第110話 私たちが生きている間に辿りつけると良いわね
「宇宙か」
「せっかくなのでありえない場面を選んでみました」
現状のような空でなければ船に乗って、あるいは宇宙服を着て宇宙に出るのは可能だ。
けれど今三人は普段着で。
しかも天の川銀河が見える場所にいる。人類がまだ到達できていないポイントに。
「実際の天の川銀河もこんな感じなのかしら?」
「どうだろう?
この映像だと中心がものすごく光っているけれどブラックホールがあるって説が強いから、やっぱり違うんじゃないかな? あくまで説の一つだけど」
「私たちが生きている間に辿りつけると良いわね」
「だな」
「それではお次は」
映像が神秘の宇宙から切り替わる。今度の世界は――
「火山?」
「超古代の地球だって」
「あ~成程」
生命はおろか植物すら生まれていない頃だ。
あちらこちらからマグマが吹きあがり、噴石をまき散らし、空だって赤く染めてしまう。
そんな世界だから。
「「「熱い!」」」
超高熱で。
「か、変えま~す」
一転して映像は雲の上に。
しかし雲の上に神殿が見られるが?
「天国だって」
「ああ、どうりで天使が舞っている。
ん? 天国があるって事は」
「当然」
映像が切り替わった。
「地獄もあるよ」
「いや~悪魔に睨まれているんだけど」
「生前の罪を洗い流しなさい、涙覇」
「ウェディン、オレが一体なにをしたと」
それからもオレたちは様々な映像を楽しんだ。
お化け屋敷。
御仏の世界。
ポリゴンの世界。
魔界。
海底都市。
などなど。
「はあ~、ひと先ずここでストップと」
終盤、リモコンを受けとったウェディンだったが最後に一つの世界を投影し、落ち着く事にしたようだ。うっすら汗をかいているオレとしても助かる。
「やっぱり音楽は癒しね」
投影されているのは妖精たちがオーケストラを組む森林の世界だ。
花の上に鎮座する妖精。
枝の上に鎮座する妖精。
水の上に鎮座する妖精。
それぞれが楽器を持ち、奏で、歌う。
これ以上落ち着ける世界などあるだろうか?
「それは良いんだけど、ウェディン、一つ問題が発生」
「ん~? 有料のジュースでも開けちゃった?」
「いや……ちょっとこっち来て、寝室」
「寝室」
と言うキーワードに、一気に現実に引き戻されたようだ。まったりしていた表情が固まっている。
きっと まさか と思っているだろう。少し小走りでオレのところにやってきたから。
「あ~、キングベッド一つかぁ」
「サイズ大きいから端っこと真ん中と端っこで充分眠れはするけれど」
それでも、同じベッドであるのに変わりはない。一度でも寝返りをうてば即お見合いだ。真ん中に燦覇を挟んだとしても。その燦覇はベッドにダイブして遊んでいるが。無邪気だなあ、キミもちゃんと女の子なのですよ?
「涙覇、明日の合同会議に寝不足参加はまずいと思う」
「どうしてオレに言うかな?」
「我慢できる?」
「す、するとも。
ウェディンは?」
「シャワー行ってきまーす」
「ちょっとお嬢さん?」
その夜、シャンプーの香り漂う寝室で我慢大会が開かれたのは言うまでもない。




