第68話 言っちまったけど
「あたしもそっちで攻略チャレンジするぜ」
「え? アメリカじゃなく?」
ひょっとしたらキュアはもう『綾なす塔』攻略にチャレンジしたのではないか? と思って連絡を取ってみたらまだのご様子。
意外だ。てっきり我先にと行ってるもんだと。
「いや~行こうと思ったんだけどよ、エリアチャンプはムダ打ちできない言われてよ。
んだよ敗ける前提かよ」
「オレに毒を吐かないでくれ」
キュア――本名キュフィア=クラン。この人なんとアメリカ・ニューヨークのエリアチャンプだ。
「まあ気持ちが分からんでもないけどな。
あたし以外のエリアチャンプ、もう六人やられてるしな」
「そう、なのか」
「そっちはどうよ?」
「京と東京は無事に生き残っているよ。南州と北海は入院中。
北陸・中部・四国は残念ながら……」
「どこも同じだな」
「……で、アメリカでストップがかかっているのにこっちでチャレンジして良いの?」
「ダメだろうな」
おぉい。
「まあ待て。普通ならダメって事だ。
けど状況が変わった。情報生命体だ」
「ああ……」
背後を、ベッドを見やる。
その上では寝転んだ燦覇がアイテムとジョーカーの名を考えている真っ最中で。
パペットの名をあっさり決めた燦覇だったが、オレに「もうちょっと考えようか」と言われて始めは真剣だった。
が、途中から名前決めが楽しくなったようであれやこれやと候補を出してはバッテンをつけている。
そんな燦覇が『綾なす塔』にいるのが情報生命体だと断定した事でその情報が様々な機関や重要人物の間で共有される流れになった。これにともない 誰が断定したんだ? となったので燦覇についても同機関、同人物の間で共有されたのだ。
「日本でチャレンジする代わりに情報生命体の情報を持ってくるなら良い、ってよ。
欲しいならてめえが行けよって感じだよな。言っちまったけど」
言ったのか……相変わらず強メンタルだな。
「まあ良いさ。せっかくだ、この機会を逃す手はねえ。
だもんでそっちでチャレンジする日が決まったら教えてくれ。
あたしも行くからよ」
「了解。頼りにしてる」
「おう」
映像通信、終了。ホログラムウィンドウが閉じられる。
さて、ウェディンにも連絡を取らなきゃだけどその前に。
「燦覇、名前は決まったかい?」
「うん!
アイテムが縁!
ジョーカーは神守!」
「理由は?」
「響きで!」
「響きかー」
良いんだけどね。
それでは次だ。
オーバーレイ・フィフスはともかくフォースまでは燦覇も使えた方が良いよな。
オーバーレイ・ファースト ただの3D表示
オーバーレイ・セカンド ジョーカー
オーバーレイ・サード 質量贈与
オーバーレイ・フォース 同化
オーバーレイ・フィフス パペットへの人権授与
可能ならフィフスも覚えてほしいが……いや、贅沢は言うまい。
「燦覇、さっき説明したフォース――同化はできそうな気がする?」
「フィフスもできそうな気がする!」
「マジか」
「マジだ」
「ん~、じゃ、じゃあ同化から。地下に行こう」
「はーい」