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第24話 トドメは人間の手でだ

「……っ!」

「貴様の周囲に無酸素空間を形成した」

 

 時計座! 起動!

 イレが力を流す前までに大気の時間を戻す。

 世界全体を戻す事はできないが充分だ。

 

「多才な事だな!」

「どうも!」

 

 イレが迫る。

 オレ自身の主導権を握ろうと、触れようとしてくる。

 だからオレはイレの手を弾き――めまい。

 わずかな接触でもこれか!

 

「はっ!」

 

 これ以上触れるのはまずいと思ったがなんとイレ、拳打を繰り出してきた。

 仕方ないのでオレはイレの拳を拳で防ぎ、もう一発、更にもう一発、更に更にもう一発。

 拳同士がぶつかり合いを繰り返す。

(はたがしら)】とパペットシステムで強化されまくっている体の力でだ。

 もの凄い音。

 もの凄い風。

 そしてもの凄い痛み。

 ハイハイルの侵入を最低限に留める為に接触したらすぐに拳を引いてはいるのだが、こいつ、イレの奴ハイハイルを使ってオレを分解しようとしている。

 そのせいで触れている拳が――わずかにハイハイルの影響下にある手がやたらと痛いのだ。

 なのにイレの攻撃が速すぎて綺羅(きら)を起動している暇がない。

 

「ふ」

 

 こちらの心を知ってか知らずかイレ、笑う。

 

「これではどうする?」

「い」

 

 イレ、拳打を手刀に切り替えやがった。

 拳で受けるのはダメだ。

 とっさに手を引き、最小限の動きで手刀をかわす。

 何度も何度も放たれる手刀の刺突。

 それらも全て最小限の動きでかわし――と言えば聞こえは良いだろう。実際は大きく動いている余裕がないだけだが。

 まずいな、防戦一方だ。

 けどなんとかついていけてはいる。

 スピードは互角と言うところか。

 

「忘れ物だ、涙覇(るいは)

「!」

 

 なにを忘れた? と考えたがこちらが答えを出す前に向こうから答えがやって来た。

 尻尾だ。

 

「だ!」

 

 突如振るわれたイレの尻尾がオレの首を横から弾く。

 ……っ!

 しかもなんて剛力。

 速くて硬くて重い。

 打たれた首、ヒビくらい入ったんじゃないか?

 なんて考えはのんき過ぎた。

 即座に放たれた手刀がオレの両肩・胸の中心・両太ももを突いたからだ。

 致命的なミスだ。

 首に受けても回避と防御を怠るんじゃなかった。

 ハイハイルが流れ込んでくる。

 これ……まずい!

 と思った時だった。

 

「がっ!」

 

 背中に衝撃。

 なんだ?

 イレがやった――のではない。だってイレも驚愕しているから。

 加えて。

 

「っち」

 

 すぐに地上方面から舌打ちが聞こえてきたから。

 

「……シビル、なぜ来た?」

「なぜだって?」

 

 痛む首を動かして地上方面を見る。

 男だ。白人の男。三十代くらいだろうか。

凛凛翼(ルミナスウィング)』で浮いているのを見るにパペットウォーリアだろうがオレを撃ったあれは……。

 

「決まっているだろう。

 忘れてんのか?

 パペットウォーリアを始め世界中のXRファイターには『フリーブルーアワー』が賞金を懸けている。

 金を得られるのはヤッた人間ただ一人。

 イレ、お前は我が作ったがお前に金をやる道理はねえ。

 トドメは人間の手でだ」

「……」

 

 イレの表情が歪む。不機嫌、と言う風に。

 て言うかあいつ、シビルと言ったか?

 手に持っている実銃でオレを撃ったのだろうが、そしてコンピュータウィルスを作る才能はあるのだろうが、バカじゃないだろうか。

 

「シビル、貴様は間が抜けているようだな」

「あ?」

「ほおら良く見ろ。

 涙覇が回復してしまった」

「!」

 

 全くもってバカで間が抜けている。

 あのままイレにやらせていればオレを倒すチャンスはあっただろうに。

 そしてこの状況、惑うなよオレ。その必要はない、こいつは確かな悪なのだ。

 例えこれから行うのが殺人であっても。

 

「金欲まみれは消えてろ」

「あ――あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 オレのセリフと同時に放たれた光の星・(めぐり)の集中砲火を受けてシビル、撃沈。

 別に、パペットウォーリアだから実銃を使うなとは言わないが、金に目がくらむとこうも人としてダメになるのか。

 気をつけたいものである。

 

「邪魔が入った。

 謝罪するよ。

 すまなかったな」

「……良いさ、回復できたし」

 

 おまけにひょっとしたらだがイレのハイハイルについても一つ分かった気がする。

 尻尾で殴られた時ハイハイルはなかった。

 絶好の機会だったはずだ。

 尻尾でもハイハイルを使用できるなら使うだろう。

 つまり、イレは両手からしかハイハイルを起動できない。罠でなければ。

 

「さて、続きと行こうか」

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