第50話 ――僕は【トゥルーフォルス】
「……!」
圧倒。気配だけで圧倒される。
幽霊さんの隣に現れたのは幽霊さんよりもずっと『おばけ』と表現するに相応しいなにか。
人がすっぽりと黒い布に包まれているような、浮遊するおばけだ。ただその布にはオーロラに似た光の波が漂っていて不気味と言うよりも神秘と言った方がしっくりくる。
体の周囲には一本の白いテープのようなものを通す金具が三つ浮いている。金色の金具だ。
おばけの上――頭のところには凄く細い三重の輪っか。輪っかの色は上から純白、真紅、漆黒で、水に似たなにかが絶えず上から落ち、または下から昇っていた。
感じる気配は人ではなく、パペットでもなく、AIでもなく、コンピュータウィルスでもなく、幽霊さんとも違う。
「なんだ……あんたは?」
おばけが口をきけるかは分からないが訊ねてみた。返事があれば御の字だ。
しかして応える声は――
「――僕は【トゥルーフォルス】」
少年とも少女とも判別できない幼い声で応えてくれた。トゥルーフォルス、個体名だろうか種族名だろうか。言葉の意味は真と偽とかだったか。真贋でも良いのかな?
「トゥルーフォルス。あんた――あなたはなんだい? ここはどこ?」
「ついておいで」
今度の質問には応じてくれない。まずは移動するようだ。
「舟を用意する」
トゥルーフォルスの周囲で何度か光が弾けた。
すると、どこからともなく手漕ぎの舟が一艘現れて。って、お菓子でできた小さな舟だった。乗ると壊れそうだ。
けれどこちらの心配はどこ吹く風、漂うように浮かぶトゥルーフォルスは河にそって進み出してしまった。だからオレは慌てて舟に乗り、ついで幽霊さんも手を引いて乗せる。
自動では進んでくれないみたいだ、この舟。
だから漕いで進む。河のちょっと上を浮遊する舟は軽やかに動き出した。
漕いで。
漕いで。
漕いで。
上流に行っているのか下流に行っているのか、五分くらい漕いで進んだ先にはお城が一つ。
河の真ん中に建つお城はお菓子ではなかった。かと言って石でも木でもなく、半透明な実体のある光と言ったところか。中が見えるようで見えない。
城門には一言刻まれている。NULL――ナル、だ。空白と言う意味。お城の名か?
舟から降りて門を潜り城内へ。
お城は大きくない。日本の一般的な民家くらいだ。力や権威を象徴しているのではないのだろうか。
どうやら三階まであるらしいが全て超えて屋上に出た。そこにあったのは一脚の椅子。玉座か?
それにトゥルーフォルスは立って止まった。……いや座らんのかい。ひょっとして折れる脚と腰がないのだろうか。
「ここは」
こちらに正面(多分正面)を向けると語り出すトゥルーフォルス。
「情報の終着点。明日を望む人々の祈りの先」
意味は、分からない。分からないから口を挟まずにまずは聞き役に徹する事にした。
「祈り、放たれ、集まった心が作る情報の河。世界。
心の情報変換。
『パーパス』――僕のジョーカー」
「!」