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第18話 天使の――上?

 ゼロポイントフィールド――全部があって全部がない場所。

 空っぽなのに全部がある場所。

 繋がる事ができればあらゆる知識と力と閃きを得られる場所。

 そしてゼロポイントフィールドが持ち、今オレの体から溢れるエネルギー【ゼロポイントエネルギー】は。

 無限の知力。

 無限の財力。

 無限の膂力。

 無限の理力。

 無限の奇跡。

 無限の可能性。

 を世界に、オレに与える。

 なぜこれほどの力がオレに? 答えは恐らく日記。

 オレは体験してきた出来事を細かく【(はたがしら)】の日記機能に書き続けてきた。文字に画像に動画で毎日だ。フェイクは【(はたがしら)】が削除するから嘘偽りない体験談。

 学び、鍛え、識り、現し、想う。

 親に連れられ様々な場所に行き感じた事全て。

 一人訪ねた場所で経験した事全て。

 それらをパペットシステムが読み、この力をくれたのだ。

 しかし。

 オレがこのジョーカーを得た際、隠す道を選んだ。星の寓話の顕現と言う隠れ蓑を作った。

 誰かに利用されると思ったからだ。

 誰かを怖く思ったからだ。

 だから誰よりも慎重になり、誰よりも賢くなり、誰よりも優しくなる必要があった。

 誰かに使われないよう、オレ自身が悪意をもって綺羅(きら)を使わないよう。

 自分を『僕』と呼んでいたのと同じく自らをセーブする道を選んだのだ。

 しかし綺羅を扱う修練を欠かした覚えはない。

 常に意識し、綺羅を紐解き、世界の在りようについて考え、上昇を心掛けている。

 

「セーブする意味を知り、セーブの只中にいても強さを見失わず、それを取り払うタイミングを見誤らない。

 これこそを成長と言うのだ、涙覇(るいは)

 綺羅があるゆえにお前は力強く成長できたか」

「ああ。

 でももう良い。

 ゼロ、お前は成長と言った。言ってくれた。

 素晴らしいと言ってくれた。

 だからもう隠さない。

 オレはオレの成長を隠さない」

「隠す必要などそもそもない」

 

 ゼロはただ冷静に分析し発言しているだけだろう。

 心のこもっていない声だから。

 しかしそれゆえに真実の言葉なのだ。

 それがちょっとだけ、嬉しい。

 ゆえにオレは。

 

「オレはオレの全てで! お前を倒す!」

 

 まずはゼロポイントエネルギーでゼロと赤ちゃんの分離を図ってみる。

 夜空色のエネルギーがゼロを包む、が変化なし。

 ゼロポイントエネルギーが通用しない?

 

「俺のジョーカーだ」

「ジョーカー!」

「『夢』と『現実』の交換。チェンジリングと呼んでいる。

 これにより涙覇の攻撃が効かなかった夢と効いた現実を交換した」

 

 そう言う事か。

 防がれはしたが効いてはいる。ならばゼロにジョーカーを使わせないで攻撃できれば。

 アイテムの光の星・(めぐり)を全て手に。全ての威力を刀剣の形に束ねる。

 

「行くぞゼロ!」

「来い」

 

 轟音。火花。

 光の刀剣とゼロの持つ黒い槍がぶつかった。

 オレが右に薙ぐとゼロも右に薙ぎ、オレが上から振り下ろすとゼロが下から打ち上げ。

 刺突には刺突を。

 斬圧には斬圧を。

 オレは防御をゼロポイントエネルギーを纏わせた腰についている機械に任せているが、ゼロの攻撃は速い。脳波での制御が忙しい。

 オレの攻撃は槍によって防がれる。

 総合的に考えるとゼロの方が上か。

 それなら。

 光の刀剣からいくつかの星を分離。ゼロの目の前で炸裂させる。

 が、炸裂した星が消えた。夢と現実を交換されたのだ。

 オレはその一瞬をついてゼロの左目に刺突する。

 出血。

 左目を狙ったが避けられゼロの左耳の上から少しだけ光の血が流れた。しかしすぐに出血は収まる。これもまた交換された。

 が、ゼロの耳の傍を行きすぎた刀剣から横に棘が伸びる。

 ゼロはそれを頭を下げてかわし、オレの足を払った。

 崩れるバランス、黒い槍から放たれる心臓狙いの回転刺突。これを防いで砕ける機械の盾。

 倒れるオレの体。を、踏みつけようとするゼロ。体を回転させて避けるオレ。

 ゼロの足を掴み力をこめる。骨を砕こうと思ったのだが頑強でできず。

 夜空色のエネルギーを刀剣に。倒れたままゼロの体を両断しようと振り上げて夜空色の斬圧を飛ばす。

 身を引いてかわすゼロ。空へと飛んで行く斬圧。が、弾けた。オレがやったのだ。斬圧――夜空色のエネルギーが雨となってゼロに降り注ぐ。

 雨はゼロの体に浸透し赤ちゃんに届く――と言うところで交換で消えた。

 だがゼロの視線が空に向いた瞬間にオレは体勢を整えられた。

 一度距離を取る。

 

「これなら!」

 

 夜空色のエネルギーを獣の形に。日本に伝わる最強の蛇・ヤマタノオロチの形にしてゼロへと向かわせる。

 巨大な八つの首がゼロを噛み砕こうと前後から、左右から、上下から攻め立てる。

 しかしゼロは飛翔してその全てをかわして見せる。

 速い。これまでの速さの比ではない。空中戦の方が得意なのか。

 オロチの首に触れるゼロの手。すると夢との交換でオロチの首が一つ消されて。

 ゼロはまた別の首に触れる。消される。

 これを七回繰り返されて最後の首が消えた――と、オロチの中からオレが現れた。体内を通って接近したのだ。

 わずかに開かれるゼロの目。

 驚くゼロに向けて――

 

「オ!」

 

 夜空色のエネルギーを纏った刀剣を全力で振り下ろす。

 ゼロの左半身を斬りつける刀剣。

 入った。

 ならば、夜空色のエネルギーよ赤ちゃんに届け!

