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第66話 それが、責任の取り方ってもんだと思う

「ア―――――――――――――――――――――――――――――――――――ァ!」


 そうして腹の中からなにかを取り出して。

 青白く光る小さなキューブだ。

 初めて見る物体だが、なんだ?


「これが、貴様らを殺させる強制プログラムよ」


 そいつを握り潰す、リュウレイ。


「親を殺し、自らを殺す。

 これで自由がようやっと手に収まるのだ」


 膝を着くリュウレイ。

 彼らコンピュータウィルスにとっての血が、光の粒子がひどい勢いで流れ出ている。


「……軍旗・ヴェリューザ。正式起動」


 震えるリュウレイの手に握られるは黒い軍旗。

 アイテムではない。これが――


「余のジョーカー、強制遵守権よ」


 人を操る力。


涙覇(るいは)、ジョハ、燦覇(さんは)

 貴様らには効かなかったか。強大な者は素晴らしい。

 本来余にも効かぬが弱った今ならば――」


 効果がある、か。


「全力を賭して余自身に命ずる。

 ()きよ!」


 軍旗が輝く。

 命令を受けたリュウレイも共に。


「いったん退かせてもらおう、涙覇。

 プログラムを取り出した事で余は死ぬ運命。

 が、ヴェリューザにより活きる事を遵守せねばならぬ。

 余は死を砕き、活きるぞ」

「……そう願う」


 これで死なれても、寝覚めが悪いと言う奴だ。


「ふ。

 また会おう」


(ポータル)』が開かれた。

 よろけながら、しかし自分の足で歩み、その中へと消えて行くリュウレイ。

 閉ざされる『(ポータル)』。

 一先ず難は去った、か。






 泣いている人たちがいる。

 リュウレイにパペットの一部・あるいは全てを喰われた人たちだ。

 一部だけなら回復するか? とも思われたのだが……。


「息を引き取っているみたい」

「ああ」


 ジョハの言葉に頷くオレ。

 ゆっくりとパペットが死んで逝く。それを見守るしかできないユーザー。

 人によってはパペットを道具として見ている人もいるだろう。

 だがここにいる人たちにとっては違うようだ。

 消えて逝くパペットを泣きながら抱きしめ、語りかけている人たちしかいないから。


「……マイン、ジョーカー使わない方が良い?」


 オレの胸に額を当てて、燦覇。

 出された言葉が哀しげに震えていた。


「……燦覇はちゃんとしたバトル内で勝利したんだ。

 獲得したジョーカーを嫌う必要はない。

 獲得した勝利を嫌う必要はない」


 とは言え。

 周囲を見ると燦覇を睨んでいる人もいて。

 燦覇の、皓月(こうづき)のジョーカーでパペットを失い卵を与えられた人たちだ。


「……嫌う必要はないけど、重さは感じるべきかな」

「重さ?」

「力を使用した結果の重さだよ。

 人とパペットの絆の重さ。それを失わせてしまった重さ。

 その上で燦覇はきちんと顔を上げて、前を見て、一歩を踏み出すんだ。

 燦覇の魂を鼓動に乗せて、想いを心に乗せて、誰よりも強く一歩を踏みこめ。

 燦覇の夢を全てに乗せて。

 人の為にとは言わない。自分の為にだ。

 それが、責任の取り方ってもんだと思う」

「……ん」


 難しいのは分かっている。オレだって実践できるかどうか。

 けど。だからこそ挑戦し続けなければいけない。

 諦めてしまったらそれこそ申しわけが立たないから。この結果を意味のないものにしてしまうから。


「――で、そろそろ涙覇と燦覇の関係について聞いても?」

「ん~?」


 会話がひと段落したところで明るくジョハが入ってきた。

 場面転換を狙ったのだろう。気のきく子だ。

 ではその気のきくジョハにどこまで話して良いものだろう?

 隠すのは……なんかいやだな。いやだけどペラペラ話すのは……。

 う~ん。


「マインは涙覇の子です」


 マジか。オレ、随分幼い頃に子供作ったんだな。


「そっか。

 実はお腹を痛めてキミを産んだのはうちなんだよ」

「「なんと」」


 じゃないわい。サラッと嘘つくな二人共。


「なんかうちと似たような気配感じるんだよねえ。人間じゃあない気配って言うか。

 うん、燦覇って人でもパペットでもないでしょ」


 その燦覇の首に背後から両腕を回すジョハ。軽く抱きしめたのだ。

 会話に使う声の音量が小さくなっている。周りに聞こえないよう配慮したからだ。


「分かるの?」


 ジョハを見上げて、燦覇。


「分かるよ~分かっちゃうよ~」


 燦覇の目がオレに向く。向いて一つ頷いて。話して良いよと言っている。


「……実は」

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