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第11話 絶対になにも『隠さない』ように

 ◇


「じゃあな~」

「またね」

「こんがり焼いてくるぞぉ」

「絶対遊ぼうねぇ」

 

 なんて事をクラスメイトと言い合い、オレは学校の校門を出た。

 空がスタートレイルに――世界が【治す世界(クラーツィ・モンド)】と言うシステムによって変わっても学校は普通にあるわけで、ただし幸か不幸か本日一学期終業日だったり。

 朝、ウェディンに告白して、登校し大掃除をして、終業式を終えて、一学期最後のホームルームを超えて、今。

 この後は父さんから指導を受ける予定になっている。

 ただその前に。





 

「がっあ!」

 

 牛に似たコンピュータウィルスが悲鳴をあげて消えて逝く。光の爆弾かのように爆散する。





 

「ぎゃ……お!」

 

 巨大すぎるムカデに似たコンピュータウィルスが悲鳴をあげて消えて逝く。光の爆弾かのように爆散する。





 

「ぎぃ!」

 

 幼い子供を連れ去ろうとしていた怪鳥のコンピュータウィルスが悲鳴をあげて消えて逝く。光の爆弾かのように爆散する。





 

「イヤ多いな!」

 

 下校の道を歩んでいたら襲われる襲われる。まあ半分は『実戦は最高の訓練である』と言う事でこっちから首突っ込んでいるんだけど。

 ゼロが出てこないから良いもののこうも連戦すると疲労がたまってくる。【(はたがしら)】の拡張機能によって回復と治癒能力も上がってはいるのだが……それでも疲れた。

 この状態でゼロレベルの敵に襲われたらアウトだな、多分。

 なんて考えていたら出てきそうなものだが幸いこれ以上のコンピュータウィルスには遭遇せずに家に着いた。

 良かった……。

 いや、家でも予想外の事が起きていた。

 

「ただいま」

 

 と言いつつ玄関扉を横にスライドさせると――

 

「お帰りなさ~い」

「うんただいまウェディン。……ウェディン?」

 

 が、出迎えてくれた。水色のエプロンを纏った姿で。

 え? なにやってんのこの人。

 

「いやあ『星冠(ほしかむり)』の本拠地に【王室エポック・リンク】の使者として行ったらね」

「ワタシが誘ったんだよ」

 

 ひょこっと台所に続く角から顔を見せたのは我が母で。

 

「息子の彼女さんとは仲良くしたいしねえ。と言うわけでクッキーを作っています」

「作ってるの。初めて」

 

 初めてか。お姫さまってお菓子作る機会ないのかな。

 ……違った。

 

「オレ、母さんたちにはまだウェディンとの交際話してないよね?」

「私が話したの。涙覇(るいは)とそうなった以上顔を合わせているのに挨拶しなかったらダメでしょう。すっごい緊張した」

「そ、そう」

 

 それはまあ、確かに?

 礼儀正しいなウェディン。

 オレもウェディンの御両親に挨拶しなきゃだな。……イギリスの国王さまと王妃さまじゃん。まともに喋れるかなオレ。

 

(よい)さんは地下にいるって、涙覇」

「地下。訓練場か」

「そう。クッキーできたら持っていくから」

 

 ……表情が緩んでいるな、ウェディン。なんだかすっごく嬉しそうだ。クッキー作りが嬉しいのか恋人の母親と仲良くできるのが嬉しいのかは不明だが。

 

「了解、先行ってる」

「ん」





 

「父さん、いる?」

 

 荷物を二階の自室に置いて【羽衣(シール)】を私服モードに変えて、早速階段を降りて地下へ。

 父さん母さんの為の訓練場だがオレも使わせてもらっている地下室。そこに繋がるドアを開けると――

 

「!」

 

 父さんが、『星冠(ほしかむり)』の制服で一人佇んでいた。いや違う。一人じゃない。手には父さんのパペットである神に繋がる白き紙の剣・キリエが握られている。

 左目の『覇紋(はもん)』はオレと色違いの桜色の日輪。

 父さんとキリエ、二人は佇み、静かに目を閉ざし気配を鋭利にした状態でオレを待っていた。

 

「来たね、涙覇」

 

 瞼が、開かれる。

 心臓が跳ねた。父さんからこんな鋭い気配を感じるなんて初めてだ。ゼロの殺意とは違うが、それに匹敵するほどの大きさ。けれど包まれているような安心感。

 これまで父さんに指導を受けていた時はもっと穏やかだった。が、それはあくまで『息子用』だったのだろう。

 この気配が、サイバー関連のガーディアン『星冠(ほしかむり)』としての天嬢(てんじょう) 宵のものなのか。

 

「まずは広くしようか」

 

 部屋の隅にあるコンソールに触れて二・三操作する父さん。すると部屋の壁が、天井が広がっていく。【空間歪曲法】――その名の通りに空間を歪めて広さを変えるシステムだ。

 

「ついで、景色も変えよう」

 

 更にコンソールを操作し、白かった部屋が街の廃墟へ。

 オーバーレイ・サードで形作られた実体を持つ廃墟だ。

 

「体調は万全かい、涙覇?」

 

 大丈夫。下校時の連戦での疲労は落ち着いている。

 

「はい!」

「良し。それじゃ――ウォーリアネーム【手にした夢は純白の輝き】」

 

 父さんの背に輝く桜色の閃光、『凛凛翼(ルミナスウィング)』。

 いきなり! オーバーレイ・フォースによる同化!

 

「ほら、『敵』を前にそのままで良いのかい」

「――! ウォーリアネーム【星の(さえず)り】!」

 

 星伽(ほしとぎ)を顕現し、オレも同化する。

 服装はウェディンに貰った戦闘用の服に。

 

「まずは涙覇の限界を引き出すよ。

 絶対になにも『隠さない』ように。いや、『隠せない』ようにしようか」

「!」

 

 父さんは知っている。気づいている。オレの綺羅(きら)が今どのような状態なのか。奥の手として隠し持っている綺羅の『真実』に。

 父さんの手にキリエとは違う紙剣(しけん)が握られる。アイテムだが、こちらも神に繋がる剣だ。名は一ノ紙(ザ・ワン・シン)

 

「行くぞ涙覇!」

「はい!」

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