第42話 さあ! 一緒に綺羅めこう!
「ウェディン」
ウェディンの『星織紙』を想う憧憬が白い蛍火となって天に輝く。
「キュア」
キュアの『星織紙』を想う熱意が白い蛍火となって天に輝く。
「真架、ジョハ」
真架とジョハの『星織紙』を想う羨望が白い蛍火となって天に輝く。
「アウサン」
アウサンの『星織紙』を想う思慕が白い蛍火となって天に輝く。
「フレグリス」
フレグリスの『星織紙』を想う崇拝が白い蛍火となって天に輝く。
そうやってオレは思いつく限りの人の名を呼び、心に呼びかける。
呼びかける度に一つずつ白い蛍火が天に輝き。
やがて天は満天の星空となって。
「最後に」
オレだ。
『星織紙』、オレの一人娘。
精も根も込めてデザインした、いや、産み落とした子。
綺羅めきたい――その想いを共有する子。
どうして綺羅めきたいか……覚えているよ。
知っているかい? 夜空を彩る星座の星は全て恒星、太陽だって。
昼に太陽、夜にも太陽。
人を照らす太陽はずっと人の頭上にあったのだ。ずっと人を魅了し続けていたのだ。
優れた親の子として産まれたオレには多大な期待が向けられている。
それに潰されそうになった経験はいくらでもある。
ただただ楽しかったパペットバトルが嫌になった時もある。
そんな自分が嫌だった。
楽しみが楽しくなくなっていく……それはとっても辛かった。
だから思い続けている。
楽しさを忘れるな。
今を楽しむ心を忘れてはいけないと。
この楽しさ無限大の世界を精一杯楽しみ活きるのだ。
その為に必要な事はなんだ?
分かっている。曇らない事だ。
だからオレは自分を鼓舞するように「綺羅めく時だ」と言い続けた。
誰をも照らす太陽でありたいと。
誰をも照らす太陽であるのだと!
オレの『星織紙』を想う感謝が白い蛍火となって天に輝く。
「全てが――綺羅めく時だ!」
腰の刀剣に、その白い柄に触れて抜き放つ。が、金のハバキの中に収まっていなければおかしい刀身は欠片もなく。
白い蛍火が集まってくる。オレの天に掲げた柄に。落ちてくる、降りてくる、流れてくる。
全ての白い流星が集まって、綺羅めく蛍火が巨大な十手の如き直刀の刀身と化す。
まっすぐにゼロを、『星織紙』を見る。
宙に浮いたまま一歩強く踏みしめて――
「皆!」
「「「!」」」
飛翔する。
即座にゼロがオレに攻撃を集中させるがウェディンが、キュアが、真架・ジョハが、アウサンが、フレグリスがオレの為の道を作ってくれる。
オレはその道を一直線に飛翔し綺羅めく刀身をゼロの胸へと――『星織紙』を護る白い蛍火が現れた。
進め!
かつてゼロポイントフィールドだった世界が宇宙を産んだ時、世界はある力を使用した。
綺羅めく刀身と白い蛍火が触れ逢う。
触れ逢い、溶け合い、融合する蛍火。綺羅めく刀身が敵ではないと理解しただろう蛍火が刀身を通し『星織紙』の胸へと入っていく。
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!」
仰け反るゼロ。
刀身を、蛍火を受け入れた『星織紙―スターウィンク―』。
かつて世界が使用した力。
それは今、刀身と化した力――未来を斬り開く【明日を望む勇気】だ。
「『星織紙』! さあ! 一緒に綺羅めこう!」
この刀剣の名は霊剣『陽に恋う大君』。
そしてオレが刀剣技の中、唯一名づけたこの刺突の名は――
「『ひのめの国』!」
きっとオレはこの時笑っていた。
あまねく照らす太陽であれ。
心が『星織紙』を内側から温める。満たす。
一方ゼロの残滓は追いやられて――爆風。
黒いゼロの残滓が『星織紙』の体から排出された。
その際に巻き起こった風がオレたちを吹き飛ばそうとするが、オレは手を伸ばし『星織紙』を抱きとめた。
色が、『星織紙』の体の色が元に戻っている。オレが産み落とした通りに。いや少し違うか? 『星織紙』を取り巻いていた金の星砂が白の星砂になっていた。
皆の想いを受けて変化を、『成長』をしたのだろう。
なら後は。
「さよならだ、ゼロ!」
光の刀剣・巡を振るう。
剣・フラワーシャワーが降ろされる。
日本刀・枝垂之咲姫を薙ぐ。
侵入能力・綉が撃たれる。
ナイフ・フェリオンが飛ばされる。
雷・アフェクションが落ちる。
皆の攻撃が黒いゼロの残滓に集中し――討った。
これで、本当に。
黒いゼロの残滓が一転に集中し――光の爆散を起こした。
起こして散って完全に消えて、逝って。
「……ん」
落ちていた瞼をゆっくりと開ける『星織紙』。
それにオレは心から安堵し笑んで。
そして。
「……お帰り、『星織紙』」
「……ただいま、お父さま」
そして『星織紙』もまた安心しきって、微笑むのだ。