味に驚かせるのはちょっとね」
なんせ結構リアルな反応をしてくるのだ。洋服のオレたちに驚くだろうし、囲まれるだろうし、パペットに慄くだろうし、下手したら化け物使いとして追いかけられる。
「バトルの練習には対ノンプレイヤーキャラも良いんだけど今日は落ち着いてやりたいし」
「つまり邪魔って奴だね」
「……うんまあ、そうだね」
言葉に気を使ったんだけどなあ。
「それじゃあまずはパペットを。
星伽」
『おう』
顕現するオレのパペット、阿吽の夫婦獣・星伽。
「皓月~出といで」
『あいよ』
顕現する燦覇のパペット、パッションピンクの皓月。
「ウォーリアネームは考えたかい?」
「うん」
「じゃあもう見せる必要ないかもだけどまずオレから。
ウォーリアネーム【星の囀り】!」
オーバーレイ・フォースによるパペットとの同化現象。
星伽が光の珠となる。なって、オレの胸へと飛び込んで。
途端オレの黒かった髪が夜空色に。
紫だった虹彩が真紅に。
背には夜空色の炎の翼『凛凛翼』。
体に灯るはパペットが持つはずの光だ。
「良し。
んじゃ燦覇」
「ん!
行っくよ皓月!
ウォーリアネーム【世界は愛に満ちている】!」
おお、そう言うネームにしたのか。本当に愛に満ちていると良いんだけど、世界。
皓月が光の珠となって燦覇の胸に飛び込んで、髪色がパッションピンクに、左目の虹彩が銀色の星に変化する。
背には三日月を重ね合わせた桔梗色の『凛凛翼』。
「オ~、なんか不思議な感じがする。
自分だけどどっか自由に動くロボットに乗っているような? ロボット乗った事ないけど」
「体を動かすってより頭で動かすって感じかな。
そのまま慣らしたいから五分動き回りながら同化を維持して、そこからフィフスにチャレンジだ」
「やったるぜ」
オレはその間にウェディンに連絡を入れとこう。
「仮想の敵を用意するから相手したりのんびりしたりしててな」
「はーい」
コンソールを操作し、ゲームプレイモードに。
敵は――そうだな、機械兵で行こうか。戦車や爆撃機、ドローンをモンスター化して部屋に放つ。
レベルは中くらいにしておこう。
「良し。燦覇」
「遊んどきまーす」
「ん。頑張れ」