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第28話 ひゃっふ――!

 ◇


 この日もまたコンピュータウィルスを倒して帰宅したのだがそれを待っていたとばかりにとあるチケットが届いた。

 バーチャルのチケットで【(はたがしら)】を通して表示されるもの。今では紙のチケットよりもメインで扱われているのだが……これは。嘘だろ? マジで? 良いの? 叫ぶよ? せーの。

 

「ひゃっふ――――――――――――――――――――――――――――――――――!」

「どーした我が息子よ!」

「あ、母さん」

 

 思わず自室で上げてしまった奇声に母・乱入。

 部屋のドア、これのドアノブは指紋認証で鍵を開けてくれるのだけれど、家族全員登録しているからと言ってノックはしてほしい。素っ裸だったらどうする。

 

「息子のムスコ見てもなんも思わんて」

「そうかもだけど」

「あ、ひょっとしてワタシの裸には反応しちゃう?」

「しませんが!」

 

 断じて。まだまだ若い母さんとは言え。息子のオレから見ても美人さんとは言え。実の母相手にそんな。……ねえ?

 

「で、なにが『ひゃっふー!』なの?」

「あ、ああ。うん。これ」

 

 手に持っているチケットを母さんにも見せる。

 母さんはそれをジッと見て、目を上から下へと動かして、書かれている文字をきちんと全て読んで、ついで。

 

「あ、手がすべった」

「嘘つけい」

 

 なんと、チケットを奪おうとしてきやがった。

 華麗にかわしたけどね。

 

涙覇(るいは)、キミを育てたのは誰かな?」

「母さんと父さん」

「たまには感謝を」

「お礼はしてもチケットはあげないよ」

「…………………………………………………………………………………………………ッチ」

「舌打った!」

 

 ノリの良い母である。

 

「ま、ちょうだいと言うのは冗談だけど」

「ほんとにぃ?」

「ほんとほんと。

 昔ワタシもレアなチケット当てたなあ。

 (よい)――お父さんと一緒に遊びに行ったんだけど、あ、フェスだったのね、そりゃもう楽しかったなあ。雨が降ったりもしたしセットに雷まで落ちて壊れたけれど、出演してたバンドやシンガーはそれすらも『味』に変えて盛り上がってさ。つられてワタシたちもテンション爆上げで。

 涙覇も楽しんでおいで。大切な出逢いの場になるかもだしね」

「出逢い」

 

 いやあ、ウェディンがいるし? 新たな出逢いは今のとこ望んでいませんが?

 

「ワタシ、女の子限定とは言ってないんだけど?」

「あ」

「英雄色を好むと言うけれど色恋沙汰が殺傷沙汰にならないと良いね」

「笑顔で言わないでくれる?」

「ふふ。じゃ、お母さんは夕食の調理に入るから」

「うん。オレも用済ませたら行くよ」

「はーい」

 

 うちは料理を家族でやる。うちはって言うか家事を皆でやるのは今時の基本なんだけど。

 皆でご飯の用意をして、皆で食べる。

 一家団欒。大切。

 さて、母さんが退室したからオレは改めてチケットに目をやった。

 一度は静まった心が再び湧き立って「ひゃっふー」と言いそうになったがやめておいた。ちょっと恥ずかしいリアクションだったから。


「ん」

 

 なんか、ちょっと首が痛くなった。寝違えたかな? 「ひゃっふー」の影響だったりする?

 とか思っていると痛みが消えた。

 はて? なんだったんだろう? まあ良いか。

 それよりチケット、うん。嬉し楽しみだこれは。

 チケットに添えられていたメッセージに『「ゼロ」撃破を祝って運営からプレゼントです』と書かれているから同じものがウェディンにも届いているだろう。

 

「えっと」

 

 通信機能を起動させてウェディンにかけてみる。

 一度・二度と呼び出しのコールが鳴って三度目。ウェディンが出て映像通信が始まった。

 

「ごきげんよう涙覇」

「こんにちはウェディン。今時間ある?」

「ええ。チケットの話でしょ?」

 

 やはり彼女にも送られていた。

 

「うん。

 行く?」

「勿論よ。

 まさに夢の旅行だわ」

「実際夢の中だしね」

「そうね」

「「夢紀行『空の鏡(ナイト・スターリー)』!」」

 

 声がハモる。

 ドキワクする心から出た声が。

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