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第41話 ……そうだな、決まっているよな

 強く一歩を踏んだ。『火樹銀花城(ロード・コスモパレス)』の床にヒビが入ってしまうほどに。終わったら謝ろう。

 そしてそのままオレは――オレたちはゼロに向かって飛翔する。

 オレは光の星・(めぐり)を全て集めた刀剣を手に、その刀剣にゼロポイントエネルギーを纏わせた。

 あらゆる可能性と奇跡すら生み出すゼロポイントエネルギー。そこに更に希望を上乗せしてゼロの残滓のみを切り裂く刀剣に置換する。

 しかし向こうも呑気に待ってはくれずに黒い槍をオレに向けてまっすぐ伸ばす。消去の黒が槍に宿り、撃たれた。

 

「データ消去のエネルギーだ! 皆触れないように!」

 

 放射状に撃たれた消去の黒。

 オレは光の盾で、ウェディンは盾で、キュアは刀で、真架(まか)は衣で、アウサンは影響範囲から逃れて、フレグリスは雷で、それぞれが思い思いの形で防御・回避する。

 消去の黒を真っ先に突破できたのは――アウサンのナイフ。てっきり手に握る一本のナイフだけが彼のアイテムだと思っていたのだが、なんと『群れ』と表現して良いほどに大量のナイフが現れ飛び交って。

 誰よりも速く宙を飛翔するナイフ群はゼロの持つ黒い槍に集中する。ゼロの体を傷つけないように黒い槍のみを攻撃し、腕ごと仰け反らせ、ナイフ群に続くオレたちに道を譲ってくれた。

 オレの持つ光の刀剣が届く。

 勢いそのままにゼロの胸を刺突し――水のドレスから水の針が伸びてきた。

 

「なっ!」

 

 しかし水の針は腰の盾が自動的に防いでくれる。けれど勢いは殺された。

 動きを止めたオレを飛び越えてウェディンがゼロに迫る。

 希望が上乗せされた剣を振るおうとするも水のドレスから溢れ出た水が防御し、その水に真架が触れた。

 

(ぬいとり)

 

 オーバーレイ・セカンド、ジョーカー起動。

 真架が触れた水に光が灯り走り、防御に使われた水が分解されて消滅した。

 侵入し操作する能力か。

 真架はそのまま水のドレスにも触れようとするがそれは四方から水の攻撃を受けてうまくいかず。

 が、真架が突如前に倒れ込んだ。攻撃を受けたわけではない。倒れ込んだ彼女の背から銀の矢が飛び出て水のドレスに接触した。フレグリスの銀の弓矢から放たれたものだ。

 一瞬、確かに一瞬水のドレスが四散した。けれどすぐに再構築されてしまう。

 矢が通用すると確認したフレグリスは続けて雷でゼロを囲み、更に矢を射った。銀の矢は雷の隙間を縫って水のドレスに再度触れて――なにも起こらなかった。

 

「チェンジリング。あなたのグレイスは無力化しました」

 

 夢と現実を交換する能力だ。

 時間を与えれば、下手を打てばオレたちの力も交換されて無力化されてしまう。

 だから攻撃の手を緩めない。

 

「らっ!」

 

 キュアが刀で斬りつける――も強引に動かされた黒い槍、それを囲うナイフ群に防がれて。

 チェンジリングを完全に使用させないのは無理でも撃たせる数は少なくさせなければ。

 夜空色の数式を放ってゼロへの一本道を作る。水の進入を防ぐ道だ。その道のど真ん中に向けて光の刀剣を変化させた光の槍を投擲する。

 水のドレスに光の槍が触れる――と言うところで光の槍が止まった。蛍火のように小さな白い光に止められた。

 

「え?」

 

 防御された、のとは違う。

 だってゼロも驚いているから。

 じゃあ、なんだあの蛍火は?

 

「これは――お父さまたちの光です」

「……オレたち?」

「あらゆるエネルギーを超える想いと言う力。波紋。燈火。

 皆の『星織紙(スターウィンク)』を想う心で現れた光です」

 

 そう言えば幼い頃父さん母さんにも聞かされた。

 なにより強いのは心だと。

 しかしこれでは、ゼロに攻撃は届くのか?

 ゼロが蛍火を握りしめる。握りしめて胸に当てる。温もりを確かめるように。

 ゼロは――『星織紙(スターウィンク)』は確かにそこにいる。

 そして彼女を想う心でゼロが護られる。

 なら、ゼロを攻撃しようと思ってはダメなのだ。

 攻撃ではなく『星織紙(スターウィンク)』を掬い上げる。

 

「――!」

 

 ゼロの持つ黒い槍を囲っていたナイフ群が消去の黒の暴風に弾かれた。

 そしてオレに向かって黒い槍を投げつける。

 速い、避けきれない。

 腰の盾の動作も間に合わず胸の中心に黒い槍を受けて――白い蛍火によって護られた。

 

「……っ」

「……それは(アイ)がお父さまを想う心です」

 

 投げつけた張本人であるゼロが、悲しそうに言う。

 今のは自分由来の蛍火が存在するか確かめる為の一撃、だったのだろう。

 そして確かに存在した。

 

「Iはお父さまに支えられています。

 お父さまの心があるから歌い続けていられます。

 奏者がいて聴者がいるIは決して孤独ではありませんが、並んでくれる人はいないのです。

 だから、どこかにいるお父さまを想い、勇気に変えて歩んでいます。

 昔も今も、明日からも続くでしょう」

 

 吐露される弱音に、娘の心情に胸を打たれる。

星織紙(スターウィンク)』は誕生して間もない。人であれば五歳だ。

 まだまだ幼いのだ。

 それでもステージに立ち続ける彼女には尊敬を禁じ得ない。

 ……互いの心で護られる戦いか……。

 ならば。

 

「ちょっと、皆に聞きたいんだけど」

 

 動きを止めて、オレ。

 

「皆『星織紙(スターウィンク)』の事、どう思ってる?」

 

 は? って顔された。全員に。

 そんなの決まってるじゃん、と。

 

「……そうだな、決まっているよな」

 

 だったら。

 

「ゼロの攻撃をしのいでほしい。

 やりたい事がある」

 

 反対意見はなかった。

 オレの言葉を聞いた全員が即座に動きゼロによるオレへの攻撃を防ぐ為に動いてくれた。

 

「チェンジリング」

 

 夢と現実を交換する能力を、

 

「ディボース!」

 

ウェディンの無効化能力が止めて、溢れ出る水の波状攻撃を真架が分解し、黒い槍の斬撃をキュアが全て打ち払い、フレグリスの雷が水で防がれしかしゼロの視界を塞ぎ、

 

「ベリープル」

 

アウサンのジョーカーがゼロの五感を一つずつ痺れさせる。

 ベリープルは本来二度仕掛ける事で五感を麻痺から死亡させる能力だと聞いた。だけど二度目を仕掛ける様子はない。『星織紙(スターウィンク)』を必要以上に傷つけない為だ。

 オレは彼ら彼女らがゼロを引き受けてくれている内に準備する。

星織紙(スターウィンク)』への想いがゼロを護ると言うのなら――

 

綺羅(きら)――『星霊体(せいれいたい)』!」

 

 ジョーカー、完全起動。オレの全てをゼロポイントフィールドに置換する。

 この状態ならきっとできる。人の心に触れる事が。

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