表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/90

第25話 人よりコンピュータウィルスに敬意を払うとは

 言って構えるイレの姿勢は――手刀。

 本当に『続き』をする気のようだ。

 だがこちらは手刀を貰うわけにはいかない。とは言え大きく動きを変えるのはこいつに対して無礼か。

 なら……光の星・(めぐり)を手に集める。集めて光のグローブに。

 これくらいならやっても良いかな。イレも文句言う気はないようだし。

 

「イレから来なよ。

 お前の攻勢だったから」

 

「はっ、生みの親よりも殺害対象に敬意を払うとは思わなかった」

「オレも人よりコンピュータウィルスに敬意を払うとは思いもよらない」

「……」

「……」

 

 なんとも不思議な空気が流れる。

 けれどそれもすぐに消え失せて。

 

「ゆくぞ」

 

 イレ、急上昇。手刀じゃないんかい。

 追うか? いや。

 

「太陽!」

 

 の中にイレが隠れた。

 ――いや違う。太陽の光がイレの掲げた手に集まっている。

 まとめて撃つ気か。

 

「祭壇座!」

 

 起動。

 オレの周囲に光の十字が舞う。

 絶対の防壁だ。これを貫けるものはない。

 ハイハイルによって陽光が凝縮される。

 集めて固めて集めて固めて。

 やがてそれは拳大の光の珠となって。

 眩しい、熱い。

 まるで小型の太陽。

 

「オオ――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」

 

 光の珠が、撃ち出された。

 爆音と閃光。

 光の珠の軌道が見えなかった。流星よりも速く飛来したから。

 衝突する十字の防壁と光の珠。

 一つ、また一つと十字が破壊されていく。

 持ちこたえろ!

 

「――なに!」

 

 言ったのは、オレ。

 だってイレが光の珠を追って現れたから。

 現れて光の珠にハイハイルの力を流し込んだから。

 光の珠が回転を始めた。

 おまけにイレの飛翔と腕力で押されてもいる。

 回転と自身の力でねじ込む気か。

 オレは十字を集めてそれに対抗する。

 両者は拮抗して――尻尾の一撃が来た。

 今度は頭頂部狙い。

 だがしかし。

 

「そいつはもう!」

 

 一撃喰らったから警戒済み。

 

「ぐぅ!」

 

 尻尾が切れた。下から飛来してきた光の刀剣によって。巡の刀剣だ。

 上から下に振るわれた尻尾と上昇を続けた刀剣、尻尾は殆ど自らの勢いで千切れてしまっていた。

 痛みがあったのだろう、イレの動きが一瞬だけ硬直する。

 

「今!」

 

 両手を頭上で組むオレ。

 そのまま固めた二つの拳で光の珠を撃ち落とす。

 光の珠の落下で砂に変わっていた大地に大穴が開く。

 

「炉座」

 

 熱、起動。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 全身を溶かすほどの熱を浴びてイレが悲鳴を上げる。

 だがまだだ。

 イレはきっとオレと同じく希望に触れ続けているだろう。

 そいつを突破しなければイレは必ず耐えきる。

 

「来い!」

 

 光の星・巡を、刀剣を手に構えてイレの胸を貫――

 

「!」

 

 下から飛来してきた光の珠が刀剣を砕いた。

 あの珠! 消えてなかったか!

 そして光の珠はイレの体をさらい熱の放射から救い出す。

 

「……本当に、大した奴だよ、イレ」

 

 イレの体をさらった時の光の珠は剛速球だった。イレ自身の操作によるものだ。ダメージを受けても脱出するとは思い切りの良い。

 

「ま……だ、だ」

 

 体の修復に入るイレ。

 が、それを待っている余裕はこちらにはない。

 悪いが一気に決めさせてもらう!

 

「まだと言った!」 

「!」

 

 イレ、光の珠を動かし超高速で飛び回る。あいつ本体を視認不可能で光の帯にしか見えないレベルだ。

 目を凝らして追おうとするがハイハイル・起動の気配。

 イレの力が希望を纏うオレを包む。

 しかしイレの手は動いていない。あいつからは放たれなかった。

 一体どこから?

 周囲を見回すとなんと、千切れた尻尾からだった。

 尻尾でも! 使えるのか!

 

「否。全身からだ」

「全身!」

 

 けれども。 

 こちらは希望を纏っている。そう易々とやられはしない。

 

「ならばこれでどうだ!」

 

 光の珠、射出。

 代わりに光の珠によって支えられていた回復途中のイレは地に落ちていく。

 一方でオレは尻尾に向かって右手を、光の珠に向かって左手を突き出し両者の侵入と衝突を防ごうと試みる。

 なのに。

 尻尾に向けていた右手が激痛に苛まれる。

 オレは八十八星座の中から防御と回復に使えるものを全て同時起動させた。

 それでも。

 激痛が消えない。

 このままでは()ける。

 

「……くっそ!」

 

 仕方ない。

 奥の手をこちらから見せるのは敗北ギリギリだが状況が状況だ。

 

綺羅(きら)――『星霊体(せいれいたい)』!」

 

 夜空色の炎が弾ける。

 頭には目と同じ色の炎――紫炎の角一本。

 腰には十手を巨大にしたかの如き白と金の直刀の鞘。

 体は全て白い光に変わって。

 ゼロポイントフィールドへの置換、完了。

 夜空色のエネルギーをもって尻尾と光の珠を蒸発させた。

 

「――素晴らしい」

 

 声に目を向けると、『凛凛翼(ルミナスウィング)』の力が働いているのかゆっくりと落下するイレと目があった。

 イレの目は輝いている、ように見えた。

 

「貴様の奥の手見たぜ! ならばこちらもだ!」

 

 なに?

 

「ハイハイル――『リオ』!」

「なっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