第13話 オレは挑戦するよ
「以上がフィフスの詳細だ」
父さん母さんからフィフスがどのようなものなのか聞いてオレとウェディンは息を呑んだ。
成程、できれば奇跡。それほどの力を秘めている。できればの話だが。
しかし二人から聞いた話では失敗する確率の方が遥かに高い。挑戦するのが恐ろしい。
が、ゼロとひと悶着あった以上フィフスを超えねばいつか狩られるだろう。誰かが護ってくれるなんて安心してはいけない。それは信頼ではないのだから。
そして信頼があったとしてもオレがなにもしなくて良いと言う話にはならないはずだ。
だから。
「オレは挑戦するよ」
三人がオレを見る。心配と信頼が混じった目で。
「やらせてほしい」
「……超えられるな?」
「必ず」
父さんの問いに迷わず応える。それに父さんは頷き、母さんは一度父さんを見てオレを見て頷き、続いてウェディンは――
「ウェディンは少し待って」
「え?」
ウェディンがなにか言いたそうに口を開きかけたところで母さんが待ったをかけた。
「昨日の戦闘でウェディンが日本にこっそり来てパペットバトルに興じているのが御両親にバレたから」
「げ」
げ、って……お姫さま。
「けど責める気はないと思うよ。その気ならとっくにしているだろうから。
昨日のウェディンの参戦がマスコミから出てこないのも御両親が抑えているからだしね」
「え、そうなんですか?」
「うん。帰ったらきちんとお礼を言った方が良いよ。
で、フィフスなのだけれど、御両親の許可なしで挑戦はさせられない。
分かるよね?」
「……はい」
身分的にも。家族としても。
「ダメだって言われたら説得します。
私も涙覇の横にいたいから」
ん。
手を握られた。少し震える手、それでも力強く握ってくる手だ。
父さんと母さんは目を合わせて苦笑するように笑んで。多分だけど自分たちの青春時代を思い出しているのだろう。「ワタシたちもこうだったよねぇ」「まあな」って感じで。
「分かった。
それじゃあ涙覇はオレと母さんが見ている前で挑戦を。
ウェディンは一度戻って御両親に逢う。
これで良いかな?」
「うん」
「OKです」
「ウェディンは涙覇の挑戦を見てから帰るかい?」
「はい。見届けたいです」
オレが失敗する可能性なんて微塵も感じていない堂々とした表情だ。信じて、オレの挑戦と成功を自らの勇気に変えようとしているのだろう。
ますます失敗できないな。いや、失敗する気なんてないが。
「じゃ、早速やるよ」
気持ちが上向いている今。
勇気が溢れている今。
オレは一歩を踏み出すのだ。
三人からちょっとだけ距離を取ってまずは。
「星伽」
パペット顕現。続いて。
「ウォーリアネーム【星の囀り】」
パペットとの同化。
フィフスへはこの状態での挑戦となる。
空気を大きく吸って吐いて、もう一度大きく吸って吐いて、吸って。体の中の空気を新鮮なものにして――
「【覇】――エスペラント」
オーバーレイ・フィフス、パペットへの『人権授与』起動。