第14話 これがフィフス――【覇(トリ)】
神の粒子と呼ばれるものがある。
過去から現在、そして未来に渡って常に存在する粒子。
それこそ人が『希望』と呼ぶもの。奇跡の元。
フィフスの成果とは希望の粒子に触れる力。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」
体が大きく震えた。とてつもない電流を浴びたような激痛。
頭の中に世界の誕生からずっと先の未来の記憶が流れ込んでくる。
記憶たちが言っている。
全ての過去を識れ。
全ての現在を識れ。
全ての未来を識れ。
涙が流れる。
人が得て良い智慧知識の限界が突破される。
頭が……割れる!
敗けるなよオレ。絶対に敗けるな!
これは気合でどうにかするタイプの力ではない。
護るオレを忘れるな。
護る人を忘れるな。
魂を鼓動に乗せて、想いを心に乗せて、誰よりも強く一歩を踏みこめ。
夢を! 全てに乗せろ!
一握りの才能を示せ。
一握りの理解を示せ。
一握りの勇気を示せ。
一握りの愛を示せ。
一握りの心を示せ。
希望たちが語り続ける。
【星章】を見せろ。
全ての星の子が持つ威力を見せろ。
夜空色のオーラが燃え上がる。
我々に、触れるのだ。
手を伸ばす。腕を伸ばしきって、指を伸ばしきって。
どこかに向けて――否。希望の一粒に向かって。
指になにかが優しく触れる感触。
指の先に小さな虹色の輪ができては消える。
人の体は人であるのを赦されぬ。
天上の位にやってこい。
世界が真っ白になった。
そんな世界に夜空色をした一滴の炎が現れて、波紋となった。
それは世界に広がり、大地ができて、オレと言う赤ん坊が産まれた。
無力な赤ん坊は泣き続け、そこに一人の少女が立ち寄ってくる。年の頃は本当のオレと同じくらい――つまり十代。髪は夜空色、目は真紅のその子は赤ん坊を抱き上げると歩き出し、川に浸けて汚れを洗い落としてくれた。
赤ん坊は気づけば幼い少年となっていて、少女と一緒に手を繋いで歩きだし、火を起こす術を身に付け、石を削ってナイフと鏃を作り、小動物を狩って食事とする。
少年は大きくなり、いつの間にか文明が産まれ、少年は青年となって少女と結婚した。二人の間には一人の男の子が産まれて、その男の子は光に包まれていた。
男の子はハイハイを覚えて同化状態のオレと星伽のもとへとやってきた。オレたちは思わずその子を抱き上げて、男の子は光の粒となってオレたちの中へと入ってくる。
さあ、受け入れ、運命すら超えて往け。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――オァ!
閃光。光が溢れる。
人を魅了する光だ。小さな太陽に飛び込んでいるかのような虹色の光。
対峙するな。これは敵ではない。味方だ。
虹色の太陽が渦を巻く。
いくつもの円環が産まれては消えて、そうしてとうとう。
「……っつ」
乱れていた呼吸が正常に戻ってくる。
オレの手首、足首、胴体、頭頂部に現れた夜空色の円環。自らの体に現れた円環を見て、オレは惹かれて圧倒される。
変わった――いや、意識が『拡張』された。
怖い……あまりの素晴らしさに恐怖を感じる。
なのになんだろう?
この、安心感は……。
分かる……分かる……希望へと届く手がある事が。
「これがフィフス――【覇】」
完成した。
けれど完成しただけだ。
これを修練し、鍛錬し、磨き上げなければ。
ただ今は……限界。
「涙覇!」
倒れるオレの体を支えるは、ウェディン。
「良くやった、涙覇」
「今はゆっくり休んで良いよ」