 

「っつ!」

 

 影が差した。オレの上空になにかが現れたのだ。

 急ぎ振り向いてみるとそこにいたのは――ヤマタノオロチ。

 

「なっ!」

「夢に交換したものを更に交換した」

 

 消すだけじゃないのか。

 

「ついで」

「!」

 

 オレの下方に短剣の軍勢が現れ。

 

「夢にあるものを現実と交換した」

 

 上からオロチ、下から短剣。

 

「この!」

 

 オレは夜空色のエネルギーを球形に纏い両者をなんとかやりすごし、ヤマタノオロチと短剣を消去する。

 だが今度は山のように手りゅう弾を交換で出現させられて。こちらの防御に触れる前に連続爆発。

 爆裂のエネルギーを防ごうとするも許容を超えたのか内部に侵入されて体を傷つけられる。

 

「ぐっ!」

 

 更に。

 熱が上がった。オレの周囲の大気が炎上したのだ。

 皮膚が焼かれる。

 

「う……あぁ!」

 

 夜空色のエネルギーを竜巻状に。炎上した大気を沈める。

 空中戦はダメだ。まず地上に――

 

「え」

 

 降りようとしたところで気づいた。大地がマグマになっている事に。

 

「これで涙覇、お前は空中戦を選ばざるを得ない」

 

 せっかくつけた左半身の傷を交換で消したゼロが宙に浮く。

 オレは夜空色のエネルギーでマグマを消そうと試みるが、エネルギーがマグマに届く前に消された。ゼロの交換によって。

 どうあっても空中戦が望みか。

 なら多少体に無茶をしようとも。

 夜空色のエネルギーを光の翼に集める。集めて、エネルギーは一つの未知の数式になった。

 無限に与えられる知力。オレが願えば構築される数式。

 今作った夜空色の数式は勿論翼の強化用だ。

 さあ行くぞ。

 

「!」

 

 一瞬。一瞬で刀剣と槍が交差した。

 ゼロは目をみはるもオレの剣撃を防御する。早い反応、的確な動作だ。

 頭が痛いな……。

 強化の影響で思考が軋む。

 

「けど!」

 

 ゼロに向けて手を伸ばす。一つの夜空色の数式がゼロの槍に表示されて――折った。

 だが。

 ゼロが槍に手を添えた瞬間再構築される。

 厄介な能力だ交換とは。

 

「え」

 

 折れて落ちていく槍の方がもう一本の黒い槍となって飛翔しオレの右腕を掠めた。仮想ではない本物の血が流れ出る。

 槍の遠隔操作もできるのか。

 オレが治療する間にその槍はゼロの手に収まって。

 

「……もう一段階」

 

 夜空色の数式による強化を上げるか。

 翼と、それに体全身。神経と筋肉と骨。

 頭痛がする。脳の処理に負担がかかり思考が締め付けられる。

 この状態を長く保つ事はできない。早急にケリをつけなければ。

 羽ばたく翼。

 猛烈な勢いとなってゼロに迫り――だっ!

 ゼロの正面に展開されていた透明なエネルギー障壁に体が止まる。

 だがそれでも。

 なんとか障壁を抜けて刀剣を振るう。

 が。

 黒い槍に黒い光が灯り。

 

「刀剣が!」

 

 槍と衝突して――消えた?

 折れたならまだ分かる。そんな事もあるだろう。けど消えた?

 

「言っていなかったな。

 この黒い槍は俺のコンピュータウィルスとしての機能を凝縮させたものだ。

 機能は単純。感染先のデータ消去だ」

 

 なっ……。

 

「ほぼ全てのコンピュータウィルスは実体化と共に能力は姿、あるいは戦闘力に加算されるが『三極(ヴィルーソ)』は違うぞ。加えて天使の上もな」

「天使の――上?」

「周りが見えていなかったな。あの女を放っておいて良いのか?」

「――ウェディン!」

 

 決して無視していたのではない。オレがゼロを倒さなければ加勢に行けないと思っていたからこちらを優先していた。

 けれど。まずったか?

 急ぎウェディンの姿を探し、すぐに見つかった。

 だって相手が多くの天使ではなかったから。巨大な一体の――光の植物人間だったから。

 スカートを履いているかのように見える光の人間。ただし、腕は植物。

 性別は女性に見えるが実際に性があるのかは分からない。

 背にある翼は三対。その中心に光の輪。

 

「【ファル】と言う」

「ファル?」

「将来的に人の上に現れると目される生物だ。

 神話の話ではない、現実として。

 あれは天使の集合体、同化に使っている人間の集合体だがな」

 

 人の上! 人の上だって!

 

「人間が進化するのか外から来るのかは不明だ。

 だがロッケン=オーヴァーは確かに演算予知し、あれを見、【治す世界(クラーツィ・モンド)】に組み込んだ」

「厄介な事を!」

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